• 1.02 Column


選考にあたっての考え方


選考にあたってはまず、いかなる守備が優れた守備であるかを考える必要がある。これについては、勝利に繋がるプレーこそが評価されるべきであるため、より失点阻止に貢献する守備が優れた守備であると考えた。このような考え方は、公認野球規則が試合の目的として、「守備側は、相手のバッターがランナーとなることを防ぎ、ランナーとなった場合は、その進塁を最小限にとどめるように努める。」(1.03)、「各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。」(1.05)と定めていることとも整合する。

「失点阻止に貢献していなくとも、優れている守備」はあり得るのではないかとの意見もあるかもしれない。しかし、そのような考え方からすれば「出塁もできず、長打も打てなくとも、優れている打撃」もあり得ることになってしまう。得点への貢献、勝利への貢献を無視して、優れた打者を決めて賞を与えることは、多くの人が不適切と考えるだろう。守備についても同様のはずだ。

このような考え方のもと、選手の守備力評価については、UZRをベースに選手の守備による貢献を得点化する方式をとった。守備力の得点化については以下を算出してそれらを合計した。


①ゴロの処理範囲による得点

②失策回避による得点

③併殺奪取による得点

④フライの処理範囲による得点


ゴロの処理範囲による得点については、UZRが打球の分類に使用している要素(ゾーン、距離、強さ)に加えて打者の打席の左右も要素として加えて、分類を細分化し、得点貢献を計算している。これは、打席の左右により打ってから一塁に到達するまでの時間に差が生じることからすれば、同じゾーン、距離、強さの打球でも左打者と右打者では打球処理の難易度が異なると考えたためだ。

また、通常UZRでは内野手の評価にあたってフライの捕球は評価しない。これは内野フライについては、ほとんどの打球がアウトになるためである。しかし、内野手と外野手の間に飛んだフライ(距離4のフライ)の処理については、選手ごとの力量の差が出るのではないかと考え、今回は評価に加えた。


例年と比べて突出した選手がいないシーズン


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表の項目はそれぞれ次のような意味である。


Total:守備による得点貢献の合計

RngR(GB):ゴロの処理範囲による得点貢献

ErrR:失策回避(失策を少なく抑える)による得点貢献

DPR:併殺奪取(併殺に参加し完成させる)による得点貢献

RngR(FB):フライの処理範囲による得点貢献


2017年は2016年以前と比較すると突出した選手がいない。500イニング以上守備に就いた選手では、トップの選手でも守備による貢献は5.1点分に過ぎない。二塁手で500イニング以上守備に就いた選手は9人いるが、そのうち7人の守備による得点が±5点以内に収まっている。

このような結果となったのは、例年大きな差がつくゴロの処理範囲による得点でほとんど差がつかなかったためだ。2017年に500イニング以上守備に就いた選手のほとんどが、平均にも届かない成績となっている(なおこれはDELTAが算出しているUZRでも同様である)。500イニングに満たない出場機会に留まった二塁手が、一定の貢献を果たしていたようである。

2016年の本アワードでトップとなった広島の菊池涼介は、2017年もトップの貢献を果たしているが、2016年までとは異なり、ゴロの処理範囲による得点はマイナスに転じている。シーズン中もコンディションを理由に試合を欠場することがあったが、そうしたコンディション不良が守備範囲の縮小に繋がった可能性が高い。他に追随する選手も同じくゴロの処理範囲では振るわなかったこと、失策の少なさ、また併殺への参加を通じて貢献を果たしたことが、トップの座を守れた理由であり、2016年まで見せた広い守備範囲という強みは見ることができなかった。

菊池の次に来たのは、2016年に引き続き西武の浅村栄斗である。やはりゴロの処理範囲による得点ではマイナスとなっているが、2016年もゴロの処理範囲による得点では大きなプラスとはなっておらず、菊池と異なり大きな傾向の変化は見られない。併殺への参加による得点が大きい点は2016年と同様であるが、平均的な守備力の選手と比較して、大きな貢献があったとまではいえない。


対照的な結果となったコンバート組


かつては他のポジションを守っていたという共通点のある2人の選手の結果は対照的なものとなっている。捕手からコンバートされ内野で複数のポジションを守ってきた楽天の銀次は、ゴロの処理範囲こそ振るわなかったものの平均的な二塁手並みの貢献は残せている。

一方、2017年より遊撃手から二塁手にコンバートされたロッテの鈴木大地はゴロの処理範囲による得点、併殺への参加による得点でのマイナスが響き、ワーストの結果となっている。2016年も遊撃手として10点以上のマイナスを示していたが、コンバート先の二塁でも結果は振るわなかった。ただし、マイナスの幅自体は遊撃手を務めていたときよりも大きく縮めており、コンバートの効果はそれなりにあったとも考えられる。


内野と外野の中間のフライ処理の得点化


今回は内野と外野の中間のフライ処理についても得点化してみた。結果として、ほとんどの選手が±1点の範囲内に収まっており、二塁手においてはフライ処理の能力では、差がほとんどつかないということが明らかとなった。

なお、他の内野のポジションでも同様の手法で得点化をしてみたが、遊撃手においても二塁手とほとんど状況は変わらず、一塁手や三塁手においては、0.1点も得点が変わらなかった例がほとんどという結果で、捕球が容易なゾーン&滞空時間のフライはどの選手でも捕球でき、捕球が困難なゾーン&滞空時間のフライはどの選手にも捕球できないということがうかがわれた。

あらゆる要素を評価に取り込むことの方が、緻密で優れた評価手法とみる向きもあるが、こうした状況からすれば、そのような考え方は必ずしも正しいとは言えなさそうである。少なくとも、内野手の評価において、内野フライを評価に加えないという判断は、それなりに合理的なものといえる。


ゴロの処理範囲による得点の算出にあたっての打者の左右の取り込み


また、ゴロの処理範囲による得点の算出にあたって、打者の打席の左右を考慮した結果についても、ほとんどの選手で±1点の範囲内におさまっており、二塁手においては、打者の左右はゴロの処理範囲の得点化に大きな影響を与えていないようだ。対戦チームの打者の打席に左右の偏りが生じることがそれほど多くなかったこと、二塁手は三塁手や遊撃手と異なり内野安打がそれほど多くないことなどがその理由として考えられる。


ゾーンとハングタイムから見たゴロの処理状況


2016年に引き続いて、守備による貢献の得点化のみでなく、ゴロの処理状況についても分析してみた。分析にはゴロのゾーン、ハングタイム(打者がゴロを打ってから内野手がゴロを捕球するか、捕球すべき地点に打球が到達するまでにかかった時間)ごとのアウトを獲った割合を用いている。


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これは二塁を守った全ての選手が、距離3(定位置付近の距離)のゴロをアウトにした割合をゾーン、ハングタイム別に集計したものである。左側の数字がハングタイムで、「0-1.5」の欄はハングタイムが1.5秒未満のゴロ、「1.5-2.0」の欄はハングタイムが1.5秒以上2秒未満、以下順に0.5秒間ごとにゴロを分類し、「3.0-」の欄はハングタイムが3秒以上のゴロである。ゾーンについては〈Q〉〈R〉〈S〉付近が二塁手の定位置付近となっている。

なお余談だが、遊撃手の場合は、少数ながら打者から見て二塁ベースより右側のゾーンに飛んだ打球をアウトにしたケースが存在するが、二塁手の場合には打者から見て二塁ベースより左側のゾーンの打球をアウトにしたケースは存在せず、同じ内野のセンターラインでも差異が見られ、こうしたことが遊撃手の方が二塁手よりも守備での得点差が生まれやすい理由かも知れない。

話を戻す。二塁手全体の傾向を見ると、〈Q〉や〈R〉といった定位置付近のゾーンでは、速い打球、遅い打球ともにアウトを獲れた割合が高い。定位置から離れるとアウトを獲れた割合は低下していくが、二塁ベースよりのゾーンのアウトを獲れた割合の低下が急激なのに対し、一塁よりのゾーンは変化がやや緩やかとなっている。

また、2秒以上2.5秒未満のハングタイムの打球が最もアウトを獲れた割合が高く、そこから速くても遅くてもアウトにできた割合は低下していくが、遅い打球は速い打球と比較して大きく変化はしない。一塁に近いところに飛んだ場合は、遅い打球でも内野安打のリスクがそれほど大きくならないことが関係しているように思われる。これも遊撃手とは異なる点である。なお、興味のある方は1.02 FIELDING AWARDS 2016の遊撃手部門を参照していただきたい。


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この表はゾーン別にアウトを獲れた割合を選手ごとに整理したものだ。全体の数値でも差が少なかったこともあって、選手ごとに明確な特徴は見出しにくいが、あえて何人かの特徴を挙げてみる。菊池は二遊間の打球に強く、一二塁間の打球に弱いという傾向が比較的わかりやすく表れている。こうした傾向は2016年も同様であったが、それと比較しても全体的なアウトを獲れた割合は低下している。阪神の上本博紀、中日の荒木雅博も一二塁間の打球への弱さが見られる。

反対にヤクルトの山田哲人は一二塁間の打球に強く、二遊間の打球に弱いという傾向が出ている。楽天の藤田一也は、二塁よりのゾーンでアウトを獲れた割合が極端に低くなっている。例年と比較すると、どのゾーンでもアウトを獲れた割合が高い選手がおらず、どの選手も弱点となるゾーンがあったといえる。


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この表はハングタイム別にアウトを獲れた割合を選手ごとに整理したものだ。菊池は速い打球への弱さがはっきりと表れた結果となった。急激な守備力低下の理由はここにあると考えられる。浅村は速い打球、遅い打球ともにそれなりに対応できているようだが、荒木は中間の速さの打球については堅実に処理できた反面、速い打球、遅い打球ともにアウトを獲れた割合が低くなっている。 西野は速い打球の処理については平凡ながら、遅い打球については高い割合でアウトを獲れている。

今シーズンは飛び抜けた選手が存在しなかったため、はっきりとした傾向は読み取れなかったが、おぼろげながら選手ごとの特徴が見られたのではなかろうか。


8人のアナリストによる採点と選出


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市川氏を含めた8人のアナリストが、それぞれの手法で500イニング以上を守った二塁手9人を評価した結果、広島・菊池選手が1位票を6票獲得しました。“1.02 FIELDING AWARDS 2017”の二塁手部門には、2年連続で菊池涼介選手(広島東洋)を選出します。


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