すでに日本ハムがマイケル・トンキンの獲得を発表するなど動きがあった新外国人選手市場。今回は来季の投手の候補を紹介する。MLBでの実績十分な投手やWBC出場投手などネームバリューのある選手が挙がった。野手編はこちらから。

メドレン、マスターソン、かつてのMLBエースクラスも来日の可能性あり


今オフMLBでは、実績が十分なベテランの先発投手がフリーエージェントとなっている。通算120勝の43歳R.A.ディッキー、通算240勝の44歳バートロ・コローン、そしてアメリカン・リーグ優勝決定シリーズで好投を見せた通算237勝の37歳C.C.サバシアらである。しかし彼らが来日する可能性はないだろう。ただ彼らよりもう少し若い、35歳前であればMLBで実績のある先発投手でも獲得の可能性は考えられる。今季33歳でヤクルトに入団したロス・オーレンドルフ(2009年に2桁勝利、通算30勝)やKBO・ハンファに入団した33歳のアレクシ・オガンドー(2011年に2桁勝利、通算33勝)らがそれにあたるだろう。今回はそういった視点から候補選手を挙げてみたい。

最も推したいのが、2012年から2年連続2桁勝利をあげ、メジャー通算41勝の実績があるクリス・メドレンだ。2013年にはチェンジアップが冴え渡り、15勝をあげるなどエース級の活躍を見せたが、2014年にキャリア2度目のトミー・ジョン手術を受けてからは成績も低迷している。しかし、2016年にはMLBでストレートの平均球速91.6MPH(147.4km/h)と全盛期と変わらぬ数字を記録しており、最大の武器であるチェンジアップのスピードも落ちていない。全盛期からの変化としては、以前はチェンジアップとカーブを武器にゴロの山を築いたが、最近はフライ割合が高くなってきていることだろうか。今季はMLBの舞台で投げることはなく、ブレーブス傘下のAAA級グウィネットで、3勝7敗 防御率5.42と平凡な成績だったが、K/BB(奪三振/与四球)は3.65と優秀だ。まだ10月に32歳になったばかりでもあり加齢による急激な衰えの心配も少ない。


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次に推したいのは、2010年からインディアンスのエース格として4年連続180イニングを投げ、2013年にはオールスターにも選ばれたジャマイカ出身のジャスティン・マスターソンだ。投球の半数近くを占めるシンカーでゴロを打たせるだけでなく三振も多く奪う。しかし、2015年9月に肩の手術をしてから2年間はMLBの舞台から遠ざかっていた。今季はドジャース傘下のAAA級オクラホマ・シティでプレーし、141 2/3回で140奪三振を記録。ゴロ割合も全盛期ほどの数字ではないが、平均以上を保った。しかしもともと荒れ球の投手ではあるのだが、リーグ・ワーストの23与死球はいただけない。これを打者の脅威となる武器と考えるか、欠点と考えるかは捉え方次第だろう。3月に33歳を迎えるところでもあり、NPBに来日しても不思議ではない。

続いては、2007年から2015年までの9年間で6度の2桁勝利をあげ、通算81勝の実績をあげているカイル・ケンドリックを推したい。マスターソンにも負けないシンカーの使い手で、他にもカッターやチェンジアップを駆使しゴロを量産していた。マスターソンとの違いは奪三振能力が低いことで、全盛期でもK/9(9イニングあたりの奪三振)は5.5ほどであった。ここ2年はAAA級でプレーし、全盛期ほどではないが平均レベルのゴロ割合は保っている。K/9は6.46, 5.93と、打者のレベルの差があるためか、全盛期より向上。2008年フィリーズ時代にはチームメイトから「日本の球団(このときは読売ジャイアンツ)へトレードされた」というドッキリを仕掛けられ、顔面蒼白状態となったことがあったが、あれから10年、本当に来日してプレーする可能性はあると考えられる。

ドリュー・ハッチソンはMLBで2014年に11勝13敗 そしてリーグ8位の184奪三振、2015年には13勝5敗、129奪三振を記録した本格派右腕だ。残念ながら年を追うごとに成績は下降線を辿り、2016年はわずか9試合、そして今季はMLB登板なしとジリ貧状態となってしまった。しかしさすがにMLBでの実績があると格が違うのかAAA級インターナショナル・リーグ(IL)では2016年にリーグ8位の防御率とリーグ3位の奪三振、そして今年はリーグ10位の防御率にリーグ7位の奪三振を記録した。MLBデビュー当時はフライボール投手だったが、最近はゴロを打たせるようになってきている。年齢もまだ27歳と若く、MLB時代に威力があったスライダーの切れ味が衰えていなければ日本でも活躍できるだろう。


MLBでの実績は少ないものの、AAA級で活躍を見せた投手たち


早熟のサウスポーであるマイケル・ロースも候補として取り上げたい。サウスカロライナ大学時代にはエースとしてカレッジ・ワールドシリーズ2連覇を達成し、2012年にプロ入り。翌年には早くもMLBに昇格し初勝利をあげたものの、それ以降なかなかMLB定着には至っておらずここ3年はAAA級でのプレーが続いている。MLB時代のPitch Valueでもプラス評価を3年続けたスライダーが武器で、ゴロを打たせる巧みな投球術を見せる。アメリカ時代には三振奪取能力が高くはなかった広島のクリス・ジョンソンのような活躍ができるかもしれない。また、母親が英国人というバックグラウンドがあり、2013年、2017年とWBC予選イギリス代表に選出。特に2017年の予選では強打のイスラエル打線を相手に6回無四球1失点の好投を見せた。


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ウィルフレド・ボスキャンは2016年にMLBデビューを果たした右投げの先発投手だ。ここ3年は主にAAA級で投げ、3年間で合計344 2/3イニングを投げている。2015年にはインターナショナル・リーグ(IL)で防御率9位にランクインした。一方で三振奪取能力は低く、この3年の合計では344 2/3イニングに対し216奪三振。日本ハム、阪神でプレーしたルイス・メンドーサに近い投手かもしれない。年齢も27歳になったばかりと若く、内野守備に自信があるチームにはオススメしたい。

パオロ・エスピーノもなかなかMLBに定着することができない投手の1人だ。ここ数年はAAA級を主戦場としており、2015、2016年はILで、今季はパシフィック・コースト・リーグ(PCL)で349イニングを投げており、プレーするリーグ、成績、立場などボスキャンと非常に似た投手だ。2015年にはILで防御率12位に、2016年には奪三振5位にランクインしている。もともとはフライボール投手だったが、カーブを武器に最近はゴロボールを打たせるようになっている。ボスキャンより三振奪取能力が高く、制球力も良い投手だ。ちなみに、エスピーノは2006、2009、2013年とWBCパナマ代表にも選ばれている国際大会の経験が豊富な投手だ。


救援ではムヒカに来日の可能性あり。ネックは年齢か


救援投手ではすでに日本ハムからトンキンの獲得が正式に発表され、阪神はディエゴ・モレノを獲得濃厚という報道が出た。今季のNPBでは、シーズン最多セーブ記録を更新したデニス・サファテの活躍が記憶に新しく、どの球団も頼りになるクローザーは喉から手が出るほど欲しいはずだ。そんな中、最も推したいのは、エドワード・ムヒカだ。2013年にはカーディナルズで37セーブをあげ、オールスターに選ばれたほか、翌2014年にはレッドソックスに移籍し、上原浩治の代役としてクローザーを務めたこともあるなどMLBでの実績も豊富。ここ2シーズンはAAA級ILを主戦場とし、2016年はリーグトップ、そして今季はリーグ2位のセーブ数を記録した。特別スピードボールがあるわけではないが、制球力と威力のあるスプリットを操る技巧派クローザーだ。前述の2013年はMLB全体のリリーバーで2位となるK/BB 9.20を記録(1位は上原浩治の11.22)。今季もILのリリーバー(50イニング以上)では2位となるK/BB 5.11を記録した。来季34歳を迎える年齢が唯一のネックになるかもしれない。


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ラファエル・マーティンも来季34歳になるリリーバーだ。AAA級ILで2014年から3シーズンで合計44セーブをあげた。今季はセットアップの役割が多く、2セーブにとどまったが、4年間で173試合に登板し、201 2/3イニングで222奪三振を記録した。9イニングあたりの奪三振は11.23→10.93→9.12→8.90と年齢を重ねるにつれ下がってはきているものの、今季は昨季よりもK/BBやBB/9、HR/9の数字を改善させている。バリバリのフライボール投手であり、投手有利の本拠地を持つチームにはフィットする可能性がある。また、2016年秋に行われた侍ジャパンの強化試合のメキシコ代表に選出されており、すでに日本でのプレーは体験済みである。

昨季のワールド・シリーズで登板したインディアンスのジェフ・マンシップは今季KBOのNCダイノスでプレーした。ポストシーズンで登板するレベルの投手でも、翌年日本や韓国でプレーする可能性は十分あるということだ。今季それに当てはまるかもしれないのがカブスのブライアン・ダンシングだ。もともとは先発投手で、2010年にMLBで10勝3敗、2011年には9勝14敗の成績を残した。K/9 は2010年5.37、2011年6.40と低調。2013年からはリリーフ専任となっているが、2014、2015年にはK/BB 1.65、1.14と制球力も今ひとつであった。今季はカブスで68試合に登板し、62 1/3イニングで61奪三振、18与四球。K/9、K/BBはキャリア・ハイを記録した。しかし来年早々に35歳になるため、これ以上のMLBでの活躍は厳しいという判断を下され来日する可能性は十分にある。ちなみに2008年北京五輪のアメリカ代表にも選ばれ、日本戦でも登板。1イニングを1四球1死球無失点で抑えた。

エルネスト・フリエリは平均94MPH(151.3km/h)前後の球速を誇り、2012年にはエンゼルスで23セーブ、2013年に37セーブを挙げた豪腕クローザーだ。近年はMLBに定着できていないが、今季はAAA級3球団で39 1/3イニングで52奪三振、21与四球を記録し豪腕健在をアピールした。武器になっているのは速球1本で、MLBデビュー当初はカーブも投げていたがあまり効果的なボールではなかったようだ。極端なフライボール投手であり、狭い本拠地を持つチームが獲得するのは少々危険かもしれない。今年の春先にはWBCコロンビア代表にも選出されている。

今回はMLBで実績のある投手やWBCの代表歴のある選手などを中心に取り上げたが、まだまだ来日の可能性がある候補はたくさんいる。来年のキャンプにはどういった顔ぶれの外国人投手が来日しているだろうか。



水島 仁
医師。首都圏の民間病院の救急病棟に勤務する傍らセイバーメトリクスを活用した分析に取り組む。 メジャーリーグのほか、マイナーリーグや海外のリーグにも精通。アメリカ野球学会(SABR)会員。

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