• 1.02 Column

ヤクルト首脳陣が語った、リーグ優勝を可能にしたブルペン運営方法

高多 薪吾

2016.03.23



ヤクルトのブルペン改革

昨シーズン、14年振りにセ・リーグを制したヤクルト。球史に残る大混戦が低い勝率(.539)の優勝を可能にしましたが、先日放映された一軍コーチ陣の座談会のようなテレビ番組(テレビ朝日「Get Sports」2月28日放送分)で、興味深い話が聞けました。


1年前からチームの投手陣を預かる高津臣吾、伊藤智仁両コーチは、今季からブルペンでの調整方法を変え、ゲームに登板する見込みのない投手や、予測されるイニングよりも早い段階での投球練習を控え、「ブルペンでの球数制限」を行っていたとのこと。なお、これと同じ話はスポーツ雑誌「Number」のウェブ版、「Number WEB」でも読むことができます。



試合に出る日しか投げない調整法。ヤクルトがブルペンの新常識を作る?(Number WEB「野球善哉」文=氏原英明)


昨年のヤクルトは、リーグトップの救援防御率2.67を記録した点は評価されましたが、秋吉亮投手が74試合に登板、オンドルセク投手は72試合と、中継ぎの軸となる投手をやや投げさせ過ぎた面もありました。いわゆる酷使の影響で、両投手の今季は前年並みのパフォーマンスを発揮できるか、不安な点があります。


高津コーチらが取り組んだブルペンの改革は、記録には表れない部分で、投げ込みを抑えた効果はシーズンが終わるまでわからないでしょう。2000年以降、シーズン70試合以上に登板した投手は34人、平均投球回数は74イニングですが、翌年になると平均56イニング、翌々年だと平均47イニングにまで低下しています。前年比で表すと75%、64%という計算になるわけですが、実はこの中にはリリーフから先発に転向した攝津正投手(ソフトバンク)も含まれています。


攝津投手は、プロ1年目から70試合(2009年)、71試合(2010年)とブルペンでフル回転し、3年目の2011年に先発転向を果たしました。幸いこれが成功し、2011年の投球回数は前年の82.1イニングから177.2イニングにまで増加。2012年も193.1イニングを投げ、リーグを代表する先発投手になっています。


この攝津投手のパフォーマンスを省くと、70試合以上に登板したリリーフ投手は、平均74イニングの翌年に50イニング、翌々年には37イニングと大幅に減少しています。フル回転した年をその投手のピークだと考えても、前年比70%、前々年比51%にまでイニング数が減るのは、何らかの問題を抱えていたはずです。



<「2000年以降、70試合以上に登板した投手」の翌年、翌々年の投球イニング>

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70試合以上に登板した翌年以降のパフォーマンスがあまり低下していないのは、


2005年 藤川球児投手(阪神)

2009年 山口鉄也投手(巨人)

2011年 平野佳寿投手(オリックス)、大原慎二投手(DeNA)

2012年 益田直也投手(ロッテ)、増井浩俊投手(日本ハム)

などですが、山口投手以外はクローザー転向(藤川、益田、増井)とワンポイント中心の起用(大原)といった理由があり、試合の局面で登板するセットアップマンで複数年に渡り、高いパフォーマンスを維持するのは非常に難しいことがわかります。


冒頭で紹介したテレビ番組の座談会で、高津コーチは他国のリーグと比較し「肩を何回も作って登板させるのは日本だけ」と話し、同時にブルペンでの球数制限は「慣れが大事」と語っていました。MLBでは、リリーフ投手のウォームアップは2度までとし、そのタイミングで登板のチャンスがなかったとしても、3度も肩を作らせない球団が多いと聞きます。そのような起用法によってか、MLBではシーズン70試合以上に登板する投手がそれほど珍しくありません。



<MLBで70試合以上に登板した投手の人数>


2011年 36人

2012年 50人

2013年 40人

2014年 39人

2015年 38人




ブルペンの構成人数

高津コーチらが取り組んだもう一つの仕事は、ブルペンの人数を増やすというものでした。これについては、テレビ番組で真中満監督に感謝していましたが、ヤクルトの一軍登録選手のうち投手は13人、その中でブルペンを8人置いたそうです。伊藤コーチは、「8人と7人の違いは大きい」と、不要なウォーミングアップを減らす手助けになったと語っています。球団によって、ブルペンの構成人数に違いはありますが、実際はどうだったのかと、セ・リーグ各球団の昨シーズンのデータを作成しました。



<ブルペンに配置した投手の人数(2015・セ)>

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球団によって3つの傾向が見られ、8人体制を取り入れたヤクルトとDeNA、7人体制を維持した阪神、状況によって6人にまで減らした巨人、広島、中日に分かれました。


一軍の出場登録枠は28人で、うち投手は12人から13人。先発投手の空き日を利用してブルペンの人数を増やすことも可能ですが、ヤクルトとDeNAは野手の人数を削ってまでブルペンに枠を充てていたことがわかります。両球団の先発投球回数はリーグ平均に対し46.1イニングも少なかったため、他球団と同じ(ブルペン投手の)人数で戦った場合、より負担が増すことは明らかでした。


ブルペン投手の延べ人数は、先発投手のイニング数と密接な関係があり、セ・リーグ各球団もこうした状況に合わせて一軍登録メンバーを考えているものと思われます。下記データを見ると、昨シーズンは中日のブルペンにやや負荷が掛かっていたと見ることも可能でしょう。



<先発投球回とブルペンの延べ人数>

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リーグ優勝を可能にしたというのは少々大袈裟ですが、これまで故障者の多かったチームが、状況に合わせたブルペン運用で、各選手のポテンシャルを正しく機能させたともいえます。紙一重の差で優勝できたのも、こうした工夫が生かされたのだと思います。

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