1.02 FIELDING AWARDS 2018では、ここまで全ポジションの採点と参考分析を掲載してきましたが、参考分析の執筆者以外のアナリストも分析を行っています。ここでは各アナリストがそれぞれのポジションに対しどんなアプローチで分析を行ったか、採点を振り返りながら確認していきます。


外野守備の分析


右翼手編

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中堅手編

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左翼手編

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外野守備の分析では飛球処理の評価をどのような手法で行うかが焦点になったようです。

弊社の岡田友輔は定位置をポジションごとにある座標に定め、そこからどの程度の距離、およびハングタイムの飛球をどれだけアウトにできたかを見ていく手法で評価を行いました。従来のゾーン評価には定位置という概念がないため、これはUZR(Ulatimate Zone Rating)とは異なる視点からの評価です。

アナリストの八代久通氏は遊撃手編でも紹介した打球方向、ハングタイムの打球分類にさらに飛距離を要素として加え、各守備者の貢献を求めたようです。この守備範囲評価では西川遥輝(日本ハム)が、受賞となった桑原将志(DeNA)や大島洋平(中日)以上の値を記録していたようですが、ARM(Arm Ratings:進塁抑止による貢献)のマイナスが響き、八代氏による評価は2位となりました。


内野守備の分析


遊撃手編

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遊撃では二塁手編で併殺時のピボットプレーの評価に時間計測データを組み込んだ大南淳氏がここでも同様の分析を実施。従来のUZRのピボット評価と比較すると、評価の高かった田中広輔(広島)が平均以下となり、評価の低かった今宮健太(ソフトバンク)が平均以上の数字になるなど、二塁手編と同様に大きな評価の変化があったようです。


三塁手編

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三塁では参考分析を担当した岡田が、いかにショートバウンド・ハーフバウンド送球を避けるかという観点から送球評価を行いましたが、八代氏は遊撃手編でも実施した手法を三塁にも適用し、岡田とは別の手法で送球を評価しています。西川龍馬(広島)はこちらの分析でも捕球までは一定のレベルにあるにもかかわらず、送球が大きなマイナスという評価になったようです。

内野守備では打球の分類にDELTAがハングタイムデータから計算した、打球の強さデータを使うか、ハングタイムをそれぞれの基準で分けたものを使うかで少し守備範囲評価に差が生まれていたようです。多くのアナリストが今季の宮﨑敏郎(DeNA)の守備範囲を低く評価しましたが、岡田が一定の評価を与えているのはこのあたりが影響しました。


二塁手編

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二塁守備は菊池涼介(広島)と山田哲人(ヤクルト)が高い評価を受けました。蛭川皓平氏をはじめ、多くのアナリストの間でこの2人の守備力に大きな差はないという声が挙がりました。


一塁手編

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一塁手編ではスクープ評価を加えるかどうかがアナリストにより分かれました。参考分析を担当した市川博久氏のほかには岡田がこれを評価項目として採用しました。


捕手守備の分析


捕手編

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捕手はアナリストごとに何を評価項目とするかが大きく分かれました。

今回の企画で最大の焦点となったフレーミング評価は岡田、道作氏、八代氏、大南氏が採用しました。この4名は小林誠司(読売)に1位票を投じた4名と重なります。 佐藤文彦(Student)氏はポップタイム(盗塁時の二塁送球タイム)の分布から、捕手の盗塁阻止貢献を算出しました。

ほかにも打球処理評価を岡田、蛭川氏、八代氏の3名が、投球のワンバウンド処理を岡田、大南氏が採用するなど、評価基準に大きな差が生まれた結果、このような混然とした採点となりました。


投手守備の分析


投手編

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捕手と同じく、投手も何を評価項目として採用するかがアナリストごとに分かれています。

打球処理を対象としたのは岡田、道作氏、蛭川氏、佐藤氏、八代氏の5名。道作氏は一塁ベースカバーによる刺殺や牽制アウトのデータも考慮。一方、市川氏は牽制アウトをランダム性の強い要素と考え、あえて評価に用いませんでした。

投手の盗塁阻止を評価対象としたのは岡田、八代氏。一般的に盗塁阻止というと捕手の貢献として語られることが多いですが、投手の投球モーションが盗塁の成否に大きな影響をもたらすことも確認されています。2名は盗塁阻止も投手の貢献の1つと考えたようです。

大南氏は投手のワンバウンド投球の頻度から、投手ごとの暴投リスクを推定。実際にどれだけの暴投を投じたかは捕手のブロッキング能力によっても変わってくるため、暴投リスクのある投球をどれだけ行ったかを投手の守備評価の一部として考えたようです。


今回のアワードでは、捕手の評価を再開し、また投手の評価を初めて行うことで、全ポジションの評価をそろえることができました。アナリスト間の意見交換をさらに深め、データ採取の側面とも連動させながら、より実態に近づける守備評価のあり方を探っていきます。検討内容については、またまとまったところで弊サイトにてお伝えしてまいります。

10日間にわたってのお付き合い、また記事の拡散などにご協力いただき誠にありがとうございました。今後とも1.02とFIELDING AWARDSをよろしくお願い申し上げます。


1.02 FIELDING AWARDS 2018受賞者一覧
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