• 1.02 Column



今季プロ5年目を迎えたオリックス・松葉貴大。3勝10敗と大きく負け越してはいるものの、すでに投球回は100を超え先発ローテーションの一角として役割を果たしている。そんな松葉だがここ数年は徐々にシンカーの割合を増加させ、ゴロを打たせる投手へのスタイルチェンジを試みているようだ。

年々増えるゴロ割合、それにともない増えるシンカー


今回はオリックス・バファローズの松葉貴大を取り上げていきます。松葉は、以下の表1に示すように年間100イニング強を投げるクラスの先発投手でしたが、今年はその壁を越えて150イニングに届きそうな勢いです。


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年度別成績を見ると、K%(奪三振/打者)はそれほど高くないものの、BB%(与四球/打者)が低く、与四球を少なく抑えることができる投手だといえます。守備から独立した失点率を推定したFIP(Fielding Independent Pitching)で見るとリーグ平均並みの数字を残しています。また近年の変化としては年々与四球が減少し、GB%(ゴロ割合)が高くなってきていることを確認できます。特にGB%の増加は顕著です。今回は松葉がどのようにゴロを打たせているかに迫りたいと思います。

最初に2014年以降の各球種の割合の変化と、100球あたりのPitch Value(得点期待値をベースに投手が球種別にどれだけ失点を抑止したか。今回はそれを100球あたりに換算した値)を図1、図2に示します。


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年々ストレートの割合が減少する一方でシンカーの割合が増加していることを確認できます。2017年は全投球の25%に迫るほどです。図2の100球あたりのPitch Valueでもシンカーは2年続け最も高い値を記録しており、この球種が効果的に働いている様子がわかります。


次に、打球が発生する前段階、どんなボールを振らせたのか、振らせることができなかったのか、振らせた場合コンタクトされたのか、されなかったのかなどをまとめたPlate Disciplineデータを確認したいと思います。以下の表2に示します。


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ストライクゾーンの投球をコンタクトされる割合はリーグ平均とそう変わらないものの、ボールゾーンの投球をコンタクトされる割合がリーグ平均の64.5%より高い値になっています。これは裏返せば空振りを奪えていないということで長所とはいえませんが、ストライクゾーンよりも凡打になりやすい、ボール球を打たせている松葉の特徴を表したデータです。


同じ球種でも左右の打者によってゴロアウトにとる方法は異なる


シンカーを武器とし、ボールゾーンのコンタクト率が高いことは確認できましたが、この2つのデータの関わりは確認できていません。そこで、松葉の球種別の獲得アウトを以下の表3にまとめてみました。


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右打者に対するシンカーでのゴロアウトが52と非常に多いことを確認できます。左打者に対しても、右打者ほどではないですが、シンカーでのゴロアウトが多くなっています。松葉のゴロ割合の増加にシンカーの増加が関わっていることは間違いなさそうです。ほかには、右打者ではチェンジアップ、左打者ではストレートのゴロアウトが多くなっています。

これらのゴロアウトは、ボール球を打たせて取っているのでしょうか。これを確認するために、ゴロアウトが多かったシンカー、ストレート、チェンジアップの投球結果を示していきます。まずはシンカーのデータを以下の図3に示します。


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左右の打者ともに外角低めへの投球が基本となっています。ボールゾーンでのゴロアウト数を比べてみると、対左打者では5つしかないのに比べ、対右打者では25もあります。特に右打者への外角低めは松葉のシンカーが最も高い効果を発揮するといえるコースかもしれません。

次に、ストレート、チェンジアップのデータを以下の図4、図5に示します。


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最も投球割合が高いストレートですが、左右打者共にボールゾーンでのゴロアウトは多くありません。右打者へのチェンジアップはシンカーと同じく、外角低めへの投球からボールゾーンでのゴロアウトを確認することができます。


シンカーは松葉の大きな武器に スタイルチェンジは成功


分析の結果、松葉は近年ゴロを打たせる確率が非常に高くなっており、それはシンカーの投球割合と比例していること、ボールゾーンの投球は振らせてもコンタクトされてしまうケースが多いが、シンカーとチェンジアップでゴロアウトを多く獲得していることを確認できました。

ただ、大きな武器となっているシンカーでのゴロアウトも左右の打者によって内容は異なり、対右打者では対左打者に比べボールゾーンを打たせてのゴロアウトが多くなっていました。右打者にとってこのボールゾーンのシンカーは空振りする恐れはないものの、コンタクトしてもうまく打球の角度がつかないボールになっているようです。

速球派の投手が、加齢とともに技巧派へと転向しゴロを打たせる投手になるという話はよく聞きます。しかし、松葉は今季で28歳。若くしてこうしたスタイルの変化を試みました。現在3勝10敗と勝ち星には恵まれていませんが、平均レベルの投球内容で規定投球回に近いペースでイニングを増やすことにも成功しているため、このスタイルの変化は成功だったといえるのではないでしょうか。


Student @Student_murmur
個人サイトにて分析・執筆活動を行うほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 BABIP関連、また打球情報を用いた分析などを展開。2017年3月に[プロ野球でわかる!]はじめての統計学 を出版。

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