6月19日、延期を乗り越えついに2020年のプロ野球が開幕する。開幕に先立って1.02ではDELTAアナリストに順位予想を依頼した。予想を行う手法は各自自由に選んでもらい、簡単なコメントをもらい掲載している。今回はパ・リーグ編となる。セ・リーグ編はこちらから。
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上位陣は拮抗 変則シーズンゆえに実力の劣るチームの戦術は柔軟になる可能性(予想者:岡田友輔)


1位 ソフトバンク
2位 楽天
3位 西武
4位 日本ハム
5位 ロッテ
6位 オリックス

例年同様に過去データから機械的に今季の成績を予測するプロジェクションという手法を採用。各選手の成績を予測し、そのデータをもとにチーム順位を予想した。

1位が最有力となるのはソフトバンクだ。シーズンを戦う上でのポイントは、柳田悠岐の出場割合を上げ得点力を回復できるかに尽きる。投手陣の層はリーグ屈指で、6連戦が続く変則シーズンではその強みがさらに生かされそうだ。

楽天は昨年に続き、どん欲に補強を進め順調にチーム力を伸ばしている。西武も秋山翔吾の流出はあったが、リーグトップの得点力は維持する見込みだ。上位3チームに関してはどのような選手運用を行うかで順位が入れ替わる可能性があるほど力が拮抗している。

日本ハムは上沢直之など主力投手復帰の見込みがあり、ロッテも精力的に補強を進めたが、それでも上位3球団とはやや力の差がありそうだ。オリックスは若い有力な投手陣に対して、課題の得点力不足を解消できない可能性が高い。

2020年シーズン全体の見通しとしてはシーズンが短縮され、実力が反映される割合が小さくなる見込みだ。戦術面ではベンチ入りの人数や外国人選手の登録枠が増えたことで、投手起用において失点を抑止するための作戦を取り入れやすい状況でもある。パ・リーグの場合同一カード6連戦が続くためなおさらだ。こういった点で新たな戦術を導入・強化する球団が出てくるか注目される。


下位チームにとって試合数の減少はチャンス(予想者:道作)


1位 ソフトバンク
2位 楽天
3位 西武
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 オリックス

1位に挙げたソフトバンクはいつものことだが豊富な資金で、必要な場所に手厚い補強を見せる。攻撃陣は年々柳田の一本かぶりが進行していたが、今季はウラディミール・バレンティン獲得の手を打ってきた。昨季は柳田がほとんど出場できなかったにもかかわらずリーグ中位の攻撃力を記録。そこに柳田が帰ってくるのだ。補強しないという可能性もあったが、一切手を抜かず獲得に動くという点で姿勢は一貫している。唯一の問題であった出塁力が予定通り回復すれば弱点が見当たらない。

ソフトバンク以外の5チームは戦力差が縮まっている。下位球団にとって昨季よりチャンスの大きな1年である。

誰も経験したことのないスケジュールになってしまった。調整は手探りになるうえ罹患者の存在によっては日程再変更もある。怪しい天気の日の試合と同様に序盤が肝心になるかもしれない。体調管理が難しいことから不確定要素の極めて多いシーズンとなる。ある程度の波乱は受け入れなくてはならないだろうし、繰り返しになるが、試合数の減少は下位チームにとってチャンスが膨らんだことを意味する。選手全員の努力で健康を保ち無事に1年間のシーズンを消化できれば、贔屓チームの結果の如何を問わずそれは成功と考える。


機械的なプロジェクションを用いて順位を予想(予想者:蛭川皓平 @bbconcrete )


1位 西武
2位 楽天
3位 ソフトバンク
4位 日本ハム
5位 ロッテ
6位 オリックス



得失点変化の予測式から順位を機械的に予測(予想者:佐藤文彦 @Student_murmur )


2015-18年のNPBデータを用いて、以下の3つの要因から前年から翌年への得点と失点の変化の予測式をつくりました。

・退団選手のロス
・残留選手の成績
・新加入選手(NPB経験がない選手は除く)の成績

この予測式をもとに、2019年の成績から2020年の得点と失点の変化を予測し、そこからピタゴラス勝率を算出。その勝率順に予想順位としました。2020年は120試合開催予定とのことなので、2019年も含め120試合分の値に換算しています。また新外国人選手やドラフト入団選手など昨季の記録がない選手はカウントしていません。今回の分析はすでに実績のある既知の選手の加入効果を見たもので、未知の選手の評価は今後の課題です。


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積極補強に動いた楽天とロッテが上位になりました。1位の楽天の場合、新加入選手に加え、マイナスを計上していた打者の退団も、得点へのプラスの効果に作用しています。2位のロッテは、新加入選手による失点減の効果もありますが、予測式の「前年の残留選手の成績が悪い場合、翌年は揺り戻しのために成績が良くなる」という性質の影響も受け、昨季不調だった選手の成績回復が多く見られました。同様の効果が逆に作用したのがソフトバンクで、40点近い失点増の予測となっています。

このあたりが予測通り展開するかが注目点といえるでしょうか。


外国人選手の戦力移動に注目(予想者:水島仁)


1位 ソフトバンク
2位 楽天
3位 ロッテ
4位 西武
5位 日本ハム
6位 オリックス

パ・リーグは選手の入れ替えが多く、予想が難しい。楽天は美馬学、フランク・ハーマンと主力投手を失ったが、野手のステフェン・ロメロ、鈴木大地、そして投手の涌井秀章が加入した。これがどういう結果をもたらすか。西武はMLBに移籍した秋山(WAR 5.6)の穴を埋めるのは容易ではない。さらにもともと課題だったブルペンからデュアンテ・ヒース、カイル・マーティンの2人が抜けた穴(合計WAR 1.4)の喪失も大きい。苦戦は免れないだろう。

ソフトバンクはコロナ禍の影響でジュリスベル・グラシアル、アルフレド・デスパイネの来日の目処が立たず、戦力ダウンは必至だ。NPB実績十分のバレンティンがパ・リーグにアジャストし、キューバ勢の穴を埋める活躍ができるだろうか。オリックスはMLBの大物アダム・ジョーンズを迎え入れた。大砲としてチームに貢献できるだろうか興味深い。


楽天はソフトバンク次第で優勝を狙える位置に(予想者:市川博久 @89yodan )


1位 ソフトバンク
2位 楽天
3位 西武
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 オリックス

ソフトバンクは、投手陣を中心に故障が目立つものの、層の厚みで相当程度カバーができると思われる。復帰の時期がどれくらいになるか、復帰できたとしてパフォーマンスを維持できるか不透明な部分はあるが、枚数が十分にあるため今季もリーグトップクラスの成績を維持できると考えられる。

野手では松田宣浩、内川聖一らのベテランが以前ほどに成績を残せなくなってきている。ただ大きな強みとはならないであろうが、リーグ平均程度の成績は残せるであろう。開幕の延期は、故障者が目立つソフトバンクにとっては良い影響が大きいであろうが、他方で野手陣の柱であるグラシアルとデスパイネがキューバから出国できる時期の目途が立たないといった不安要素もある。昨季の2人は合計で5を超えるWARをあげており、シーズン半ばまで復帰できないとなれば、その影響は大きい。

楽天は鈴木、ロメロ、涌井らを同一リーグから選手を補強したことで、戦力の上積みが期待できる。長年、野手は弱点となっていたが、昨季の浅村栄斗に引き続く補強で今季はリーグでも上位の野手陣となることが見込める。投手では美馬が抜けたものの、涌井の獲得である程度は穴が埋められると期待できる。ソフトバンク次第では優勝も狙える位置にある。

西武は秋山の流出による戦力の低下は大きいものの、森友哉、外崎修汰、源田壮亮、山川穂高ら20代で高い貢献を残した選手がいるため、依然として野手はリーグトップの貢献が期待できる。投手陣は、リーグワーストだった昨季に続き今季もリーグ上位の貢献は難しい。ただし、野手陣によって他球団を大きく上回ることが見込まれることから、今季も下位に沈むことはないであろう。

ロッテは鈴木の流出が大きいものの、美馬、福田秀平の獲得で大きな戦力ダウンは防いだ。福田についてはこれまでに250打席を超えて出場したことがなく、出場機会が増えた場合にも昨季と同等の成績を残せるか不安が残るが、野手陣に大きな弱点はなく、今季も優れた成績が残せると考えられる。投手陣では昨季100イニング以上に登板し一定の成績を残した涌井、マイク・ボルシンガーが退団している。この部分を上手く埋めることができれば、Aクラスも期待できる。

日本ハムは、大きな戦力の流出こそないものの、上積みもさほど大きくない。野手では弱点となっていた三塁手のポジションを補うためクリスチャン・ビヤヌエバを獲得した。ただこれにはいくらかの上積みは見込めるが、大きな活躍は期待しづらい。昨季は野手の貢献で他球団に差をつけられてしまったが、今季も状況を変えることは難しいであろう。投手は昨季リーグ平均をやや下回る貢献であったが、有原以外には飛び抜けた投手はいない。一方で投球イニングが100に満たないながらもそれなりに優秀な成績を残した投手は数多くいる。こうした自チームの投手を生かそうとした結果が、オープナーやショートスターターの積極活用につながったとすれば、今季も類似の手法で他球団との差を埋めようとしてくるであろう。

オリックスは昨季、野手の貢献で他球団に大きく差をつけられてしまったが、数少ない攻撃力のある打者であったロメロまで流出してしまい、今季も弱点の克服は難しい。投手では山岡泰輔、山本由伸という2本の柱を擁するほか、救援でも計算できる投手を複数抱えている。ただ、野手陣の穴はかなり大きく、既存の投手の貢献だけでこれを埋めることは難しい。新戦力の補強は新外国人に固まっており、どの程度活躍できるか読みづらいが、予想を上回る活躍ができたとしても、優勝までは難しい。




「過去3年分の成績+年齢」からWARを機械的に予測(予想者:八代久通 @saber_metmh )


<算出方法>

各選手について「過去3年分の成績+年齢」から2020年のWARを機械的に予測し、それを合計したチームWARから勝率を予測した。

この方式の特徴として、前年度にキャリアハイを記録した選手のWARは前年より低く、スランプに陥った選手のWARは高く予測されやすい。また、ベテラン選手が多いチームは低めに見積もられる。

 

ちなみに下記に示すチーム単位の予測WARについては120試合換算を行った。しかし本文中の個別選手のWARについては、143試合前提で計算されているので注意してほしい。

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パ・リーグの予測WARは楽天、ソフトバンクの上位2チームが39.5、39.4で一歩リード。3-6位までは拮抗している。優勝争い、Aクラス争い共に接戦が予想される。


<1位 楽天>

2020年の楽天は投手、野手ともにWARの上昇が予測され、ソフトバンクに匹敵する戦力が見込まれる。投手WAR上昇は主に則本昂大の稼働量増加、野手WAR上昇は鈴木の獲得によるものだ。現状は不透明だが、今季から先発再転向した松井裕樹がルーキーイヤーと同等以上の戦力となれば盤石である。近年で最も充実した戦力を抱えており、積極的に動いたフロントの成果が試されるシーズンである。


<2位 ソフトバンク>

昨季と同様にリーグ最上位の予測WARが算出されたが、投手・野手のWAR内訳は異なる。昨季は野手がウィークポイントとなっていたが、今季は野手がストロングポイントとなる見込みだ。昨季、故障により38試合出場に甘んじた柳田の復調が大きな要因となっているほか、上林誠知も大きな改善が予測されている。投手に関しては、昨季キャリアハイの千賀滉大が例年に近い予測となり、圧倒的なアドバンテージは減少している。投手・野手ともに強力な布陣が予想されるが、近年ソフトバンクの課題となっているコンディション管理次第で戦力が大きく低下するリスクがある。


<3位 日本ハム>

昨季ウィークポイントとなっていた野手WARの改善が予測され、Aクラスを争う戦力構成となっている。主力陣では中田翔、王柏融らに改善予測が見られ、清宮幸太郎もWAR上昇が期待される。投手WARの予測は2019年と大きく変わらず、リーグ標準クラスの戦力を保持している。投手・野手ともに戦力は整いつつあり、サプライズプレーヤーの出現次第で優勝を狙える位置につけている。


<4位 西武>

強力野手陣を原動力にリーグ2連覇を達成した西武だが、2020年は野手WARが大きく低下する予測となった。これはリーグ最高峰の選手である秋山が退団したほか、昨季MVPの森、森に匹敵する貢献を見せた外崎の貢献が去年より低く見積もられているためだ。それでもリーグ上位の野手陣という評価は変わらないが、昨季まで野手でカバーしていた投手陣を支えきれなくなる可能性が高い。投手力の改善が3連覇最大の課題である。


<5位 ロッテ>

2020年のロッテは西武と同様、野手WARの大幅な低下が予測されている。楽天へ移籍した鈴木大地のマイナス分だけでなく、昨季キャリアハイ569打席に立った荻野貴司の稼働量が落ちる予測が出ているためだ。裏を返せば健康にシーズンを過ごせるならば予測を上回る可能性は十分にある。


<6位 オリックス>

最下位予想となったがチーム戦力は改善される予測が出ており、上位チームとの差は縮まる見込みだ。投手WARの予測は2019年と同等だが、野手WARはT-岡田や若月健矢らのプラス予測が全体を押し上げている。野手の復調次第だが、Aクラスを狙うために必要な戦力は整っている。


昨季の得失点差、Base Runsの状況から順位を予想(予想者:山崎和音 @Kazuto_Yamazaki )


1位 ソフトバンク
2位 日本ハム
3位 西武
4位 楽天
5位 ロッテ
6位 オリックス

 

ソフトバンクは主力がさらに高齢化しているが、それを補うだけの層の厚さがある。日本ハムは昨季、得失点差や Base Runs では実際の勝敗を上回っていた。オリックスはローテーションの1-2番手と吉田正尚は計算できるが、それ以外があまりに小粒すぎる。新加入のジョーンズが期待通りの働きをしてもCS進出は厳しいだろう。




プロジェクション・システム"NPB版PECOTA"による予測(予想者:二階堂智志 @PennantSpirits )


今回の成績予測に際して、自前の簡易なプロジェクション・システムである NPB版PECOTA を応用する。これを使って昨季までNPBに所属していた選手の成績の成績を予測し、それらを合算してチームごとのWAR算出。その値をもとに順位予想を行った。なお、守備に関しては守備位置の違いやサンプルの問題で精巧な予測モデルを作成するのが難しいため、簡単な年齢曲線を作成し適用している。

またこの手法で扱いが難しいのが新規入団選手の扱いである。既存のプロジェクションでは予測が難しく、不確定な要素が多い。そのため今回は暫定的に該当選手のWARを0として計算した。この部分は改善の余地がある。

さらに今年の開幕時期のずれ込みと120試合制は予測に大幅な誤差を発生させるだろう。あくまで参考程度に考えてもらいたい。


1位 ソフトバンク
2位 日本ハム
3位 楽天
4位 ロッテ
5位 西武
6位 オリックス

昨季優勝チームの西武は、秋山のMLB移籍に加え、森・外崎の予測される成績が低下する点、中村剛也・栗山巧の主力両選手が高齢な点などから、見込まれる得点が大きく落ち込み、下位の予想となった。

だが、2019年のパ・リーグはセ・リーグ同様上位と下位でさほど大きな差がなかった。この予測結果でも1位~4位のゲーム差はたった3.5。やはり、新戦力の躍進などで順位は大きく変動すると考えられる。


加齢によるパフォーマンス低下リスクが優勝争いのポイント(予想者:大南淳 @ominami_j )


1位 ソフトバンク
2位 楽天
3位 西武
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 オリックス

ソフトバンクは3月の段階では2位と予想していたが、開幕延期を経て1位に変更を行った。延期により、柳田が完調で開幕を迎えられるほか、千賀もそれほど離脱のロスなくシーズンを過ごせる見込みが高まったからだ。巨大戦力を有するチームだが、いまだこの2選手に依存する部分は大きい。

3月の時点で優勝予想としていたのは今回2位とした楽天だ。ソフトバンクと比べると戦力の手堅さでは劣るが、辰己涼介、太田光など伸びしろを残した若手に出場機会が多く与えられそうだ。彼らの成長次第では優勝も十分狙える。また松井が加わった先発ローテーションは非常に層が厚く、強力だ。ただ同時に岸孝之、涌井らは年齢も重ねており、その成績低下リスクが顕在化するようなら話は変わってくる。ただ主力高齢化の問題はソフトバンクにも共通している。加齢によるパフォーマンスは優勝争いのポイントになりそうだ。

西武は秋山退団の穴はもちろん大きいが、即戦力を重視したドラフトや新外国人選手の獲得、現有戦力の成長などによりある程度はカバーできるのではないだろうか。投手や両翼など一部のポジションの弱点が大きい編成だっただけに、そのポジションに1人有力な選手が台頭すれば状況は大きく改善する。それが複数であるなら優勝争いも十分可能だ。野手については、秋山が抜けてなお、森、外崎、源田、山川のコアは極めて強力。昨季に比べ得失点差は小さくなるが、Aクラスには入ると見た。

4位のロッテはオフの積極的な補強が話題を呼んだ。しかし同時に、鈴木、涌井、ボルシンガー、酒居知史の4選手が退団。戦力へのダメージは補強のプラスを上回ると読んだ。また昨季キャリアハイの成績を残した荻野の成績低下も見込んでいる。

5位の日本ハムは長打力が改善されれば面白い。ただ現時点ではその見込みがそれほど高くなさそうだ。清宮やビヤヌエバが大きく成績を伸ばすなどがなければ上位進出は難しそうだ。オリックスは他球団と比べるとまだ戦力差が大きい。ジョーンズの加入に注目が集まるが、よりチームの浮沈に直結するのは捕手や三塁、中堅といった弱点のポジションに有力な選手が台頭するかどうかだ。若手有望株はかなり揃ってきており、将来的なポテンシャルは極めて高いチームに見える。もうしばらくの我慢だ。


セ・リーグ編は こちら から

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