日本シリーズが終わりいよいよ本格的にオフがスタートする。各球団、来季に向けて補強計画を検討している最中だろう。数ある補強チャンネルの中でも今年はFA市場に注目だ。権利行使可能な選手の陣容が例年以上に豪華であるためである。先日は、それら選手たちにどの程度の価値があるのかを客観的に測る
“FA選手ランキング”を作成した。FA市場における選手の価値についてはこちらを参考にしてほしい。
ただこれはあくまでフラットな視点での評価。当然ながら球団によって状況は異なる。本企画では各球団の状況を踏まえた上で、どの選手の獲得に動くべきか検討を行っていく。そしてその検討も2パターンを用意した。1つは無制限に資金があることを前提とした「理想的なシナリオ」、もう1つは各球団の予算を踏まえた「現実的なシナリオ」である。今回は読売編をお送りする。
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- ヤクルト、DeNA、阪神、読売、広島、中日
オリックス、ソフトバンク、西武、楽天、ロッテ、日本ハム
野手のニーズを確認
まず総合指標WAR(Wins Above Replacement)をポジション別に見ることで、野手の現状戦力を確認しよう。WARは2.0がリーグ平均という目安で見てほしい。0.0がリプレイスメント・レベル(代替可能選手)だ。
弱点となっていたのは右翼、そして一塁、左翼だ。このうち両翼は外国人選手のアダム・ウォーカー、グレゴリー・ポランコが主に務めた。彼らは一見、ある程度の成果を残したように見える。しかし守備面でのマイナスは非常に大きく、総合指標WARで見た場合、それぞれ個人で1.5、0.4と振るっていない。ともに31歳と年齢を重ねているため、残留に成功したとしても今後の成績低下も予想される。短期的にも中長期的にも補強ポイントと言えそうだ。中堅・丸佳浩の守備力低下も見られるため、中堅を守れる外野手ならなお良いだろう。
一塁は今季中田翔が務めることが多かったポジションだ。中田は十分な成績を残したが、その他の選手が守ったケースで振るわず、弱点となってしまった。中田はFA権を保有しているが残留の方向に進んでいるようだ。今季の質を維持したうえで出場機会を伸ばせれば穴は埋まる。だが年齢などを考えると確率が高いとまでは言えない。若手で計算できる選手も出てきていないため、中長期的に見るとよりニーズは大きい。
ただ一塁については、ほかのポジションを補強し、コンバートするという手も考えられる。例えば遊撃手を補強し、坂本勇人を三塁に、三塁の岡本和真を一塁にずらすというプランだ。一塁が弱いからといって、ニーズを一塁だけに限定する必要はないだろう。
野手まとめ:補強ポイントは外野、内野手
投手力は数年前まで読売最大の武器であったが、状況はすっかり変わってしまった。今季の投手WARは20.3。リーグ内で特別劣っているわけではないが、トップの阪神(30.8)には大きな差をつけられてしまっている。
2022年セ・リーグ投手WAR
球団 |
先発 |
救援 |
投手全体 |
阪神 |
21.7 |
9.0 |
30.8 |
中日 |
16.1 |
5.8 |
21.9 |
DeNA |
15.8 |
5.1 |
20.9 |
読売 |
16.3 |
4.0 |
20.3 |
ヤクルト |
12.2 |
7.6 |
19.7 |
広島 |
13.1 |
4.5 |
17.7 |
先発と救援で比較すると、先発WAR16.3がリーグ2位であるのに対し、救援の4.0はリーグワースト。こうして見ると、補強ポイントは先発より救援にあると考えてしまうかもしれない。
ただ優先したいのはあくまで先発の補強だ。前提として、野球というゲームの中では、救援より先発のほうが大きな影響を持っている。多くのイニングを投げられる=多くの失点を防げるためだ。その分希少価値が高い。また補強により先発に余剰戦力が生まれても、救援に回すことができれば投手力アップを狙える。一方で救援の余剰戦力を先発で起用することは極めて難しい。先発、救援の関係は一方通行なのだ。可能ならば救援より先発を優先したい。
具体的に来季の予測をベースに先発の陣容を確認しよう。ここではFA市場に出る可能性がある菅野智之を除いて考える。以下の表を見ると、戸郷翔征以外で他球団に決定的な差を生み出せる投手が存在していないことがわかる。
また去就が不透明な外国人選手に頼る部分も大きい。もし退団するようなら、ローテーション当落線上にある堀田賢慎や井上温大ら若手が、どれだけ伸びるかによって大きく状況が変わってきそうだ。外国人選手の残留に失敗し、若手も思うように伸びない場合、先発陣はかなり大きな弱点にもなりうる。また良いシナリオで進んだ場合も、依然として救援は弱点だ。先発補強はその場合でも効果的になりうる。
投手まとめ:投手陣は補強ポイント。救援の弱点を塞ぐ意味でも先発の補強を
ここまでチームのニーズを確認してきたが、それに当てはまる選手が市場にいるかどうかはまた別だ。今オフ市場に出る可能性がある選手で、読売のニーズに応えられる選手はいるだろうか。まずは予算を気にせず考えてみよう。
まず最優先で考えるべきは近藤健介(日本ハム)の獲得だ。チームは外野に弱点を抱えているため、大きな補強効果を上げる可能性が高い。また近藤は今季、中堅でも一定の守備力を見せた。シーズンを通して中堅を守ることはないかもしれないが、オプションの一つとして有用だろう。打撃だけでなく、一定の守備力を備える近藤の獲得は、今季外野守備力に苦しんだチームにとって意味が大きい。
内野は浅村栄斗(楽天)の獲得が効果的だ。二塁手というよりは、一塁の弱点に当てはまる人材になるだろう。また今後チームは坂本のコンバートも想定する必要がある。浅村の獲得が実現すれば、遊撃・吉川尚輝、三塁・坂本、二塁・浅村、一塁・岡本といった布陣を敷くことも可能だ。
先発もさきほど補強ポイントとして挙げた。ただ今オフ、市場に出そうな先発はそれほど多くない。先日は西勇輝(阪神)の残留が決定的と報じられた。当然投手のトップランクとなると千賀滉大(ソフトバンク)になるが、MLB挑戦を熱望しているため獲得は現実的ではないだろう。ただここは理想を語る場であるため、リストには入れておこう。他の先発では、低コストで済みそうな岩貞祐太(阪神)の獲得を視野に入れておきたい。補償が不要なCランクである場合、極めてリスクの小さい補強となる。
ちなみに読売は、FA市場の目玉・森友哉(西武)の獲得に動くことが報じられている。ただ読売にとって森の補強効果は他球団に比べると小さなものになるだろう。チームはすでに捕手に一定の戦力を抱えているためだ。森を獲得するより、打力のある大城卓三の出場機会を伸ばすほうがコストも小さく、手っ取り早い戦力アップになるのではないだろうか。ただ森を獲得できた場合上積みがあることは言うまでもない。
2022年オフにおける読売のFA補強(理想)
- 1.近藤健介
- 2.浅村栄斗
- 3.千賀滉大
- 4.岩貞祐太
現実的なシナリオ
ただこれまで述べたのはあくまでも理想的なシナリオ。予算の都合から全選手の獲得は難しい。今オフの読売にはどれほど予算の余裕があるだろうか。DELTA独自の年俸予測システムから、読売の2023年総年俸がどれほどになるかを推定してみよう。
これで見ると読売の総年俸予想は42.7億円。過去9年で最も総年俸が大きかった2021年の総年俸53.4億円に比べるとまだ余裕がある。このレベルまで許容できなくとも、目玉選手1人の獲得を狙えるくらいの予算はありそうだ。
予算を踏まえたうえでも、最優先と述べた近藤の獲得は十分視野に入れられそうだ。近藤は長期的に貢献度を維持できることが期待できる選手である。5年以上の長期大型契約も検討したい。
近藤の獲得に成功した上でとなると、目玉選手をもう1人獲得するのは難しいかもしれない。現実的にはコストの小さい岩貞の獲得で、先発・救援問わず投手陣の戦力アップを狙うのが妥当ではないだろうか。この2人の獲得だけでも、来季優勝を狙えるメンバーには十分なりそうだ。
2022年オフにおける読売の現実的なFA補強
- 1.近藤健介
- 2.岩貞祐太
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- ヤクルト、DeNA、阪神、読売、広島、中日
オリックス、ソフトバンク、西武、楽天、ロッテ、日本ハム