tRA(true Runs Average)
概要
守備の関与しない与四球・奪三振・被本塁打という3つの項目(FIP)に加え、どのような種類の打球を打たれたかまで投手の責任範囲として、守備から独立した失点率を推定・評価する指標。
投手を守備から独立して評価するという点についてはFIPと同一ながら、打球の種類にまで踏み込んで、より詳細に投手の失点阻止パフォーマンスを評価するために用いられる。
計算式
tRA={(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)÷(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}+定数
※定数=リーグ全体の[失点率-{(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)÷(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}]
背景
tRAはFIPに加えて投手が打たせた打球をいくつかの種類に分類し、打球の最終的な結果にかかわらず投手がある打球(例えばライナー)を打たせた時点で「ライナーが一般的に生み出す失点」を投手に与えるという方式の評価指標である。この方式であれば投手の評価が味方の守備力に依存することはなく、それでいて打球についての責任をある程度投手の評価に反映させることができる。
tRA の算出方法の大枠としては27 アウトあたりの失点を表す失点率を元に失点とアウトをそれぞれ「守備から独立した失点」及び「守備から独立したアウト」の数字へと変換するものである。
失点率=27×失点÷アウト
tRA=27×守備から独立した失点÷守備から独立したアウト
重要なのは守備から独立した失点と守備から独立したアウトを求める方法である。これに関しては単純に、tRAが対象とする各種の打席結果(事象)について、平均的な失点数とアウト数をデータから計算することによって求める。
打席結果ごとの失点期待値・アウト期待値
打席結果(事象) |
失点期待値 |
アウト期待値 |
本塁打 |
1.401 |
0.00 |
四球 |
0.297 |
0.00 |
死球 |
0.327 |
0.00 |
三振 |
-0.108 |
1.00 |
ゴロ |
0.036 |
0.74 |
内野フライ |
-0.124 |
0.99 |
外野フライ |
0.132 |
0.67 |
ライナー |
0.289 |
0.30 |
例えば、打球としての「外野フライ」についての平均的な失点数とアウト数を求めるならば、ヒットかアウトかにかかわらず、発生した「外野に飛んだフライ(本塁打を除く)」をすべて集め、外野フライが発生する前後での得点期待値の変化と外野フライによるアウトの数をみていくと、外野フライが平均的にどれだけの失点とアウトを生むかがわかる。
仮に外野フライが平均的に失点を0.132点増加させるのであれば、外野フライ1つの発生につき上述の式の「守備から独立した失点」の部分に0.132が加算される。また外野フライ全体の67%がアウトになっているなら外野フライひとつにつき0.67個のアウトが見込まれるため、「守備から独立したアウト」の部分に0.67が加算される。
tRAでは打球はゴロ・ライナー・内野フライ・外野フライ(本塁打を除く)の4種類に区分され、これに本塁打・四球・死球・三振の4つを加えた8種類の事象について失点の期待値とアウトの期待値が計算されることとなる。
投手ごとに四球・死球・三振・本塁打・ゴロ……の数にそれぞれ上記の失点期待値を掛け合わせ、それらを合計すれば「守備から独立した失点」が導かれる。同様に事象の数とアウト期待値を掛け合わせて合計すれば「守備から独立したアウト」が求められる。失点をアウトで割り27倍すれば9イニングス当たりの守備から独立した失点率すなわちtRAが算出される。
FIPが打席の結果を{本塁打・四死球・三振・その他の打球}という分類で捉えており打球の部分には画一的な評価を割り当てているのに対して、tRAは打球を{ゴロ・ライナー・内野フライ・外野フライ}として細分している。守備に影響されないように投手を評価するという基本的なアイデアは引き継ぎながらも、よりきめの細かい計算内容となっている。このためtRAはFIPの「自然な拡張版」であると言われる。
シーズンのtRAランキングはこちらから