• 1.02 Column


開幕前にパ・リーグ優勝大本命とされていたソフトバンクが苦しんでいる。チームが思うように勝てない中、1人打線で気を吐いているのが柳田悠岐だ。今季もあらゆる打撃成績で軒並み上位にランクインするなど、例年と変わらぬ圧倒的な攻撃力を見せつけている。だがその打撃の内容を掘り下げてみるとここ数年とは少し内容が違っているようだ。

今季も打撃好調の柳田。しかし四球が減少


まず柳田の昨季と今季の成績を比較したものを以下の表1に示します。



打撃での得点貢献を、100を平均とした基準で指数化したwRC+では198とリーグの平均的な打者の約2倍の得点力を発揮しており、今季も柳田が好調であることがわかります。しかし少し気になる点もあります。今季は四球の割合(BB%)が減少しているのです。現在の成績は素晴らしいものですが、仮に四球が減っている原因が選球眼に問題が生じているせいだとすれば、後々に問題が顕在化してくる恐れもあります。今回はこの四球の減少の原因を探ってみたいと思います。


早いカウントで決着がつくことが多い今季の柳田


四球の減少の原因が選球眼にある可能性を指摘しましたが、表1を見ると同時に三振の割合(K%)も減少しています。仮に選球眼に問題が生じているのであれば、三振も増加しそうなものです。四球も三振もともに減少しているということは、四球や三振が起こる3ボールや2ストライクになる前、比較的早い段階で打席の決着がついていることが考えられます。以下の図1で柳田の打席が何球目で終わったのか、昨季と今季で比較しました。



グラフを見ると、1球目、2球目で赤が青を大きく上回っています。今季は昨季に比べ1、2球目で打席が終わることが非常に多いようです。昨季1、2球目で終わる打席は全体の22.7%でしたが、今季は32.1%にまで上昇。打席の決着が早くなっています。どうしてこのような早い段階での決着が起こっているのでしょうか。スイングの仕掛けのデータを以下の表2に示します。



昨季と比較すると、2ストライクからのスイング傾向に変化はありませんが、三振のリスクがない0、1ストライクから積極的にスイングを仕掛けている様子がわかります。この柳田の積極打法が四球の減少につながっているのは間違いないでしょう。


積極打法以外にも四球減少の原因が


しかしこれ以外にも柳田の打席が早く決着がついている原因と考えられるものがあります。これまではスイングをするか、しないかというスイングをする前の判断について言及しましたが、スイングをはじめた以降にも変化は現れています。


表3は柳田がスイングをした際、打球を前に飛ばすことができた(ファウルや空振りにならなかった)割合です。昨季に比べると、0・1ストライク、2ストライクのスイングでともに打球を前に飛ばす割合が増加。これは今季の柳田が三振の恐れがない0・1ストライク時に狙った球を打ち損じ(ファウルや空振り)せずにより確率高く前に飛ばすことができていることを示しています。ミスショットが少ないと表現できるかもしれません。



つまりここまでのデータから今季の柳田の四球減少の原因は以下のように整理できます。
① 0・1ストライクで積極的にスイングを仕掛けている
② スイングをした際例年よりも打ち損じる(ファウルや空振りになる)ことが少なく、打球を前に飛ばすことができている


最後に①の柳田が積極的にスイングをしかけている様子をビジュアルでチェックしてみたいと思います。0・1ストライク時にスイングしたか、していないかのスイング率の推定値を求めたものを以下の図2に示します。



図中の色が緑から赤へと変わっていくごとにスイング率は高くなります。今季は昨季に比べて黄色い面積が広く、より広いコースに積極的にスイングを仕掛けていることが確認できると思います。


このモデルチェンジをどう評価するか


2018年の柳田は早いカウントから積極的にスイングを試み、また例年よりもミスショットが少ないことが確認できました。しかし積極的にスイングを仕掛けたこともあり出塁率はやや低下。総合的な打撃成績としては維持、あるいはやや良化という程度の変化にとどまっています。総合的に見てこのモデルチェンジをどう評価するべきでしょうか。


私はこのモデルチェンジを肯定的に捉えます。まず柳田クラスの打者になると打撃成績の向上の余地は少なく、維持にも価値があります。また機材の発達、分析のノウハウの蓄積によって対戦相手の研究が容易になってきた現代においては、同じスタイルを維持していては対策される可能性も高くなります。柳田のような強打者ならなおさらです。こういった観点からモデルチェンジは成功といっていいのではないでしょうか。


ただ、現在のモデルも不変の打法ではなく、投手との対戦の中で少しずつ変化していくものと考えられます。柳田は昨季フライを上げる割合を上昇、今季はアプローチを変更と球界最高の打者でありながら変化を恐れてはいないようです。今後も彼の変化は注意深くチェックしていきたいと思います。



Student @Student_murmur
個人サイトにて分析・執筆活動を行うほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 BABIP関連、また打球情報を用いた分析などを展開。2017年3月に[プロ野球でわかる!]はじめての統計学 を出版。




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