大型連休期間のプロ野球は天候に恵まれ、予定していた試合を全て消化。各球場には、たくさんのファンが詰めかけました。この2週間、4/26に新井貴浩選手(広島)が史上47人目の通算2000安打、5/8には糸井嘉男選手(オリックス)が史上73人目の通算200盗塁など、記録達成のシーンもありました。また、新人では原樹里投手(ヤクルト)が5/1の巨人戦、今永昇太投手(DeNA)は5/6の広島戦でプロ初勝利を記録。これまで、好投が報われない試合もありましたが、ようやく挙げたプロ1勝目にナイン、ファンから数多くの祝福を受けています。
前回のレビューから2週間が経ち、この2週間を振り返りましょう。
<セ、パ両リーグの順位おさらい>
順位変動が激しかったのはセ・リーグで、5/1に巨人に代わり広島が首位に立って以来、リーグトップが目まぐるしく替わりました。本拠地東京ドームで広島3連戦に勝ち越した巨人は、その後中日との3連戦に全敗し、一気に3位まで転落。広島も、本拠地マツダスタジアムに戻ってのDeNA3連戦で再び負け越し、3日と続けて首位に立つチームはありません。
代わってトップに浮上したのが中日。2週間の成績は6勝6敗と、大きく前進したわけではありませんが、アウェイでの巨人戦に全勝したのはかなりのプラスでした。この3連戦では、6日にエルナンデス選手が3安打3打点の活躍。7日はビシエド選手が、球団では1977年の大島康徳以来となる1イニング2本塁打を記録。8日のカード最終戦は当たりの止まっていた堂上直倫選手が今季1号、6打点と大暴れし、投手陣のやり繰りに苦心する巨人から3試合で26点を奪う猛攻でした。
深刻な得点力不足に悩んでいたDeNAも、5/4に梶谷隆幸選手が今季はじめて1軍登録されると、打線が急激に活性化しました。梶谷選手は、5日のヤクルト戦でホームスチールを決めるなどプレーでナインを鼓舞し、続く広島との3連戦では2本のアーチを放ち2カード連続の勝ち越しに貢献。今週はじめには、筒香嘉智選手が戦列復帰するという話もあり、ここで一気に巻き返しを図りたいところです。
一方、パ・リーグはソフトバンクが連勝街道をひたすら走り、他の5球団は星の潰し合いが起きたため、リーグ内のゲーム差は2週間前の4.5差から一気に9.0差まで広がってしまいました。開幕10試合の時点で3勝5敗2分と負け越していたソフトバンクは、以降の22試合を17勝3敗2分と猛烈なスピードで勝ち進んでいます。強さの象徴はゲーム終盤に追いつく粘り強さ、勝ち越し点を許さないブルペン陣の働きで、工藤公康監督は控え選手の起用に抜群の上手さを発揮しています。
これを追いかける5球団ですが、2位ロッテはまだまだ元気がありますが、日本ハムは守護神不在、西武とオリックスは先発のコマ不足、楽天はブルペンの乱調が中々改善されず、ゲーム差がさらに広がる可能性もあります。今週以降、交流戦がはじまるまでにソフトバンクと2度当たるロッテ、オリックスには何としてもリーグの灯を消さないよう、頑張ってもらいたいものです。
<各球団の戦力値>
セ・リーグは1位から5位まで2.0ゲーム差の混戦状態で、現時点での順位と戦力値のバランスが崩れている箇所がいくつも見られます。首位中日は得失点差マイナス。平均失点最小、先発防御率トップのDeNAは最下位。救援失敗数ワースト及びチームUZRも-11.1の巨人が長らく首位をキープしていたのは、それぞれの球団が抱える強みと弱みが、勝敗に左右する部分が大きいからです。
巨人は、菅野智之投手が投げる試合は5勝2分の勝率10割ですが、ルーキー及びローテーションの谷間が先発した試合は0勝4敗と極端な結果。DeNAは、打線が3点以上入れれば11勝9敗と白星が先攻。中日は、先発投手がクォリティ・スタートを記録した試合では13勝3敗2分と高い勝率を誇っています。
一定の条件下になると勝つ見込みが急激に高くなるのは、そこにチームの強みがあるからです。反対に、条件から外れてしまうと勝てなくなくなるのは、明らかな弱みが存在するからでしょう。どの球団も35試合以上を消化し、故障者のマイナス分を除いては戦力が固まる時期にきたので、それぞれの課題が明らかになりつつあります。ただ、若手起用を積極的に行う阪神だけは、オーダーを固定するまで未知数な部分を多く残しています。
パ・リーグの戦力値一覧は、とうとうソフトバンクが全ての部門で平均以上をマークするようになりました。前回集計時では、犠打のみがリーグ平均以下でしたが、2週間で18個も増やし、チームUZRも大きく数字を伸ばしました。この強さに対し、他球団が講じるべき策は決して多くりませんが、投手陣は例年と比較して被本塁打が増えている状況。ここまで、チームが負けた8試合中6試合は先発投手が一発を浴びています。日本ハムは、5/3からの3連戦で2敗1分に終わったものの、3試合で7本のアーチを浴びせ接戦に持ち込みました。細かい野球をするよりも、真っ向から立ち向かった方が勝機はありそうです。
救援陣が不安なオリックスと楽天は、救援失敗の数も増加し、上昇気流に乗ることが出来ないでいます。楽天は、先発投手の勝ち星を消した試合が5つもあり、5/5のロッテ戦は守護神松井裕樹投手まで炎上してしまう危機に。リリーフが成功しない原因はどこにあるのかを深く掘り下げない限り、こうした不安はいつまでも続くでしょう。
<5月から中4日での先発起用を決断する球団>
5/8の日本ハム戦で先発した西武の野上亮磨投手は、前回登板から中4日でマウンドに上りました。この起用は、右足内転筋の違和感により1軍登録を抹消された岸孝之投手の穴埋めとして、首脳陣がスクランブル体制で乗り切る選択をしたということです。報道によれば、今週は菊池雄星投手が中4日でマウンドに上ると予想されています。
中6日での先発が定着した今のプロ野球で、中4日で起用される機会はそれほど多くありません。2007年から2015年までの9年間で、中4日での起用割合は全体の2.1%。2012年以降の3年間は20回少々にまで減りましたが、昨シーズンは34回と若干ではありますが増加しています。
球団別では、セ・リーグで中4日を採用する球団が多く、中でも広島は今季からメジャーでプレーする前田健太投手の11度をはじめ、2008~2009年の間に在籍したコルビー・ルイスが16度、2011~2014年にプレーしたブライアン・バリントンが15度と、エースをフル回転させるためにこうした起用を試みていました。一方、パ・リーグはDH制を敷いているため投手に代打を出す必要が無く、その分長いイニングを投げることに力点が置かれているかもしれません。中4日での起用は非常に少なく、中でも西武は9年間でわずか8度しか起用して来ませんでした。
今回の起用は、時期的に早過ぎるという声がファンの間で広がりました。現役でも、メッセンジャー投手(阪神)のように開幕直後から中4日で登板する投手もいますが、ローテーションの人数を絞り込むのは、ペナント争いが押し迫った9月、10月というのがファンの認識でもあるようです。実際に、データでも中4日での起用は月が進むごとに多くなり、下記グラフでも示したように、パ・リーグで春先から中4日を採用する球団はあまり見られません。
西武は野上投手と菊池投手に中4日を指示しただけでなく、先週はローテーションに入る投手の先発日を切り上げました。しかし、6イニング以上投げたのは5/4の菊池投手のみで、5/6の日本ハム戦に先発した高橋光成投手は、1点リードの6回に制球を乱し、逆転を許してしまいました。全てが登板間隔のせいには出来ませんが、ローテーションの谷間に誰か一人を挟めなかったのかという思いはあります。
セ・リーグでは、巨人も5/1のヤクルト戦に高木勇人投手を中4日で起用し、5回6失点で敗戦投手となりました。しかし、次の週には江柄子裕樹投手、長谷川潤投手と先発を追加し、他の投手の登板間隔を詰め過ぎないよう配慮しています。西武は1軍の先発マウンドを託せる投手が不足し、巨人は投手そのもののコマ不足で中4日を決断したといえそうです。しかし、他球団では思い切った起用をする例もあります。
今季の中日は、開幕ローテーションとして揃えた6人の投手のうち、今でも先発グループに入っているのは若松駿太投手のみ。5/7の巨人戦で、打者1人だけで降板したネイラー投手を翌日に抹消し、次戦でバルデス投手を先発させました。これで中日が起用した先発投手は11人を数えます(もちろんこれは12球団最多です)。中日の先発防御率4.51はリーグワーストで、何とかやり繰りしている状況ですが、先を見据えながら次なる手を打っているのは明らかです。この時期は、下手に戦力を絞り込まず、チームに必要な選手を使いながら育てていくことも重要な戦略といえるでしょう。