野球のデータ分析を手がける株式会社DELTAでは、2021年の日本プロ野球での野手の守備による貢献をポジション別に評価し表彰する“DELTA FIELDING AWARDS 2021”を発表します。これはデータを用いて各ポジションで優れた守備を見せた選手――いうならば「データ視点の守備のベストナイン」を選出するものです。


“DELTA FIELDING AWARDS”について


“DELTA FIELDING AWARDS”は、米国のデータ分析会社Sports Info Solutions[1]が実施しているデータを用いた選手の守備評価表彰“THE FIELDING BIBLE AWARDS”[2]に倣ったものです。

“THE FIELDING BIBLE AWARDS”は2006年から行われており、米国ではデータ視点で守備を評価する流れが非常に強くなっています。MLBでは近年、ゴールドグラブ賞の選定にデータを考慮するという方針転換が行われました。データの視点で守備を評価することのプライオリティが高くなっていることは確かなようです。

DELTAでは、日本においてもこうしたデータ分析を通じた守備の評価を定着させるため、2016年よりこうした表彰を行っており、今年が6回目となります。今回は9人のアナリスト(DELTA社より3名と協力アナリスト6名)が参加し、2021年シーズンにおける野手の守備について、個々の手法で分析・評価・採点を行いました。

セイバーメトリクスの守備指標というと、UZR(Ultimate Zone Rating)が一般的にも知られるようになってきています。こうした指標がある以上、それぞれのアナリストがまた別に分析をやり直し、投票を行う必要はないのではないかと思われるかもしれません。しかし、UZRは守備による貢献を評価するベーシックな手法の1つに過ぎません。グラウンドでは数多くの出来事が発生しますが、それをどのように拾い上げて守備の評価に用いるか、その手法はいくらでもあります。“DELTA FIELDING AWARDS”では、より多角的な視点による分析を評価に反映させるため、このような手法をとっています。


評価の対象選手

 

各ポジションでシーズン500イニング以上を守った選手。

選出方式


9人のアナリストがそれぞれの評価に基づき、対象選手に1位=10ポイント、2位=9ポイント……10位=1ポイント、11位以下は0ポイントといった形で採点し、合計ポイントがポジション内で最も高かった選手を選出。



“DELTA FIELDING AWARDS 2021”受賞選手


捕手:大城卓三(読売)

捕手では読売所属の大城卓三選手がトップ評価を得ました。大城選手はアナリスト9名のうち7名が1位票を投じ、90点満点中87点を獲得しています。

捕手については、2018年よりDELTA取得の投球データを使ったフレーミング(捕手がより多くのストライクを奪うための捕球)もアナリストによっては評価対象としています[3]。大城選手はこのフレーミングで優れた数字を記録。さらに盗塁阻止やワンバウンド処理などほかの項目でも上位の成績を残していたようです。攻撃型捕手というイメージの強い大城選手ですが、データからは違った側面が見えてきます。

昨年、トップ評価を得た木下拓哉選手(中日)は78点で2位。そこで高評価を得ていたフレーミングについては今季も好成績を残していたようです。大城選手、木下選手のほかにも梅野隆太郎選手(阪神)、中村悠平選手(ヤクルト)と上位にはセ・リーグの捕手が集中。昨年に続き、捕手の守備力はセ・リーグ優位な状態が続いているようです。

捕手編の採点・分析はこちらから


一塁手:中村晃(ソフトバンク)

一塁手では中村晃選手がトップ評価を得ています。アナリスト9名のうち6名が中村選手に1位票を投じました。中村選手は2017年に左翼手部門でトップとなっているため、別ポジションでの受賞という珍しいケースとなっています。

ただ2位の高濱祐仁選手(日本ハム)も1位票が3票と高く評価されました。大城選手が抜きん出た得点を記録した捕手に比べると、トップ争いは接戦だったようです。

昨年一塁手部門トップとなったダヤン・ビシエド選手(中日)は7位に。ビシエド選手以外の外国人一塁手も下位に集中しました。もともと打撃を期待されての獲得であるため守備力が低く、またある程度年齢を重ねた選手が多いことがこうした現象を生んでいるのかもしれません。

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二塁手:外崎修汰(西武)

二塁は昨年に続き外崎修汰選手が2年連続のトップ評価となりました。故障により出場機会の少なかった今季ですが、それでも最高の守備力と評価されています。ただほぼ満票に近かった昨年に比べると、2位とは4ポイント差と接戦でした。

その2位には読売の吉川尚輝選手が入りました。合計ポイントでは2位ではあるものの、1位票を5人から獲得。最高の守備力をもった二塁手と評価するアナリストも過半数を占めています。1・2位票が集中した外崎選手と比べると、吉川選手については評価が少し割れたようです。

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三塁手:茂木栄五郎(楽天)

三塁は茂木栄五郎選手がトップ評価を得ました。1位票を6名から獲得。残りの3名もすべて2位票を投じるなど、どのアナリストも茂木選手の守備を高く評価していたようです。

その茂木選手と接戦を繰り広げたのが宗佑磨選手(オリックス)。今季守備力を高く評価され三井ゴールデン・グラブ賞を獲得した宗選手ですが、データ面から見ても、守備での貢献は高く評価されています。1位・2位票は茂木選手と宗選手で分けあうかたちとなりました。ちなみにこの2選手はともに遊撃からのコンバート勢。遊撃出身の選手が、いかに高い守備力をもっているかを見せつけるかたちとなっています。

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遊撃手:源田壮亮(西武)

遊撃はルーキーイヤーから4年連続受賞中の源田壮亮選手が今季もトップ評価となりました。遊撃手は最も守備力の高い選手が集まるポジションですが、今回唯一、全アナリスト1位の90点満点を獲得しています。これで源田選手は5年のうち4年で満点受賞。2010年代後半以降、遊撃守備においては源田選手の時代が続いています。アナリストからは「球史に残るレベルの守備力」、「もう殿堂入りでよいのではないか」というコメントも聞かれました。

2位には、近年本企画での評価が振るっていなかった今宮健太選手(ソフトバンク)がランクイン。3位の藤岡裕大選手(ロッテ)もこれまでのシーズンでは下位に沈むことが多かった選手です。そのほかには京田陽太選手(中日)、坂本勇人選手(読売)ら常連組が上位を占めています。今季から遊撃に定着した中野拓夢選手(阪神)、紅林弘太郎選手(オリックス)、小園海斗選手(広島)らは上位に食い込むことはできていません。

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左翼手:荻野貴司(ロッテ)

左翼手部門は今季からこのポジションでの出場機会を大きく増加させた荻野貴司選手が選出されました。荻野選手は1位票を4票、2位票を4票集めています。2位には西川龍馬選手(広島)がランクイン。西川龍選手も1位票を2票獲得しました。

3・4位の青木選手(ヤクルト)、西川遥輝選手(日本ハム)含め、上位はいずれも中堅からコンバートされた選手。三塁手部門では、遊撃からコンバートされた茂木選手、宗選手が上位を独占したように、外野では中堅手が他ポジションに移り存在感を発揮しています。

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中堅手:辰己涼介(楽天)

中堅手では辰己涼介選手がトップとなりました。アナリスト9名のうち6名が辰己選手に1位票を投じています。ただ上位はかなりの接戦で、2位・淺間大基選手(日本ハム)との差はわずか3ポイント。辰己選手には1位票が多く入ったものの、9位票も入るなど評価が大きく割れました。昨年度受賞の近本光司選手(阪神)は3位という結果に終わっています。

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右翼手:岡島豪郎(楽天)

右翼手では今季復調を遂げた岡島豪郎選手がトップ評価を得ました。岡島選手は1位票を5票獲得し、合計83点。2位に4ポイントの差をつけました。2位はMLB球団への移籍に注目が集まる鈴木誠也選手(広島)。過去には2016年に右翼手トップ評価を得ていますが、今年も高い守備力を維持していたようです。

3位、4位には愛斗選手(西武)、松原聖弥選手(読売)がランクイン。注目の新人・佐藤輝明選手(阪神)は10選手中8位でした。アナリストからは、右翼よりも三塁での起用を推す声も上がっています。

右翼手編の採点・分析はこちらから


なお、選出に参加したアナリストが、どのような手法で評価を行ったかについては、「参考分析」として、後日公開いたします。

[1]https://www.sportsinfosolutions.com/
[2]http://www.fieldingbible.com/the-winners.asp
[3]DELTA取得の投球データは目視により入力されたものであり、機械的に取得したデータと比べた際には精度の部分で課題を抱えています。そんな中でも、データ入力におけるルールの厳格化、分析時のデータの扱いにおいて注意を払うことを徹底したうえで、フレーミング評価を解禁しています。


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