先日のヤクルト及びセ・リーグのブルペン運営方法に続き、昨シーズンのパ・リーグのブルペン運営状況もご紹介します。両リーグの大きな違いは、指名打者制の有無で、パ・リーグでは野手のスタメンが1名多く必要ですが、投手に代打を送る必要はありません。それがブルペンにどの様な影響を与えているか見てみましょう。



パ・リーグ球団のブルペン人数


シーズンを通したブルペンの起用人数は、セ・リーグ同様球団によって異なります。ブルペンに8人以上置くことに力を入れた球団は、日本ハムの119試合を筆頭に、オリックス(65試合)、ロッテ(60試合)、楽天(47試合)と4球団もあります。セ・リーグ全体でブルペンに8人以上配置した試合の比率は26%でしたが、パ・リーグは39%と、かなり力を入れていたことがわかります。



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ブルペンの適正人数



先発投手のイニング数とブルペンの関係は、全12球団を見て適正人数を探ります。 先発投球回数の平均値から各球団の過不足を出し、さらにブルペン配置人数も同じ方法で算出します。救援投手1人が担当するのは1イニングとして、ブルペンに必要だった人数を割り出したのが以下の表です。



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これを見ると、ヤクルトのブルペン増員は先発イニング数に対しほぼ適切な人数となっています。日本ハムはやや過剰にも見えますが、救援投手の負荷を下げるという意味では、リーグ平均に対し72人分休ませることが出来たともとれるデータです。DeNAやオリックス、楽天は先発のイニング数不足を補う形となっています。ブルペン配置人数では平均以下のソフトバンク、巨人、阪神、広島も、先発イニング数を考えると適正だったといえるでしょう。



適正を超える運用をしていた可能性があるのが、西武、中日、ロッテの3球団。先発イニングが平均以下で、ブルペン配置人数も同様の西武は、シーズンを通して救援投手が述べ60人足りなかった計算になります。中日も46人、ロッテは25人で、これを埋めるために立てた対策は、「連投」、「イニングまたぎもしくはロング救援」、「登録と抹消の繰り返し」が考えられます。無理をしなければ埋まらない量ではありませんが、他球団と比較して負荷が掛かっていたのは明らかです。




出場選手枠の配分と起用割合



ブルペンに投手を多く配置しない球団は、1軍登録枠をどこに使っているのかというと、代打、代走、守備固めといった野手になります。ここで、各球団の起用状況を確認しておきましょう。




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一目瞭然ですが、代打起用(代打の代打はカウントせず)でセ・リーグとパ・リーグに大きな差があります。リーグ平均機会はセの2.11に対し、パは1.14とほぼ1打席分の開きがあります。ゲーム中盤以降で接戦になり、投手の打順だけでなく、打力の弱い捕手がいるならそこにも代打を使いたい。ひと試合4回打席が回るとして、3打席目から代打を送る場合は野手を4人スタンバイさせて置く必要があります。



1軍出場登録枠における野手の割合は15~16人。セ・リーグの場合、スタメンに野手を8人置き、代打を4人、故障時の対応として控え捕手を待機させると、この時点で13人となります。代走、守備固めの選手まで考えると、最低でも野手15人は置きたいところ。しかし、残る13人の1軍登録枠で先発投手を6人で回すなら、ブルペンには7人しか割けません。


野手の起用について、もう少し深く見ていきましょう。代打だけでなく代走、守備固めで控え野手を最も高い割合で起用したのはどの球団でしょうか。集計の結果、セ・リーグとパ・リーグには大きな開きがあり、最も多かった阪神と最も少なかった日本ハムには出場機会で251の差があります。しかし、野手の登録人数が多かった阪神ですが、スタメンを含めた野手全体の起用割合では日本ハムを下回っています。ベンチに控える野手を効率よく起用したのは日本ハムの方でした。



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また、控え野手の起用状況は球団によって大きく異なり、代打起用の多い球団(セはDeNA、パは楽天とソフトバンク)と少ない球団(セはヤクルト、パは日本ハム)、代走起用の多い球団(巨人)と少ない球団(ヤクルト、中日)、守備固めを多く起用する球団(西武、オリックス)と少ない球団(ヤクルト)と、指揮官の采配は多様です。これは、現在の編成状況によるところが大きいでしょう。



ベンチの起用率で、適正な出場選手登録運用が出来ているか判断することは難しいでしょう。球団それぞれに強みと弱みがあり、スタメン野手では埋められない部分を、代打、代走、守備固めで補うことになります。スタメンと異なる能力を持つ選手が控えていれば、ベンチの対応力が増します。一方で、投手陣に不安のある球団はブルペンの人数を増やす、ファームと連携して先発陣を入れ替えるなど異なる対応も取れます。28人の枠をどの様に構成するかは、指揮官がどの様に戦うかをよく現しています。


今シーズンはまた、違ったデータが出て来るかもしれません。監督は、結果(勝利)を残すことを目標に、ベンチ入りする選手の配置や役割、配置した選手の起用法など考えながら試合を消化していきます。各監督がどんな選手を使ってくるのかを読み、その意図を推察することは、試合観戦の上級者にとっては楽しみになるでしょう。

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