wOBA(Weighted On Base Average)


【概要】

打者が打席あたりにどれだけチームの得点増に貢献しているかを評価する指標。総合的な打撃力を表す。四球・単打・二塁打・三塁打・本塁打等の各項目について統計的な研究から妥当と思われる得点価値の加重を与え、打席あたりで平均することによって算出される。数字のスケールは出塁率に合わせられており.330程度が平均的な水準となる。各項目への重み付けがOPSよりも適切であり、wRAAwRCという形で得点換算することが容易である点が特徴である。現在最もよく利用される打撃指標のひとつとなっている。



【計算式】

wOBA(NPB版)={0.692×(四球−故意四球)+0.73×死球+0.966×失策出塁+0.865×単打+1.334×二塁打+1.725×三塁打+2.065×本塁打}÷(打数+四球−故意四球+死球+犠飛)


※正確には各イベントの係数はシーズンごとに異なる



【背景】

wOBAはトム・タンゴ、ミッチェル・リクトマン、アンドリュー・ドルフィンという三名のセイバーメトリシャンの共著である『The Book: Playing the Percentages in Baseball』という書籍で発表された。



同書は様々な野球のセオリーを統計学の見地から分析する内容であり、分析における重要なツールとしてwOBAが用いられている。トム・タンゴは分析の便宜上、四球・単打・二塁打・三塁打・本塁打などの各事象に得点価値に即した加重を与えつつ形としては出塁率のように扱える指標が必要であったとしてwOBAを開発した。


wOBAの内容は、端的に言えば、LWTSを打席あたりのレートスタッツ(量ではなく率の形で表される指標)にしたものである。LWTS自体はアウトにマイナスの係数がかかるなど単に打席数で割っても出塁率と同じような形にはならない。そこで、アウトのマイナスを除外した上で値の大きさを出塁率に揃えるような計算上の調整が行われる。


具体的な式の導出は下記の通りである。前提として、通常のLWTSの考え方に則って事象の得点価値を算出し、成績を評価する指標を考える(説明においてはTHE BOOKによるMLBの係数を用いる)。


LWTS=0.32×(四球-故意四球)+0.35×死球+0.47×単打+0.78×二塁打+1.07×三塁打+1.40×本塁打-0.30×アウト


この時点では「同じ打席数をリーグの平均的な打者が打つ場合に比べてどれだけ得点を増やしたか」を表す数字となる。後述のwRAAと同じ意味であり打者の評価としてはこれだけで成立するが、出塁率と同じような形にするために式を変形させていく。


まず出塁率はアウトをゼロとしてカウントしているため、それに合わせてLWTSの係数をアウトをゼロとする数字に変える。例として単打であれば0.47だけ得点を増やし、アウトになる場合を基準とすると0.30点のマイナスを防いでいるため差し引き0.77点の価値があると考える。このような考え方で全ての係数からアウトの得点価値を減じることでアウトを計算式から除外する。そして打席数で割ることによって「率」の指標にする。



wOBA(wOBAscale調整前)={(0.32+0.30)×(四球-故意四球)+(0.35+0.30)×死球+(0.47+0.30)×単打+(0.78+0.30)×二塁打+(1.07+0.30)×三塁打+(1.40+0.30)×本塁打+(-0.30+0.30)×アウト}÷打席  =(0.62×(四球-故意四球)+0.65×死球+0.77×単打+1.08×二塁打+1.37×三塁打+1.70×本塁打)÷打席



さらに、この係数の元となった1999年から2002年までのMLBでその数字を計算すると平均値は.300になり、出塁率の平均値より低くなる。そこで、平均値を出塁率に合わせるために全体を1.15倍する。そうすると最終的なwOBAの式が得られる。この1.15にあたる「素のwOBAと出塁率の比率」をwOBAscaleという。



wOBA(MLB版) = (0.72×(四球-故意四球)+0.75×死球+0.90×単打+0.92×失策出塁+1.24×二塁打+1.56×三塁打+1.95×本塁打)÷打席



式の導出は以上である。アウトをゼロにしたりwOBAscaleを乗じたりする過程は分析的な意味はなく、単に計算結果の見た目を変えるだけの影響しかない。なお係数とwOBAscaleは対象とする年度によって異なるものであり、当サイトではNPBのデータに基づいた数値でwOBAを算出している。


なお、細かい係数の違いはそれほど結果に影響を与えないことからトム・タンゴは便宜的な計算式としてwOBAのスタンダード・バージョンも作成している。スタンダード・バージョンは打席の結果だけに注目するベーシック・バージョンと盗塁も考慮するスピード・バージョンのふたつに分かれる。



wOBA(ベーシック)=(0.7×(四球-故意四球+死球)+0.9×(単打+失策出塁)+1.3×(二塁打+三塁打)+2.0×本塁打)÷(打席-故意四球-犠打)



wOBA(スピード)=(0.7×(四球-故意四球+死球)+0.9×(単打+失策出塁)+1.25×二塁打+1.60×三塁打+2.0×本塁打+0.25×盗塁-0.5×盗塁刺)÷(打席-故意四球-犠打)



手元のデータに失策出塁がない場合には単にそれを無視し、あるいは四球と故意四球が区別されていない場合にはその区別を無視すればいいとされている。


トム・タンゴは一般的な野球の原理や戦術の有効性を検証するツールとしてwOBAを開発したが、現在ではそのわかりやすさから、OPSのように個々の打者の打撃を評価する指標としても用いられるようになっている。


打撃指標としてのwOBAの利点は、得点期待値に基づいた加重であるためOPSなどの簡易的な指標に比べて打者の得点への影響を適切に評価できること、それに伴い「同じ打席数をリーグの平均的な打者が打つ場合に比べてどれだけ得点を増やしたか(wRAAという指標)」という形の数字に変換したり、「打者が創出した総得点(wRCという指標)」という形の数字に変換したりすることが容易で応用範囲が広いことがある。


米国の著名なデータサイトであるFanGraphsBaseball-Referenceにおいては、選手の総合評価指標であるWARを計算する過程において打撃の評価はwOBAを用いている。



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