• 1.02 Column


今年度も1.02では野手の守備における貢献をポジション別に評価し表彰する“1.02 FIELDING AWARDS 2018”の発表を行っていきます。

このアワードは、米国の分析会社であるBaseball Info Solutions(BIS)社が実施している“THE FIELDING BIBLE AWARDS”に倣った表彰となります。今季NPBの各ポジションで500イニング以上(投手に関しては規定投球回以上)を守った選手を対象に、1.02を運営する株式会社DELTAで活動する8人のアナリストが、それぞれの分析手法に基づいて守備での貢献を評価し、順位をつけ、良い順位を最も多く獲得した選手を最優秀守備者として選出するものです。

賞についての詳細は、イントロダクションとしてこちらにまとめていますのでご覧ください。昨季の受賞者はこちらから。


対象中堅手の2018年UZRと8人のアナリストの採点


アナリストによる評価・分析に入る前に、1.02で公開されている守備指標UZR(Ulatimate Zone Rating)が2018年の中堅手をどのように評価していたかを確認しておきます。

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UZRで最も良い値を残していたのが大島洋平(中日)。25歳前後の若い選手が上位を占める中、33歳を迎えたベテランが数字を残しました。ただ秋山翔吾(西武)、陽岱鋼(読売)、丸佳浩(広島)といったかつて優れたUZRを記録した30歳前後の選手が上位に食い込んでいないあたりに、守備のパフォーマンスに年齢の影響が出やすいことがうかがえます。

そのほかにはNPB復帰1年目となった青木宣親(ヤクルト)、コンバート1年目となった宗佑磨(オリックス)はやや低迷しました。

UZRではこのようになりましたが、アナリストごとに考え方は異なります。アナリスト8人がそれぞれのアプローチで分析を行い、中堅手の採点を行った結果が以下の表です。

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大島、桑原将志(DeNA)で1位票が割れ、75ポイント、73ポイントと僅差となりましたが、桑原が制しました。

どのような分析を行いこうした評価に至ったか。中堅手部門は参考として蛭川皓平氏の分析を掲載します。



中堅手参考分析 分析担当者:蛭川 皓平

評価方法の概要


本稿では中堅手の守備評価を行っていく。評価はUZRを基礎とし、どれだけ多く失点を防ぐ働きをしたかという観点から行う。

はじめにどれだけ打球をアウトにしたかという守備範囲の部分について選手別の分析を行い、さまざまなゾーンへの対応や打球速度への対応を見る。そして最後にアームレーティングを加味して最終評価を算出する。


守備範囲の評価


守備範囲の評価はUZRの原則的な算出法に則り、観測されたエア打球(ゴロ以外の打球)を対象に、各打球について平均的な見込みに比べてどれだけ多くアウトを上積みして失点を防いだかを計算して行った。

はじめに選手別の結果を示すと次の通りである。

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「守備範囲」の数字はエア打球をアウトにすることによって、平均的な中堅手が同じだけの守備機会を得た場合に比べどれだけチームの失点を減らしたかという意味である。最も多く失点を減らしたのは大島で、平均的な中堅手に比べてチームの失点を10.6も減らした計算になる。西川遥輝(日本ハム)も同等の数字を出している。マイナスの数字の宗や青木は平均と比べると数点チームの失点を増やしてしまったという意味になる。

ちなみにこれはUZRで言えばRngRとErrRを合わせたような数字であり、筆者の考えで安打と失策は分けずに計算を行ったものだ。


さて、UZRはグラウンド上を細かく「ゾーン」に分けたデータから計算されるため、上記の守備評価の内容をゾーンごとに見ることが可能である。ここでは中堅手が主に打球を処理するゾーンである打球方向I~R、ホームからの距離5~8についてゾーンごとの失点阻止評価を計算した。

Iが左翼寄り、Rが右翼寄りの方向を示しており、距離は大きいほどフェンスに近い深い位置であることを表す。

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その選手が多く失点を阻止している得意なゾーンは赤く、失点を増やしている苦手なゾーンは青く表示している。


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守備範囲の評価が最優秀であった大島は、右中間よりも左中間方向の打球を得意としているようである。特に打球方向J・Kでは合わせて8.9点を防いでおり、かなり目立つ優秀さとなっている。

なお隣を守る野手の影響だが、隣の選手が多くの打球を処理してしまえばそのゾーンでプラス評価を積み上げることはできなくなるが、それによってマイナス評価を被ることはないという計算方法になっている。またUZRは平均的なアウト見込みとの対比でプレーを評価する方式であり、どちらの野手でも捕れるような打球はそもそもアウトになる見込みが高いためどちらの野手が処理しても影響は軽微である。


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昨季から中堅手での出場が増えた西川だが俊足を活かし大島とほぼ同等の失点阻止(10.0)を叩き出している。方向で見ても距離で見ても全体的に優れておりこれといった穴はない。特に距離8の深い位置の打球処理では際立った優秀さを見せている。


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8.4と優秀な失点阻止を見せている桑原。左中間方向の距離6・7のゾーンでかなり利得を稼いでいる。右中間後方のゾーンでマイナスを出してしまっている分で大島や西川に若干追いつかなかった。


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今季台頭した田中和基(楽天)。合計で4.3と優れた守備範囲を見せている。前記の桑原とは逆に右中間・後方の打球に強いという傾向が見られる。


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昨季は14.5と高いRngRを叩き出した丸佳浩(広島)だが今季の守備範囲評価は0.1となった。内容的には外野のちょうど真ん中にあたる距離6のあたりで少し取りこぼしがあったようだが、基本的にはそれほど守備範囲の偏りはなく堅実な内容といえる。


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秋山は持っているであろう能力からすると今季の数字はやや振るわなかった感がある。傾向としては左中間方向でプラス、右中間方向でマイナスという形がはっきり出ている。


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守備範囲評価は-1.9と平均よりはやや劣る形となった柳田悠岐(ソフトバンク)。ゾーンの得手不得手というより、単に定位置から離れる遠い打球ほど他の中堅手と比べて捕れていない傾向があるように見受けられる。


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陽は左右(打球方向)での得手不得手はあまりないのだが、後方への打球でマイナスを計上という傾向がはっきり出ている。距離5~7での失点阻止はプラスである。


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荻野貴司(ロッテ)は陽とは逆に後方への打球は他の野手よりも優れている形跡があるのだが、それ以外の距離で強みをつくれていない。方向的には左中間方向が課題となっている。


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青木に関しては合計値がマイナスであるもののそれほどゾーンの偏りはなく、全体的に無難な打球処理をしている。筆者の経験的に見てUZRなどの守備指標は年齢を重ねた選手が若い選手に勝つのはかなり難しいように映るが、その点を踏まえると健闘している(ちなみにデータによれば、MLB時代の青木は平均以上の外野手だった)。


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外野手に転向したばかりの宗は-5.8とマイナスをつくってしまっているが、守ったイニングは574と少ない。そこまで大きなマイナスではないため、サンプルサイズ的にはまだなんとも言えないところである。


打球速度への対応


ゾーン別の評価とは少し違う切り口での打球処理評価として、打球の速さ別の処理成績を計算した。DELTAの守備データにはハングタイム(エア打球で言えば滞空時間。バットに当たってからグラウンド上へ着地又は捕球されるまでの時間)が記録されている。これを利用して、UZRをハングタイム別で集計したのが表13である。

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ハングタイムは連続的な値で記録されているが、0.5秒ごとの区切りで近い数字に束ねている。例えば1.8秒の打球は2.0の区分に、3.1秒の打球は3.0の区分に入る。

基本的には守備範囲の広い選手ほど、どのハングタイム区分でもプラスが多いという単純な傾向になるのだが、例えば桑原と田中の比較では、滞空時間が短い打球では相対的に桑原が強く、長い打球では相対的に田中が強いといったタイプの違いもある。

滞空時間が短い打球に強い選手は打球への反応、つまり初動がよく、長い打球でプラスを出している選手は加速がよく、遠めの打球にも追いつけている、といった理由が考えられる。


最終評価


ここまで見てきた打球処理に関する守備範囲の評価に、走者の進塁をどれだけ防いだかを表すアームレーティングの評価を加えて失点阻止の最終評価を算出したのが表14である。

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守備範囲で最高の評価だった大島が進塁阻止でも堅実な数字を示し、全体の1位となった。大島は2017年のUZRはマイナス値であったが、今季は調子を取り戻した形である。守備範囲で大島に肉薄していた西川は進塁阻止でマイナスを計上し、総合評価では桑原に2位を譲ることとなった。


1.02 FIELDING AWARDS 2018受賞者一覧
蛭川 皓平 @bbconcrete
セイバーメトリクスの体系的な解説を行うウェブサイト『Baseball Concrete』を開設。米国での議論の動向なども追いかけている。


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