プロ野球の公式戦は3/25の開幕戦から半月余りが経ち、セ・リーグは首位巨人から6位ヤクルトまで4.5ゲーム差、パ・リーグは首位楽天から6位オリックスまで5.0ゲーム差と、徐々に開きが出始め、各球団それぞれに収穫と課題が見えて来ました。



<セ、パ両リーグの順位おさらい>



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セ・リーグは、巨人が開幕から4連勝を飾り、10試合経過の時点でも7勝3敗とスタートダッシュに成功。先週は、本拠地東京ドームでの阪神戦に1勝2敗と負け越すなど苦戦を強いられましたが、現在も9勝5敗1分でリーグ首位をキープしています。


阪神は、その巨人に勝ち越しを決めた後、4/8の広島戦にもサヨナラ勝ちを決め、今シーズンはじめて首位に立ったものの、翌日から連敗を喫し2位に転落。打線が本格化してきた広島は、救援失敗などにより勝ちを逃がす試合もありましたが、投打の軸が揃ってきたことで3位に浮上。この3球団がAクラスとなっています。


中日は4/3のヤクルト戦から4/8の巨人戦に掛けて引き分けを挟んで4連勝。ブルペン陣が復調しゲーム終盤が引き締まるようになり、現在4位ながら7勝6敗1分と勝ち越し。4/2の阪神戦から4/8のヤクルト戦まで引き分けを挟んで5連敗を記録したDeNAは、打線の大幅な組み替えにより連敗をストップ。先発投手陣が早くも崩れかけているヤクルトを抜き、最下位脱出に成功しました。





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パ・リーグは、昨シーズンリーグ全体の貯金の93%(57/61)を稼いだソフトバンクと日本ハムが下位に低迷し、代わって楽天とロッテ、西武がAクラスとなっています。楽天はチーム初本塁打が9試合目だったにも関わらず、得点力はリーグでもトップクラス。投打ともに好調なことは確かですが、koboスタ宮城で行われた9試合でノーエラー。反対に、対戦チームは7失策を記録しており、今季から天然芝に張り替えた本拠地に見事に適応しています。


ロッテも負けず劣らず好調で、開幕カードの日本ハム戦と4/5からのソフトバンク戦を4勝1敗1分と勝ち越し、チームは勢いに乗っています。西武は4/3の楽天戦から4/9のロッテ戦にかけて5連勝し、一時はリーグ首位にも立ちました。


ソフトバンクは、チームの要である柳田悠岐選手が四球攻めの影響からか、打撃の調子が今ひとつで、昨シーズン鉄壁を誇ったブルペン陣も救援失敗が既に3つを数えています。日本ハムは、エース大谷翔平投手に勝ち星がつかず、チーム自体も大谷投手が登板した試合で1勝2敗と投打が噛み合いません。星勘定以上に心配なのがオリックスで、投手陣は先発ブルペンともに不調。打線も開幕当初から得点力がかなり下がっています。


ペナントレースの特徴としては、3連勝以上を記録するチームはあっても、ここまで1カード3連勝を決めたのは巨人の1度のみ(開幕カードのヤクルト戦に3連勝)。各球団とも、スウィープ敗戦だけは免れようと必死な戦いが連想できます。マスコミの報道では、昔から「スタートダッシュを掛けたチームがペナントレースでは有利」、「開幕◯連勝で優勝確率◯◯%」という記事を良く見掛けたものですが、適切な運用を無視してまで勝ちを拾いに行けば、後に故障や疲労過多を来しかねません。開幕して間もない時期は、チームの戦力がどの程度かを確認し、長いシーズンに対応する方がベターでしょう。





<各球団の戦力値を比較 セ・リーグ>



シーズンはまだ始まったばかりなので、現在の数字がそのまま通用するとは限りません。反対に、リーグ順位と比較して矛盾した点があれば、そこがチームの弱点になるかもしれません。



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セ・リーグの得失点差トップは広島で、1試合平均5.14得点に対し失点は3.71で、投打のバランスが取れています。中日は、ひと試合平均2.87はリーグ5位ですが、失点の方はリーグ2位の3.67と投手力のお蔭で貯金を作っているといっても良いでしょう。


打撃と投手力、守備の比較では、救援失敗(リリーフ投手が同点に追いつかれるまたは勝ち越し点を許した回数)と UZR で広島、阪神、巨人が悪い数字を出しながらチーム成績ではリーグ上位と、ここに一つの矛盾が見られます。救援失敗の数はランダムの要素を含んでいますが、守備力については故障している選手を休ませるか、或いは守備力の高い選手に入れ替えなければ改善する兆しは薄いと判断するなら、阪神は長期的に見てマイナス要素は大きく、ヤクルトはプラスに作用する可能性があります。


各球団の課題は広島(ブルペン)、阪神(ブルペンと守備)、巨人(ブルペンと守備)、中日(打線と先発)、ヤクルト(先発、ブルペン)、DeNA(打線と機動力)と見えてきています。故障者の復帰や、新外国人選手の獲得、ファームで成長した選手を抜擢するといったテコ入れは、どの球団にも当てはまる改善方法です。






<各球団の戦力値を比較 パ・リーグ>



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パ・リーグの戦力値は、明暗が大きく分かれています。リーグ成績が上位の球団は、得失点差もプラスに転換しているだけでなく、大方の数字もリーグ平均を上回っています。一方で、下位2球団は主要な数字のほとんどが平均を下回り、特にオリックスはこの時点から最下位を抜け出せるかどうかわからないほど、深刻な状態です。


12試合を消化して未だチーム本塁打ゼロ、トータルのUZRでも-12.0と極めて悪い数字のオリックスは、ほかにも打者のBB/K(0.40)と投手のK-BB(-1.3)もリーグ最低です。選手が不振という理由だけなら、1軍と2軍で入れ替えを実行すれば改善されそうな気もしますが、オリックスの場合は代わりに昇格した選手がカンフル剤の役目を果たしていません。ここで、4/10までに入れ替えを実施した投手の成績を比較してみましょう。



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開幕第2戦で先発するも、右肩の違和感で登録を抹消された近藤大亮投手と、入れ替わりに先発のマウンドに登った近藤一樹投手以外は全て救援陣。登録を外れた投手と、新たに昇格した投手の成績は、奪三振と与四球率の割合に多少の改善は見られるものの、防御率や被打率は驚くほど一致しています。


結果を残せなかった投手を2軍に落としたつもりでも、上がって来た投手が変わらない成績では、浮上のきっかけになりません。象徴的な例が、新守護神に期待したコーディエ投手。不振のため、先週7日に1軍登録を抹消されましたが、外国人枠に余裕さえあれば中継ぎに配置転換して再生を図る手もありました。しかし、ブルペン同様に先発陣も火の車で、首脳陣は先発も可能なミッシュ投手の1軍昇格を決断。チーム事情として、先発陣の確保を優先しましたが、代わりにブルペンを手薄にした影響が今後も心配されます。


チームの改善点は、選手を入れ替えることで果たせるものもあれば、我慢の起用を続けた上で持ち直すもこともあります。各球団の戦力には、どこに課題があるのかを理解し、対処方法を観察することで、各球団の戦力や指揮官の采配力を図ることも可能でしょう。

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