• 1.02 Column



このシリーズではFA選手がどの球団に移籍すれば最も効果的な補強になるか、最適球団を探っていく。FA選手を獲得しても球団の戦力的なニーズに合っていなければ効果的な補強とはなりえない。すでに移籍が決定的な選手もいるが、彼らにとって最適な球団はどこだったのだろうか。今回は各論に入る前に各球団にどのようなニーズがあり、また実際に選手を獲得することが可能かペイロール(年俸予算)を確認していく。今回はパ・リーグ編だ。

目玉は国内FAの野上、増井、大和


まず今回FA宣言をした選手を確認しよう。


国内FA:野上亮磨(西武)、増井浩俊(日本ハム)、大和(阪神)
海外FA:鶴岡慎也(ソフトバンク)、平野佳寿(オリックス)、大野奨太(日本ハム)、涌井秀章(ロッテ)

この中で平野と涌井はMLB挑戦を公言している。これらをポジション別に整理する。


先発:野上、涌井
救援:増井、平野
捕手:鶴岡、大野
二塁・遊撃・中堅:大和

増井は2016年の後半には先発として活躍したため、その役割を求める球団もあるかもしれない。またFA移籍が決まった選手は各球団内における年俸順によりランクが決まり、それによって移籍元球団への補償が変わってくる。公表されている年俸からランクを推測すると以下のようになる。


Aランク:増井、平野、涌井
Bランク:野上、大和、大野
Cランク:鶴岡

野上と大和はBランクとCランクの境目に位置しており、正確な年俸順に並べ替えるとCランクになる可能性もある。Aランク、Bランクの選手の獲得に乗り出す球団は支払う金額に加えて補償選手のコストも考えなければならない。


各球団のニーズとペイロールを確認する


今回の原稿では、最適球団を探る前提として各球団のニーズとペイロールを確認していく。いくらニーズと合っていても予算がなければ選手を獲得することはできず、いくら予算があってもニーズと合っていなければ上積みにはなりづらい。契約更改が終わっていないため、ペイロールにどれだけの空きがあるのか正確には分からないが、「今オフの残り予算を推測」という図で、手元にあるデータから予算状況を推測した。赤いグラフはすでに更改、新契約を終えた分、青いグラフは未更改選手分、白いグラフが空き予算を表している。未更改選手は1.02の詳細な成績から年俸を予測するProjectionを使いどの程度年俸に変動があるかを推測した。


ソフトバンク


FA及び主な退団選手:松坂大輔(4億)、カイル・ジェンセン(7800万)、鶴岡慎也(7600万)、大隣憲司(5500万)、山田大樹(1400万)
ニーズ:二塁

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今季は先発に故障者が続出。一時はエース級の千賀滉大、武田翔太、和田毅の3人が同時に離脱する危機的状況を迎えた。にもかかわらずシーズンレベルで見ると先発の質はリーグ平均レベルを維持しており、大きな弱点にはなっていない。来季も主力先発がこれほど離脱するとは考えづらく、先発の強みも取り戻しそうだ。今季の故障者続出を踏まえ、さらにリスクを小さくするなら先発のFA補強も考えられるが、効果は大きくないだろう。ニーズを強いてあげるなら長年レギュラーが固定されておらず出場選手の高齢化が進んでいる二塁だが、これも長期的なニーズであるため今オフの市場が応えられるかは微妙だ。


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2013年に32億円だった総年俸は今季56億円にまで達した。ここ数年は毎年5億円ずつ総年俸が上昇している状態だ。今オフは高額年俸だった松坂が退団するが、日本一に輝いたこともあり主力選手は大幅に昇給されるだろう。現時点の更改分に1.02の年俸予測Projectionを加えると、退団選手を除いた現所属選手の年俸だけで昨季の予算を1億円超えることが予想されている。新たにFA選手を獲得するなら今季以上のペイロールとなるのは確実だ。



西武


FA及び主な退団選手:牧田和久(1億・ポスティングによるMLB移籍を模索)、ブライアン・シュリッター(8000万)、フランク・ガルセス(6000万)、渡辺直人(5000万)、野上亮磨(5000万)
ニーズ:先発、救援

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今季はリーグ平均レベルを維持した投手陣だが、野上のFA移籍が決定的。牧田にも退団の可能性があり、補強の必要性が出てきた。一方、野手は充実の陣容だ。今季は序盤に両翼の攻撃力が大きなマイナスとなっていたが、外崎修汰、金子侑司が定着してからは十分な成績を残していた。指名打者もマイナスになっているが、大型契約中のエルネスト・メヒア、森友哉なども控えており、ニーズが高いとは言えない。投手陣の補強にリソースを割くべき状況だ。


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しかしチームのペイロールは年々膨らんでおり、今季も現所属選手の昇給分ですでに残り予算はほとんどないことが推測される。ここから新外国人を獲得するとなると、確実に去年の予算はオーバーしそうだ。野上の退団が決定的であるため現実的には、牧田がMLB球団との交渉がまとまらなかった場合の年俸を確保しておくことで精一杯だろう。



楽天


FA及び主な退団選手:松井稼頭央(7000万)、金刃憲人(3300万)、武藤好貴(1400万)、西田哲朗(1200万)
ニーズ:一塁、中堅、指名打者

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昨季まで大きな弱点となっていた外野手の貢献に大きな改善が見られたシーズンだった。左翼はリーグ平均レベルをキープし、右翼は攻撃面でチームに多くの得点をもたらした。中堅は秋山翔吾、柳田悠岐という球界最高の選手がリーグ平均を大きく押し上げているため、相対的には弱点になっているものの、レギュラーとしては及第点を与えられるだろう。また有望株のオコエ瑠偉が早くも台頭してきていることもあり、このポジションの補強に動く可能性は低そうだ。

中堅以外で弱点となっているのは一塁、指名打者といった打撃型のポジションだ。これは一塁、指名打者で出場したジャフェット・アマダーが前半戦に大不振に陥ったことが響いている。後半戦に打撃が好調だったこともあってか球団はすでにアマダーの残留を決めた。今オフこのポジションのFA選手がおらず選択肢が少なかったことも理由の1つに挙げられるかもしれない。


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ペイロールは高額年俸であるアンドリュー・ジョーンズとケビン・ユーキリスが所属していた2014年に30億円近くまで膨らんだが、ここ3年は25億円前後となっている。2014年のペイロールから推測される残り予算は1億8000万円。外国人選手の陣容も大きく変わる様子はないため安価なFA選手ならば獲得することができそうだが、ニーズは一致しておらず今オフに動きがある可能性は低いだろう。



オリックス


FA及び主な退団選手:平野佳寿(3億)、ブレント・モレル(4000万)、川端崇義(1760万)、八木亮祐(1600万)、岩崎恭平(1150万)
ニーズ:内野手、中堅手

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チーム最大の弱点は小谷野栄一に衰えが見られる三塁、そして毎年攻撃力が不足している中堅だ。福良監督は今秋すでに二塁手・西野真弘の三塁コンバートをテストしているが、そうなれば逆に二塁手の戦力がダウンする。どちらにせよ内野手が弱点となっているのは間違いない。

中堅は開幕当初宮崎祐樹らが好調だったがシーズンが進むにつれ他球団に差をつけられはじめ、攻撃力補填のため右翼を守っていたステフェン・ロメロを中堅にまわすと、今度は守備面が大きなマイナスとなってしまった。オリックスのレギュラー外野手はT-岡田、ロメロ、吉田正尚といずれも両翼をメインに守る選手であり、中堅を守るレギュラークラスの選手は欠いている。また吉田正は非常に故障が多いためシーズンを通して働くのが難しく、指名打者での出場も多くなると予想される。レギュラークラスの外野手が3人いるがポジションと故障の面で不安は大きく、ニーズは高そうだ。


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2015年に40億円まで膨れ上がったペイロールは年々減少し、今季は30億円を切った。今オフは2015年の予算から比べると10億円近い空き予算があると推測され、身動きがとりやすくなっている。高額なFA選手の獲得、あるいは複数の選手にアプローチすることも可能だろう。



日本ハム


FA及び主な退団選手:大谷翔平(2億7000万・ポスティングによるMLB挑戦が決定的)、増井浩俊(2億2000万)、クリス・マーティン(1億)、大野奨太(5500万)、飯山裕志(2200万)、武田久(1500万)
ニーズ:先発、救援、捕手、二塁、遊撃

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最大の弱点となっているポジションは先発投手だ。昨季オフにアンソニー・バース、吉川光夫が退団となったことに加え、主力先発であった大谷、有原航平、高梨裕稔が前年ほど活躍できず先発投手の貢献は大幅に悪化した。さらにシーズン中にはルイス・メンドーサ、エドウィン・エスコバー、谷元圭介を放出。投手陣は危機的状況を迎えている。先発の投球回は809 2/3回と12球団で最も少なく、救援陣の負担も非常に大きい。今季はなんとか持ちこたえたが増井、マーティンも退団となると投手陣全体が弱点になりそうだ。FA投手を獲得できれば大きな上積みになる。

他のポジションでは捕手が弱点となっている。大野が退団となるとさらなる戦力低下は免れない。二塁、遊撃もリーグ平均から大きく劣っているが、二塁はシーズン後半に横尾俊建が二塁手として好成績を残したほか、ルーキーの石井一成など若手を多く抱えており、遊撃は中島卓也の復調に賭ける可能性が高い。戦力的には弱点となっているが球団としては他のポジションのほうが優先度は高いはずだ。


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過去6年間で最大の予算だった今季に比べるとペイロールには9.1億円の空きが推測される。しかし年度別の推移を見る限り日本ハムは30億円近いペイロールを維持することが難しい様子がわかる。空きが出た分の資金をすべて使えるわけではなさそうだ。フロントも来季が勝負を賭けるシーズンとは考えていないはずで、FA選手の獲得に乗り出す可能性は低いだろう。



ロッテ


FA及び主な退団選手:涌井秀章(2億5000万)、井口資仁(1億3500万)、マット・ダフィー(8000万)、古谷拓哉(2700万)、ロエル・サントス(2220万)
ニーズ:先発、救援、一塁、遊撃、中堅

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戦力的なニーズは非常に多い。上に挙げた先発、救援、一塁、遊撃はどのポジションを補強しても非常に大きな効果をあげそうだ。この中であればシーズン後半に荻野貴司が活躍を見せた中堅は比較的ニーズとしては低いと言えるかもしれない。指名打者も大きなマイナスとなっているが、今季途中入団のウィリー・モー・ペーニャが残留となればこのポジションが大きなマイナスになる可能性は低くなる。優先度が高いのは涌井が抜ける可能性がある先発、一塁と違って外国人選手の補強が難しく、控えレベルの選手の競争となっている遊撃になるだろうか。


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ペイロールは毎年25億円前後で推移している。推測される予算は6.8億円あるため新外国人選手のほかにFA選手の獲得にも参戦できそうだ。しかし退団予定に含んでいる涌井の去就は先にずれ込む可能性が高く、それまでは残留した場合の年俸を予算に残しておく必要があり、球団としては非常に動きづらいオフになっている。



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