03. 「価値の尺度と得点期待値」
野球の分析において有用な単位は得点だ。最終的な目的は勝利だが、勝利をするためには得点を増やして失点を減らすことが必要であり、戦術やプレーの価値は得点(失点)で表現するのがわかりやすく、理にかなっている。
グラウンド上のプレーにはホームランや守備のファインプレーや巧みな盗塁などさまざまなものがある。それらのプレーには技術的に特に高度なものや、試合の展開上印象に強く残るものなど、多様な特色がある。もちろんそれはそれとして大切だが、勝利への影響を分析するという観点からは、それらが得点という尺度で測ったときにどれだけの価値があるのかが重要といえる。
セイバーメトリクスでは、得点期待値を使ってプレーの得点価値を計測する。得点期待値というのは「無死一塁」や「一死二塁」などイニングの中の局面ごとに、そこから平均的にどれだけの得点が見込めるかを統計的に算出したものだ。あるプレーの前後で得点の期待値が0.500だったものが0.800に上がったとすれば、そのプレーには0.300点の価値があるということになる。
この原理を利用して四球が、単打が、二塁打が……と各種の事象が得点で何点の価値があるのかを算出し、打者が残した打撃成績にその価値を加重すれば、打者の成績を得点への貢献という単位で評価することができる。このように「ある選手の働きを抜き出して得点という尺度で計測する」というのがセイバーメトリクスによる貢献度評価の基礎だ。
現在使われている評価指標は多種多様だが、基本となるいくつかのものをおさえておけばそれとの関連で理解をしていくことができる。以下では打者・投手・野手(守備)それぞれの評価で基本となるwOBA・FIP・UZRの3つ、そして総合評価のWARを紹介する。いずれも得点期待値の手法を土台としている。