LWTS(Linear Weights)
概要
安打や四球など試合で起こる事象に一定の加重を与えて評価を行う方式のこと。主に、得点期待値から導き出した得点価値により選手のパフォーマンスを得点に換算して評価する手法を指して使われる。
LWTSによって選手の打撃・走塁・守備・投球を総合的に評価する手法はジョージ・リンゼイ、ピート・パーマーらによって確立された。
背景
LWTSは原則として得点期待値及びそこから派生する得点価値を基礎としている。選手の成績に得点価値を加重し、働きを得点に換算することで評価を行うのがリンゼイ=パーマーによるLWTSである。
仮にシングルヒットの価値が+0.45だとすると、シングルヒットを100本打った打者のその部分についての価値は45点である。このような計算を二塁打、三塁打、本塁打……について行い全てを合計すればLWTSの評価が得られる。
よく使われる指標のwOBAもFIPもUZRもLWTSの原理に立脚している。wOBAは出塁の内容を得点価値に応じて加重し出塁率の形にしたものであるし、FIPの加重も得点価値に基づいている。UZRに関しても、安打を防ぐことによる価値の部分は得点価値によって計算される。
結果として、それらの指標を土台として成り立つ総合評価WARにおいても、LWTSが評価方式としてその基礎を成しているといえる。
ただし得点期待値を根拠としていなくても、あるいは得点を単位としていなくても、事象に一定の加重を与えて評価する方式は広くLWTS(線形加重)に含まれる。例えば、OPSは得点期待値から導き出された加重を与えるものではないが事象に対して一定の重みを与える指標であり、LWTSに含まれる。
この文脈でLWTSと対比されるのはRCなどのダイナミックな評価方式である。すなわち、ビル・ジェイムズが開発したRCは「出塁×進塁」という式の骨格をしており、出塁率が高いほど出塁・進塁の価値が上がるという事象間の相互作用がある。RCではある事象にどれだけの価値があるかはそれが発生する環境(すなわち他の事象の数)に依存しており、「単打は0.45点」といったように各事象に一定の加重が与えられるわけではない。
理論的には、RCの形式の方が野球の理屈に適っている。野球の試合においては出塁が集中すればするほど塁上が混雑して走者が押し出されやすくなり、出塁や進塁ひとつひとつの価値が高まるからである。LWTSは、野球のこのようなダイナミズムを反映しない。
もっとも、実際にRCとLWTSによる計算結果が食い違うのは現実にあり得ないほど出塁率が高い(または低い)環境においてであり、現実的にあり得る成績の範囲で評価を行う限りRCとLWTSの差は無視できるほど小さい場合がほとんどである。このため現在では計算方法がより簡便で応用がしやすいLWTSが利用される機会が圧倒的に多くなっている。
注意点
LWTSによる評価は基本的に環境中立的である。つまり、ヒットを打ったのが初回の無死走者なしであっても、9回裏同点の場面であっても、等しい重みで評価される。これにより、たまたま重要な場面が多く回ってきた打者とそうでない打者との間の不公平が生じないようになっている。局面に対して与えた影響力を測定したい場合にはRE24やWPAなど用途の異なる別の指標が用いられる。