2018年のドラフトでDeNAから4巡目指名を受け入団した勝又温史。高校時代には150km/hを超える球速を記録する投手だけでなく、打者としてもスカウトの注目を集めていた。勝又はどれほどの能力・ポテンシャルを持った選手なのか。DELTAアナリストの山崎和音氏が20-80スケールでのリポートを作成した。

選手プロフィール


名前:勝又 温史(かつまた あつし)
生年月日:2000年5月22日
投/打:右/左
身長:180cm
体重:80kg
経歴:日大鶴ケ丘高-DeNA (2018年ドラフト4巡目)
観戦日:2018年7月20日、22日、26日、30日



体格及びメカニクス


高校生にしては身体の成長が進んでおり、特に下半身の筋肉は同年代の他の選手に比べてかなり発達している。今後もう一回り大きくなる余地もあるだろう。身体能力はアマチュア球界トップクラスといっていい。

無走者時はワインドアップから足をやや後方に蹴り上げ、ひねりを加えたフォームで投げ込む。腕の角度はスリークォーター。体重移動の際に重心を落とす、アメリカでドロップ&ドライブと呼ばれる種類のフォームだ。フォロースルー時に左足で飛び上がる動作が見られるなど力は入っているが、全体的にはフォームはスムーズだ。捕手からボールを受けて投球動作に入るまでの間隔は非常に短く、無走者時にはわずか3~4秒ほどだった。




速球


伸びのある4シームを投げ込む。私が見た4試合での最速は151km/h(※1)。ただ、通常時は138-148km/hと球速にバラつきがみられる。特にカウントを整えようとストライクをとりにいくときは球速の低下が顕著だった。制球は壊滅的とまではいかないものの、現状はプロ平均には遠く及ばない。それでも、将来的には平均以上のレベルに到達するポテンシャルを秘める球種だ。だが変化球を多投する場面も多く、本人は速球にあまり自信を持っていないように見える。


現状 40/将来 55

スライダー


128-130km/h程度で、打者側からみて時計の10時から4時の方向に変化するものと、それよりも3-5キロほど速く11時から5時の方向に小さく変化するものの2種類を投げる。後者はカッターと呼んでもいいかもしれない。配球の中心となる球種で、ピンチでは6-7割がスライダーになることもある。ただ多投しすぎたせいもあるのか、甘く入ったスライダーを痛打される場面も散見された。最大の問題点は、スライダーを投げるときは速球と比べて明らかに腕の位置が下がり、振りも遅くなること。高校レベルでは頭一つ抜けている球種であるため圧倒的な投球ができたが、プロではいとも簡単に見極められてしまうだろう。この点の改善は不可欠だ。


現状 30/将来 50

スプリッター


追い込んでからスライダー待ちの打者の意表を突く程度の頻度でしか投げていなかったが、ポテンシャルは目を見張るものがある。120キロ代後半で、変化量も特筆するようなものではないが、速球とのピッチトンネルをつくることができているため、打者は手元で落ち始めるように感じるだろう。


現状 40/将来 60

カーブ


114-116km/h程度で、11時から5時方向に大きく変化する。あくまでもカウント球や、打者の意表をつく見せ球に過ぎず、決め球としては不十分だ。


現状 30/将来 40



総合評価


高いポテンシャルを秘めるものの、非常に荒削りで一軍で通用するようになるには数年を要するだろう。体格の項目で述べたようにトップクラスの身体能力の持ち主なので、伸びしろはかなり高い。ただチームの中心投手となるには上記の数々の問題点を解消しなければならないだろう。特に球速にバラつきがある点と制球が不安定な点は要改善だ。

速球、スライダー、スプリッターのすべてがプロの平均レベル以上にまで成長し、制球力もスカウティングスケールの45程度まで改善されれば数年に渡ってローテーションの中盤を張ることができるだろう。だが現実的には一軍と二軍を行き来するリリーバーに落ち着く可能性が高い。常に感情を前面に出し、ピンチを脱出した際は叫びながら全身でガッツポーズをするスタイルもリリーフ向きといえる。


現状 30(リプレイスメントレベル)
将来 40(平均的なリリーバー)
ポテンシャル 55(優秀なセットアッパーもしくはローテーション3-4番手)

野手として



高校時代は野手としてもドラフト候補に挙がっていた。仮に投手としての育成に行き詰まった場合は野手転向という選択肢もある。

バットスピードが速く、パワーも平均以上のものを秘めている。非凡なコンタクトスキルの片鱗を見せ、アメリカで「spin-recognition」と呼ばれる変化球を見極める能力もあるが、左投手に対しては苦しむかもしれない。本塁から一塁間のタイムは、私の計測で4.34秒。右翼を守るには十分な身体能力があるし、肩の強さは言うまでもない。仮に将来的に野手に転向するなら、プラトーン要員に成長する余地はある。もちろん、何歳で転向するかが重要なファクターになるが。


(※1)本文中の球速はすべて神宮球場のスピードガン表示に基づいている

山崎 和音@Kazuto_Yamazaki
バイリンガルに活動するライター。1.02以外にもBeyond the Box ScoreBaseball Prospectusといったウェブサイトに寄稿。BP Anuall 2018では日本野球に関するチャプターを執筆。セイバーメトリクス的視点からだけではなく、従来のスカウティングを駆使した分析もする。趣味のギターの腕前はリプレイスメント・レベル。
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