NPBの若手有望株“プロスペクト”をランキングする本企画。今回は昨年10月以来の更新となる。今回より2018年ドラフト組も評価の対象となる。12球団最高の若手有望株と評価されたのは誰だろうか。前回のランキングはこちらから。

対象となる選手


・2019年中で25歳以下
・投手は一軍通算100イニング未満かつ50試合登板未満
・野手は一軍通算300打席未満
・外国人枠の対象となる選手は除く
・新人選手は26歳以上でも対象

評価のプロセスについて


ランキング作成のプロセスを説明したい。ランキング作成に関わったのは、私、山崎と、日本のプロスペクトに詳しいDean Steinman氏、それからDELTAのデータ入力に携わるビデオ班だ。この三者が上記の対象となる選手リストから各々トップ50人の選手をランク付けし、ポイントを集計。仮のランキングを作成する。その後、お互いの間で大きく意見の食い違う選手について議論し、最終的なランキングが完成するという手順だ。




ランキング選手の寸評


table

1位から10位は9人が野手となった。上位5名の顔ぶれは前回からまったく変わっていない。1位は前回に続き、村上宗隆(ヤクルト)となった。この春のオープン戦では三塁手に定着し4本塁打を放っている。非常にスケールの大きいスラッガーだ。村上と坂倉将吾(広島)には三者全員が4位以内、清宮幸太郎(日本ハム)には全員が3位、廣岡大志も全員が7位以内と上位4名の評価は一致して高かった。

だがそれ以降は評価が分かれる選手が多かった。2018年ドラフト組で最高の評価を得た6位の根尾昂(中日)もその1人だ。Steinman氏は「オールラウンドな才能の持ち主。特にどのような球に対してもラインドライブを打てるスイング軌道と、投球を認識する能力は特筆に値する。MLBにおけるフランシスコ・リンドーア(インディアンス)のようなタイプ。MLBのオールスター級の選手とまでは言えないが、NPBではかなりのインパクトを与える存在になれる」と高評価を与えた。一方、DELTAビデオ班からは「遊撃手に必要なアジリティを備えているかの確信がもてない。将来的に京田陽太(中日)を守備面で上回るということはないのでは」と私とSteinman氏に比べると、やや辛い評価を与えている。

同じ高卒ドラフト1位で注目された小園海斗(広島)、藤原恭大(ロッテ)にもここで触れておく。小園の順位は8位。ビデオ班が「遊撃手の中でも上位のアジリティ。打撃能力に関しても現時点では藤原や根尾より上では」と2位の評価を与えた一方、Steinman氏からは「現時点では十分なパワーポテンシャルを見せられていない」という意見があった。ただし同氏は「ディフェンスが強みで、NPBで活躍できるだけの基礎を持っている。国際大会では素晴らしいプレーを見せた。総合的に見ると浅村栄斗(楽天)タイプ」とも評価している。

藤原に関しては、ビデオ班が「スイングや打球のスピードは素晴らしい」と高評価を与える一方で「現時点ではゴロが多く、本塁打を量産するタイプの打者には見えない」と同時に課題も指摘している。Steinman氏も「エリートクラスのスピードとスイングの速さを兼ね備えているが、弱い当たりが目立つ」と、こちらも打球の傾向について課題を挙げた。



table

11位以降になってようやく投手のランクインが増えてきている。11位の畠世周(読売)は今季25歳と他のプロスペクトに比べ高年齢だが、故障さえなければ活躍は間違いない投手だ。ほかにはDeNAのドラフト1位・上茶谷大河が14位にランクイン。以前、私が書いたスカウティングリポートで「先発3番手か、よくても2番手」と紹介したため、このランクは高すぎると感じる方もいるかもしれない。ただそのレベルに到達する見込みは今回のリストの中でもトップクラスに高いと考え、私は高評価を与えた。

table

21位の甲斐野央(ソフトバンク)は160km/hに迫る速球で話題を集めるパワーピッチャーだ。そのスピードからポテンシャルを評価する声も聞かれるが、救援で起用する限り図抜けた貢献量には至らないだろう。私としては上茶谷に対する評価と同じように、ポテンシャルの最高到達点というより、一定のレベルに到達するであろう可能性の高さを買った。開幕一軍も濃厚なようで、シーズンを通して活躍する可能性も十分あると考える。

27位の岩見雅紀(楽天)は打線の中軸を務められるパワーの持ち主だが、守備面では限られた貢献しかできないどころか、大きなマイナスをつくってしまうことは避けられない。バットにかかるプレッシャーは多大だ。

30位の西川愛也(西武)は、大胸筋断裂の故障がようやく癒え、入団前から球団の構想にあった三塁にようやく挑戦できる状況になった。将来的には平均以上の守備力をもった三塁手になれると考えている。ただスローイングの不安は完全に払拭できていないし、パワー面にも課題がある。一軍のレギュラーに定着するために解消する課題は多い。それでもコンタクトスキルは目を見張るものがあるため、今回は高評価を与えた。




ほかにランキング作成段階で評価が大きく分かれた選手を紹介したい。ビデオ班はオリックスのドラフト1位ルーキー・太田椋に対して、新人では小園に次ぐ5位評価、杉山一樹(ソフトバンク)に、投手では北浦竜次(日本ハム)に次ぐ11位評価を与えた。しかしいずれも私は一度もプレーを観たことがなく、あまりなじみがない選手だった。私個人のリストではトップ50圏外としている。

頓宮裕真(オリックス)もビデオ班が8位と高く評価した選手の1人だ。私としてはバットスピードが特筆すべき速さではないこと、一軍レベルの投球に対応できるかには大きな疑問符が付くこと、守備面での貢献が限られてくることが難点になると考え、こちらもトップ50圏外とした。

私の個人リストではDeNAのドラフト2位ルーキー・伊藤裕季也を8位に入れていた。バットさばきが柔らかく、神宮大会では甘い球を中段まで運ぶパワーを見せた。二塁の守備も大きなマイナスをつくることなくこなせるのではないだろうか。少なくとも平均的な一軍レギュラーになる可能性は高い選手だ。

吉田輝星(日本ハム)は、ポテンシャルだけならトップ15は確実と考えるが、主に高校3年時の投球過多による故障リスクを踏まえ、評価を抑えた。結果的にトップ30圏外にはなったが三者とも一定の評価を与えていたことは記しておきたい。


山崎 和音@Kazuto_Yamazaki
バイリンガルに活動するライター。1.02以外にもBeyond the Box ScoreBaseball Prospectusといったウェブサイトに寄稿。BP Anuall 2018では日本野球に関するチャプターを執筆。セイバーメトリクス的視点からだけではなく、従来のスカウティングを駆使した分析もする。趣味のギターの腕前はリプレイスメント・レベル。

Dean Steinman@DeanHSteinman
アメリカに本社を置くスポーツ分析会社SprayChartsのCEO。 アメリカのアマチュア選手評価会社2080Baseballにて、日本の有望株のスカウティングレポートを掲載した実績がある。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocketに追加

  • 関連記事

  • 山崎 和音の関連記事

  • アーカイブ

執筆者から探す

月別に探す

もっと見る