はじめに



今回の分析は、日本ハムの有原航平投手を対象としたいと思います。ご存知のように、7月の月間MVPに輝き目下好調ですが、プロ1年目の昨年はそこまで秀でた成績を残しているわけではありませんでした。それが、2年目の今シーズンに活躍し始めたのには何があったのだろう?という観点からデータを見ていきたいと思います。




奪三振・与四球・被本塁打の変化


最初に見るのは奪三振・与四球・被本塁打という、守備の影響を受けにくい指標です。対戦打者に対するそれぞれの割合と、BABIPのデータを以下の表1に示します。



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2016年はBABIPが平均(.300)よりも低めで推移している以外、奪三振・与四球・被本塁打の割合に2015年からの変化はそれほどありません。これだと、2016年は少々幸運でBABIPを低く抑えることができているため好調を維持できている、という可能性も考えられますが、これだけのデータで判断するのは早計です。




Batted Ballデータの変化


続いて、同様の形式でBatted Ballデータ(ゴロ・フライ・ライナー)を見ていきたいと思います。対戦打者に対するBatted Ballデータの割合と、それぞれのアウト率を計算したものを以下の表2に示します。今回は投球全体の中でいかに機能しているかを見るため、Batted Ballの分母を対戦打者としています。ゴロとフライとライナーを足しても100%にならないのはそのためです。


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2015年と比較するとゴロが増加し、フライが減少していることを確認できます。合わせて、ゴロアウト率も2015年より高くなっています。これらのデータより、2016年はゴロで打ち取る投球スタイルに変化したということがわかります。




投球内容の変化


ゴロが増えたというのは、有原選手の投球に対する結果でもあります。それでは、ゴロを増やすために有原選手がどのような投球をしたのかというのを、球種の内容とPitch Valueから見ていきたいと思います。まずは球種の内容を図1に示します。



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2015年と比較すると、2016年はストレートの割合が少なくなっています。その代わりに変化球の割合が増えるわけですが、2015年は使っていた、スライダー・カーブ・チェンジアップの使用は抑え、カットボールとフォークが中心となっています。つまり、ストレートの使用は減らし、変化球をカットボールとフォークに極力絞ったというのが2016年のスタイルといえます。


それでは、このような投球内容の変化にともないPitch Valueがどのように変化したかというと、データを以下の図2に示します。



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2016年のPitch Valueの特徴を箇条書きにすると、以下のようになります。


・2015年に大きくマイナスだったストレートのPitch Valueを±0にまで戻せた

・もともとプラスのPitch Valueを得ていたフォークは維持できている

・ストレートと同じくマイナスだったカットボールは、プラスに転じるまで向上した


さらに、これら3つの球種の投球数における空振りとBatted Ballデータ(ゴロ・フライ・ライナー)の内訳を比較したものが以下の図3になります。



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カットボールとフォークで2015年と比較するとゴロが増えていることが確認できると思います。ストレートでのゴロには変化はそれほどありませんでした。




まとめ


以上のデータを見ると、有原選手の2016年の好調は、NPBへの慣れや、覚醒といった抽象的な変化ではなく、かなり意図的に投球スタイルをゴロ型への投手に変えたことが原因ではないかと考えられます。この変化が、個人による打開なのか、それともチームの方針によるものなのかはわかりませんが、良い方向に舵を切れたのではないかと思います。


7月のBABIPが低く、ゴロアウト率が高かったため、8月は多少ゴロの被安打が増えることが予想されますが、現行のスタイルと変更するほどのことではないと思います。首位ソフトバンクを追いかける意味でも重要な戦力であることは間違いないので、彼の強みであるカットボールとフォークに注目して観戦すると面白いのではないかと思います。

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