はじめに



今月はタイトルにもあるように、オリックスの佐藤達也投手のストレートの球速に注目してデータを見ていきたいと思います。なぜ、ストレートの球速に注目するかというと、これが調子のバロメーターにならないかと考えからです。





2015年の成績から見る佐藤投手のストレート



その前に、佐藤投手の投球内容に関する基本的な情報を紹介したいと思います。以下の表1は2015年の佐藤投手の球種の投球割合とPitch Value を示したものです。



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佐藤投手は全投球の約70%がストレートで、Pitch Valueは平均よりやや優れているといった成績です。佐藤投手の投球の主軸といって問題ないと思います。このストレートの球速の分布を整理したものが以下の図1になります。



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130km/h未満の投球は今回の分析からは除いています。平均が約145km/hでそこから±3%程度が標準偏差の範囲になります。図中の破線で仕切った143km/h~148km/hに全投球の約70%が該当することからも、この範囲内の球速が佐藤投手の通常のストレートの球速といえます。





2016年のデータの見方



2015年のデータから佐藤投手のストレートの球速がだいたいこれくらいが普通という範囲がわかったので、そのデータを参照しながら2016年のデータを見ていきたいと思います。


2016年のデータは、以下の図2に示すように試合ごとの球速のプロットのデータを見ていきます。



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試合ごとに球速の平均値を求めても良いのですが、リリーフ投手の場合1試合での投球数がそれほど多くはないので、1球でも速い球や遅い球があると平均値が大きく変化してしまいます。このリスクを避けるために1球ずつプロットしてみました。


さらに、登板の無い日には記録が無いので、登板間隔を視覚的に把握することができます。例えば、3/25日から中1日での登板となった3/27日は全体的に球速が遅くなっていることを確認できます。


図中のピンクと水色の部分は、図1で示した2015年の平均±標準偏差の範囲です。この範囲をはみ出た投球は平均より遅い、もしくは速いという判断ができます。





2016年の投球割合



球速のプロットを見る前に、各球種の投球割合のデータを2016年の4月と5月に分けたものを以下の表2に示します。



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2016年の5月は、今季の4月までと比較するとストレートの割合が減少し、スライダーが増えていることを確認できます。こうした投球内容の変化と、ストレートの球速との間に何か関係はあるのでしょうか?





ストレートの球速のプロット



それでは、2016年4月の試合ごとのストレートの球速のプロットを以下の図3-1に示します。



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4月のはじめ、また中旬の連投など、短い間隔での登板が続くことで、球速が全体的にやや遅くなっているのが確認できます。


続いて、5月分の同様のデータを以下の図3-2に示します。



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こちらも、5月の下旬など、短い間隔での登板が続くとやや球速が遅くなることを確認できます。





まとめ



以上、佐藤投手のストレートの球速をまとめました。登板間隔が詰まってくると遅くなってくるので、調子を管理するうえでのバロメーターとして使える可能性があるのではないかと思います。


ところで、5月に入ってストレートの球数が減少していますが、特に球速が遅くなったというようなことはありませんでした。もしかしたら制球に問題が生じた等の可能性が考えられますが、現段階のデータではこの原因まではわかりません。


いずれにせよ、5月はこれまでの投球とは少し内容が異なるものであったことは確かで、これが6月以降どのように変化していくのか、それとも4月以前に戻るのか注目してみると面白いかもしれません。

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