ピタゴラス勝率
ピタゴラス勝率は、チームの得点と失点から見込まれる勝率を計算する式である。勝利と敗北の比は得点と失点の比の二乗に比例するという統計的な法則に基づき、ビル・ジェイムズが考案した。式の形が「ピタゴラスの定理」を思い起こさせるところからその名がついている。
計算式
ピタゴラス勝率=得点の二乗÷(得点の二乗+失点の二乗)
よく見られるピタゴラス勝率の使い方は、実際のチームの勝率とピタゴラス勝率を比べて、実際の勝率が不自然に高いとそれは偶然の要素が働いている可能性が高いから今後は勝率が下がる(逆に実際の勝率の方が低い場合は上がる)と予測する、というものである。
試合ごとの得点と失点のかみ合わせはチームの能力というよりは偶然的な巡り合わせによる部分が大きいためこのような分析は一定程度有効であるが、ピタゴラス勝率は単に得点・失点の結果から統計的に妥当な勝率を計算するものでありそのチームの「真の能力」を示すものではないため、チームの将来を予測する手法としては限界があることに留意が必要である。
また、
ピタゴラス勝率をチームの戦力と考え、実際の勝率との差は監督の能力を表すとする分析も見られるが、このような使用法は適切でないとされている。ピタゴラス勝率自体の高低にも監督の影響は及んでいるはずであるし、監督が同じでもピタゴラス勝率と実際の勝率との乖離には継続性が見られないからである。
セイバーメトリクスの理論的な発展の歴史からみるとむしろ重要なのは、ピタゴラス勝率によって得点と勝利がどのような関係にあるかが明らかにされたことにある。wRAAやUZRなどの選手評価指標は得点を単位としていることが多いが、ピタゴラス勝率の理論をあてはめることによってそれらの得点が勝利の意味でどれだけ価値があるかを評価することができるようになり、戦力の補強とチームの勝率の関係などを把握しやすくなる。このような知見は選手の総合評価であるWARの計算にも活かされている(WARはwRAAやUZRを基礎としつつもそれらを最終的には勝利の単位に変換して求められる)。
なお、ピタゴラス勝率の計算式の改良版として指数を2ではなく1.83にしたバージョンや、得点環境によって指数が変動するようにしたPythagenPat式などが存在する。
Pythagenpatの計算式
PythagenPat=得点^X÷(得点^X+失点^X), X={(得点+失点)÷試合}^0.287