環境中立的な評価と環境依存的な評価


環境中立的(context-neutral)な評価とは、分析対象となる選手・プレーをとりまくチームメイト・球場・試合展開などの環境に結果が左右されないように行われる評価を言い、環境依存的(context-dependent)な評価とは逆に結果が分析対象である選手の働き以外の環境に左右される形で行われる評価をいう。


多くの場合、セイバーメトリクスによる貢献度の評価指標は環境中立的になるように設計されている。例えばwOBAは、安打や四球などの個人が生み出した打席の結果に焦点を当てることによって打席に立った際の状況などに左右されないようになっている。


環境中立的な評価が重視されるのは、従来用いられてきた打点のように、たまたま走者がいる状況で回ってくる打席が多かったかどうかという対象の選手の働き以外の要素に結果が大きく左右されるのでは選手間の公平な比較ができないからである。また、統計的な研究の結果「勝負強さ」のようなものに再現性が認められず、重要な場面での活躍は偶然によるところが大きいと考えられているという理由もある。特定の状況で打席が回ってくることはその打者の貢献ではないため、環境中立的な評価では例えば3回表のシングルヒットも9回裏のサヨナラのシングルヒットも等しく評価される。


さらにはパークファクターなどの数値を利用して打者に有利な球場でプレーした打者の評価を割り引くなど、その選手の働き以外のバイアスに極力左右されないように評価指標を設計するのがセイバーメトリクスの基本である。総合評価指標のWARも環境中立的な評価を指向して設計されている。


他方で、あえてプレーが発生した際の試合展開などを考慮に入れて環境依存的な評価を行う指標もある。選手がもたらした勝利確率の変動を計測するWPAや、得点期待値の変動を計測するRE24がそれである。これらは選手の貢献度を等しい条件で公平に比較することを目的とするものではなく、結果的にどの選手・どのプレーによって現実の試合の勝利や得点の見込みが変動したかを把握することを目的としている。WPAであれば同点の3回の単なるヒットと9回裏のサヨナラヒットとでは後者が重く評価され、それがたまたま巡ってきた状況との兼ね合いであれ、そのプレーによって勝利が決定付けられたという試合のダイナミズムを描写するのには適している。


環境中立的な評価と環境依存的な評価はどちらが優れているというものではなく、目的が異なるものである。例えばリーグ全体からその年のMVPやベストナインを選ぶような場面では、チーム力や球場などに依存しない中立的で公平な評価が求められる。他方でその日の試合のヒーローインタビューに適した選手を選ぶような場面では、結果として勝利を決定付けた選手を選ぶことが目的に適う。



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