守備位置補正
守備位置補正(Positional Adjustment)とは、守備指標を異なる守備位置間で比較するために用いられる補正である。
UZRなど多くの守備指標は、遊撃手なら遊撃手の中での比較というように、同じ守備位置の中での優劣を表すものである。すなわち遊撃手のUZRで+10というのは同じ守備機会を「平均的な遊撃手」が守る場合に比べて失点を10防いだことを意味する。
これをWARなど異なる守備位置の比較を含む総合評価とするためには補正が必要となる。例えば遊撃手としてUZR±0でも、遊撃手は一般的に機敏で守備力の高い野手が守っているため、全ての守備位置を含めて考えた「平均的な野手」が守る場合と比較すれば失点を防いでいると評価できる。この部分を調整するのが守備位置補正の機能であり、具体的な計算としては各守備位置での出場量に対して一定の値を加減算することとなる。
守備位置補正の値を算出する方法としては複数の守備位置を守った選手のデータから各守備位置での守備指標(UZR等)の差を計測する方法と、打撃指標の守備位置ごとの差をとり間接的に守備位置ごとの負担を計測する方法の2つがある。
MLBでは両方の算出が用いられている。守備位置補正の趣旨を踏まえると本来は守備指標を用いた前者の導出が望ましいと考えられるが、捕手など他の守備位置と互換性が乏しくうまくデータをとることができない部分もあり、守備指標から補正値を出す際にも実際には打撃指標による結果が併用されている。
DELTAでは、2019年12月に出版された『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート3』掲載の蛭川皓平氏による「守備位置補正の検討」で算出された値をもとにWARを集計している。このアップデートは2020年開幕前に行われ、過去データについてもすべて適用している。手法としては、打撃指標による算出と守備指標による算出を併用し、それぞれの長所を生かすというものだ。例えば遊撃手の補正値は+10.3であるため、1年間の目安である1200イニングに出場した遊撃手には+10.3点の補正が与えられる。
理論的には守備位置ごとの能力の配分などはリーグの状況とともに変化するものであり、補正値に関して固定的に定まった値は存在しない。今後もリーグの状況や得られたデータを考慮し随時アップデートしていく必要があると考えられる。
守備位置 |
補正値 |
捕手 |
+18.1 |
一塁手 |
-14.1 |
二塁手 |
+3.4 |
三塁手 |
-4.8 |
遊撃手 |
+10.3 |
左翼手 |
-12.0 |
中堅手 |
+4.2 |
右翼手 |
-5.0 |
指名打者 |
-15.1 |