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1.02 Fielding Awards 2016 [特集]優秀守備者について考察

1.02では本日より、野手の守備における貢献をポジション別に評価し表彰する“1.02 FIELDING AWARDS 2016”の発表を行います。

このアワードは、米国の分析会社であるBaseball Info Solutions(BIS)社が実施している“THE FIELDING BIBLE AWARDS”に倣った表彰です。昨シーズンNPBの各ポジションで500イニング以上を守った選手を対象に、1.02を運営する株式会社DELTAで活動する6人のアナリストが、それぞれの分析手法に基づいて守備での貢献を評価し、順位をつけ、良い順位を最も多く獲得した選手を最優秀守備者として選出するものです。

各ポジションに対し、アナリストがどのような分析を行ったか、その全てについての解説は掲載しませんが、各ポジションの担当者を1名決めて、どのような考えで評価を行ったか、その過程を解説していきます。

DELTAでは、2012年より守備指標UZR(Ultimate Zone Rating)の算出、公開を行ってきました。その数値をより多くの方々に知っていただき、客観的な守備貢献の評価の定着を目指すことがアワード設立の第一の目的ですが、アナリストによる分析の手順や考え方の紹介、より良い評価手法に関する議論のきっかけをつくることも目指しています。

今回は評価に入る前のイントロダクションとして、“1.02 FIELDING AWARDS”が参考にしている“THE FIELDING BIBLE AWARDS”について、またDELTAのUZRという数字に対するスタンスについて、Q&A方式でまとめました。アワードを楽しんでいただく前に、ご一読をおすすめします。

Q.米国の“THE FIELDING BIBLE AWARDS”は、何名くらいのアナリストが採点しているのか。どの程度の影響力のあるものなのか。

A.毎年10人前後のアナリストが採点しています。セイバーメトリクスの父、ビル・ジェームズや、分析会社STATS社で社長を務め、退任後はBIS社を立ち上げ、より先鋭的な分析に挑むジョン・デュワン、ジェームズの助手を務めESPNの記者としても活躍したロブ・ネイヤー、wOBA(weighted On-Base Average)など重要指標を数多くつくったことで知られるトム・タンゴ(タンゴタイガー)など、多くの有名なアナリストが評価に参加しています。

2006年の創設以降、客観的な守備貢献の評価を求める人々からの支持は年々高まり、多くのメディアから取り上げられるようにもなっています。ついには監督やコーチの投票で決定していたゴールドグラブ賞の選出においても、一部データを考慮するというMLB側の方針転換を導くにまで至っています。

Q.UZRのような明確な数字が出ているのに、アナリストごとに評価に幅が出るのはなぜか。それではUZRの意味がないのでは。

A.UZRは、守備での貢献を評価する比較的ベーシックな手法の1つに過ぎません。試合において、グラウンドでは数多くの出来事が発生しますが、それをどのように拾い上げて守備の評価に用いるか、その方法は無限にあります。失策だけを拾い上げれば守備率のような数字が生まれますし、守備範囲や失策、併殺や肩の強さなどを拾い上げれば、現在DELTA が算出しているUZRになるといった具合です。

米国でUZRと並んで用いられることの多いDRS(Defensive Runs Saved)は、打球の種別、飛んだ位置や強さに関する情報を用いる点はUZRと同じですが、ゾーンの区分の仕方を変えています。また、「ホームランになっていたであろう打球をキャッチした」「クッションボールの処理にもたついた」など明らかにチームの守備にプラスとなったプレー、マイナスとなったプレーについて数多く(プラス評価は27種類、マイナス評価は54種類)評価に加えているところも違います。

ただ、細かいプレーを拾い上げていったほうが確かな評価につながるかというと、そうとは言い切れないのが難しいところです。例えばホームランになるような打球をキャッチするチャンスはそもそも少なく、全ての選手に等しく訪れるものではありません。その成功を評価として加算することは、精密な評価につながる可能性もありますが、チャンスに多く恵まれた選手が、実力以上に数字を高めてしまう危険性も出てきます。

何を拾い上げて、何を無視するのが守備の評価における正解なのか。それを明らかにするためには、まだ試行錯誤が必要な段階です。その際の出発点を「飛んできた打球をどれだけ多くアウトにしたか」という考え方とするのが、現段階では妥当だと私たちは考えます。“THE FIELDING BIBLE AWARDS”においても採点者の考え方にはかなり幅があります。守備評価はまだ柔らかい、発展の余地を残すものだといえます。

Q.今回アナリストが発案した評価手法が、DELTAによる守備評価、UZRの算出手法を変える可能性もあるのか。

A.もちろんあります。2012年より公開してきたDELTAのUZRも、米国での研究成果や内部での議論、体制の整備にともなう取得データの増加を受けて、バージョンアップを図ってきました。大きなものだと、バットにボールが当たり打球が発生した瞬間から、グラウンドに落ちる(もしくはグラブに収まる)までの滞空時間=ハングタイムを取得するようになり、フライ、フライナー、ライナーといった打球の判別に客観性がともなったことなどがあります。

Q.UZRは守備の能力を示す数字と考えてよいのか。

A.「守備の能力」とは何を示すのかの定義が曖昧なので、そこは注意が必要です。UZRのような指標では、打球をアウトにできたか、できなかったかという結果を評価の対象にしています。アウトを奪うことは勝利を引き寄せるためのインパクトを生むのは間違いなく、そこには当然価値があります。

ただ、それが守備の能力とイコールではないという考え方も存在するでしょう。打者の打球方向を読んで守備位置を決めるスキルや、肩の強さ、華麗なグラブさばきといった要素が能力だと考えるのであれば、UZRは間接的にしかそれを評価しません。

また、各ポジションの平均的な貢献をゼロに置いた相対的な数字なので、各ポジションにどんな選手が回ってくるかが大きく影響することもあります。同じくらいのペースでアウトを奪う働きを見せても、シーズンによって数字が大きく変わることも起こり得ます。そうした点からも「UZRは直接的に守備の能力を示す」という捉え方に走ると、実態を見誤る恐れがあります。あくまでアウトを奪うことに関する働きを集計したもので、その性質を理解した上でどう考え、評価するかが重要だと考えてください。

では、アナリストによる採点と解説をお楽しみください。

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1.02 Fielding Awards 2016 [特集]守備優秀者についての考察