3月29日、ついに2024年のプロ野球が開幕する。開幕に先立って1.02ではDELTAアナリストに順位予想を依頼した。予想を行う手法は各自自由に選んでもらい、簡単なコメントをもらい掲載している。アナリストによっては機械的に成績を予測するプロジェクションという手法を採用しているが、その機械的な予測の中でも意見が割れている。これは予測の要素に何をどれだけ織り込むかの差である点に注意してほしい。今回はセ・リーグ編。パ・リーグ編はこちらから。

阪神連覇も昨季に比べると混戦を予想(予想者:岡田友輔)

    1位 阪神
    2位 読売
    3位 ヤクルト
    4位 DeNA
    5位 広島
    6位 中日

阪神の連覇を予想する。最大の理由は昨季とそれほど変わらない布陣で戦えること。主力選手もまだ成績を大幅に落とす年齢にはなく、チーム全体として昨季と大きく変わらないパフォーマンスが期待できるのではないかと見ている。

ほかに取り上げるべき点としては昨季5位のヤクルトを3位と予想している。昨季は村上宗隆山田哲人塩見泰隆ら主力野手の貢献度が低下したが、今季はそれが回復しチーム成績も大幅に向上すると考えている。

ただ昨季から考えるとリーグ内の戦力差は縮小していると見るべきだ。昨季は得失点差で首位・阪神が+131、6位・中日が-108と大きな戦力差が開いたが、今季はそれほどの差は開かないと予想する。

阪神は「下振れ」もリーグ最強。中日の打低状況は歴史的(予想者:道作)

    1位 阪神
    2位 ヤクルト
    3位 DeNA
    4位 読売
    5位 広島
    6位 中日

前年優勝の阪神を1番手に挙げる。NPBは1年1シーズンの日程になってすでに84年経つ。しかし阪神は伝統のチームにしては意外なことにリーグ連覇の経験がない。2年前まで新興の楽天と並んで日本シリーズを複数回制覇していない2チームのうちの1つだった。岡田彰布監督の下、球団史上初の連覇があるのか、MLBにおける「〇〇の呪い」破りにも共通するものがあって興味深い。

阪神の戦力については、選手を特定するまでは不可能ながら、想定通りには活躍できない選手が必ず現れるだろう。昨季がかなり上振れを含む状態であったことから、平均への回帰は避けられず「下振れ」は必ず来ることとして覚悟しておかなくてはならない。現象的に見れば不振に陥ったと見える選手や、特に理由はなくとも思うとおりの実績を残せない選手は出てくる。

そのために前年に比べて失われた攻守のマージンを、焦ってリカバリーしようとしたり、1人の活躍で取り返そうと考えたりしないことが重要となる。そうなればかえって泥沼にはまってしまうだろう。攻守共に30点程度の悪化は順当と判断したが、この程度の通常予想される下振れ以上には悪化させないようにしたい。

ただ悪化を織り込んでも計算上はリーグ最大の得失点マージンが残せそうである。投手陣の鍵は上振れの余地があるという点で青柳晃洋と見ている。

2位ヤクルトの攻撃陣はやはり強力。近年不振の山田の打撃がどうなるのかは歴史的に見ても非常に興味深い。

6位に予想した中日は攻撃陣が危機的な状況である。投手優位の時代とはいえ昨季は得点数リーグ5位の広島にすら100点以上も離された。これは記録的な数字である。さらなる失点の改善に取り組んだとしても大きな改善は期待できない。何らかの形で攻撃面での大きな改善がない限り、上位に進出することは難しそうだ。本拠地の改修も検討の俎上に乗っていいのではないか。

予測得点・失点からピタゴラス勝率を算出(予想者:佐藤文彦)

各選手について、WAR(Wins Above Replacement)の構成要素となるOffence・Defense、先発と救援のRARの予測値を算出。各選手の予測値をチームで合計し、そこからチームの得点と失点の予測値を推定。この推定値からピタゴラス勝率を計算し、この値から予想順位を求めています。予測は過去3年分の選手の出場機会と貢献度、年齢の3点から行いました。

野手力で優位に立つ読売が優勝予想。阪神はまさかの4位に(予想者:宮下博志)

成績予測システム“D-CAST”で予測したWARをチームごとに積み上げ、それを勝率に変換し比較を行った。予測は過去3年の成績をベースに算出され、直近のシーズンほど大きい比重となっている。“D-CAST”についての詳しい説明はこちらから。バージョンアップデート情報もこちらに掲載している。

リーグ全体としては強み・弱みがはっきりしているチームが多い。弱みのポジションでブレイクする選手が現れた場合、どのチームも一気に飛躍する可能性を秘めている。現有戦力だけでなく、新戦力によって勢力図が変化する見込みが大きい。

優勝予想は野手WARで優位に立つ読売とした。予測WARが2.0以上の野手を6人擁しており(岡本和真坂本勇人大城卓三門脇誠丸佳浩吉川尚輝)、大きなアドバンテージを作っている。投手陣は先発の戦力は揃っている一方、救援は弱点だ。ただ救援も新戦力の台頭次第で伸びしろを残している。

読売に匹敵する野手WARのヤクルトは僅差の2位予想となった。2連覇に貢献した村上、山田、塩見など昨季不調だった選手が復調する予測。投手陣も一定以上の選手が揃っており、過去2年と比べて改善される見込みだ。

3位予想のDeNAは投手、野手ともにリーグ平均以上のWARが予測されている。今永昇太のMLB移籍や、トレバー・バウアーと契約できなかったことでアドバンテージとなっていた投手WARが押し下げられているが、それでもリーグ上位レベルを維持している。野手は他球団にやや後れをとる状況。ただ遊撃の起用法で上積みを作る余地が残されているほか、オープン戦好調の度会隆輝次第では優勝争いに食い込む戦力となりうる。

昨季優勝の阪神は4位と予想した。投手WARでリーグトップに立ったが、野手WARが伸びなかったことが原因となっている。昨季打撃でキャリアハイを記録した近本光司大山悠輔佐藤輝明は昨季ほどのWARを記録すると予測されていない。昨季大幅に成績が向上したため、直近3年の成績から予測を行う“D-CAST”ではそれほど振るわなかったかたちだ。ただ昨季ブレイクした村上頌樹は投手WARの予測でセ・リーグ1位となるなど投手陣は健在。野手が昨季の成績を維持できるかがキーポイントとなる。

阪神からやや後れて5位予想となったのが広島。安定した先発ローテーションと、小園海斗坂倉将吾など期待値の高い若手の台頭が強みとなっている。レギュラー陣のほかに、末包昇大矢野雅哉らは予測成績自体はそれほど高いわけではないが、それをシーズンフル出場換算すると2.0WAR以上を超えており、チーム戦力は充実しつつある。

中日は6位予想。投手、野手ともに厳しい予測となっている。特に野手のディスアドバンテージが大きい。こういった場合にチームに大きな弱点があるのであれば、穴埋め選手が登場するだけで大きな上積みを作ることができる。しかし中日の場合レギュラー陣に全体的に薄く弱点が散らばっているため、ポジションの穴埋めでは差を縮めにくい。チームの飛躍は大きな強みを作れる野手のブレイクにかかっている。


パ・リーグ編はこちらから。
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