プロ野球は7/18より後半戦がスタート。7月末の時点で4カードを消化しました。前半戦で首位を独走したソフトバンク、広島が後半戦でも突っ走ってしまうと、優勝争いの興味は早い段階で消えてしまうことになりそうですが、これに待ったを掛けそうな球団も現れています。また、クライマックスシリーズ(CS)への出場は半数以上の球団が可能性を残しており、後半戦はこれまでとは違った争いが見られそうです。
<セ、パ両リーグの順位おさらい>
7月末の時点で、前回と順位が入れ替わったのはセ・リーグの4位(阪神)と5位(中日)のみでしたが、両リーグともゲーム差が詰まったところはいくつもあります。セ・リーグは、6/14からの22試合を18勝4敗とダッシュを掛けた広島が、後半戦に入るとやや勢いが止まり、特に先週対戦した巨人、DeNAといったAクラス球団との対戦では2勝3敗と負け越し。後半戦最初の11試合でも6勝5敗と足踏みしています。
その広島を追いかける巨人とDeNAは揃って好調。巨人は3連戦スウィープが2度、DeNAは4カード全てに勝ち越しと、チームに勢いと安定感が見えて来ました。今回のレビューから勝敗チャートは後半戦以降のデータとなっていますが、こちらを見ても両球団が幸先の良いスタートを切っていることがわかります。セ・リーグは首位と2位、3位のゲーム差が縮まったため、AクラスとBクラスの差が開いてきました。主力野手に故障者が続出しているヤクルトは、先週の2カード6試合に全敗。レギュラーと控えの実力差が大きい球団だけに、8月以降はさらに厳しい戦いになるかもしれません。
阪神は、7/24の広島戦で不調の鳥谷敬選手をスタメンから外してから、打撃陣が見違えるような働きを見せています。課題とされてきた長打力不足も、後半戦の12試合だけで既に10本塁打を記録し、ようやくチームが軌道に乗り始めました。中日は後半戦3勝9敗とスタートに躓きましたが、右手有鉤骨の骨折で長期離脱していた高橋周平選手が7/28のDeNA戦から復帰。巻き返す材料は残されています。
パ・リーグは、日本ハムとオリックスが後半戦のスタートダッシュに成功。6月から7月に掛けての15連勝で首位に急接近している日本ハムは、大谷翔平投手の投打に渡る活躍に引っ張られ、7/29からのソフトバンク3連戦にも2勝1敗と勝ち越し。ついに、首位とのゲーム差を3.0まで縮めました。オリックスは、7月に入ってから41犠打と地味ながら繋ぐ野球を展開。チームの得点力は後半戦平均3.25と低いままですが、山田修義投手や松葉貴大投手といった先発左腕の台頭がチームの躍進を支えました。
ソフトバンクは、後半戦開幕カードのオリックス戦で2試合連続完封負けと躓き、日本ハムとの首位攻防戦にも負け越しましたが、まだまだ首位のアドバンテージは失われていません。ただ、8月は14日までの4カードのうち3カードがアウェイで、唯一のホーム主催カードも2位日本ハムとの直接対決と厳しい日程が待っています。ここを乗り切れれば、リーグ3連覇が見えて来ます。ロッテ、楽天、西武の3球団は勝敗以上に苦しい戦いが予想されます。新戦力の台頭を待ち巻き返しを狙うか、或いは来季に向けた準備を始める時期に差し掛かろうとしています。
<各球団前半戦の戦力値>
セ・リーグ各球団の戦力値は、得点に関する数字が軒並み上昇し、失点データが悪化するケースが目立っています。リーグ全体の平均得点は、前半戦の3.93から後半戦は4.50となっています。この2週間で平均得点、平均失点ともに良化したのは巨人(平均得点3.37→3.59、平均失点4.04→3.80)という状況でした。その巨人は、先発防御率でとうとう広島を追い抜きリーグトップの数字をマーク。6/25に1軍復帰を果たしたマイコラス投手、後半戦2戦2勝の内海哲也投手の復活が大きく、チームに勢いを与えています。守備の面でもやや改善の兆しがあるのは、センターで起用している橋本到選手(UZR8.1)、7/8に故障から復帰した小林誠司選手の存在が大きいといえます。ファームでは、クルーズ選手が実戦に復帰しており、2塁の穴を埋めることが出来ればチーム力はさらに増しそうです。
DeNAは後半戦リーグトップの平均6.00得点を叩き出しながら、失点の方も平均5.50点と大味な試合が続いています。先発陣の立て直しは徐々に図られていますが、前半戦で21ホールドを挙げチームに貢献していた三上朋也投手が、後半戦では3つの救援失敗と不調。
7/31の広島戦は、2点リードの7回にマウンドへと向かいましたが、新井貴浩選手に同点打を浴び、さらには味方のエラーと8回にも失点を許し、チームは3連勝となりませんでした。
前半戦終了時点で得失点差-56だった巨人が急激に調子を上げてきたことにより、今後は広島、DeNAとの三つ巴を予想するファンが増えています。3球団の直接対決は、今秋から来週にかけ全て対戦が組まれており、巨人は8/5から敵地での広島3連戦、8/9から本拠地でのDeNA3連戦が続きます。巨人との対戦が予定されるDeNAは、その直後となる8/12から今度は本拠地での広島3連戦。どちらも、優勝争いの権利を手にする重要なカードになるでしょう。
パ・リーグの戦力値は、日本ハムが平均得失点差、平均得点、打率、本塁打、盗塁、先発防御率の部門でソフトバンクを抜きリーグトップの数字を記録しています。どれもが僅差で、両球団の戦力は全くの互角と言える数字ですが、勢いの点では日本ハムに分があるのは間違いないでしょう。両球団の直接対決での成績は日本ハムの10勝6敗1分で、7月以降の対戦も日本ハムが5勝1敗と圧倒しています。そのため、平均得失点差も日本ハムが+0.82と優勢で、ソフトバンクは日本ハム戦での相性の悪さを克服しない限り、リーグ優勝は見えて来ません。直接対決でのソフトバンク、日本ハムは非常に特色のある戦い方をしています。
ご覧の通り、本塁打や盗塁などの仕掛けは日本ハムが優勢で、先発投手陣の出来も圧倒しています。反対にソフトバンクは、継投策での失敗が少なく、失策の数、打者の四死球、投手のK/BBでは日本ハムを勝る数字を残しています。豪快に攻め、先発を引っ張って勝ちに行く日本ハムと、繋ぎの野球とミスの少なさで勝利に導くソフトバンク。今週末には再び両者の直接対決が控えていますが、今回はどんな戦いになるでしょうか。
<チームUZRと得失点差の推移について>
今回のサブテーマは、各球団の守備指標と得失点差の推移を再確認してみましょう。開幕から2週間単位でのチームURZは、以下のようになっています。
<セ・リーグUZR推移>
<パ・リーグUZR推移>
パ・リーグは、ソフトバンクと日本ハムの2球団が飛び抜けており、セ・リーグの球団を含めたマイナス分をプラスに置き換えたような状況です。ソフトバンクは昨年、一昨年も大幅なプラスでしたが、日本ハムは昨年の-1.1から大きく上昇。改善されているのは、主に田中賢介選手が守るセカンドでのポイントが大きく(-9.3→-0.7)、後半戦に入ってからはゲーム終盤に飯山裕志選手を守備固めで起用する試合が増えています。田中選手は昨シーズン後半、疲れからか打撃と守備の両面で数字を落としてしまう時期があり、スタミナを温存する意味でもこうした起用は続きそうです。
後半戦に入ってから数字を上げてきたのはオリックスで、主な要因としては、ようやく調子を取り戻してきた安達了一選手が、7月好調の打撃(月間打率はリーグトップの.380)と共に守備面でも動きが良くなってきたこと。さらにセンターに駿太選手を固定、サードで起用されている大城滉二選手も無難な守りを見せています。バックの守りが良くなったことで投手陣も立ち直り、この2週間で先発防御率は4.36から4.14、救援防御率も4.38から4.07とかなり改善されてきました。
セ・リーグのチームURZは、激しく変化する球団と一定したレベルを保つ球団とに分かれている面はあるものの、上位と下位の差は小さくありません。先発オーダーが固定されている広島は、ここまでのシーズン中はほぼ一定の数値をキープ。中日は、ライトの守備でチームに貢献する力を持つ平田良介選手が、腰痛などの問題を抱えてか今シーズンはやや精彩を欠いています。ヤクルトも、雄平選手らの故障により代役として起用される選手の守備力が、失点阻止の大きな鍵を握っています。
<セ・リーグ平均得失点推移>
<パ・リーグ平均得失点推移>
続いてはチームの得失点差(平均)で、日本ハムの猛追は快進撃を見せた7月上旬よりも遥か前の5月下旬には、ロッテを抜いてリーグ2位の数字を出していました。昨シーズンの阪神のように、順位と得失点差が連想しないケースも発生することはありますが、シーズンが進むにつれ実際の順位に近い状態になっていく様子は理解いただけると思います。
7月も終わり、各球団の支配下登録も全て完了。今後は補強に頼らず、チームに在籍する選手たちの力によってペナント争いが展開されます。ひと試合でも多くの好ゲーム、最後までもつれた優勝争いなど、最後まで目の離せないシーズンとなるよう、選手たちには頑張ってもらいたいものです。