開幕から1ヶ月弱が過ぎ、早くも波乱の展開が起こっている2017年シーズン。セ・パ順位推移や全球団一・二軍デプスチャート、2週間のセイバーメトリクス指標によるランキングなど、読むだけで2週間のプロ野球がわかる1.02レビュー2017年第2回目の連載。前回は こちらから。

セ・パ両リーグの順位おさらい


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首位広島は11日から読売との3連戦があり、敵地で打線を爆発させた広島が全勝。しかし、読売戦の後は3勝6敗と負けが込み、23日のヤクルト戦に勝って首位陥落は免れたものの、貯金の数は最大9から6にまで減ってしまいました。不振の原因は打線の勢いが止まったことで、チーム打率は18日のDeNA戦で.291にまで上昇しましたが、翌日の試合で今永昇太投手を先発させたDeNAに1安打完封負け。以後は攻撃力を落とし、現在チーム打率は.268にまで下がっています。

2位の座は読売と阪神で争われており、どちらも少ない得点を守りきる上手いゲーム運びができています。読売は18日ヤクルト戦に菅野智之投手の完封で勝利しましたが、翌19日は先発・高木勇人投手が打席で指に投球を受けるアクシデントに見舞われます。急きょ登板したのは支配下登録されたばかりの篠原慎平投手でしたが、持ち味である速球を生かしプロ初登板初勝利を記録。ブルペンの救世主と期待されています。阪神は、守護神のラファエル・ドリス投手がリーグトップの9セーブをマークしているほか、昨季は一軍登板がなかった桑原謙太朗投手が中継ぎとして大活躍。23日の読売戦では1 2/3回を無失点に抑え、ホールドを記録。6回の2死一・三塁で登場した代打・阿部慎之助選手との対決では、見事空振り三振に打ちとりました。

4位以下の3球団は、得点力不足により連勝を続けることはできませんでしたが、徐々に歯車が噛み合いだした部分もあります。DeNAは、22日の中日戦で今季初の2ケタ、11得点を記録。クローザーを山﨑康晃投手からスペンサー・パットン投手にチェンジしたほか、連投が極力続かないよう救援投手を起用するなどブルペン運用が光っています。ヤクルトは山田哲人選手を1番、ウラディミール・バレンティン選手を3番に置く打順にチャレンジ。途中、畠山和洋選手の故障によりこのオーダーは断念しましたが、型にあてはまらない真中満監督の考え方がうかがえる采配でもありました。中日は、開幕から19試合も先発投手の勝ち星から見放されていましたが、23日のDeNA戦、中4日で登板したラウル・バルデス投手が好投。不名誉な記録にピリオドを打ちました。


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パ・リーグは楽天が依然として首位を走り、9日に2位へと浮上していたオリックスはなおも好調。さらに、西武も順調に勝ち星を重ね、昨季のBクラス3球団が1~3位を占めるという大変興味深い展開です。楽天は19日の西武戦、21日のソフトバンク戦で2試合続けて延長12回サヨナラというショックな敗戦を記録。ブルペン酷使も心配されましたが、翌日は美馬学投手の完投勝利で救援陣を休めることに成功。23日のソフトバンク戦では再び勝利の方程式がチームに白星をもたらしました。

オリックスは打線の好調さが目立っていますが、先発投手陣の活躍もチームを支えている大きな要因です。14日のソフトバンク戦で金子千尋投手が92球のスリムな内容で今季初完封をマーク。金子投手は3勝0敗、ブランドン・ディクソン投手3勝0敗、西勇輝投手も2勝0敗と、ローテーションの柱となる投手たちに勝ち星がついているのも嬉しい材料です。西武はチームの強みである打線が、ここまで両リーグトップの1試合平均5.18得点を記録。21日からの日本ハム3連戦ではあわせて7本塁打、30得点と絶好調ぶりを発揮しました。

足踏みしている感のあるソフトバンクは、和田毅投手と武田翔太投手の先発2枚が故障中。チーム得失点差は0とシーズン前の評判から考えると誤算といえる状態が続いています。復調の鍵を握るのは、投手では先発ローテーションの穴埋め。そして、野手ではファームで打率.483に加え長打率.862と驚異の成績を残している川崎宗則選手でしょうか。

ロッテと日本ハムは、良いところがなくズルズルと黒星を重ねています。ロッテは12球団ワーストのチーム打率.188に投手陣が持ちこたえられない状況。日本ハムは故障者の離脱が長引き、若手が多く起用された打線も経験不足からか得点数は伸ばせませんでした。


一・二軍デプスチャート



画像にマウスをのせる(スマートフォンの場合タップする)と一・二軍が切り替わります。

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故障者の続出により2週間前の時点で心配された日本ハムのデプスも、23日に中田翔選手と大田泰示選手が一軍に昇格。ファームでも淺間大基選手が試合復帰と、少しずつ戦力が戻っています。故障者の穴埋めとして多くの若手が一軍に抜擢された中、イースタンで打率.299と健闘している高濱祐仁選手に昇格の知らせはありませんでした。チームが必要としていたのは外野手と、二塁・遊撃のバックアップ野手だったので、三塁を本職とする高濱選手に声がかからなかったのは仕方のないことかもしれません。そんな高濱選手も、今季は二塁での出場機会を増やしており、一軍でのチャンスを得るため選手としての幅を広げているようです。


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ソフトバンクでは、川崎選手の守備位置に注目してみてください。米球界時代もユーティリティとして二塁、三塁、遊撃を守っていましたが、古巣復帰後はこの3ポジションに加え左翼の守備にも就いています。これは、便利屋としてチームに貢献するだけでなく、どんなポジションでもレギュラーを獲ろうという姿勢の表れのようにも見えます。驚異的な打撃成績を残しながら、未だ一軍昇格にOKが出ないのは、複数ポジションを守るための準備だと考えた方が良いでしょう。ファーム先発陣も先週のウエスタン公式戦で笠原大芽投手、松本裕樹投手、攝津正投手らが、いずれも良い結果を残しています。


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打線を復調させたいロッテは、21日にジミー・パラデス選手の一軍登録を抹消し、穴埋めとして、ファームで4番を任されていた香月一也選手を昇格させました。おそらくは代打での起用となるでしょうが、先輩選手たちが苦戦する中、若手がチームに勢いをもたらしてくれることに期待したいところです。一方、ファームでは清田育宏選手が先週6試合で打率.545、OPS1.418と好調。中村奨吾選手も同期間、打率.310、OPS.927と復調傾向にあり、遊撃のレギュラー争いに再び加わってきそうです。先発ローテーションの穴埋めは2名必要で、現在一軍帯同中の酒居知史投手、ファーム4試合の先発で防御率2.16を残している関谷亮太投手が候補です。


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西武は秋山翔吾選手が守る中堅以外は外野のレギュラーが確定しておらず、外崎修汰選手の外野コンバートを実行中です。強打の内野手として期待を集めていた外崎選手の外野挑戦には複雑な思いもありますが、源田壮亮選手が遊撃に定着した以上、他のポジションに可能性を見出そうとするのは仕方ありません。得意の打撃で結果を残し、1日も早く外野守備に適応することが課題です。ライバルとなる田代将太郎選手は、左翼では両リーグトップのUZRをマークする一方、打撃面では苦しんでいましたが、23日の日本ハム戦でプロ初本塁打を記録し、打撃でも結果を残しました。


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好調・楽天は、一軍戦力が安定しているおかげでファームでは育成が順調に進められています。先週は、ドラフト1位ルーキーの藤平尚真投手が7回無失点、同2位の池田隆英投手も6回無失点とそれぞれ結果を出し、古川侑利投手、森雄大投手らを含む若手投手でローテーションが組める状況となっています。このままレベルの高い競争が続いていけば、現在空席となっている先発6人目の座を争うことになるでしょう。ただ、高卒1年目の藤平投手については途中でイニング制限がかかるかもしれません。一軍野手では、ゼラス・ウィーラー選手とジャフェット・アマダー選手の調子が依然として上がっていません。首脳陣がどこまで我慢するでしょうか。


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オリックスは、宮崎祐樹選手が中堅のポジションを獲得しましたが、22日のロッテ戦でステフェン・ロメロ選手が左膝を負傷。ファームのデプスを参照すると、外野がやや薄くなっています。現在は一塁を守ることが多いT-岡田選手を左翼に回し、小谷野栄一選手を一塁で起用するのも1つの手かもしれません。今後の戦い方としては、松葉貴大投手、マット・ウエスト投手らファームで好調な投手を上手に運用しながら失点抑止を目指すことになりそうです。


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打線の停滞から思わぬ連敗を招いた広島ですが、デプスの面ではクリス・ジョンソン投手、床田寛樹投手らを故障で欠いている投手陣の方が心配です。野村祐輔投手以外、先発でフルシーズン稼働した実績の少ない若手だけでは打線の援護に頼りがちになってしまいます。雨で5試合を流しているファームでは、なかなか育成が進められないところもあるのですが、4年目の中村祐太投手がここまで3試合の先発で、防御率2.65、奪三振率11.12を記録。15日のソフトバンク戦ではみずから本塁打を放つなど、今ノッている選手といって良いかもしれません。一軍では、22日から西川龍馬選手が故障から復帰。内野の控えにとどまらず、ポジション争いに割って入ることが期待されます。


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読売は故障者が多い中、高橋由伸監督のやりくりの上手さが光っています。22日、23日の阪神戦では、絶好調の阿部慎之助選手をスタメンから外し、代わりに村田修一選手を一塁で起用。チームが負け越したことで多少の批判は起きましたが、疲労が蓄積して長期離脱を招く前に手を打ったのは長期的に考えるとメリットも大きいはずです。一方で、なかなか結果を出せなかった岡本和真選手にファームでの再調整を命じ、重信慎之介選手と新加入の石川慎吾選手で左翼のポジションを競わせています。5月には陽岱鋼選手が戻って来ることが予想され、それまでに若手をテストしておきたいのでしょう。


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DeNAは開幕前から課題とされていた内野の攻撃力に改善が見られず、9日、23日の試合ではホセ・ロペス選手を三塁で起用しました。三塁のレギュラーにと期待した宮崎敏郎選手、白崎浩之選手らが故障と不調でファーム落ち。本日にも内野手1名を補充することは確実でしょうが、アレックス・ラミレス監督の悩みはしばらく続きそうです。投手陣は目立った故障者もなく順調ですが、ファームではそれが災いして供給過剰な状態に。この2週間だけでも16人が登板。マウンドにあがる機会がなかなか巡ってこないことで、首脳陣も入れ替えの判断は難しそうです。


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阪神は、中谷将大選手の起用法が今後のポイントとなっています。福留孝介選手を休ませるために右翼、高山俊選手らと競わせるために左翼でも起用され、今後は糸井嘉男選手の休養確保のため中堅でも出場する見込みがあります。金本知憲監督はさまざまな起用を試した昨季とは違い、一軍と二軍の入れ替えを極力避け、戦力の見極めをじっくり行っている最中といえそうです。課題はブルペンで、勝ちパターンでのコマがまだ足りません。先発、救援に関係なく、力のある投手をファームから引き上げることを検討する必要があるでしょう。


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ヤクルトは故障者がかなり多くなってきました。畠山選手の故障により、現在は西田明央選手が一塁に入っています。現時点ではリーグ2番目の平均6.33イニングを記録している先発陣ですが、新外国人のロス・オーレンドルフ投手がファーム降格となったため、今週以降はブルペン運用が重要な鍵を握っています。また、打線の復調も安定した戦いに欠かせません。


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中日は守りの野球を貫き、投手陣は先発、ブルペン共に安定してきました。ただ先発の谷間を埋められる存在を、ファームから一軍へ供給することができず、又吉克樹投手やジョーダン・ノルベルト投手を先発に転向させ、急場をしのいでいる状況です。人海戦術的な起用には限界もあるため、ファームの投手を1人でも多く戦力化したいところです。今後、昇格が期待されるのは小笠原慎之介投手と柳裕也投手。どちらも故障からの復帰を果たしており、チームの台所事情からいって今月中にも声がかかりそうです。


2週間の個人成績ランキング


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出塁率ランキングは期間内打席数20以上を対象。

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OffenceはwRAA+走塁評価、DefenseはUZR+守備位置補正

野手は開幕から好スタートを切った選手たちがこの2週間でも調子を持続させています。セ・リーグWAR(Wins Above Replacement)トップの坂本勇人選手(読売)は、複数安打試合がすでに11試合を数え、攻守両面で高い貢献度を示しました。打撃成績では平田良介選手(中日)の働きが光り、4番に座ってからの5試合でも打率.375。自身のバットでチームを勝利に導いています。守備では、菊池涼介選手(広島)がようやく本来の姿を見せ始めたようです。注目したいのは亀澤恭平選手(中日)で、12日のヤクルト戦でプロ初本塁打を記録しただけでなく、走塁・守備での貢献度も高かったことからリーグ4位のWARを記録しています。


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パ・リーグWARトップは近藤健介選手(日本ハム)。現在打率.459で首位打者に立っているほかにも、ボールゾーン見送り率(O-Swing%)打球の強さ(Hard%)などでリーグトップに立っています。守備では、マット・ダフィー選手(ロッテ)の貢献度がアップ。打撃面では今ひとつの新助っ人も、グラウンドコンディションに慣れてきたせいか、試合を重ねるごとに動きは良くなってきたようです。急上昇したのは秋山選手(西武)で、WBCから帰国して間もない開幕当初は精彩を欠いていたものの、19日以降の4試合で11安打、4本塁打をマーク。1週間前には.220だった打率を、現在では.324にまで伸ばしてきました。


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失点率ランキングは期間内投球回10以上を対象。

セ・リーグの投手部門では、バルデス投手のイニングイーターぶりが際立っています。期間中3度の先発を果たしたのは同投手だけで、いずれも120球以上を投げる活躍。ヤクルトは小川泰弘投手の復調が大きく、新外国人のデービッド・ブキャナン投手も安定した投球を続けています。救援では、ドリス投手がこの期間だけで7セーブを記録。マルコス・マテオ投手との救援コンビは、現在リーグで最も恐れられる勝ちパターン継投といっても良いでしょう。


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パ・リーグは、奪三振数24を記録した千賀滉大投手(ソフトバンク)がWARトップですが、金子投手や21日の日本ハム戦で1安打完封勝利を飾った菊池雄星投手(西武)らも引けをとっていません。登板数トップタイの森原康平投手(楽天)には起用過多が心配されるところですが、3日連続の登板は1度きりなうえ、1イニングあたりの平均投球数は13.9と非常に少なく球数を抑えています。フルシーズンの経験がないために、どこかで休みを入れる必要はあるでしょうが、首脳陣の運用と自身のピッチングにより、酷使は避けられていると考えても良さそうです。



高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。
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