• 1.02 Column


右腓腹(ひふく)筋の軽度の筋挫傷により5月1日に登録を抹消されていた近藤健介が(日本ハム)が15日に一軍に帰ってきました。近藤は3、4月、打率/出塁率/長打率が.392/.520/.557と素晴らしい成績を残しましたが、52度の出塁のうち、実際にホームを踏んだのは10度と、チャンスの創出が効率よく得点に結びついていませんでした。今回は3、4月の近藤と、近藤の次を打つことが多かった中田翔の攻撃時の関係について分析していきたいと思います。

次の打者によりよい状況で打席をまわす能力に長けた近藤


まず近藤が3、4月に打席に立った時の走者とアウトカウントの状況から得た得点期待値を累積します。今回は打席の結果によりどれだけ得点期待値を動かすことができたかの累積値(得点価値)も併せて算出しました。得点期待値は表1をもとに算出しています。打席に入る前の状況が得点期待値が青、打席の結果によりどれだけ得点期待値を動かせたかが赤のグラフです。これを以下の図1に示します。




青の期待値の中でどれくらいの得点価値を回収できたのかを確認できる図となっています。1点、図ではほとんど見えませんが、2死一・三塁の状況では、得点価値がわずかに期待値を上回っています。この図からはいくら4割近くの打率を残しても、1人の打者が期待値全てを回収することはできないということがわかります。ただこれだけを見てもピンとこないため、他球団の主軸打者と比較したいと思います。日本ハム、西武、ソフトバンク、ロッテの3、4番打者について、同様に期待値と得点価値を求め、全ての状況を合計した値を以下の表1に示します。オリックスと楽天の3、4番打者は固定されていなかったため掲載していません。また近藤は2番を打った試合もありますが、便宜上ここでは3番打者として扱います。



3番打者の得点価値は、近藤よりも浅村栄斗(西武)、柳田悠岐(ソフトバンク)のほうが高かったようです。打率/出塁率/長打率を見る限り浅村が近藤より優れていたようには見えませんが、近藤の本塁打が0本だったのに対し、浅村と柳田はそれぞれ6本と5本。本塁打は得点期待値の大部分を回収するため、得点価値の上昇としては浅村、柳田のほうが大きくなりました。しかし彼らに続く4番打者の期待値の値を見ると、中田の期待値が最も高くなっています。これには近藤だけではなくその前の打者が出塁した影響も含まれていますが、近藤の群を抜いて高い出塁率が、中田が打席に入った際の期待値を高めていたのは間違いありません。続く打者に、より期待値の高い状態(チャンス)で打席をまわすという形で貢献していたようです。


中田は近藤のチャンス創出をどれだけ得点に結びつけられたか


近藤によるチャンスの創出という貢献は、次の打者が期待値を回収することではじめてチームの得点に結びつきます。しかし表2の中田が上げた得点価値を他のチームの4番打者と比較すると、それほど大きな得点を上げたとはいえません。

しかし、得点期待値は走者が多い状況での凡退や、3アウトになったときには大きなマイナスが記録されます。まだシーズンは始まったばかりで、結果的に凡退した打席の状況が特に期待値の大きいチャンスに偏っていたことでマイナスが大きく記録された可能性も考えられます。そこで近藤と同様に中田についても状況別の得点期待値と回収した得点価値を以下の図2に示します。



最もマイナスが大きい状況は無死一塁で-2.39。この状況は特別期待値の大きい場面ではありません。他の状況でもマイナスは確認でき、大きなマイナスがつきやすい状況に凡退が偏っていたとはいえない結果といえます。

次に、月内の変動を見てみたいと思います。試合ごとの得点価値を合計し、前後2試合を含めた5試合の平均をとった値の推移を以下の図3に示します。日本ハムの得点についても青いグラフで表示しています。



中田の得点価値の推移は、4月の前半、後半で大きく様子が変わります。前半はマイナスで横ばいでしたが、4月の中旬からプラスに転じます。この中田の得点価値の上昇はチームの得点増とも同期しています。したがって、4月の中田の得点価値の低さは前半のマイナスの影響が大きく、後半は近藤と上手くかみ合いだしていたといえます。


中田の不調を耐えきった日本ハム首脳陣


4月は2人が上手くかみ合いだした頃に近藤が負傷離脱してしまいましたが、今後を考える上でも近藤の得点期待値を高めて次の打者に受け渡す特徴は理解されておくべきかと思います。また結果的にはそう長くない期間ではありましたが、首脳陣が4月前半の中田の不調を耐えきったというのも注目すべきことです。不調の選手を起用し続けることには勇気が必要です。能力や実績を信頼したのか、ただ代わりとなる選手がいなかったのか、それとも復調を予測できるようなデータを得た上で判断していたのか正確なところはわかりませんが、首脳陣の我慢が実を結び、日本ハムは4月後半に得点力を上げました。今後またうまく打線が噛み合わない状況が訪れたときに首脳陣がどういった判断を下すかにも注目してみたいと思います。


Student @Student_murmur
個人サイトにて分析・執筆活動を行うほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 BABIP関連、また打球情報を用いた分析などを展開。2017年3月に[プロ野球でわかる!]はじめての統計学 を出版。


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