オフに入り、複数回にわたり各FA選手の最適移籍球団を探る分析を行っていく。初回は各論に入る前に、その前提として各球団のペイロール(年俸予算)やニーズについての確認をしていきたい。


まず今季FA宣言した選手を確認しよう。


http://npb.jp/announcement/2016/fa_filed.html



先発投手:山口俊(DeNA)、岸孝之(埼玉西武)

救援投手:森福允彦(ソフトバンク)

外野手:陽岱鋼(日本ハム)、糸井嘉男(オリックス)、栗山巧(埼玉西武)

FA移籍が決まった選手は各球団内における年俸で決められるランクによって、移籍元球団への補償が変わってくる。


公表されている年俸からランクを推測すると、


Aランク:岸孝之、栗山巧

Bランク:山口俊、森福允彦、陽岱鋼、糸井嘉男

となった。栗山(埼玉西武)はFAを宣言したうえでチームへの残留を表明している。 各球団は支払う金額に加えて、補償選手のコストも考えなければならない。森福允彦に関してはCランクとの報道もあるが、正確なことは所属球団にしかわからず、ここではBランクとして扱うことにしている。





各球団のニーズ



FA宣言選手の獲得の前提として、各球団の予算総額の把握が必要となる。各球団が選手の年俸に使うことができる予算はある程度決まっている。このペイロールを参考にしながらそれぞれのニーズを確認していく。




パ・リーグ

パ・リーグ球団の過去5年のペイロール(年俸予算)は以下のようになっている。



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日本ハム 

FA及び主な退団選手:陽岱鋼(16000万)、吉川光夫(9500万)、武田勝(4000万)、石川慎吾(1000万)


ニーズ:強いて挙げるなら先発投手



FA宣言となった陽岱鋼(16000万)が退団となった場合は、一時的にペイロールに余裕は出るものの、今季好成績を残したため主力選手の昇給で埋まることが予想される。


球団は陽のFA流出を覚悟している可能性が高い。過去の例を見ると、チームの核になるプレーヤーに対してはしっかりと投資をするが、陽に関してはそこまでの評価に至らなかったようだ。主力の移籍に対して、若手を抜擢し短期的にも中長期的にも運用能力を維持するのが日本ハムフロントの基本的なスタンスになる。外野手には岡大海、谷口雄也、淺間大基ら複数の有望株が控えており、現有戦力で若返りを図る時期と割り切っているのだろう。


強いてポイントを挙げるなら先発投手だが、例年通りの予算であれば、高額なFA投手を獲得するのに予算を割くことはなく、可能性は低そうだ。





ソフトバンク 

FA及び主な退団選手:森福允彦(12000万)、細川亨(10000万)、バリオス(6000万)、カニザレス(6000万)


ニーズ:外野、指名打者、二塁、捕手



年々チームのペイロールは膨らみ続けている。13年に32億円だった総年俸は16年には53億円にまで上昇した。チームは今季惜しくも優勝を逃したこともあり、孫正義オーナーはさらなる補強を指示している。ペイロールはさらに膨らむ可能性もある。


チームが欲しているのは長打力だ。現状は柳田悠岐の圧倒的な攻撃力に依存している部分が大きく、もう一人軸となる打者の獲得を目指したい。特に右翼、指名打者の攻撃力は不足しており、有力外野手でありながら、指名打者としても十分な打力を有する糸井、陽は需要とマッチしそうだ。長期的には上林誠知をレギュラーに据えたいと考えているはずだが、短期的に計算できる選手にはなっていない。優勝を奪還するために、短い期間でも大きな活躍ができる選手が欲しいところだ。


二塁手の攻撃力も不足しているが、市場に出ている選手はおらず、とれる選択肢は限られてくる。捕手も長年ベテランの力に頼っており、レギュラーを確立したいと考えているはずだ。





ロッテ 

FA及び主な退団選手:サブロー(6500万)、イ・デウン(5400万)、大松尚逸(2520万)、香月良仁(2090万)


ニーズ:外野、一塁、二塁、三塁、遊撃、先発



チームのペイロールは年をまたいでもかなり安定しており、来季も25億円前後が予算とみていいだろう。もしアルフレド・デスパイネ(25000万)、ヤマイコ・ナバーロ(14200万)が退団となった場合はかなり大きな予算が空くこととなる。これを外国人選手の獲得資金に充てるのか、FA選手の獲得に充てるのかの判断が迫られる。


戦力的なニーズとしては、中堅手の能力不足は否めない。長年多く中堅を務めてきた岡田幸文は攻撃力に大きな問題を抱えており、荻野貴司は故障がち。期待の加藤翔平も攻守に物足りない。中堅手だけでなく、角中勝也以外の外野手は成績が安定せず、チームの弱点となっている。能力の高い選手を加えたいところだが、チームの予算を考えると参戦は不透明だ。


また内野の戦力も十分とはいえない。将来的には平沢大河を遊撃に据え、現遊撃手の鈴木大地を二塁や三塁に回すコンバート案をもっていることが推測されるが、時期尚早だろう。一塁も打力の劣る選手を起用せざるをえない苦しいポジションだった。内野全体で攻守ともに競争力に限界がある。現状を改善するためにとれる策は多くないが、最適な配置を探るなど内野のテコ入れは図ってくるだろう。





埼玉西武 

FA及び主な退団選手:岸孝之(22500万)、C.C.リー(8400万)、ポーリーノ(6000万),岡本篤志(3100万)、木村昇吾(2000万)


ニーズ:先発、遊撃、右翼



近年、チームは低迷しているにも関わらず、昨季はここ数年で最大のペイロールとなった。中村剛也、岸孝之といったFAが近くなった主力選手をチームに残すための手段として権利取得前の複数年契約を結んできた影響といえる。


チームの弱みは投手陣だが、例え岸が流出となったとしてもこれ以上の予算を割くことができるかは微妙だ。秋山翔吾も来季にはFA権を獲得予定で、球団は取捨選択を迫られる。


長年、レギュラーが固定されていない遊撃は、呉念庭、外崎修汰が終盤に来季に期待をもたせる活躍を見せたが、いまだ計算は立っていない。今オフ市場に出ている選手はおらず、若さが求められるポジションだけに外国人選手の獲得も難しい。補強の選択肢はかなり少なく、若手の台頭に賭けるしかない状況だ。


ちなみに栗山巧はFA宣言したものの残留を表明している。





東北楽天

FA及び主な退団選手:後藤光尊(9000万)、栗原健太(2000万)、川井貴志(1600万)、長谷部康平(1400万)


ニーズ:一塁、二塁、左翼、中堅、右翼、救援投手



アンドリュー・ジョーンズ、ケビン・ユーキリスなど複数の大物外国人を抱えていたころから比べると、現状はペイロールに余裕ができておりFA市場への参戦も十分に可能である。


野手は捕手、遊撃を除き、全てのポジションが補強ポイントに当てはまる。特に外野手は3つのポジションすべてが弱点となっており、今オフのFA外野手を加えることができた場合、非常に効果的な補強になる。チームは攻撃力に長けるものの、守備力に欠けるウィーラー、ペゲーロら外国人選手をどのポジションに配置するか試行錯誤を続けているようにみえる。FA選手を補強したうえで最適な配置が見つかれば大きな上積みを得るはずだ。外野の守備力をカバーできるコアプレーヤーの獲得を目指したい。


内野は茂木栄五郎の台頭で光明は差したものの、いまだ状況はよくない。今オフ、内野手がFA市場に出ないことを見越して補強したであろう今江敏晃も機能しなかった。今オフでの大きな改善は新外国人の獲得以外には望めず、若手の台頭や今江、銀次、藤田一也らの復調でなんとか穴を塞ぎたい。


救援投手の台所事情も苦しく、FAの青山浩二は残留となったが、外国人選手の補強は野手に割く枠の問題もあり難しい。ドラフトで指名した即戦力投手が穴を埋めることに期待したい。





オリックス

FA及び主な退団選手:糸井嘉男(28000万)、原拓也(3000万)、小松聖(1900万)


ニーズ:中堅、三塁、救援、捕手、指名打者、一塁



中島裕之、小谷野栄一、トニ・ブランコら大型補強を行った2015シーズンから予算は大きく跳ね上がった。球団は糸井の残留に4年18億もの資金を用意しているとの報道もあることから、現状レベルの予算を維持できそうだ。しかし糸井の残留に成功した場合、これ以上の追加予算を用意できるかは微妙だ。


致命的な弱点となっているのは中堅手になる。今季多くのイニングを守った駿太の攻撃力が伸び悩み、代わりに出場した小島脩平らも振るわなかった。吉田正尚、T-岡田らも外野を守ることができるが、いずれも両翼を守る選手で、中堅は人材不足となっている。


また中島、小谷野を加えることで穴を埋めようと試みた三塁手のマイナスもいまだに大きい。新外国人として加入したモレルも期待外れで、テコ入れを図りたいポジションとなる。


投手陣も先発・救援ともに貢献度が低い。補強したいところだが、すべてのポジションを補強することはできず、優先度は中堅手よりも低くなる。一軍のレベルに達していない投手が多く登板するような状況も多かったため、安価で済むならば救援投手も加えたいところだ。





セ・リーグ

続いて、セ・リーグ球団の過去5年のペイロール(年俸予算)は以下のようになっている。



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広島

FA及び主な退団選手:黒田博樹(60000万)、廣瀬純(3800万)、倉義和(2700万)


ニーズ:強いて挙げるなら先発投手、三塁



黒田博樹が引退し、ペイロールに大きな空きができる。今季活躍した選手の昇給分を考えても資金的な余裕は十分にあるだろう。


補強ポイントとしては黒田が抜ける先発投手が挙げられるが、クリス・ジョンソンの契約延長、岡田明丈の台頭、エースクラスのポテンシャルをもつ大瀬良大地が来季は先発に復帰することも予想され、現有戦力で十分運用できるだけの層はあるはずだ。できれば向上を目指したいが、補強ポイントというほどでもない。今後黄金時代を築くためには、FAが近づく丸佳浩の長期契約延長を優先したい。





巨人

FA及び主な退団選手:鈴木尚広(6000万)、香月良太(3900万)、加藤健(3500万)、大田泰示(2100万)、公文克彦(850万)


ニーズ:中堅(外野)、二塁、救援、一塁



本来、コアプレーヤーとして活躍するはずであった長野久義の成績がここ数年低迷しているほか、大きな期待を受けた大田泰示(トレードで日本ハム移籍)、橋本到らも伸び悩み、外野手の戦力見直しが迫られている。優勝した広島は同ポジションに丸佳浩、鈴木誠也とリーグ最高レベルの選手を抱えており、このポジションでつけられた大きな差を埋めることは不可欠だ。


二塁手も長年課題のポジションとなっている。片岡易之、ルイス・クルーズと立て続けに補強してきたが、確固たる地位を築くには至っていない。ドラフトでも二遊間を守る吉川尚輝を獲得するあたり、編成部が不満を抱いている様子が窺える。


先発投手はオフに入ってからも吉川光夫が加入するなど、ややダブついており、獲得しても大きな上積みになることはないだろう。優先すべきは野手の補強だ。


しかしペイロールは圧迫されており、新たに選手を獲得するとなれば現状の総年俸を超える可能性が高い。予算を捻出することができるだろうか。





横浜DeNA

FA及び主な退団選手:三浦大輔(12500万)、山口俊(8000万)、ロマック(7500万)、エレラ(5000万)、長田秀一郎(4500万)


ニーズ:二塁、三塁、遊撃、救援、捕手



内野の3つのポジションに弱点を抱えている。今季は倉本寿彦が遊撃手としてフルシーズン活躍したものの、同リーグ内の力関係ではいまひとつの内容となっている。フロントも二塁、三塁を守るエリアンをシーズン途中に補強するなど、弱点は把握している。FAに出る内野手はいないため打てる手は少ないが、来季に向けていかに改善を図れるだろうか。


チームの強みは先発投手と外野手にあり、今オフ市場にでている多くの選手とポジションが重なっている。特に外野手は左翼・筒香、中堅・桑原、右翼・梶谷がほぼ完全に固定されており、補強しても上積みは少ない。もし筒香が三塁にコンバートされるようなことがあれば補強も有効になるが、可能性は低そうだ。


例年通りなら予算の大きな空きもないはずで、選手獲得よりもエース・山口の残留に全力を傾けたいところだろう。極端に打者有利の横浜スタジアムで、優れた成績を残す山口の希少性は高い。また、登板当たりの投球イニングは最大で、ブルペンの負荷を和らげる投手でもある。今季以上の成績を目指すDeNAにとって、みすみす他球団に奪われて良い投手ではないだろう。





阪神

FA及び主な退団選手:福原忍(12000万)、鶴岡一成(3800万)、清水誉(1150万)


ニーズ:先発、二塁、三塁、遊撃、外野(中堅)



現監督・金本知憲、城島健司、藤川球児ら高年俸の選手を多数抱えていた時期から比べると、現状のペイロールはスリムになっている。もし資金を使う時期を伺っていたのなら、今オフは絶好の機会だろう。


手をつけなければならないのは内野陣だ。長年チームの柱となっていた鳥谷敬がコンバートとなり、シーズン途中からは北條史也が遊撃に就いた。来季以降、鳥谷をどこのポジションで使うのか適切な配置を探りながら、核となる選手を育てていかなければならない。


先発投手は阪神の強みである。ローテーションを構成したランディ・メッセンジャー、藤浪晋太郎、岩貞祐太、能見篤史の構成はかなり強固といえる。しかし、メッセンジャーと能見はともに35歳を超え、いつ衰えがきてもおかしくない点には留意が必要だ。


外野は左翼・高山俊、右翼・福留孝介をほぼ固定したものの、中堅は日替わりの起用となった。福留も来季40歳を迎え、長期的に見ると代替選手が必要なため、外野手の補強は効果的だ。





東京ヤクルト

FA及び主な退団選手:オンドルセク(22000万)、田中浩康(6500万)、森岡良介(3200万)


ニーズ:先発、救援、外野



積極的なFA補強やリーグ優勝もあり、ここ数年ペイロールが膨らんできている。今季限りで契約が切れるウラディミール・バレンティン(36000万)に契約が流動的で、新外国人を獲得した場合でも予算が空くことが予想される。1年あたり2億円弱の選手を1人ならば、FA市場に参入することは可能だろう。しかし獲得となった場合、決して予算が多いチームではないだけに、来オフ以降身動きがとりづらくなることは覚悟しなければならない。


今季弱みとなった先発投手陣はとにかくイニングをこなせる選手が不足しており、FA選手を獲得となれば大きな上積みが期待できる。


外野手も、今季レギュラーだったバレンティン、坂口智隆、雄平は攻守どちらかに課題を抱えている。現状のFA選手を加えれば上積みは可能だが、チームはバレンティンとの契約が最優先事項となるだろう。ただ、契約の可否について時間がかかると、FA選手の移籍先が決まってしまう可能性がある。バレンティンとの契約に至らなかった場合、補強の選択肢が限られてしまう難しい状況となっている。





中日

FA及び主な退団選手:雄太(2300万)、大場翔太(1200万)、西川健太郎(580万)


ニーズ:先発、外野、二塁



落合博満のGM就任以降、ペイロールを抑えることに成功し、12球団でも最安年俸の球団となった。このまま予算を抑えたままの編成を維持していくのか、溜め込んだ資金を使うことができるのか、どう出るだろうか。


チームはすでに大島と平田の残留に成功した。今オフFA流出の危機にあった大島と平田は、これまでの貢献が非常に大きかった。さらに、平田に関してはまだ28歳と非常に若く、今後活躍できる期間も長いと推測される。もし両者が退団となった場合、1年を通して実力を証明したことがない選手が外野3ポジションを守る危機的状況だっただけに、残留をとりつけたフロントの働きは評価されるべきだろう。


外野の強みを維持することに成功したため、補強の最優先ポイントは先発投手となるだろう。今季は規定投球回をクリアした投手がおらず、イニングをこなせる投手を補強したいところだが、球団の編成、予算の方針がそれを許すだろうか。

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