プロ野球のセ、パ両リーグは、来週から交流戦に突入します。既に多くの方がご存知のように、交流戦の成績はパ・リーグが圧倒的優位に立っており、昨シーズンは大きく負け越したセ・リーグが7月に入り6球団全てが借金を負うハプニングも起きました。交流戦で貯金を作ることにより、その後の公式戦が戦いやすくなるのは明らかですが、それには今週の対戦で大きく負け越さないことが重要です。同時に、昨シーズンから1カード3試合制となり、各球団は6連戦を戦う関係で、先発ローテーションを6枚揃える必要が出てきました。既に編成を整えている球団もあれば、未解決なままシーズンを戦っている球団もあります。交流戦を想定しながら、過去2週間のレビューを見ていきましょう。
<セ、パ両リーグの順位おさらい>
セ・リーグは混戦に拍車がかかっています。1位から6位までのゲーム差は縮まり、先週22日には広島が5/7以来の首位に。開幕から低迷していたDeNAは、この2週間で借金を6つも返し、同じく22日に最下位を脱出しました。リーグを通じても、ここまでの動きは今シーズン最大で、DeNAのチーム状態が急激に改善していることがわかります。ポイントとなったのは、やはり梶谷隆幸選手と筒香嘉智選手が復帰して、ベストな打線が組めるようになったからでしょう。
DeNAの5/10以降での平均得点は4.27で、それ以前の3.22から1点以上も増加。中軸が揃っただけでなく、打線が不振の間もラミレス監督は色々な打順を試し、打てる選手を絞り込んで行ったもの得点力アップの理由といえます。投手陣は相変わらず好調で、先発は開幕から47試合を経過した今でも5回もたずに降板したケースはなし。ブルペンも例年以上に好調で、ここ数年のドラフトの成果が出始めています。チームは交流戦で毎年苦戦していますが、ディフェンス中心の野球でロースコアの展開に持ち込めば、これまでとは違う結果が得られるかもしれません。
首位から陥落した巨人は、菅野智之投手と坂本勇人投手以外に頼る部分が少なく、一方的な試合展開で敗れるケースが増えています。先週になってようやく、不振のギャレット選手を6番に下げ、村田修一選手を5番に据えるオーダーを試みましたが、チームが上昇気流に乗ることなく、ギャレット選手は守備の不安もありファーム行きを命じられました。穴埋めが急務だった先発ローテーションも、5/17のDeNA戦で内海哲也投手が今シーズン初先発を果たし、枠を一つ埋めましたが、交流戦に向け準備は完全に整っていません。
パ・リーグは首位ソフトバンクの勢いがやや止まったものの、2位ロッテも一進一退でゲーム差が縮まらず、代わりに日本ハムが台頭してきました。5/17から敵地でソフトバンクと3連戦を戦った日本ハムは、大谷翔平投手の5試合連続本塁打や、有原航平投手らの好投で初戦を取り、1勝1敗で迎えたカード最終戦はレアード選手の2発で接戦にケリをつけました。ソフトバンク戦でのチーム本塁打29本は被本塁打の22本を大きく上回り、これが対戦成績上(5勝5敗1分)で互角の戦いを演じている大きな理由です。
反対に、ソフトバンクは現在リーグワーストの45被本塁打を記録中で、今シーズンのチーム13敗中9敗で相手チームの方が本塁打を多く放っています。純粋に、本塁打を多く打たれた試合の結果も6勝9敗2分の成績で、両リーグトップレベルの投手陣をもってしても一発の被害は確実に表れています。交流戦で対戦するセ・リーグ各球団にとっても、この辺りが攻略のポイントとなりそうです。
【パ・リーグ6球団の本塁打収支】
楽天は現在6連敗中で、課題だったブルペン以外にも先発陣の乱調、得点力不足が顕著になってきました。22日の日本ハム戦に敗れたことで借金は2ケタの大台に乗り、今週予定されている6連戦でなんとか勝ち越し、少しでも借金を減らした上で交流戦に臨みたいところです。
<各球団の戦力値>
セ・リーグのチーム平均得失点差は、依然として広島と阪神がプラスを維持していますが、プラス1点以上をキープしている広島に対し、阪神の得失点差はほぼプラスマイナス0となり、その代わりDeNAがリーグ最低だった得失点差を3位にまで急上昇させています。さらに、DeNAはこれまで常にマイナスだったUZRをはじめてプラスに転換。2塁に宮崎敏郎選手、3塁に白崎浩之選手を起用したのがプラスになっているようで、左翼では筒香選手の復帰が守備面でも大きなプラスになっています。
今回より、犠打に代わり被本塁打を戦力値に入れることにしました。ここではヤクルトのマイナスが非常に大きく、他の5球団が全て平均を上回る状況となっています。個人では、成瀬善久投手のHR/FBが22.5とかなり高く、その他でも新垣渚投手(15.4)、山中浩史投手(12.5)らも被弾のリスクが高い投手です。本塁打の出やすい神宮球場を本拠地にする中、GB/FBの高い村中恭平投手(2.11)に先発のチャンスを与えるなど、対策を講じる必要があります。
パ・リーグの戦力値一覧も、前回から比較してソフトバンクの独走状態が薄れ、日本ハムの数値が上がってきています。改善されたのは先発防御率とチーム打率で、期間中有原投手は2度先発して防御率1.08、打者では大谷投手の打率.471をはじめ田中賢介選手(.333)、レアード選手(.324)らが打線を支えました。ただ、先発で固定されているのは大谷投手、メンドーサ投手、有原投手、吉川光夫投手の4人で、交流戦を戦うにはコマがじゅうぶんではありません。現在リリーフに回っているバース投手や斎藤佑樹投手らが穴を埋めなければ、リーグ2位の先発防御率(3.63)の維持は難しいかもしれません。
4位に浮上したオリックスは、ここに来てようやくブルペンが整備されはじめ、この2週間で救援失敗は一度もなし。佐藤達也投手、コーディエ投手らの安定が前提ですが、救援防御率は今後も改善される見込みは強いでしょう。不思議な傾向を示しているのが西武で、本塁打と被本塁打の収支は+26と、両リーグを通じても飛び抜けて良い数値を出しています。前回のレビューでもお伝えしたように、先発の台所事情は苦しく、今シーズンからブルペンに回っている牧田和久投手は、救援投手として異例のイニングを記録している途中。苦戦している投手陣にしては、被本塁打の被害がかなり少ないのです。
ここで確認しておきたいのが、tERAという指標です。FIPの概念を基に守備力を考慮しない投手本来の責任に回帰した失点計算というのがこの指標の持つ意味ですが、5/22時点で西武はリーグトップの3.85を記録。チーム防御率は4.01でリーグ4位ですから、今の投手陣は味方の守備に足を引っ張られている割合が他球団よりも高いと見ることが出来ます。データは日々変わりますが、この指標でリーグ上位をキープしている限り、西武投手陣は印象よりも安心して見られる要素が高いといえるかもしれません。
tERAの説明
http://1point02.jp/op/gnav/glossary/discription/dis_ps_tra.html
<1軍登録抹消人数の中身>
開幕からおよそ2ヶ月が過ぎ、各球団の1軍戦力はほぼ固まって来たと見て良い時期となりました。一方で、故障者や不振の選手を入れ替える球団も多く、NPBの公示情報では毎日誰かしらの名前が出てきます。
球団によって選手を入れ替える目的は様々ですが、故障も無く調子の良い選手をわざわざファームに落とす理由はありません。従って、登録/抹消回数の少ない球団はチーム状態が良いと判断するべきですが、別の理由で選手を入れ替えない球団もあることは確かです。ここでは、各球団が今どんな状況にあるか探るため、1軍登録抹消人数のデータを見ていくことにしましょう。
両リーグを通じて抹消回数が最も多いのがオリックスの38人で、反対に最も少ないのはソフトバンクの11人。投手の入れ替えが多いのは中日の19人、捕手はオリックスの6人、内野手はヤクルトの8人、外野手もオリックスの8人となっています。
オリックスの入れ替えが多いのは、開幕ダッシュに失敗した影響が大きいことは確かですが、主力選手に怪我が多い、先発陣が安定しないなど他にも理由はあります。また、せっかく1軍登録されながら打席に立たないもしくは登板の無いまま抹消された選手も延べ5人を数え、ベンチにいる選手をフル活用していない面も疑問が残るところです。
入れ替えの少ないソフトバンクは、戦力が安定していることもありますが、野手に関してはファームで固定オーダーを組み育成に励んでいる点も見逃すことは出来ません。今後のシーズンでは、若くて活きの良い選手が台頭しそうです。
先発投手の入れ替えが多い球団は、空いた日程を利用してローテーション投手を一度抹消し、僅かな期間でも控え野手や救援投手を補充するケースが目立ちます。従って、中日は投手も野手も入れ替えが多く、短期間でファームに落ちていく選手も珍しくはありません。
もう少し具体的に、ポジションごとの登録抹消回数をシェア率で見ていきましょう。
投手の入れ替え率が高いのは広島、ロッテ、楽天、ヤクルトなど。野手の入れ替えが過半数を超えているのは巨人、日本ハム、阪神、オリックスなどです。若手育成に力を入れる阪神は、野手に関しては一度昇格させた選手を簡単には落とさず、ある程度の力が見えてきた時点でファーム行きを命じるなど、金本知憲監督はある意味で勝敗を超えた起用を続けています。巨人は、投手事情が苦しいにもかかわらず、ブルペンに置く投手をファームに落としたのは3人、シーズンを通じて10人で稼働させている状況です。昨日、メンドーサ投手が登録を抹消されこれでようやく4人目となりましたが、野球賭博問題により4人の投手が契約解除された影響が明らかです。
パ・リーグ首位のソフトバンクやそれを追いかけるロッテ、セ・リーグ首位の広島の抹消回数が少ないのは、実際の順位以上に戦力値が安定していることに起因していますが、これもオフの補強からキャンプを通じてチーム運用が成功している理由と見て良いでしょう。出遅れた球団、苦戦している球団も、一刻も早く戦力を整え、反攻に転じて欲しいものです。