• 1.02 Column

王貞治とクーパーズタウン:パート2 Sadaharu Oh and Cooperstown, PartⅡ ~王はアメリカ野球殿堂入りに値するか~

Jim Albright

2017.10.17



このテキストは日本の野球に強い関心を持つ米国の野球分析家であるJim Albright(ジム・オルブライト)氏が、自身のサイト(http://baseballguru.com/)で発表したものを、許可を得て翻訳したものである。オルブライト氏は15年以上前より、「もし王貞治選手がMLBでプレーしたら、どれだけホームランを打てたか」「MLBで殿堂入りするクオリティを持った選手だったか」などを検討してきた。なおクーパーズタウンとは、アメリカ野球殿堂博物館があることで知られるニューヨーク州の街の名前である。15年という長い時間の経過とともに取得可能なデータは大幅に増え、選手の評価指標も進化した。オルブライト氏も当初はWins Share(WS)を用いて分析してきたが、現在はWins Above Replacement(WAR) へと変更している。さらには日米間で選手が移籍した事例が積み重ねられたことも、より正確な評価をすることを可能にしつつある。そうした環境の変化を受けて、改めて王選手の評価を試みたのがこのリポートである。パート1はこちらから

III. 統計的分析


個人的な予測

パート2では、王選手が殿堂入りに値する選手であったかを検討していく。ここでは彼の日本での成績から、MLBでのプレーした場合に残したであろう成績を予測する分析手法を用いる。我々が使用するのはあくまでMLB予測成績であり、日本で実際に残した成績は用いない。これはMLBではないリーグでプレーした選手の成績を、そのままMLB選手の中に放り入れてしまうのは不公平だからだ。MLBの外の選手を評価しMLBでの殿堂入りの可否を検討する際は、MLBでどこまで活躍できたかをいかに予測するかが大事である。

用いた手法の説明をしていく。予測成績は通算の打席、得点、安打、二塁打、三塁打、本塁打、打点、四球、打率、出塁率、そして長打率について算出した。王選手の成績を予測する上で一番大きなポイントとなったのは、日本の球場でNPB(セ・リーグ)の投手と対戦することと、アメリカの球場でMLBの投手と対戦すること、その違いをどうとらえるかだ。

幸運なことに、1960年〜80年の間にセ・リーグとMLBの両方でプレーした選手が66人いた。彼らのセ・リーグとMLBそれぞれでの本塁打率(ここでは本塁打/打数とする)の違いは、王選手の予測成績を導き出す上で参考にすることができた。私の調査では、66人の選手が放った本塁打は、日本とアメリカの極端に狭い球場、いわゆる“ホームランパーク”でのものではないということがわかっている。

セイバーメトリシャンのビル・ジェームズが“old player’s skill”と名付けたことからもわかるように、本塁打を打つスキルはキャリアを積んでも衰えにくいものである。私もこれまで、加齢が原因で本塁打を打つスキルが落ちていくことを証明した研究を目にしたことはない。今回は加齢が成績の変化に与える影響については、あまり考えずに話を進める。

私はセ・リーグとMLBの成績を以下のような順序で比較していった。まず、セ・リーグとMLB、両リーグでプレーした選手のそれぞれのリーグでの成績をシーズン別に集計する。次に60~80年の期間内通算で打数が少なかった方のリーグ(A)での打数と本塁打数を抜き出す。少ない方のリーグ(A)でプレーしたシーズンにできるだけ近いシーズンのもう一方のリーグ(B)の成績の打数と本塁打数を、(A)に近いシーズンから同じ打数になるまで遡り、抜き出し本塁打率などを計算し比較する、といった手順だ。

具体例として、2人の選手のパターンを挙げてこの手法を説明する。


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編集部注:80年にホワイトがMLBでプレーし、セ・リーグと同じ469打数を記録した際の本塁打を予測している。最も近いシーズンである79年に記録した205打数で記録した3本塁打に、78年に記録した346打席から264打数を分離し、その打数で打ったと見込まれる6.1本塁打を足し予測値=9.1本としている。ホワイトは81、82年もセ・リーグでプレーしているが、王選手のキャリアは80年までであるため、80年のみを対象シーズンとしている。

このような手法を条件に該当する全66選手に行った。最も大きなサンプルをもたらしてくれたのはウィリー・カークランドで、2323打数でMLBなら100.2本塁打、セ・リーグなら126本塁打という計算になる。


全66選手の合計では、23817打数でMLBなら575.0本塁打が、セ・リーグなら1071.9本塁打が出る推計となった。ここから、セ・リーグとMLBの本塁打の出方の差を求めるため、MLBでの本塁打数である575.0をセ・リーグでの本塁打数である1071.9で割る。こうして最終的に導き出されたセ・リーグに対するMLBでの本塁打の割合は0.536となった。同様の方法を本塁打以外(安打、二塁打、三塁打、四球)用いて最終的に出た数字は以下のようなものとなった。


安打:0.904/二塁打:0.829/三塁打:2.149/本塁打:0.536/四球:1.148

MLBとセ・リーグの安打各種、四球の出方の差を用いると、王選手のセ・リーグでの成績からMLBでの成績を予測することができる。なお、王選手はプロ野球人生でケガに苦しむということはなかったため、ケガの期間の成績の扱いなどは考慮していない。また、彼がMLBでどれほど出場機会を得ていたかも想像するほかないため検討していない。

私は王選手のMLBでの成績を予測する上で、いくつかのガイドラインを設定した。


1)日本で優れた記録を残した年を、マイナーリーグでの最終年と考える。(MLBでは王選手のように高校卒業後すぐにメジャーへ昇格する選手がいない。またメジャー昇格の前にマイナーで1年間成功をさせることが一般的となっている)
2)王選手が一塁手として活躍したシーズンに限り、MLBの長いシーズンにうまく対応できたであろうと仮定する。(この条件に沿うと、王選手がマイナーでプレーしたであろう2、3年の空白が考慮される)

MLBデビューと引退予測

王選手のMLBでの出場機会を決定するにあたって、3つのシーズンが引っかかっていた。1961年、62年、そして80年である。当初のガイドラインによると、60年より成績は劣ってしまうが、61年が王選手のMLBでのルーキーイヤーとなるとした。打率の計算をするまで、61年が日本プロ野球で結果を出し始めた2年目と判断していた。しかし、61年の日本での成績をMLBの成績へと変換すると、打率.228で本塁打がわずか7本と一塁手としてはあまりにも物足りない成績となった。そこで、我々は打率.246、本塁打が24本という成績を残した62年がよりルーキーイヤーにふさわしいのではないかと考えた。この成績は、22歳で将来を嘱望されMLBデビューを果たしたルーキーとしてはとても素晴らしい成績のように感じられる。

デビュー年を考えることが困難だったように、引退年に関しても考慮する必要があった。80年に40歳であった王選手は、18シーズンで素晴らしい成績を残し続けていたが、年齢の影響からか成績が伸び悩んでいた。MLBの成績へと変換すると(日米の試合数の差は考慮せず)打率.214、16本塁打、72四球、出塁率.323となったため、80年を彼が引退する年と考えることにした。


四球

我々が今回使用する四球数は1.000であり、MLBの長いシーズンに合わせることもしない。王選手の通算四球数は、そのままMLBに持っていっても歴代で3番目の数字だ。MLBの試合数に合わせて等倍すると39%も増えてしまう。となると、我々の計算に対する信用が問われ、さらに王選手が1回のバッターボックスで4つストライクを与えられていたのではないかという議論が再燃してしまう。実際に4ストライク与えられていたかは別として、王選手が素晴らしい選球眼を備えた選手であったことに違いはない。


盗塁

四球数と同じように、王選手を評価するにあたって盗塁というのは微々たるものでしかないため、実際に記録した84という数字を用いる。王選手は長距離打者でありキャリアを分析する上で盗塁はそこまで注目しなくてもいい。


1972年のシーズン

上記されているように、私は62年を王選手のMLBでのルーキーイヤーとして考え、80年を最終年とすることを決めた。(80年は、年齢などの影響から出場機会が減ると予想されるので実際の試合数を用いる)さらに問題となるのが72年だ。この年、MLBではストライキが行われ、155試合ほどと他の年に比べ試合が少ない。72年の成績に関しては155試合として扱い、以下で述べる球場補正値を掛けて調整することとする。(ただし四球は実際の数を用いる)


球場補正

ここでは、球場補正について見ておく。もし、読売ジャイアンツのホームゲームでの得点、アウェイでの得点の入手が可能であれば、アウェイ得点をホーム得点で割り、(試合数が異なる場合はそろえる必要がある)導かれた値を平方根し、安打、二塁打、三塁打、本塁打、そして四球の数で掛ければよかった。しかし私が望んだデータの入手が不可能なため、リーグの1試合平均得点で代替し、読売ジャイアンツの得点で割り、平方根、そして上記と同様に、ヒット、二塁打、三塁打、本塁打、そして四球の数を掛けることにした。結果、当初私が望んだデータに相当する値を得ることができた。

王選手の現役時代、読売ジャイアンツにはNPBで史上最高レベルの打者と言われる選手が2人いた(編集部注:王と長嶋)ことで得点が多くなり、打者有利の球場でプレーしていると思われがちだったが、実際は球場の影響はそれほど大きくはなかった。私がここで用いる得点数は、王選手の打席数でかけられ、合計を求めたのち、彼の通算打席数で割ることで球場補正要因に対応した。上記のデータ(安打、二塁打、三塁打、本塁打、そして四球)に当てはめられた平方根の値は0.979となった。


MLBの長いシーズンからわかること

MLBの成績へと変換した後の打数や打席数などの全体数はMLBのシーズンの方が長いため日本での成績より増えるが、日本での最初の3年(1959〜61年)が対象としなければ変換したMLBでの予測成績は日本での成績より劣るものとなる。王選手のキャリアが短くなったことで打率や出塁率などの率系の数字に対する影響も多少見られる。彼は62年以降のシーズンで8%以上の多くの安打を打つことができるが、同時に20%以上多くの打数を与えられているというのも事実だ。また本塁打も日本での本数よりも64%減少する。ここからは日本のレベルがMLBより劣っていたことがわかる。


得点と打点

ここでは、得点と打点について述べたい。私が近年取得した回帰分析(regression)のスキルがとても役立つ。私の回帰分析では、1919年以降にMLBでプレーした選手をサンプルとした。それ以前の本塁打の数が限られていた時代の野球は異なるスポーツと見なすためだ。さらにMLBの選手でも殿堂入りの可能性がある十分な出場機会を与えられた選手に絞った。野手で最低5000打席に達しておらずそれでも殿堂入りを果たしたのはニグロリーグで数シーズンを過ごした選手であった。


 ①得点

本塁打を打った際、選手は自らも得点するので、得点のための回帰分析から本塁打を抜いた。私は何度一塁ベースからスタートしたか(安打-二塁打-三塁打-本塁打)、二塁ベースからスタートしたか(二塁打)、三塁ベースからスタートケースと盗塁(三塁打+盗塁)を計算した。三塁打と盗塁は、スピードが大きく関わってくるため、たどり着いたベースから得点できる機会があるかどうかの他に、該当選手に得点できるスピードがあったかどうかも関係する。4つのカテゴリーの最小予測P値(least predictive p value)は、10-13のレベル上にあることがわかり、決定係数(r-squared value)は0.927を超えるものとなり、回帰分析による通算得点数の計算はとても妥当だと言える。さらに、本塁打が付け足されるとより正確になる。標準誤差(standard error)は60.9得点以下であった。一塁ベースから始まる際の係数(Coefficients)は0.245093、二塁打が0.479712、三塁打が1.522654、盗塁が0.453462、そして切片が(intercept)-34.7247であった。計算式は以下である。


0.245093×(安打-二塁打-三塁打-本塁打) + 0.479712 ×二塁打+1.522654×三塁打+0.453462×盗塁=得点–本塁打

MLBへの成績へと変換された私の予測結果と実際の盗塁数(82)を用い、本塁打を足し戻した結果、1789という答えを得ることができた。


 ②打点

打点では、安打、二塁打、三塁打、そして本塁打の回帰分析を行おうかと考えたが、係数(Coefficients)が-1.5以下となった。この結果からある選手はリードオフで打点機会が少ないということを認めなければならない。0から-0.5の係数(Coefficients)は違和感なく使え、-0.5から-1.0の係数(Coefficients)は使える可能性はある。しかし、今回のケースでは-1.5以下となってしまった。それでは、ワンヒットが全ランナーを帰すことになってしまう。そこで、三塁打を抜きとして回帰分析をしてみよう。最小予測P値(least predictive p value)は、10-35となり、決定係数(r-squared value)は0.95となった。そして標準誤差(standard error)は67.7点以上であった。安打の係数(Coefficients)が0.196225となり、二塁打が0.693741、そして本塁打が1.96489となった。切片(intercept)は17.31794であった。計算式は以下である。


0.196228×(安打–二塁打–三塁打–本塁打)+0.693741×二塁打+1.96489×本塁打+ 17.31794

王選手のMLB予測成績を上記の公式に当てはめると、打点が1723ということがわかった。


MLB変換成績

ここまでの検討結果を考慮し、王選手の日本での成績をMLBの成績へと変換すると以下のようになった。


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MLBの成績へと変換し感じられることは、王選手のMLBチームを相手に戦った交流戦での成績や彼をよく知る元MLB選手、スカウト、または監督などが下した評価にとても近いということである。上記の結果をどうとらえるかは読者の皆さんお任せするが、個人的には結論としてとても正当性があると思う。


さて、ここからは王選手がMLBで残すであろう予測成績を使って、殿堂入り選手たちの実際の成績との比較をしていこう。ここでは、通算成績が未定である現役選手は対象外とさせていただく。


打席数

王選手の予測された打席の±416の範囲に11選手がいることが下記の表で読み取れる。ボンズ、ジーター、そしてアレックス・ロドリゲス以外は皆殿堂入りを果たしている。ジーターも時が来れば殿堂入りするであろうということを考えれば、運動能力向上薬を使用した選手(ここではボンズとロドリゲス)を除いて9選手全員が殿堂入りすることとなる。


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本塁打

さて、次は本塁打数に目を向けてみよう。500~600本を放った選手は計18人いる。マグワイア、パルメイロ、マニー・ラミレス、そしてシェフィールドは運動能力向上薬を使ったとされている。残りの14人のうち、13人がすでに殿堂入りを果たしており、残りはデビット・オルティズである。個人的な意見では、オルティズは50%の確率で殿堂入りすると思われる。


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四球

四球では、トップ6にランクインしている選手達の中で、たった一人殿堂入りを果たしていないのは運動能力向上薬使用のボンズである。


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塁打

下記の塁打数では、王選手の予測成績から100圏内にいる全てのMLB選手が殿堂入りを果たしている。


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出塁

出塁数においては、5人のMLB選手が王選手の予測成績から200圏内におり、4人がすでに殿堂入りを果たしている。残りのジーターもすぐに加わるであろう。


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出塁率

次は出塁率を見てみよう。10000打数に到達しており、通算出塁率が.390から.410の選手のリストが下記である。シェフィールドは運動能力向上薬を使用したため難しく、またアブレイユも可能性は低そうだが、トーミとチッパー・ジョーンズはすぐに殿堂入りを果たすことが予想される。


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得点

得点数では、王選手の予測成績から±140の範囲内に11人のMLB選手がいる。下記のリストで3選手が殿堂入りを果たしていない。パルメイロは運動能力向上薬を使用したため難しく、ジョニー・デーモンの殿堂入りの可能性も低そうだ。ジーターは時が来れば殿堂入りするだろう。


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ここまで、王選手の予測成績を7つのカテゴリーにおいてMLB選手のランク内に収め、比較をしてきた。これを見る限りは——私の王選手のMLB予測成績を受け入れるのであれば——彼が殿堂入りできる選手であったことは一目瞭然だ。


その他の予測

ビル・マクネール氏は著書『The King of Swat』において、王選手の成績を550打数と設定し分析している。私も条件を揃え比較してみることとしよう。


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上記の表から見て取れるように、我々の予測はわずかに似ている。私は、マクネール氏とEメールをやり取りし、彼は私の予測結果のほうが優れていると評価してくれた。彼がそう判断した理由のひとつとして、彼のシステムでは日本選手すべてを対象に分析したのに対し、私の分析は王選手のみに重点を置いたためだ。どちらのケースでも、我々は王選手が殿堂入りに値する選手であったという結論で同意した。マクネール氏の著書『Other Stars』においても、王選手は歴代の一塁手の部門でゲーリッグとフォックスに次いで3番目に優れた選手とされている。


IV. 王選手MLBでのWAAとWAR


ここでは王選手のMLBでのWARを入手可能な情報を基に求めてみよう。今回私が参考にしたのは、baseball-reference.comで取り扱われるバージョンのWARである。


1)Batting Runs (打撃得点)を求める。Linear Weightsを用いた。

0.32×四球+0.48×単打+0.80×二塁打+1.12×三塁打+1.44×本塁打-0.10×アウト

結果は1982.3点となった。


2)次に試合数を求める。(ダブルプレー、盗塁失敗、そして走塁ミスなどを考慮し1試合当たりのアウトは25.5と設定する。

(打席数-ヒット)/25.5

結果は296.0となった。


上記の評価は、MLBのものであるため、どの得点数を用いるか決める必要がある。第一のルールとしては、王選手はセ・リーグでプレーしていたため同じくDHのないナショナル・リーグを代わりとして扱うが、1973年よりアメリカン・リーグがDH制を取り入れたため、それ以前のシーズンは得点を多く記録したリーグを用いた。私は、ナショナル・リーグの数字が、王選手がMLBでプレーすると予想される各シーズンに使用されたという主張に対して1つの例外があると思う。彼の予想される打席数を掛け重み付けすることによって通算平均得点合計を計算した。そしてすべての重み付けされた数を合計し、予想された打席数でそれを分割した。この結果は、彼が創出した25.5アウト当たりの平均得点と、勝利ごとの得点の数を計算するために使用された。この場合、1チーム当たり1試合の得点が4.10点であった。Batting Runs Above Averageに関しては、1982.3打撃得点から(4.10×296試合)を減算し、768.8という答えにたどり着く。小さな四捨五入に関する問題があるのは、スプレッドシートで計算する際に四捨五入を怠ったためである。

Baseball ReferenceのWAAには、走塁とダブルプレーのRuns Above またはBelow Averageが記載されている。それらは2つの異なるカテゴリーであるが、私は1954年(GIDP〈Grounding Into Double Play〉データを得ることができた初年)以降に最低5000打席に達しているMLB選手から異なる2つのカテゴリーの合計の回帰分析を行うことができた。私は回帰分析において3つのカテゴリーを使った。

1)三塁打/(ヒット-本塁打)
2)三塁打
3)盗塁

上記3つのカテゴリーの最低予測P値(least predictive p value)は0.00049以下で、決定係数(r-squared result)は0.698以上、標準誤差(standard error)は17.5以下となった。係数(coefficients)は108.4542(三塁打/(ヒット-本塁打))、0.288497(三塁打)、そして0.134134(盗塁)であり、切片(intercept)は-30.9337となった。計算式は以下である。


108.4542 ×(三塁打/(ヒット–本塁打))+0.288497×三塁打+0.134134×盗塁-30.9337

王選手の予測成績からの数字と、彼の84盗塁から-6.3という値を得ることができた。


Baseball ReferenceのWAA計算で、次に大事となるのが最も解くことが困難な該当選手の守備位置のFielding Runs AboveまたはBelow Averageである。王選手とNPB選手の限られたデータからある程度の計算を導き出すのはとても難しいものだった。守備位置ごとのゴールドグラブ賞を用いることで、幾分成果を出すことができた。係数(coefficients)は以下である。


11.73626(捕手でのゴールドグラブ賞)
11.26132 (一塁手でのゴールドグラブ賞)
7.581625 (二塁手でのゴールドグラブ賞)
18.98308 (三塁手でのゴールドグラブ賞)
14.67945 (遊撃手でのゴールドグラブ賞)
11.45049 (外野でのゴールドグラブ賞)
切片(intercept)は、-7.66891である。

一塁手での最低予測P値(least predictive p value)は0.000107、決定係数(r-squared value)0.265、そして標準誤差(standard error)は56.7となった。結果としてはとてもばらついているが、全ての選手が平均であると仮定するよりは妥当だと思う。私はNPBのゴールデングラブ賞をMLBのゴールドグラブ賞へと当てはめ、事実王選手は9度ゴールデングラブ賞を獲得している。そのうちすべてが一塁での獲得で、計算すると一塁手としてはとても望ましい、+93.7となった。

最後のカテゴリーは、守備位置補正で、Baseball Referenceは-9(150試合当たり)*9イニングとしている。王選手は2度外野での出場があるが、130試合に出場したシーズンでは一塁で130試合に出場した。王選手は32試合において守りに就かず、そのうち16試合は1962年(私が彼をMLBデビューさせた年)であった。残りの16試合に関してはリーグ補正要因(league adjustment factor)によって20試合に切り上げた。王選手は守備についた試合では4.2打席多くなるため、守備に就いた試合はすべて9イニングと仮定したいと思う。そのため、150試合当たり-9得点を使うことができる。20試合を推定すると、2975/150×(-9)となり、守備位置補正の結果は-178.5得点となる。

Runs Above Averageを求めるために、768.8 Batting Runs Above Averageから6.5 Runs Below Averageを減法し、(走塁とGIDPのコンビネーション)一塁手の93.7 Runs Above Averageを加法する。そこから、178.5の一塁手補正得点を減法し、最終的に677.7 Runs Above Averageを得る。これをWins Above Averageへと変換するには1勝ごとの得点で割る必要がある。最も簡単な方法は、トム・タンゴによって使われた計算の1.5を1試合当たりの平均得点の4.1で割り、3または9.15の1勝当たりの得点を加えるものだ。677.7 Runs Above Averageを9.15で割ることで、74.1 Wins Above Averageが得られる。WAAからWARへと変換するために、Runs Above Replacementとして677.7を加える必要がある。600打席当たり20.5 Runs Above Replacementが計算される。12583打席を600×20.5または600×429.9得点で割るとRuns Above Replacement は1107.7という数字が得られる。1勝当たりの得点は9.10得点なので、これで割るとWARは121.1 ということになる。

以下が王選手のWAAとWARとMLB選手の比較である。


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通算成績を見ていくと、私はゲーリッグや他の一塁手よりも王選手の名前を上位にランクインさせても問題ないとすら思う。WAAではゲーリッグに次いで2位となっているが、王選手はゲーリッグより多くの出場をしている。もちろんどちらの選手がベストであったかという議論はとても難しいし、さらに王選手の成績はあくまで予測であるため、彼が歴代の一塁手の中でベストプレーヤーであったということを認めてもらうことが難しいのは理解している。しかしながら、私は王選手がその議論に名前が挙がるべき選手だと心から思っている。


Ⅴ. その他の問題


「日本人の真のスターは投手である」という意見

私はこれまでに、日本には素晴らしい投手が多くいて、彼らが真のスターだったのではないか、彼らが王選手に先立って殿堂入りするべきではないかという議論を耳にした。日本で投手が真のスターだったということに関しては議論の余地があるが、誰が先かどうかは全く無関係である。彼らの名誉のために、我々は彼らの活躍の評価における課題を一つひとつクリアしていくことにベストを尽くすだけであるはずだ。王選手に匹敵するほどの選手は日本にはいない。


「長嶋選手の方が優れていた」という意見

何人かのアメリカ人ライターは、日本では長嶋選手がベストプレーヤーであると持ち上げられていると伝えている。私には彼らが日本人の意見を正確に読み取っているのかどうかはわからない。彼らは、王選手の父が中国人であったため、長嶋選手が「日本」のベストプレーヤーであると伝えている。さらに、ジョシュ・レイヤー氏の著書では数字上では王選手が優れた結果を出したのに対し、長嶋選手は王選手以上に記憶に残るヒット、本塁打、そして守備で魅了したと記した。

フレッド・アイバー・キャンベルは長嶋選手に隠れていた王選手は長嶋選手の引退の後から頭角を現したと記した。確かに王選手の数字は長嶋選手の引退後からメキメキと上がっていた。王選手がより長い野球人生を送れたのは、彼が選手として優秀だったことに他ならない。2人は15年間チームメイトとしてプレーし、王選手のほうが645試合多く出場した。さらに、長嶋選手より1156打数、697得点、315安打、424本塁打、648打点、1421四球以上記録し、4度多くMVPに輝いた。長嶋選手が強い人気を誇ったかもしれないが、数字上は王選手にはかなわない。2選手の人気は、王選手の寡黙な性格と、長嶋選手の感情的な性格の違いも関わってくるかもしれない。


「ナショナル」野球殿堂でよいのか?

私が最後に言及する議論は、クーパーズタウンにある野球殿堂は、あくまで北アメリカの野球に大きく貢献した選手達に送られる名誉であるということだ。このことについて、私はいくつかの主張をしたいと思う。


・上記の議論に関しては、これまで明確に誰が殿堂入りにふさわしいかという制限がされていない。

・たとえそのような制限が存在していても、かつて下されたネグロ・リーグの選手がMLB選手と同等の基準で認められるという突然の決定と同じように簡単かつ迅速に変更できるだろう。

・野球殿堂は、野球に貢献した全てのベスト選手の名誉を称えるべきだと思う。プレーした場所、相手が誰であれ、野球というスポーツの向上に貢献した選手は大きな財産である。

・野球というスポーツが徐々に国際的なスポーツになっている。2002年には、MLB全選手の25%はアメリカ合衆国50州以外のところで生まれ育っているというデータがある。素晴らしい選手が世界中から来ていることがわかり、さらに加速すると予測される。

現在、多くの外国人選手達にMLBでプレーをする機会が与えられ、異文化で育った選手達がアメリカで活躍を見せている。変化を見せ、世界各地で盛り上がりを見せている野球界だからこそ、日本で殿堂入りに値するほどの活躍をした選手達の名誉をことも大事なのではないかと思う。

さらに、王貞治氏は日本野球に対し、選手として、監督として、チーム関係者として多大な貢献を果たしている。また、現在もMLBで活躍するイチロー選手も王貞治氏に対して畏敬の念を表している。現在、王貞治氏がMLBに及ぼす影響は微々たるものかもしれないが、将来日本人選手が多くMLBで活躍するようになるとこの状況も変わってくるかもしれない。“ナショナル”野球殿堂の議論は、MLBのグローバル化によって絶滅を迎えるに違いない。MLBは将来的に日本に対して大きな影響を及ぼし、日本のファンに喜びを与えていく必要があると思う。その瞬間までどれほど時を必要とするかはわからない。しかし、多くの人が待ち望んでいることに間違いはない。


Ⅵ.結論


王選手の殿堂入りを支持する証拠(データ)が多くあるため、彼が殿堂入りに値する選手だったということが示すことができたと思う。彼を候補とすることに反対する人々は、その意見を否定される山ほどの情報に圧倒されるのではないか。王選手が殿堂入りの原石であることは明らかであり、将来王選手のような原石たちが日本から出てくるだろう。

しかしながら王貞治氏は現在77歳である。数年前に病気を患い、現在は健康的に過ごしているものの、彼自身がファンと共に殿堂入りの喜びを分かち合えるまで時間は限られている。この分析が示した証拠から王選手が殿堂入りにふさわしいと確信した人は、王選手のためにできることをやろうではないか。それは正しいことである。



Jim Albright(ジム・オルブライト)
これまで日本野球と殿堂入りについて幅広く書き、発信してきた。彼の日本野球に関する研究はhttp://baseballguru.com/jalbright/に記載されており、殿堂入りについての研究はhttps://www.baseball-fever.com/member/6251-jalbrightでアクセスできる。

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