プロ野球は13日に前半戦を消化。4日間のオールスターブレイクを挟んで、来週18日からペナントレースが再開します。今シーズンはセ・リーグが広島、パ・リーグはソフトバンクが独走し、明暗が分かれる部分もありますが、クライマックスシリーズ(CS)も含めて順位争いの興味が失われたわけではありません。今回の1point0.2レビューは、各球団の前半戦総括を中心にリポートしています。
<セ、パ両リーグの順位おさらい>
前半戦最後の3カードは、地方球場での試合及び9連戦を行うチームなどやや変則的な日程で、両リーグ共に上位と下位のゲーム差が開く形となりました。セ・リーグは、首位広島が低迷する阪神を叩いて貯金を伸ばし、7/12の巨人戦でリーグ最速の貯金20を記録。パ・リーグでも、ソフトバンクがオリックス、楽天、ロッテとのカードで6勝2敗と大きく勝ち越し、こちらはついに貯金30に到達しました。
6/19から10連勝中だった日本ハムは、今週11日のオリックス戦まで連勝を15まで伸ばしましたが、ソフトバンクとのゲーム差は縮まらず、ゲーム差は6.0と開いたままです。ロッテは日本ハム、ソフトバンクとの上位対決で5連敗。ここまで順調だったチームも限界点が見え始めました。巨人はホームでの阪神、DeNA戦を5勝1敗と大きく勝ち越し、勝率5割まであと1勝に迫っています。
後半戦は各球団とも、戦力を再び整え臨むつもりでしょうが、優勝から完全に見放された球団は来季以降の戦力も視野に入れた戦いが必要になります。ファームと連携し、一人でも多くの戦力を発掘、育成することが重要です。
ここからは、各球団前半戦の戦いを戦力値の移り変わりを見ながらおさらいしていきましょう。
<各球団前半戦の戦い振りを戦力値でおさらい>
開幕してからの3カードは4勝5敗と、スタートダッシュには失敗しましたが、昨シーズンは怪我に泣いたエルドレッド選手が春先から好調。右太腿を痛めて開幕1軍から漏れた鈴木誠也選手も、開幕10試合目にあたる4/5のヤクルト戦から戦列に復帰し、以後目覚ましい活躍でチームの躍進を支えました。打線は開幕以来、一貫してリーグトップの平均得点を誇り、1番に田中広輔選手を置いたオーダーが完全に機能。4/26のヤクルト戦では、ベテラン新井貴浩選手が史上47人目となる通算2000安打を達成。交流戦に入ると、ファームで長打力を発揮していた下水流昂選手がブレイクするなど、手の付けられない前半戦でした。
投手陣は、開幕投手のジョンソン投手をフル回転させながら、右肘内側側副靱帯部分損傷により長期離脱した大瀬良大地投手の穴を埋めるため、新人の岡田明丈投手と横山弘樹投手を起用。群を抜く陣容ではありませんが、緒方孝市監督の辛抱強い起用が実を結び、前半戦終了時点で先発防御率もリーグトップに立ちました。ブルペンは、4/22に昇格させたヘーゲンズ投手が大きなポイントで、8回のジャクソン投手、9回の中崎翔太投手らと共に勝ちパターンの継投が完成。捕手、開幕から石原慶幸選手、會澤翼選手、磯村嘉孝選手の3人体制を崩さないまま、ここまで来ています。
1991年以来のリーグ優勝を目指すことになりますが、欲を言えば投手陣のデプスにもう少し厚みをつける必要があります。先発では大瀬良投手、ブルペンは途中加入のデラバー投手がキーマンとなるでしょう。野手では、フレッシュオールスターにも出場した西川龍馬選手、安部友裕選手らがスタメンを脅かすまで成長するか。非常に楽しみな選手が揃っています。
野球賭博問題により、昨オフから4人の投手が抜けた巨人は、非常に苦しい戦いを強いられる前半戦でした。主砲阿部慎之助選手が開幕に間に合わず、先発陣はチーム40試合消化時点で10人を起用するなど、選手のコマが絶対的に不足する日々。そうした中で、坂本勇人選手が攻守でチームを引っ張り、菅野智之投手が登板する試合は5/20の中日戦まで7勝負けなし(引き分けが2試合)と、投打の柱が窮地を救った格好です。
しかし、それ以外の戦力は他球団と比較して見劣りする部分も多く、チームの得失点差は5/6以降ずっとマイナスのままで、前半戦終了時点でのマイナス56点はセ・リーグのワーストを記録しています。それでいて、現在でも2位をキープしているのは接戦に強く、一方で大量失点での負け試合を覚悟した戦い方がこうした状況を生んでいます。6/28の中日戦で大野雄大投手に完封負けを喫した翌日、2-2のタイスコアから村田修一選手が押し出し四球を選び、これが決勝点となった試合のように、地道に勝ちを拾ってきました。
現在は戦力も揃い始め、後半戦は広島を追いかける一番手という声も出ています。何といっても心強いのは、6/25のDeNA戦からようやく復帰したマイコラス投手。菅野投手との二本柱で臨むことが出来れば、負けを計算しないで済む試合が増えるでしょう。打線は、7月に入り村田選手が好調、左足首を痛め離脱中のクルーズ選手も復帰となれば、攻撃力は一段と増してきます。ただ、守備では一向に上がる気配の無いUZRが示すように、ベテラン頼みの野手陣には不安があります。
前半戦はトータルで見れば善戦、チームとして初のCS進出もじゅうぶん圏内です。開幕から31試合目となった5/3のヤクルト戦で借金11を記録した後、わずか25日間で勝率5割に戻したのは見事でしたが、6/15の日本ハム戦に敗れてから再び借金生活に。貯金をした状態で臨んだ試合数は3試合しかなく、勝率5割がひとつのピークだったことは明らかです。
新任のラミレス監督は、春季キャンプからバッテリー強化を目指し、新人の戸柱恭孝選手を正捕手に抜擢。先発陣では、同じく新人の今永昇太投手が抜群の投球内容を見せ、2年面の石田健大投手が5月度の月間MVPを獲得。ブルペンはさらに充実し、2年目の山﨑康明投手、3年目の三上朋也投手を中心に一転して豪華な顔ぶれとなりました。ラミレス監督は、状態の良い投手陣を助けるために守備を重視したオーダーを組むようになり、2塁で宮崎敏郎選手、3塁では白崎浩之選手がディフェンス面で大きく貢献しました。
打線は開幕から苦戦する中、桑原将志選手がトップバッターとして成長。左脇腹の炎症で5/4にようやく復帰した梶谷隆幸選手は、交流戦に入ってからスランプを経験し、一時は7番に下げられましたが、7月は打率.436と調子を戻しています。後半戦も投手陣の整備に余念は無く、MLBジャイアンツからブロードウェイ投手を獲得。しばらくの間は、戦列を離れている今永投手、山口俊投手の穴埋めが大きなポイントになるでしょう。
前半戦で5/8の1日だけ首位に立った中日は、トータルで見れば決して悪い戦いではありませんでした。2週間単位での平均得失点差はほぼ毎回上昇し、プラス収支まであと一歩のところまで来ています。また、チームUZRも広島を大きく引き離しリーグトップの状態。DeNAと同じようにディフェンス型のチームではありますが、今シーズンは攻撃力もアップしています。
阪神との開幕3連戦で3本塁打を放った新外国人ビシエド選手は、5月までに14本塁打を放ちましたが、6月は打率.184とスランプ状態に。しかし、7月に入ると打率.432で3本塁打と復調傾向にあり、後半戦も頼れる4番打者として機能しそうです。また、6/24に1軍再昇格して以来18試合で5本塁打と大暴れしている福田永将選手、遊撃手として屈指の守備力を持ちながら、打撃でも成長を見せている堂上直倫選手らも後半戦のキーマンです。さらに、右手有鉤骨骨折で離脱していた高橋周平選手が、7/11のファーム公式戦から実戦に復帰し、今月後半からの1軍合流が期待されています。チームの得点力はリーク平均以下ですが、広島、ヤクルトに次ぐ3位につけていますので、こちらも好材料です。
気をつけなければならないのは投手陣の運用。ジョーダン投手、バルデス投手らを上手く絡ませている先発陣はともかく、ブルペンは少ない人数を酷使する傾向があります。開幕からの無失点記録を更新した田島慎二投手は依然として好調ですが、中継ぎに不安があり、そのため先発陣へのしわ寄せが心配されます。6月以降完投勝利を4度記録していますが、うち6/11の大野投手、6/30の若松駿太投手は140球以上を記録した上での勝利と、こうした勝ち方がいつまで出来るかも不安材料の一つです。
開幕前には優勝候補にも挙がるなど、金本知憲新監督率いる今シーズンの阪神は、例年に増して熱いスタートを切りました。その期待通り、チーム13試合目の4/8には首位に立つなど、球団のスローガンである「超変革」が早くも効果を現しました。金本監督の若手起用が当たった4月は、3年目の岩貞祐太投手がリーグ有数の先発左腕として成長し、7年目の原口文仁選手が4/27に育成選手から支配下選手へと昇格した後、力強い打撃で正捕手候補の一番手として台頭。高山俊選手、北條史也選手ら、これまで見ることの無かった若手がハツラツとした動きを見せ、チームの前途が一気に開ける雰囲気となりました。
ところが、5月以降チームは徐々に後退し始め、7/6にはシーズン初の最下位に転落。今でも2位以下は混戦状態のセ・リーグですから、ここから巻き返しがあっても不思議ではないのですが、戦力値その他のデータを見てもチームが再浮上する材料は見えて来ません。凋落が激しい打線は、6/1以降の37試合で7本塁打しか記録できず、チームの平均得点並びに平均得失点差は完全な右肩下がり。先発陣の頑張りでなんとか踏みとどまってきましたが、6月以降の平均得点が2.48では挽回しようがありません。また、守備では連続試合出場を続けている鳥谷敬選手の落ち込みも激しく、チーム全体のUZRは両リーグワーストを記録。三振を取れる投手しか計算が立たない点は、若手起用の面でも悪い影響を及ぼしそうです。
岩貞投手や高山選手といった若手にも陰りが見え始めている関係で、後半戦はさらに苦戦が予想されますが、チーム方針を見直すかどうかはまた別の話です。若手の成長に力を注ぐ1年としてスタートを切った以上、このまま若手を試しながらの起用を貫くことがチームとしてはベストな選択のように見えます。長い目で見ればチームが変わるための手を全て打ったような前半戦で、ようやく競争の舞台が整った状況。7/8の広島戦で、敗色濃厚にも関わらず藤浪晋太郎投手に161球を投げさせたような無理な起用を控えれば、チームは再び軌道に乗るかもしれません。
前年度リーグ覇者のヤクルトも、今シーズンは一転して苦戦を強いられています。打高投低のチームバランスは昨シーズンと変わらないものの、先発投手陣の不振が余りにも響いてしまったため、前半戦は首位争いに割り込むことは出来ませんでした。それでも2年連続トリプルスリー、自身初の三冠王に向け前進する山田哲人選手の活躍など、決して見せ場が無かったわけではありません。
そんな今シーズンを象徴したのが、6/3から行われたオリックスとの交流戦。このカードの初戦に3つの死球を与えていた投手陣は、5日に行われたカード最終戦でも、先発した原樹理投手がT-岡田選手、小谷野栄一選手に連続死球を与え、両軍ナインがグラウンドに集まる事態に。この3連戦で打線は17点を奪いながら、投手陣が25点を許してしまいチームは3連敗。今シーズンここまで2ケタ失点は8試合、4失点以下なら21勝15敗という成績なだけに、投手陣が整備されれば戦える状況にもなります。
一方、打線も山田選手の成績を除くとチーム打率は.266から.256に、同OPSは.736から.683へと急激な落ち込みがあるため、山田選手1人に掛かる負担が大きいのも確かです。後半戦ではせめて、投打であと1人ずつリーグ有数のプラスを生み出せる選手が欲しいところ。投手では、腰の張りでファーム調整中の小川泰弘投手、打者ではバレンティン選手の巻き返しに期待したいところです。
前半戦を終えての貯金30は2005年に次ぐハイペースで、交流戦でも2年連続6度目の優勝に輝いたソフトバンク。開幕10試合消化時点こそ、3勝5敗2分でスタートダッシュに失敗しましたが、以降は破竹の勢いでリーグを独走しました。7月に入り、日本ハムを相手に今シーズン初のカード3連敗を記録したものの、2位とのゲーム差は6.0と大きな開きがあり、残り60試合で36勝以上すると2年続けて90勝の大台に乗る可能性もあります。
投手陣は相変わらず安定し、千賀滉大投手がローテーションに定着。MLBから復帰した和田毅投手も、リーグトップタイの9勝を挙げ、新外国人スアレス投手は早くも中継ぎエースとして機能。育成と補強の効果が着実に表れています。先発投手の平均投球回数は6.47を数え、これは昨シーズンの6.37を上回る数字。そのため、ブルペン陣はあまり酷使されず、余裕を持った形で後半戦に臨むことが出来るのもチームの強みです。前半戦最後の大一番となった7/12からのロッテ2連戦でも、武田翔太投手と千賀投手の力投でロッテ打線を無失点に抑えたのは、戦力の厚みから来るものでした。
打線は、昨シーズンのMVP柳田悠岐選手が開幕からの連続四球記録を作るなど、勝負を避けられた影響で成績が伸び悩みましたが、リーグ有数の得点力に然したる影響は見られず。5/24のオリックス戦では、5回までに20点を挙げる猛攻を見せ大勝するなど、集中打は健在です。交流戦では、13年目の城所龍磨選手が工藤公康監督の抜擢に見事応え、12球団トップの打率.415、5本塁打を記録しMVPにも輝きました。守備の面でも全くスキが無く、どのポジションでもリーグ平均以上のUZRを記録している点は、後半戦でも安定した戦いが出来る根拠といえそうです。
開幕から1ヶ月以上経っても勝率5割のラインを中々超えることが出来なかった日本ハムは、交流戦の終盤から7月にかけて15連勝したことで、逆転優勝の望みが出てきました。現在の戦力値はチーム打率、本塁打、盗塁でリーグトップ。それ以外の数字もソフトバンクに肉薄し、今この時点でCSを迎えたとするなら、首位チームを相手に互角の戦いも可能でしょう。それだけに、後半戦での戦力整備はかなり重要になってきます。
今シーズンは言うまでも無く、大谷翔平投手の投打に渡る貢献が計り知れないものになっています。投手WARは両リーグトップの4.8、打者としてもWAR2.2を記録し、合わせてWAR7.0は山田哲人選手(ヤクルト)には及ばないものの両リーグ2番目、パ・リーグではトップの貢献度です。そのため、大谷投手が先発もしくは野手スタメンで出場した試合以外の戦いに不安を覚える人もいるかもしれませんが、チームは今のところ34試合を戦い22勝12敗、勝率.647の好成績を残しています。投打二刀流のエースが不在でも遜色ない数字は、ソフトバンクとCSを戦うことになっても心強い点です。
後半戦はソフトバンクを睨みながらの戦いになりますが、7/29から予定される本拠地での3連戦、8/5から始まる敵地での3連戦までに差を詰めておきたいところ。右手にマメが出来てしまい、オールスターは打者のみでの出場となった大谷投手、前半戦は不振に喘いだ中田翔選手が調子を取り戻すことが重要。ブルペンは、増井浩俊投手が先発転向を目指すことになったため、デプスがやや薄くなっています。これらの点をクリアし、勝率でもソフトバンクに追いついたとき、はじめてリーグ優勝が見えてきそうです。
前半戦のロッテは、パ・リーグの灯が消えずに済んだ一番の功労者ともいえる戦いでした。4/5からのソフトバンク3連戦は、ブルペンの粘り強い働きと打線に火が付いたお蔭で勝ち越し。その後もコンスタントに貯金を作り、4月末にはリーグトップに立ちました。交流戦でも最後まで優勝争いを演じ、首位に肉薄するチャンスを掴みましたが、5月以降ソフトバンクとの直接対決は2勝9敗、7/8からの日本ハム3連戦は投打で圧倒され全敗と、上位球団との戦いに課題を残しました。
打線は7月に入り一気に調子を落としてしまいましたが、前半戦打率トップに立った角中勝也選手を中心にソフトバンク、日本ハムにも劣らない攻撃力を保ちました。しかし、その一方で守備の不安は試合が増すごとに大きくなり、特に二遊間は両リーグ平均を大きく割る数字。昨シーズンにブレイクを果たした清田育宏選手は、攻守両面で精彩を欠き続け、前半戦終了間際に1軍登録を抹消されました。後半戦は、ディフェンス面を立て直すか、それとも攻撃力優先かは明らかではありませんが、伊東勤監督はオーダーの見直しを迫られそうです。
投手陣もいくつかの不安要素が出てきました。救援防御率は現在でもリーグ2位の数字を誇っていますが、開幕から中継ぎエースとして働いてきた内竜也投手が右肘に張りを覚え、7/2に1軍登録を抹消されました。また、抑えの西野勇士投手も救援失敗が8度(セーブ失敗3度、同点からの失点が5度)と安定感をやや欠き、ブルペン全般に疲れが見え始めています。先発陣でも、前半戦9勝でリーグトップに立っている石川歩投手は、防御率1.89に対しFIP4.02、xFIP3.72と数字ほどの安定感はありません。こちらも後半戦はかなりの見直しを強いられることになるでしょう。
2年連続最下位からなんとか脱出したい楽天は、第1回レビュー更新時の4/10時点でリーグ首位に立つなど開幕ダッシュに成功。今シーズンから新たに本拠地koboスタ宮城を天然芝に張り替えた影響を好転させ、打線も思わぬ形で得点力をアップさせましたが、4/22の西武戦を最後に借金生活に入り、以降はBクラスに低迷。前半戦終了時点での得失点差を前年、前々年と比較すると、2014年が-21、2015年は-52だったのに対し、今シーズンは-66と、戦力の低下が否定出来ないものになっています。
チーム最大の誤算はゴームズ選手。メジャー13年間で162本塁打を放ったスラッガーには、球団も期待するところが大きかったはずでしたが、開幕から18試合を消化した時点で打率.169、本塁打は1本しか記録できないまま4/25には米国に帰国。翌5/6に自ら退団を申し入れました。このため、チームは外国人枠を余す日が続き、長打力の上乗せが無いまま得点力が下がっていきました。7月に入り、メキシカンリーグでプレーしていたペレス選手を獲得。来日後、2試合連続本塁打と派手なデビューを飾り、後半戦のキーマンとなるのは確実です。
投手陣は、新戦力の台頭は少なく、昨シーズンからの財産でやり繰りしている状況。則本昂大投手はリーグトップの9勝を挙げ、防御率2.37と遜色ないFIP2.54、xFIP2.72を叩き出していますが、投球数は両リーグトップの1924球を数え、年間ペースでは3397球に達する見込み。イニング平均での球数も16.9球と、負荷がかかっています。後半戦はオコエ瑠偉選手、内田靖人選手ら若手の起用がチームの目玉となりそうで、野手の世代交代を実現させ、今秋以降のドラフトで再び若い投手を集めることが出来れば、再建が一気に進む可能性もあります。
今シーズンの西武は、これまで先発の柱として機能していた牧田和久投手を中継ぎに転向させ、勝ちゲームのロング救援というこれまでとは一味違う戦い方を展開し、一応の成功を収める格好となりました。開幕2戦目にあたる3/26のオリックス戦で、4点ビハインドの4回からマウンドに上った牧田投手は、チームが逆転に成功した後も投げ続け、終わって見れば6回79球でシーズン初勝利をマーク。4/9のロッテ戦でも同点の5回から登板し、4イニングを投げ勝ち投手になっています。救援投手でありながら、4月は規定投球回数に迫るイニング数を投げ、まさに大車輪の活躍でしたが、6月に入ると右膝を痛めてしまい6/15に1軍登録を抹消。ここからチームは猛烈な勢いで負け始め、牧田投手が抹消された後の成績は5勝18敗。これだけが後退の理由ではありませんが、チームは重要な勝ちパターンを失ったことは確かです。
現在のチーム勝率は.417ですが、ピタゴラス勝率は.478で-.061の開き。得点推定式BaseRunsは.576で-.159と、実際の戦力から見ればここまで落ち込む理由は中々見つかりません。前回レビュー時でリポートした点差別の勝率を見ても、接戦時に特別弱いわけではありません。さらに、直接的な敗因にも繋がりかねない救援失敗の数は両リーグ最小と、これまた致命的な弱点にはなっておらず、不運が重なった結果ともいえなくはありません。
ただ、先発投手の平均イニングは5.52とリーグで最も短く、ソフトバンクの6.47とは1イニング近い開きがあります。救援失敗の場面も6回、7回が多く、ゲーム中盤での戦い方に課題があるようです。球団は後半戦に突入する前、バンヘッケン投手をウェイバーに掛け戦力外とする方針を発表。巻き返しを狙う一方で、若手に出場機会を与えながら戦うことになりそうです。
2年前にソフトバンクと激しいデッドヒートを演じたオリックスは、今シーズンもまた補強に力を入れ3年越しの優勝を目指しました。ところが、チームは開幕から負けが込み、一向に浮上しないまま7/2には借金20を数える不本意なシーズンを過ごしています。チームの得失点差は現在-116で、年間-200を超えるペースで、同-275で勝率.353と最下位に沈んだ2003年に次ぐものです。そのため、CS圏内から15.0ゲームも離されている差を詰めるのは容易ではありません。
主力選手の不振が響いていることは確かですが、我慢強い起用が出来ないベンチワークにも問題が見られました。開幕から6試合で打率.167だったT-岡田選手は、不振を理由にファームへ落とされましたが、その間チームの平均得点は2.63と振るわず。T-岡田選手は4/29に復帰し、5月は打率.356、9本塁打と大暴れしただけに、疑問の残る降格でした。また、チームの正捕手だった伊藤光選手はリード不振を理由に2度のファーム降格。その間、3年目の若月健矢選手が成長するというプラス材料はあったものの、バッテリーの度重なる変更はマイナスの面が大きかったと思われます。
来季以降を見据え、世代交代を推し進める見方もありますが、球団としては一つでも順位を上げたい理由があります。2014年4月から3年間のネーミングライツ・パートナーシップ契約を結んでいる京セラドームが、来シーズンの3月には契約が切れることから、外部からもチームの価値が見直される時期に来ています。このところ毎試合オーダーを変更し、ゲーム中盤から代打攻勢を仕掛ける試合が続いているのも、勝ちたい一方で若手を育てなければならない葛藤があるのかもしれません。二兎を追う者は一兎をも得ずか、それとも意外な副産物を生み出すか。オリックスの後半戦は、色々な意味でチームの変革期となりそうです。