• 1.02 Column


中日の高橋周平が好調を維持しています。今季はレギュラーをつかんだ昨季からさらに成績を向上。リーグでも屈指の打者に成長しています。特に5月は猛打賞を8度記録し、月間MVPに選出されるなど圧巻の活躍でした。高橋の打撃にどういった変化が起こっているのでしょうか。今回は成長の裏に現れている3つのデータを紹介します。


打撃成績の変化


まず高橋の成績がどれほど向上しているかを確認しましょう。


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昨季までの高橋は打率が.250前後、出塁率も.300前後と成績が伸び悩むシーズンが続きました。広いナゴヤドームを本拠地としていることも成績が伸びない要因としてありますが、球場補正を施した打撃貢献値wRC+でも、平均の100に対して高橋の値は94。平均前後のレベルに落ち着いてしまっている印象でした。

しかし今季はそこから急成長。打率/出塁率/長打率は、昨季の.254/.305/.400から、.323/.367/.510にまで伸ばしています(6月23日終了時点)。94だったwRC+は148まで上昇。この成績はリーグを代表する強打者のレベルです。


1.内野フライの減少


ここからは成績向上に寄与していそうな3つのポイントを挙げていきます。まず1つ目の象徴的な変化として挙げられるのが内野フライの減少です(表2)。


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高橋は昨季打ち上げたフライ158本のうち、21本が内野へのフライになっていました。割合は13.3%。今季のリーグ平均が13.0%なので、おおよそ平均レベルにはフライが内野フライになっていたようです。

それが今季は99本のフライのうち、内野へのフライはわずか3本。フライの割合はそのままに、フライが内野フライになる割合を13.3%から3.0%まで減少させています。

フライがヒットになる確率は、滞空時間や打球方向によって変わります。しかしその中でも内野へのフライは、滞空時間や打球方向を問わず、プロの守備にかかればほぼ100%アウトになってしまいます。打者から見れば明らか打ち損じです。内野フライの減少は打撃成績に当然好影響を与えます。

以下の図1に高橋が内野フライを放った投球のプロットを示します。


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これを見ると、内野フライは真ん中からやや高め、そして真ん中からやや内側のコースで多く発生していたことがわかります。これらのコースの打ち損じの減少が高橋好調の要因のひとつといえるでしょう。


2.ヒットゾーンの拡大


そのほかに象徴的な変化が起こっているのは、ヒットゾーンの広さです。図2は高橋の昨季と今季の打率をヒートマップの形で表したものです。赤色に近いコースほど、打率が高いことを示します。


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まず左側、昨季の高橋のヒートマップを見ると、外角低めがオレンジ色になっており、このコースで高打率を記録していたことがわかります。この外角低めから離れるにつれ打率は低下しており、特に内角高めではヒットがほとんど出ていませんでした。

一方右側、今季の高橋は、外角低めの高打率を維持しながら、その得意コースをより広く持つことができているようです。昨季と比べると、真ん中や高めのコースでも高打率を残しています。特に、ほとんどヒットが出ていなかった内角高めのゾーンまでオレンジ色が広がっており、より幅広いコースに対応している様子がわかります。

真ん中から高めは、昨季内野フライを多く打ち上げていたコースでもあります。今季の高橋はこれらのコースの打ち損じを減らし、ヒットにつなげているのかもしれません。


3.打撃アプローチの改善


ここまでは主に打球の変化を取り上げましたが、アプローチ面での改善も見逃せません。図3は高橋のスイング率をヒートマップで表し、昨季と今季で比較したものです。赤くなっていくほどスイング率が高まっていくことを示しています。


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これを見ると、今季のマップは昨季のものに比べて黄色~赤の部分が縮んでいることが確認できます。昨季に比べると全体的にスイングを減らしているようです。特にスイング率50%を表す緑と黄色の境界に注目すると、昨季はストライクゾーン上部に大きくはみ出していた黄色が、今季はストライクゾーン中心に向かって縮んでいることがわかります。高めのボール球に手を出すケースが減っているようです。また左打者の高橋にとって外角にあたる右側のコースに関しても、中心に向かって縮んでいる傾向が見られます。

今季の高橋は、高めとアウトコースに外れるボールには手を出しにくくなっているようです。特に高めに関してはかなりスイングを減らしており、打席における目付けが変化している可能性を感じさせます。


3つのデータから見えてくること


以上、高橋成長のヒントになっていそうな3つのデータを紹介しました。この分析ではデータを並列に示しましたが、これらは結びつけて考えることが可能です。

例えば昨季はアウトコース低め以外にヒットゾーンがなかったゆえに、アウトコースへの投球を追いかけ、ボール球までスイングしてしまっていたという可能性が考えられます。得意なコースのそばに苦手コースがあるとはよくいわれますが、今季の高橋はより広いヒットゾーンを持つことにより、得意なアウトコースを必要以上に追いかけることなく打撃ができているのかもしれません。

またこうした変化は選球眼の向上とも捉えられます。一般的に選球眼に関わる指標は、シーズン間での安定性が極めて高く、キャリアの最初期と晩年以外で変化することはあまり多くありません。高橋は今季8シーズン目。キャリアの最初期はとうに過ぎ、晩年には程遠い時期です。この時期にこういった変化が起こるということは、本人がかなり意識的に変化を求めた証拠のようにも感じます。

この成長が技術的な改善によってもたらされたものなのか、それともメンタル面での変化によるものなのか、それとも自身では理解できないままに好調な状態が続いているのか、分析では踏み込むことができません。このあたりは高橋へのインタビューが待たれるところです。

今後はリーグ内においてマークされる危険な打者として扱われるようになるでしょう。各球団がどのような対策を取り、そして高橋がそれにどう立ち向かっていくのか、今後の見どころのひとつになります。

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