はじめに



今回の分析では、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手を取り上げたいと思います。7月に入ってから調子を上げており、各メディアがこぞってその活躍を紹介しています。ただ、その活躍の背景に何があるのか、6月までの筒香選手とはどこが異なるのかというところまでは言及されていないように思います。そこで、好調だった7月の筒香選手の成績を、6月以前の成績と比較しながら、何が変わったのかを見ていきます。




OPSの推移


まずは確認も含めて、ここまでの打撃成績の推移をOPS(出塁率+長打率)で確認してみたいと思います。以下の図1に示すのは、シーズン開幕からの通算のOPSと、各試合の成績と前後2試合の成績を合わせた成績から求めたOPSの推移を示します。



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通算成績のOPSに対して前後2試合計のOPSは短期的な成績の変動を表しています。図を見ると、7月に入って前後2試合計のOPSが急上昇しており、それに合わせて通算OPSも上昇しています。筒香選手の調子の良さが、OPSを見ることでも確認できた結果です。




各球種の投球割合とPitchValue


こうしたOPSの上昇の背景を探るために、まずは筒香選手に投じられた球種の内訳を図2-1に示します。


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図に示した4月には3月の成績も含みます。4月のストレートの割合がやや少ないものの、5月以降はそれほど違いがありません。多少、変化球の割合に変化はありますが、全体から見れば小さいといえます。


続いて、これらの球種ごとのPitch Valueを以下の図2-2に示します。



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7月の記録を見ると、6月までと比較すると各球種でPitch Valueの値がプラスとなっていますが、中でも大きな利得をあげているのはストレートです。5月・6月とストレートではあまり利得を稼ぐことができていませんでしたが、7月は大きくプラス方向へ変化しています。


ストレートは投球割合が高く、バッティング全体に及ぼす影響も当然大きいと考えられます。そこで、以降は筒香選手のストレートに対する成績の変化を分析していきたいと思います。




ストレートに対するPlate Disciplineデータ


ストレートに対するPlate Disciplineデータを以下の表1に示します。



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このデータは、ストレートをストライクゾーンへのものと、ボール球に分類し、それぞれスイング率、コンタクト率、空振り率(投球に占める空振りの割合)をまとめたものです。7月の特徴は、ストライクゾーンへのボールに対するスイング率は6月以前と変わりませんが、コンタクト率が極めて高くなっていることが確認できます。


ここからは推測になりますが、このような結果となった原因として、7月になってストライクゾーンへのストレートを打つ技術が急にレベルアップしたというよりは、筒香選手の狙いや意識がストライクゾーンへのストレートを打とうという方向に変化したと考える方が自然ではないかと思います。




ストレートの投球位置と打撃成績


次に、筒香選手に対するストレートを投球コースにプロットし、ヒットになったコース、凡退したコースを見てみようと思います。


まずは、6月分までのデータを以下の図3-1、3-2、3-3に示します。


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以上が6月までの傾向で、これに対して7月はどうなったかというと、データを以下の図3-4に示します。



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まず、Hit・HR・凡退の◇がたくさん表示されるようになったことが特徴で、これがPlate Disciplineデータにも表れていたと考えられます。また、6月までは見られなかった傾向として、凡退も含めインコースよりのストレートが打席結果に多くつながっていることがわかります。その結果、凡退の数は増えましたが、OPSは跳ね上がっているのですから安い経費だったといえるのではないでしょうか。




まとめ

以上、筒香選手の成績のストレートに対する対応を見てきました。7月に成績が急上昇した背景には、ストライクゾーンへのストレートを確実に打ったことがあるのではないかと考えられます。特に、6月以前には少なかったインコースのストレートを結果につなげることに成功していることもわかりました。


こうした傾向は、少なからず他チームも掴んでいる可能性があるので、8月以降、筒香選手に対して相手投手はどのような勝負を仕掛けてくるのかに注目すると面白くなるかもしれません。

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