• 1.02 Column


10月20日にドラフト会議が行われ、将来のプロ野球を背負う若き有望株たちの入団先も決まりました。そこで今回は、プロ野球の若手選手に格付けを行う「トップ・プロペクト・ランキング」がテーマです。


プロスペクト(prospect)という言葉は本来、予想や見通しといった意味ですが、野球界ではチームの未来を担う期待の若手のことです。米球界ではBaseball America、MLB公式サイトを始めとするメディアが、各球団の若手有望株について逐一リポートし、年間数回に分けて「トップ・プロペクト・ランキング」を発表しています。ランキングは球団ごと、リーグごと、全体順位と別れ、新人選手が入団する度に激しく入れ替わります。




<MLB公式サイトの最近プロスペクト・ランキング>


http://m.mlb.com/prospects/2016/#list=cws?list=prospects


米国で、どうしてプロスペクトの話題が豊富なのかというと、一つ目の理由はメジャー昇格までの育成期間が長いことが挙げられます。ドラフト会議は完全ウェイバー制により、全体での指名順位がそのまま選手の評価に繋がる部分もありますが、一度入団してしまえば競争社会。順位は関係なくなります。マイナーでの育成期間は、2016年度にデビューした新人は平均で5.0年、年齢は24.6歳という結果でした。これは、NPBの2016年にデビューした選手の1.6年/23.2歳よりもかなり高く、例え全米トップクラスのアマチュア選手でも、マイナーでの鍛錬を経ないとメジャーでは通用しないことを表しています。


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二つ目の理由は、ファンタジー・ベースボールのような仮想シミュレーションゲームをプレーするファンが、若手有望株のデビューを待ち侘びている点。より良い選手を集めることがこのゲームの必勝法になりますが、開幕前に行う仮装ドラフトでいつデビューするか決まっていない新人選手への投資が、勝つ要素の一つです。通常、このゲームでベンチ入りしていない選手を保有するのは不利になるのですが、2015年のナ・リーグ新人王に輝いたクリス・ブライアント選手(カブス)のように、メジャー1年目からトップクラスの成績を収めるケースは珍しくありません。そのブライアント選手は、2015年度におけるBaseball Americaの全体ランキング1位でした。




<Baseball America> 2015 Top 100 Prospects


http://www.baseballamerica.com/2015-top-100-prospects/


これに対し日本球界では、春夏の甲子園といったアマチュア野球の祭典があり、選手たちはドラフト会議でも注目が集まります。しかし、新人選手への評価はそこで一旦止まってしまいます。即戦力で活躍する選手を除き、ファームで横一線の競争になっている点はMLBと一緒ですが、新人という看板が外れると一部の人気選手以外は目立たない存在になってしまいます。強いていえば、開幕前のキャンプやオープン戦がアピール機会となりますが、短期間で結果を残せなければ2軍に送り返されるケースも多く、新人の頃の期待値はいつの間にか萎んでしまうことも珍しくありません。



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一方で、現在の球界は今シーズン日本一に輝いた日本ハムやセ・リーグを制した広島、昨シーズンまで2年連続日本一のソフトバンクなど、若手選手を計画的に育成する球団が優勢です。優勝のキーワードと聞かれると、必ずといって良いほど「育成」という言葉が出てきます。正確には、リーグのトップに立つには若手の育成だけでなくFA選手や外国人選手の獲得、トレードといった補強も欠かせません。しかし、チームの将来を見通すには、自前で育成した若手の活躍が非常に高いウェートを示します。DeNAは、数年かけてチームを若返らせ、念願のCS進出を果たしました。阪神も、金本知憲監督の就任以来「超変革」を掲げ、急速な世代交代を進めている最中です。


そこで今回は、先日のドラフト会議で指名された選手を交えた「トップ・プロペクト・ランキング」を考案してみました。プロ入り前の選手、異なるリーグといった理由から難しいチャレンジになるのは確かですが、筆者は今年2月に自身のTwitterアカウントでもトップ・プロスペクトの予想を立てており、そこでの基準を今回も採用しています。





<トップ・プロスペクト・ランキングの対象選手>



・年齢は満24歳まで(今シーズン終了時点大卒2年目まで)
・投手は1軍通算100イニング未満、野手は1軍通算300打席未満

https://twitter.com/hausmlb/status/696481234063495168/


選考したのは40人。来シーズン終了までの見通しと考えていますが、新人王予想などとは違い、各選手のキャリア到達地点を念頭に置いています。そのため、年齢や年数が若い選手ほど成長面が考慮され、プロでの成績が伸びなければランクが下がる可能性もあります。これは、MLBのリストと近い考え方になっています。



<トップ・プロスペクト1位から10位まで>



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※成績はプロ1軍での通算

ドラフト会議で5球団が競合のすえ、ソフトバンクが交渉権を獲得した田中正義投手(創価大)が全体のトップ。最速156kmのストレート、プロ選手を相手にした強化試合での投球から、将来の日本代表候補とも評価されています。次いで2位は、ヤクルトから単独1位指名を受けた寺島成輝投手(履正社高)。左腕の本格派でありながら大崩れしないタイプといわれ、速球も変化球もまだまだ伸びる要素を感じます。高校出身の新人としは、大谷翔平投手(日本ハム)、松井裕樹投手(楽天)の域に迫る素材といっても良いでしょう。


プロ在籍者でトップとしたのは3位の岡本和真選手(巨人)。持ち前のパワーに加え、3塁守備でも強肩と敏速な動きを見せています。ただ、今シーズンはじめて1軍に上がったとき、ボール球を追いかけるようなスイングが目立ったのは気になる点。指導方針にも左右されますが、強打者にとって宿命ともいえる厳しいコースへの対処が、1軍で活躍するための鍵となるでしょう。吉田正尚選手(オリックス)と平沢大河選手(ロッテ)は、どちらもチームから高い期待を背負い、有望株の域を超えているといっても過言ではありません。高卒ドラフト1位として入団した高橋純平投手(ソフトバンク)と小笠原慎之介投手(中日)は、別々の形でプロ1年目を過ごしましたが、成長するためのステップを着実に歩んでいます。


今回のドラフトで、外れ1位ながら5球団が競合した佐々木千隼投手(桜美林大)は、田中投手に次ぐ即戦力といわれていますが、150km超えの速球に加えチェンジアップ、スライダーにも目を見張るものがあります。先発投手は、3つの球種が武器として持つことが成功の鍵と言われていますが、佐々木投手は既にこれを備えています。西武から1位指名を受けた今井達也投手(作新学院高)は、今夏の甲子園で評価が急上昇。高校生では、最高レベルの速球を投げ込みます。




<トップ・プロスペクト11位から20位まで>



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リスト8位の上林誠知選手(ソフトバンク)を始め、現在のファームには外野の有望株が多く存在します。野間峻祥選手(広島)は、プロ2年目の大半をファームで過ごしましたが、ウエスタン・リーグで打率.299をマーク。入団当時から評判だった強肩も健在ですが、チーム内のポジション争いは非常に激しく、レギュラーが保証されているわけではありません。オコエ瑠偉選手(楽天)は、身体能力だけなら球界トップクラスの若手に違いありませんが、今はプロとしての技術を磨いているところ。3年目を過ぎたあたりで評価が大きく分かれそうです。


U-23W杯で日本代表の4番を務めた真砂勇介選手(ソフトバンク)は、非常にスケールの大きい外野手。今シーズンは、プロ初の1軍昇格を果たしましたが出場には至らず。ファームの打撃成績は着実に進歩していますが、潜在能力からするとまだまだ物足りなさを感じます。淺間大基選手(日本ハム)、リスト31位とした関根大気選手(DeNA)は、1軍か2軍どちらかで重点的に起用されていれば、成長の跡がはっきり伺えたかもしれません。今シーズン後半、イースタンで長打力が突如開花した外崎修汰選手(西武)は、来シーズンのレギュラー候補に浮上。狙うとなれば遊撃のポジションですが、ファーム2年間で通算43盗塁も強力な武器の一つです。


塹江敦哉投手(広島)、オリックスからドラフト1位指名された山岡泰輔投手(東京ガス)、笠原大芽投手(ソフトバンク)、楽天1位指名の藤平尚真投手(横浜高)、安樂智大投手(楽天)らは、近い将来チームのローテーションに加わることが有望。山岡投手には賛否もあるようですが、オリックスの福良淳一監督は1年目からローテーションで起用することを示唆。結論は、早い段階であきらかになりそうです。





<トップ・プロスペクト21位から30位まで>


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上位20人に比べると、21位以下の選手たちは未知数な点を多く残しています。望月惇志投手(阪神)、岡田明丈投手(広島)、ヤクルト2位指名の星知弥投手(明治大)らは素晴らしい球速の持ち主。これをプロの世界で生かすには、制球あるいは変化球の精度を磨き、スピード以外の売り物も必要になってきます。ドラフト2球団競合の末に中日が交渉権を獲得した柳裕也投手(明治大)は、球速ではやや譲るもののカーブを始めとした変化球、インコースへの制球力はドラフト指名選手の中でも指折りの存在。即戦力と期待されるだけに、チャンスは多く与えられそうです。


廣岡大志選手(ヤクルト)、宗佑磨選手(オリックス)、横田慎太郎選手(阪神)らは、素材の域を脱していません。特に横田選手は、機動力に偏った打撃スタイルに進もうとしている点から、プロ1年目の評価が徐々に下がっているのは否定出来ません。廣岡選手は、チームの先輩となる山田哲人選手と似たフォームとスイングをこのまま通していくのか、宗選手は故障に負けない体力作りなど、適当力に課題が残されています。肘井竜蔵選手(ロッテ)と渡邉諒選手(日本ハム)、ランキング40位とした内田靖人選手(楽天)は、そろそろ1軍定着が望まれるところ。イースタンでは今シーズン、打撃成績を大きく伸ばしましたので、ファームでの育成は卒業として良い時期かもしれません。


捕手では、ソフトバンクから3位指名を受けた九鬼隆平選手(秀岳館高)をトップの評価としました。配球やキャッチングといった技術は未知数ですが、捕手であってもポテンシャルは重要。また、チームが若返りを果たそうとしているのも九鬼選手には好材料で、今回の指名はタイミングの良さが際立ちました。





<トップ・プロスペクト31位から40位まで>


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巨人から1位指名を受けた吉川尚輝選手(中京学院大)は、広い守備範囲と脚力、打撃とツールも揃っていますが、プロでは2塁手としてレギュラーを目指すことになりそうです。日本ハム1位指名の堀瑞輝投手(広島新庄高)は、150kmを計測した速球以上に耐久性も評価されています。プロで活躍するには、素質と同じくらい故障に強いことが重要。リスト32位では評価が低いかもしれません。


清水優心選手(日本ハム)、桒原樹選手(広島)、若月健矢選手(オリックス)らは次代のレギュラー候補。現時点では若月選手が一歩リードしているものの、数年先を見越した上で1軍定着、レギュラー確保の期待が掛かります。山下幸輝選手(DeNA)は、フレッシュオールスターやU-23W杯にも出場。若手同士が激しく争いチームにおいて、一皮むけて欲しい存在です。薮田和樹投手(広島)と松本裕樹投手(ソフトバンク)は、故障を乗り越え投手陣の柱と期待されています。薮田投手は、チーム事情により今シーズン終盤はリリーフに転向。松本投手は、故障明け球威が完全には回復していません。球団がどのように育てていくかについても注目されるでしょう。


この他にも、大型内野手として期待される太田賢吾選手(日本ハム)、広島からドラフト2位指名を受け“高校ビック4“と評価された高橋昂也投手(花咲徳栄高)、来シーズンはファームでのイニングを増やしたい與那原大剛投手(巨人)と綾部翔投手(DeNA)、育成枠から復活した園部聡選手(オリックス)など、40人のリストに入ってもおかしくはない若手が数多くいます。プロ同士の争いに勝つのは容易ではありませんが、そうしなければ1軍定着、レギュラー確保を達成出来ないのは明らかです。


トップ・プロスペクトの評価は、所属(もしくは入団予定)球団の事情も多少は考慮しています。球団の期待が高ければファームでの出場機会は増え、それをきっかけにして次のステップが踏みやすくなるからです。しかし、期待に応えられなければファームといえど出場数は減り、その後のドラフトで新たなライバルが入団する可能性もあります。3年後、4年後を視野に入れ育成するといっても、プロの世界では悠長に構えることは出来ません。よって、このランキングも更新する度に選手が大幅に入れ替わることもあるでしょう。


球団の方針も、若手を生かすかどうかに大きな影響を与えます。先の日本シリーズでは、守備やサインプレーのミスが少なくありませんでしたが、若さ溢れるプレーはそれを補って余りあるもので、シリーズに熱狂したファンが一番良く理解していることと思います。世代交代の波が押し寄せている今のプロ野球、チャンスを掴む若手は一体誰になるでしょう。

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