Introduction 06. 「守備の評価(Ultimate Zone Rating)」

平均的野手との違いを、打球のデータを揃えることにより比較

従来、守備の評価は「一歩目の反応が良い」「グラブ捌きがなめらか」「捕ってから投げるまでが速い」「肩が強い」といった表現で語られることがほとんどだった。しかし、これらは主観的・感覚的であるのに加えて、そもそも失点を防ぐという守備の目的から言えば手段に過ぎず成果を評価したものではないという問題がある。

セイバーメトリクスでは、打撃を評価するときにヒットやホームランという成果を数えて評価するように、守備者がどれだけ多くアウトを獲得したかという客観的に確認できる成果によって守備を評価する。打球を多くアウトにすればその分だけ相手の出塁・進塁を防ぐことになり、それが失点を減らし、ひいてはチームの勝利の見込みを高める。 ([特集]優秀守備者について考察)

このような考え方に基づいて獲得したアウトを数えていき、それを得点(防いだ失点)の形で評価する指標がUZR(Ultimate Zone Rating)だ。

ただし、単に奪ったアウトを数えるだけでは、適切な守備の評価にはなりにくい。例えば遊撃手の比較をするときに、ある選手がアウトを多く獲得したとして、それはその選手の守備が優れていたわけではなく単に遊撃手周辺に打球が飛んでくる機会が多かっただけかもしれないからだ。

つまり打撃の評価で打席数を揃えて比較するように、守備についても機会を揃えて比較を行う必要がある。そのためにUZRの計算では、打球のひとつひとつについてグラウンド上のどこのゾーンに飛んだどのような打球かを記録する作業が行われる(ゴロかフライかライナーか、あるいは強い打球か弱い打球かなど)。これに基づいて、打球の類型ごとに平均的にどれだけアウトの見込みがあるかが計算され、守備者はそのような「平均的な見込み」との対比で評価される。

打球が飛んでくる機会が少なかったためにアウトが少ない守備者は、そもそもアウトを獲得できる見込みがないからそれによってマイナス評価を受けることはない。逆に打球をたくさん処理したとしても、たまたま簡単な打球が多く飛んできただけで、他の守備者でも同じようにアウトが獲得できるものであれば特段のプラス評価とはならない。

例えば三遊間に飛んだ打球が、平均的に60%遊撃手によってアウトにされる打球であれば、これをアウトにした場合にはアウト獲得数1から見込み数である0.6を引いた0.4だけ、平均的な守備者に比べて上積みしたアウト数として評価される。逆にアウトにできなければ、期待されたアウト獲得数である0.6の分だけマイナス評価を受ける。こういった打球の結果に対する評価を集積して得点価値に換算したものがUZRで、数字の意味としては「同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べてどれだけチームの失点を防いだか」となる。

周辺の守備者との影響を調整する都合上実際の計算ではもう少しひねりが加わっているが、基本的には上記のようにして算出されるのがUZRだと考えていい。これに加えて内野手であれば併殺の評価、外野手であれば送球による刺殺や走者の進塁を抑止した評価などが組み入れられる。

UZRを扱う際の注意点としては、あくまで同じ守備位置の中での比較であることがまず挙げられる。つまり右翼手の+5と遊撃手の-10を比べて前者のほうが優れた野手だということはいえない。また、UZRは打者の評価でいうwRAAのように質と量の両方を反映した指標であり、同じ優秀さなら出場の量が多いほうが数字が大きくなる。機会の量を揃えて質を比較するためには守備イニングで割ったUZR/1000を見るなどの工夫が必要になる。

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