得点期待値/得点価値


【概要】

特定のアウト・走者状況から、そのイニングが終了するまでに平均してどれだけの得点が見込まれるかを統計的に数値化したもの。


野球における攻撃の状況は、アウトに関しては0・1・2の3種類があり、走者状況に関しては無走者・一塁・二塁・三塁・一二塁・一三塁・二三塁・満塁の8種類がある。両者の組み合わせで、可能な状況の数は合計24種類となる。それら全てについて得点期待値を算出してまとめたものは一般的に得点期待値表と呼ばれる。


例として、2013~2015年のNPBの得点期待値表は下記のようになる。


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試合における状況の変化を得点期待値表にあてはめることによって特定の戦術やプレーによりどれだけ得点の見込みが上がったか(あるいは下がったか)を知ることができる。これは戦術や選手の活躍を得点という単位に換算して評価することを可能にし、分析に有用な物差しを提供する。このため得点期待値はセイバーメトリクスの基本概念あるいは分析道具として広く利用されている。



【背景】

ある状況の得点期待値が0.500であるとは、その状況から0点に終わる場合もあれば1点や2点とれる場合もあるが、それらを平均すれば0.5点であるということである。平均値を算出することによって、各状況がどれだけ得点の見込みを持っているのかを知ることができる。


得点期待値の存在意義は、それが野球の分析に有用な尺度を提供することにある。例えばヒットが得点の見込みを高めること自体は統計を使わずとも明らかであるが、二塁打と三塁打の間に具体的にどれだけの価値の差があるかを直観的に説明することは難しい。しかしそれぞれの事象がどれだけ得点期待値を高めるかを集計すれば、三塁打が二塁打に対して平均的にどれだけ多くの得点をもたらすかを知ることができる。つまり、様々なプレーの(得点の見込みの増加という意味での)価値を各人の印象や直観によらず客観的・定量的に表すことができる。


例えばイニング開始時の得点期待値が.440であり、打者がヒットを打って出塁することにより得点期待値が無死一塁の.807に変化したとすると、そのヒットには.367の価値があることになる。逆に凡退して一死無走者の.233に下がったとすればプレーの価値は-.207である。プレーの価値は平均的な得点の見込みである得点期待値の変化によって測定されるため、マイナスの価値という結果も生じる点に注意が必要である。


得点期待値を適用して価値を評価することができる対象は極めて広く、盗塁・バントなどの戦術にしろ安打・四球などの打席の結果にしろ、その前後で走者・アウト状況がどう変化するかを把握できればどんな事象でも得点の価値で表すことができる。得点期待値を活用して分析した結果、盗塁については成功の利得よりも失敗の損失が大きく成功率を考えると活用する意義に乏しいこと、バントに関してもむしろ得点期待値を減少させる局面が多いと考えらえることがわかり、これは「盗塁・バントは従来言われてきたほど有効な戦術ではない」というセイバーメトリクスによる基本的な結論を支えている。


また、得点は野球の世界におけるお金に相当すると言われるように、得点期待値が有効なのは単に客観的・定量的だというだけではなく得点という単位が野球の試合にとって決定的に意味のあるものだからである。自軍の得点が相手の得点を上回れば勝利になるという野球のルールに即して考える場合、得点を評価の単位として分析を行うことは合理的といえる(もっとも、これをさらに進めて勝利の見込み自体を単位として評価を行うことも考えられるが、考慮すべき要素が多くなるため計測が難しくなる)。


単打一本が平均的にどれだけ得点期待値を増加させるか、二塁打一本がどれだけ得点期待値を増加させるか、三塁打が……とそれぞれのプレーについて平均的な得点期待値の増加量を計測した値は一般的に「得点価値」と呼ばれる。得点価値はプレーの価値を表す優れた尺度であり、選手の個人成績の各項目に得点価値を乗じることで選手の働きを得点数に換算して評価することも可能となる。このような評価方法はLWTS(Linear Weights)と呼ばれ、ジョージ・リンゼイ、ピート・パーマーらによって体系が確立された。LWTSは極めて強力な評価手法であり、今日の総合指標WAR(Wins Above Replacement)の基礎を成している。



参考:2013~2015年の得点価値

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【注意点】

 得点期待値はあくまで統計上の平均値であるため、理論的には平均的な投手が平均的な打者と対戦する状況における得点の見込みを表す。例えばエース級の投手がマウンドに立っており打席が8番打者の場合、現実的には得点期待値の数字より得点の見込みが低いと考えられる。


 統計の対象とする年度・リーグによってその値は変わり得るため、各年度の数値は絶対的なものではない。ただし、基本的に局面ごとの相対的なバランスは基本的には一貫している。


 無死満塁など出現が稀な局面もあり、1年程度のデータでは得点の可能性を表すためにサンプルサイズが十分でないとされる。局面ごとの得点の入りやすさの一般的な傾向を把握するためには、数年のデータを見ることが望ましい。




関連リンク

Introduction 03. 「価値の尺度と得点期待値」


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