三振の多さが原因となって二軍での成績も振るわず



9月1日、ロッテのルーキー・平沢大河が出場選手登録を抹消された。7月下旬に二度目の一軍昇格を果たしてからも結果が残せない日々が続いたが、8月17日に初安打を記録するとそれからは二塁打、三塁打も放つなどポテンシャルの高さを見せていた。今回は数少ないデータからではあるが、現時点における平沢の課題と今後の展望を探ってみたい。


まず平沢が今季の大半を過ごした二軍での成績を振り返ってみよう。打率.212、出塁率.305、長打率.351、出塁率と長打率を足した打撃の総合的な貢献度を計るOPSは.655となっている。決して好成績とはいえない数字である。特に目立つのが三振の多さだ。277打席で81三振。打席あたりの三振の割合を表すK%は29.2%となっている。K%は一般的に20%を超えるとかなり高いとされており、二軍でこれほど三振をしているのは明らかな問題点といえるだろう。


平沢の二軍での直近10試合ごとのK%とBB%(打席あたりの四球の割合)の推移を表したのがイラスト1である。K%の推移を見ると、特に6月のはじめから割合が高まっており、7月30日の一軍昇格直前まで多くの三振を喫していることがわかる。この状態で一軍の投手相手にいきなり結果を出せというのはやや無理な注文だったかもしれない。



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コンタクトに明確な課題を抱えるも、ボール見極めについては資質を見せる


次にまだ数少ないデータではあるが、一軍での成績を見る。二軍での課題であったK%が34.0%と相変わらず高い。この三振の原因はどこにあるのだろうか。三振や四球と関わりの深い打撃アプローチに関するデータから探ってみる。


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まず明らかに一軍レベルとかけ離れているのが、スイングした際にボールにバットが当たる割合を表すコンタクト率である。平沢のコンタクト率は68.1%とパ・リーグ平均の80.3%と大きくかけ離れている。ストライクゾーンのみに絞ったコンタクト率でさえ77.0%。ストライクゾーンのストレートに絞ると69.4%とさらに数字が下がり、打つべき球をコンタクトできていない様子がわかる。まだ一軍レベルのスピードに対応できていないのではないだろうか。


次に選球眼系の指標を見てみたい。まず目を引くのがボール球スイング率の低さである。平沢の26.8%はパ・リーグ平均の30.3%と比較しても低く、ボール球をきちんと見分けることができている。コンタクトの面では一軍レベルについていけていないにも関わらず、見極めの面ではすでに一軍レベルでも優秀な数字を残している。


打撃の動作を「ボールを見る」、「ボールを捉える」の二つに分けて考えると、平沢は前者においてすでに一軍レベルに対応できているといえる。一口に一軍レベルのスピードについていけないといっても、平沢がクリアするべきは後者、「ボールを捉える」ことだ。もちろん難しい課題ではあるが、現状、レベルの違いに混乱してどんなボールにでも飛びついてしまうような様子はなく、前者をクリアしていることは評価すべきだ。二軍での成績を見ても一定の四球を選ぶことには成功しており、とりわけ「ボールを見る」ことに関しては優れた資質をもっている可能性が高い。





8月中旬から短期間でストレートに対するアジャストに成功


さて、課題は「ボールを捉える」、コンタクトである。特に一軍での打席で目立っていたのがストレートに対するコンタクト率の低さだ。イラスト3は平沢がスイングしたストレートの期間別投球結果である。まず、5月の昇格時、また7月下旬に昇格した際も高い確率でストレートに対して空振りをしていることがわかる。これだけの確率で空振りをしていては三振が多いのも当然である。



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しかし、スタメンで出場し、初安打を記録した8月17日以降は空振りの確率を劇的に減らしている。8月17日より前と以降で比較すると、ストレートに対するコンタクト率は43.5%から85.7%へと倍増している。凡打や安打、つまり前に飛ばす打球を増やしたほか、前に飛ばすことができなかったとしてもファウルで三振から回避することに成功している。


報道によると、ベテランの福浦和也からタイミングのとりかたについてアドバイスを受けたようである。17日以降に劇的な改善が見られることからも、犠打を記録した14日以外に打席に立つ機会がなかった8月11日から16日の間にアドバイスを受け、修正を図ったのではないだろうか。福浦の指導能力ももちろんのことだが、平沢の修正能力の高さにも驚かされる。二軍降格以降も三振を減らすことができるかに是非注目してほしい。


現時点では守備にも課題が残るものの攻守両面で大きな可能性を秘めたプレイヤーであることは間違いない。一般的に遊撃手は守備力が優先されがちなポジションだけに、打力のある選手を配置することは難しい。平沢がこのまま順調に成長すれば、ロッテはパ・リーグの中で長期的に大きなアドバンテージを得ることになる。


※ データはすべて8月31日時点

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