• 1.02 Column



今季のプロ野球はコリジョンルールの導入がトピックスの一つとなるだろう。開幕から2か月が経過し、野球を変えるとの指摘もあったルール変更がどの様な変化をもたらしているのか確認していく。




安打による本塁突入


最初に、ヒットで本塁を狙った場合の変化を見ていく。最も機会が多いのは、二塁から単打を打ったケースになる(データはすべて5/25迄)。


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アウトカウントと打球を処理した外野手別にみると、二塁走者を三塁に留めた抑止率は、前年比でマイナスが多い。1死のLF、二死のRFなどは、1割以上も抑止率が変化している。


今季ここまで抑止できなかった実数に対して、昨年の抑止率に状況数を掛け合わせたものを比較したのが突入±になる。二塁から単打が出たケースでは、前年に比べ全体で45回ほど突入した数が増加したことになる。


サンプルは少ないが補殺も今のところ減少傾向だ。このケースでは前年よりも、三塁で留まる割合が減少し、本塁を狙う場合のリスクも軽減している。コリジョンルールの影響が良く出ているといえるだろう。





走者一塁で二塁打のケース


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走者二塁のケースに比べサンプルは少ないものの、抑止率の低下については、概ね同じ傾向にある。ここでも前年に比べ20度ほど突入する機会が増えている。





走者三塁で外野への飛球が打たれた場合


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走者が三塁にいて外野への飛球が上がったケースの状況は異なる。抑止率については、前年とほぼ変わらない。


どちらかというと、ホームへの返球で走者をアウトにできるケースが極端に低くなっている。もちろん、このケースの補殺自体、それほど記録されるわけではなく、もう少し推移を見守る必要はあるだろう。ここでは前年に比べ2.6度ほど突入する機会が増えたにすぎない。


上記3つの状況で、本塁に突入したケースは昨年に比べNPB全体で68.5回ほど増えた計算になる。




走者三塁で内野ゴロが打たれたケース


ここまでは、走者の進塁が目立つデータだったが、進塁を留まらせた状況もある。それが、走者三塁で内野ゴロが打たれたケースだ。


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(サンプルは少ないが)この場合に限っては、走者が三塁で留まる割合が高い(前年に比べ32回ほど進塁を留まらせている)。


また、本塁で封殺されるケースも前年に比べ10度ほど増加するなど、補殺率の上昇も確認できる。シーズン前は内野ゴロでの生還が増えるとの指摘もあったが、この部分は予測と異なる結果となっている。


ルール変更にも拘らずこの様な値になったのは、守備側が思い切った前進守備を選択している可能性が高い。同時にルール変更で利得を最も稼げると見込んだ攻撃側も、ギャンブル的な走塁をするケースが増えたのだろう。その結果は、得点をかなり見込める走者三塁から、無理な走塁で得点見込みを減少させる場面がここまでは多かったようだ。


走者三塁での内野ゴロはコリジョンルールの導入で最も大きい変化が起きると予測されたが、想定された方向とは逆に影響が出ている。この状況は、事前の情報や思い込みの部分も含め、人によってゲームが運用されている面を強く感じさせる結果だ。今後、ルールの理解と現状把握が進めば、改善されていくのかもしれない。





積極的な前進守備採用のリスク

走者三塁の内野ゴロ処理に関しては、守備側が適切な選択をしているように見える。ただ、この選択が単純に失点を減らしているかは別の問題となる。


走者状況とアウトカウント別に、犠飛を打数に含んだ安打割合(通常の打率では犠飛が打数に含まれず、走者なしなどの安打割合と比較できないため)とゴロ打球のアウト割合を見たのが下の表だ(なし=走者なし、三塁=三塁、一三塁、二三塁、満塁を対象 走者状況の詳細はコラム最後に掲載)。



<走者なしor走者三塁 ゴロアウト割合>

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<走者なしor走者三塁 安打割合>

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このように、走者が三塁にいるケースでゴロがアウトになる割合はほかの状況に比べ低い。これは、本塁での封殺を狙った副作用となる。通常の守備位置であれば、アウトを記録出来たケースもあったと思われる。二死になると三塁走者の有無に関わらず、通常の守備位置に戻るケースがほとんどで、走者なしとほぼ同じゴロのアウト割合(安打割合)になっている。元来、NPBは走者三塁のケースで前進守備を積極的に採用し、攻撃を継続させてしまうケースが見受けられる。


もちろん、試合の終盤で一点を死守しなければならない状況は存在し、前進守備をしなければならないケースはある。しかし、前進守備は無失点の可能性を高める一方で、2点目以降のリスクを大きくするハイリスク・ハイリターンの選択でもある。前進守備の失敗は次の失点の可能性を大きくする点は見落とされがちだ。


やみくもに前進守備を選択し、傷口を広げ挽回不可能な差をつけられることも大いにあり得る。本来なら、点差や味方の攻撃回数などを鑑みて、適切な運用が求められる。


コリジョンルールにより、これまでと異なる状況となり、監督(をはじめとした首脳陣)は試合の運用について配慮しなければならない部分が増えている。また、守備隊形や走者を進塁させるか否かの選択は、その時点で首脳陣がゲームをどの様に捉えているか(有利不利/戦力の余裕有無など)、具体的に感じることが出来る機会だ。走者の生還割合はもちろんだが、監督の運用能力を測るうえでも貴重な機会となりそうだ。



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