昨季日本ハムに逆転優勝を許したソフトバンクは優勝を奪還。近年はBクラスに沈むことが多かった西武、楽天がクライマックスシリーズ出場権をつかむなど、パ・リーグの勢力図に変化があった。今回は開幕から2週間ごとに続いてきた本企画の総括として、今季開幕からの流れをおさらいしながら各球団の戦いぶりを振り返る。セ・リーグ編はこちらから

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1.リーグ総括


昨季日本一に輝いた日本ハムは、WBCに参加する予定だった大谷翔平が右足故障のため出場を辞退。開幕にも間に合うか微妙な状況で、なんとか野手として強行出場したものの4月8日のオリックス戦で、今度は左太ももの肉離れを起こしてしまい、再びグラウンドに戻って来たのは交流戦明けのことでした。このことが、今季パ・リーグのペナントレースに大きな影響を及ぼしたのは言うまでもありません。

開幕ダッシュに成功したのは楽天で、チーム18試合目にして早くも貯金を10に乗せ、4月はオリックスが追いかける形に。優勝候補と見られていたソフトバンクは、昨季に続いて開幕でつまずき、15試合目まで借金生活を送っていました。大谷が欠けた日本ハムとロッテは大きく出遅れ、昨季Aクラスに入った両チームが一度も貯金を作らないままシーズンを終えるとは、この時点では想像もできませんでした。

楽天の好調はオールスター前まで続き、5月から巻き返したソフトバンクが首位を奪うこともありましたが、前半戦最後のカードとなった直接対決では楽天が連勝。そのまま優勝へとの期待も高まりましたが、チーム得失点差はソフトバンクが既に追い抜いており、楽天の方は貯金を増やしながらも苦しい試合が少なくありませんでした。

後半戦から頭角を現し始めたのは西武。オールスター明けのソフトバンク3連戦は全敗したものの、その直後から13連勝を記録して一気に優勝戦線へと浮上。連敗が止まった8月5日のソフトバンク戦も、6点のビハインドを一時は追いつく戦いぶりを見せるなど、勢いの点では上位2球団に勝るものがありました。しかし、最後に笑ったのはソフトバンク。例年以上に稼働するブルペン陣を代表して、デニス・サファテが起用法に異議を唱えた直後からチームは団結し、8月8連勝に加え31日から9月にかけても9連勝を記録。故障者が復帰するもコンディションが低下していた楽天、連勝の勢いが失せた西武を大きく引き離し、9月16日にリーグ歴代最速での優勝を決めました。シーズン94勝と貯金45は、2004年のオフに球団を買収して以来最高の成績で、プロ野球の歴史でも5番目に相当する勝ち星です。これから行われるポストシーズンで、2年ぶりの日本一を目指すことになります。


2.戦力データ、個人成績から見た各球団のシーズン総括



福岡ソフトバンクホークス

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昨季優勝を逃がした原因として長打力不足を痛感した球団は、オフの間にアルフレド・デスパイネを獲得。これが見事に当たり、チーム本塁打数は2年ぶりリーグトップに立ち、特に先発投手陣の足並みが揃わなかった春先に長打力がチームを助けた場面は一度や二度ではありませんでした。後半戦では得点力がやや下がり、前半戦まで.270台を維持していたチーム打率も下降しましたが、シーズン通しての平均得点はリーグ2位の4.46点と高い値を記録しました。

投手陣は、昨季から被本塁打が増加する傾向にあり、今季もこれを克服するのは難しかったようですが、リーグ最少失点で乗り切ったのは戦力の充実ぶりを示しています。WBCに参加した投手が多数を占めた影響から、先発とブルペンともに顔ぶれが若干変化。例年以上に若手への切り替えが図られていました。

守備指標は毎年高数値を記録しているチームで、今季レギュラーに抜擢された上林誠知が主に守っていた右翼はリーグトップのUZR(Ultimate Zone Rating)を記録。他のポジションも弱点らしいところはなく、堅い守りに支えられていたことも投手陣が安心して投げられた大きな要因でしょう。


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野手の個人成績では、柳田悠岐が2年ぶりに30本塁打の大台を突破。フライボールを打つ意識を高め、その結果が長打力回復を助けました。デスパイネもチームが変わって本塁打が増加。下位打線も、5月に6本塁打を放って定位置を獲得した上林に加え、今季正捕手候補に躍り出た甲斐拓也が攻撃面で大きく成長。8月以降こそスランプでスタメンを外れる機会も多くなりましたが、こと前半については打線に隙は見当たりませんでした。

先発ローテーションは、開幕前の構想から計算外の出来事が相次ぎ、和田毅や武田翔太らが次々と離脱。千賀滉大も本調子でなかった前半でチームを引っ張ったのは、5年目にしてようやく一本立ちした東浜巨でした。開幕から一度もローテーションを外れることなく投げ続け、初の個人タイトルとなる最多勝利を獲得。ブルペンでは、サファテが年間セーブ記録を更新し、その数が54にまで伸びたことで今後追いつくことが困難な不滅の大記録となる可能性もあります。また、先発とブルペンのデプス不足に貢献した石川柊太、シーズン途中から加入してブルペンを支えたリバン・モイネロの存在も大きなインパクトとなっていました。

ファームは今季、大きな転換期を迎えました。チームはウエスタン・リーグ6連覇こそなりませんでしたが、上林ら若手を次々と一軍に送り込み、三軍では次の次の世代まで準備が整い始めています。こうなって来ると、長谷川勇也らベテランの扱いが難しくなる恐れも出て来ますが、今季のペナントレースで「勝ちながら育てる」を成功させた以上、球団の選択は正しかったと証明できたように思います。



埼玉西武ライオンズ

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打高投低のチームカラーが今季はやや変化し、投手力の底上げに着実な進歩が見られるシーズンとなりました。今季から指揮を執る辻発彦監督は、ブルペン運用を見直し、大量リードの試合では速やかに先発を降ろし、若手を試す機会を多く設けました。これにより、先発陣と主要ブルペン陣の負担が減り、投手陣全体のパフォーマンスが向上。来季以降にも繋がる見事な采配でした。

攻撃陣も変革期を迎え、シーズンを通してスタメンの顔ぶれが大きく変わったものの、打力のチームが健在であることを証明。リーグトップに立った平均得点は、4.97を記録し日本一に輝いた2008年以来の高水準。元からの戦力に加え、山川穂高や外崎修汰ら若い力が台頭してきた結果でもあります。BsRについても元々高いレベルを維持するチームでしたが、今季は源田壮亮の加入もあり昨季の13.0から倍近くもポイントが上昇。レギュラー陣の中に走塁貢献の高い選手が揃っている理由にもなっています。

守備での貢献を示すUZRも、今季は広島やソフトバンクを追い抜き堂々の両リーグトップを記録。これは源田の存在を抜きにして語ることは出来ません。レンジの広さと安定したスローイング、社会人出身の選手らしくプレーにも落ち着きがありました。課題とされていた打撃も、プロ入団後に受けた指導で強い打球を打つことを意識したといい、遊撃手として十分合格点を与えられるものでした。


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WBCでも貴重な働きをした秋山翔吾は、開幕直後こそスロースタートに見えましたが、4月19日の楽天戦で今季初の3安打を記録してからは完全にバットに火が付き、例年以上に本塁打を量産。最終的には二塁打、本塁打、打点などでキャリアハイをマークし、初の首位打者を獲得しました。4年目の山川は、類稀な長打力を秘めながら昨季までは安定した成績を残すことができていませんでしたが、後半戦に入ると不振のエルネスト・メヒアに代わってスタメン起用が増え、8月には9本塁打28打点の活躍で月間MVPを獲得。9月も好調を維持し、ポストシーズンでも中軸としての働きが期待されています。

大黒柱としてチームを牽引した菊池雄星は、単なるエース以上の存在感がありました。過去2年間でも確かな成長は感じられましたが、今季はイニング数も伸ばし、今や球界を代表する左腕に。自身初タイトルとなる最優秀防御率と最多勝を確定させ、沢村賞の有力候補にも挙がっています。8月には二段モーションでボークを取られてしまい、球界全体を巻き込む騒動に発展しましたが、速やかにフォームを修正した菊池はその後も支配的なピッチングを続けました。こうした試練を乗り越えたことも、チームにとっては心強かったでしょう。

ファームでは、高卒野手の成長が著しく、2年目の愛斗が8月のファーム月間MVPを獲得。持ち前の長打力に確実性が備わり、規定打席未到達ながら高打率をマークしました。新人の鈴木将平は、1年目から打率.280と健闘。また、BB%は11.4%とこちらも高卒新人としては高水準。チームの中に若い野手が育つ土壌は確かにあるようです。



東北楽天ゴールデンイーグルス

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昨季まで3年連続してwRC+(weighted Runs Created plus)が平均以下だったチームの課題は、一にも二にも長打力の改善でしたが、梨田昌孝監督は開幕戦でカルロス・ペゲーロを2番に起用した打線を披露し、周囲を驚かせました。しかし、この起用法は見事に成功し、1番に入った茂木栄五郎とペゲーロの2人で3月4月は12本塁打、35打点をマーク。シーズンが進むと、故障による入れ替わりも生じこの打順を最後までキープすることはできませんでしたが、最終的にチームwRC+は100に乗り、一定以上の効果は果たしたといえます。

投手陣は、西武から移籍の岸孝之を加え先発平均イニングが伸びました。完投数はオリックスと並びリーグ最多で、補強の効果は確かにあったといえます。一方、ブルペンは松井裕樹を中心としながら中継ぎスタッフを大幅に入れ替え、前半戦ではそれが上手く機能していましたが、後半戦に入ると故障や不振などで顔ぶれが激しく変わってしまい、松井裕自身も左肘を痛めてしまい離脱。先発投手が完投したケースは8月以降に集中しているため、その影響はあるかもしれません。ポストシーズンを戦う上で不安を抱えていることは確かです。

守備も改善叶わずといった具合で、チームUZRはここ4年間で毎年マイナスを記録。これといった強いポジションがなく、走塁面でもプラスに転じる選手が少なかったことから、世代交代の必要性を強く感じます。


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シーズンを通じてほぼ1番に固定された茂木は、故障で欠場した交流戦までに打率.325、10本塁打を記録しており、この時点でチームが首位に立っていたことからMVPに推す声も少なくありませんでした。プロ入り後に転向した遊撃の守備が負担になっているという見方もあり、来季以降はそのリスクをどのように考えるかが注目されます。3人の外国人選手は、長打力の面で期待通りの結果を残したことは確かですが、1人でも欠けると攻撃力が途端に下がる傾向が多々見られ、チーム全体の打力向上も今後の重要テーマです。

先発陣もやや負担増となりましたが、チームを立派に支えました。則本昂大は、6月1日に行われた読売戦で、プロ野球新記録となる7試合連続2ケタ奪三振を達成。シーズンでも4年連続奪三振王を獲得しました。チームもエースのコンディションに気を配り、先発登板数は昨季より減って25試合。その代わり、長いイニングを任せるようになり、平均イニングは昨季の6.96から今季は7.43へと増えました。松井裕も、例年と比較してイニング数、登板回数ともに今季はやや抑えめでしたが、シーズン終盤になって故障してしまい、WBC参加の影響を訴える声も出ていました。

読売と最後まで優勝を争ったファームは、有望な新人と一軍定着を目指す若手が活躍。8月以降に一軍のローテ入りを果たした藤平尚真は、高卒1年目ながら抜群の成績を収め、クライマックスシリーズ(CS)でも登板が予想されています。野手では、2年目のオコエ瑠偉が一軍、二軍の両方で好成績を収め、レギュラーに手がかかるところまで来ており、来季にかけてさらなる成長が期待されます。



オリックス・バファローズ

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毎年試行錯誤を繰り返していた打線は、今季オーダーの固定化という一定の目的は達成。打順こそ目まぐるしく変わることもありましたが、吉田正尚とステフェン・ロメロという中軸ができたのは大きな収穫でした。20本塁打以上が3人も出たチームにしては少ない本塁打やその他の指標ですが、開幕からメンバーが揃っていればかなり上積みされていたでしょう。課題が残ったのはリードオフの固定。今季は12人が起用されましたが、機動力を使える選手が少なく、打撃の調子で決定している節がありました。

投手陣はもともと粒ぞろいで、後はいかにしてデプスを構築するかがテーマでしたが、新加入の投手が戦力になったこともあり、運用は例年以上に安定していました。ただ、エース・金子千尋にかつてのような支配力がなくなり、ある程度の失点を覚悟しなから戦わなければならない試合が増えたのは事実。新しいエースの出現を待つか、それとも全体の底上げで勝負するかでチーム成績は上にも下にも変動しうる状態にあります。

守備力は、2015年以降、着実に落ちています。昨季は中堅で優位に立っていましたが、今季は打力優先のオーダーを組むことが多かったため、ポジション別のUZRは大幅に低下。一塁と三塁でも苦戦する状況が続いており、打力のある若手の登場に懸けるほかなさそうです。


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今季から加入したロメロは、4月にプレー中の負傷で左膝を痛めてしまい40試合を欠場。それでもチームトップの26本塁打を放ち、4番打者としての責任を果たしました。開幕前に腰痛が再発し、7月に入ってようやく一軍に合流した吉田正も規定打席不足ながら打率.311、チーム野手では2位となるWAR(Wins Above Replacement) 2.5を残しています。また、T-岡田は2010年以来7年ぶりに30本塁打超え、6月から加入したクリス・マレーロも20本塁打を放ち、9月29日のロッテ戦ではプロ野球通算10万号をの本塁打を放つ幸運にも恵まれ、球団は来季も契約を更新する考えのようです。

先発ローテーションは5人までが固定。8月22日の日本ハム戦で打球を右手に受けた西勇輝の離脱は痛かったものの、新人の山岡泰輔が規定投球回に到達。勝ち星こそ恵まれませんでしたが、2度の完投を記録し即戦力の評価に恥じない成績を残しました。ブルペンでも同じく新人の黒木優太が開幕からセットアップ役を任され、威力抜群の4シームを武器に勝利の方程式の一員に。ただ、序盤での登板負荷が祟ってしまったのか7月以降は救援に失敗する場面も珍しくなく、成績上では不満の残る結果となってしまいました。

ファームは、ウエスタン・リーグの最下位を4年ぶりに抜け出し、将来チームの中心選手となりそうな逸材も台頭してきました。2年目の吉田凌は、開幕から先発の一員として投げ続け、シーズン終盤には一軍デビューも飾りました。さらに、新人の山本由伸は短いイニングながら防御率0.27、BB% 1.7%という驚異的な成績を収め、8月下旬からは一軍のローテーションに定着。早くも将来のエース候補という声も出ていますが、まだ19歳とあって過剰な期待は禁物。長年チームを支えていくには、キャリアピーク時を想定したイニング及び球数管理が欠かせないでしょう。



北海道日本ハムファイターズ

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昨季経験した日本一が、遠い過去の記憶と思えるくらいに投打ともに低迷。チーム成績はいずれの指標も低くなっていますが、7月からチーム再建に乗り出したため、育成を重視した起用の影響があったことも考慮しなくてはなりません。一方で、昨季のレギュラーが故障で不振で数字を落としたことも事実で、この二つは別々に考える必要がありそうです。冒頭でも触れたように、大谷の長期離脱がチームに大きな影響を及ぼしたのは確かですが、野手復帰後は昨季並みのパフォーマンスでチームに貢献。しかし、投打どちらかの活躍だけではチームは簡単に浮上できず、「投打二刀流」の大きさを痛切に感じた一年でした。

投手陣は、大谷不在の影響をもろに受けた様子が明らかで、ほとんどのデータでリーグ下位に沈みました。チーム再建の動きが早かったことも重なり、7月にはエドウィン・エスコバーと谷元圭介、8月にはルイス・メンドーサらが退団し、一軍定着を目指す若手が鍛錬する場に変貌。辛うじて、守備(UZR)と走塁(BsR)でリーグ上位の数字を残しました。

報道によれば、大谷が来季メジャー挑戦することがほぼ確実視され、オフには中田翔をはじめとする主力選手がFA退団するという噂も流れています。これまでのパターンからすると、FAを控えた選手に対し球団が大金を投じて引き留めるケースは非常に少なく、さらに若手の育成が得意なチームであることから、来季の顔ぶれは相当変化するかもしれません。球団の運営規模が大きくなく、勝ち続けながら育てることが難しいチームは、一時的にそれをあきらめ、次への準備に時間をかける必要に迫られます。こうした事情をファンがどこまで理解するかという点で注目されるオフになりそうです。


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今後チームリーダーの役目を期待されそうな西川遥輝は、2年連続での打率3割こそなりませんでしたが、2014年以来2度目の盗塁王を獲得。出塁能力の高さも加えると、球界でも有数のリードオフに定着したといえるでしょう。読売から加入した大田泰示は、プロ入り以来はじめて規定打席に到達し、安打数と本塁打、打点は読売時代に残した数字をわずか1年で上回りました。また6年目の松本剛も規定打席をクリアし、2年目の横尾俊建は9月以降だけで7本塁打を記録。世代交代の準備が整い始めています。

投手陣では、開幕から不調だった有原航平がシーズン最終戦でようやく10勝目を挙げ、先発陣の軸としての面目を保ちました。ブルペンでは、宮西尚生がプロ野球史上2人目の10年連続50試合以上登板を達成。こちらはFA資格取得済みとあって、同じく資格取得済みの増井浩俊と併せてオフの動向が気になるところです。来季は加藤貴之、高梨裕稔、上沢直之らが先発としてシーズンを乗り切れるか、ブルペン陣の整備が上手く行くかといった課題を残しています。

12球団で有数との評価を得ているファームも、そろそろ一軍に選手を送り出す時期に来ています。一軍で結果を残した若手は、野手で松本と横尾、投手では石川直也くらい。3年目の淺間大基は、今季ファームで打率.313、OPS.900と素晴らしい成績を残しましたが、一軍では結果が出ず、また故障もあり一軍と二軍合わせて70試合しか出場できませんでした。世代交代のサイクルが早い球団とはいえ、次世代の選手が一軍を脅かすようでないとチームは強くなりません。大谷を失った場合は、チームの顔を育てる必要も出て来るでしょう。



千葉ロッテマリーンズ

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今季の低迷を象徴していたのが、チーム打率が5月後半まで1割台をさまよっていたこと。もともと攻撃が強いチームではありませんでしたが、得点力不足が勝敗に与えた影響は小さくなかったのも事実でしょう。後半戦から打線が活発になり、他球団と互角の戦いを演じるようになりましたが、今でも多くの課題が残されています。具体的には、外国人選手が不発に終わった場合でもなるべく本塁打を減らさないような打線づくり、守備力の向上、そしてファーム強化が挙げられます。

投手成績も軒並み下位に沈んでいますが、チームがここ数年CS争いを繰り広げた影響から、勤続疲労を起こした投手も何人かはいたようです。そのために必要なデプスづくりをするには、何年も前から球団が長期視点を持ち次に備えるべきでしたが、ここ数年でのドラフトは即戦力に拘る光景が目立っていました。本塁打が出難いとされるZOZOマリンスタジアムを本拠地としながら、チーム本塁打95本に対し被本塁打143本は余りにも分が悪く、打球管理は、現場だけでなく球団としても取り組むべき課題のように思われます。

守備の面でも、チームUZRは大きなマイナスとなるなど、野手全体のパフォーマンスがパの他球団と比較して弱くなっています。今季で伊東勤監督が退任し、来季から井口資仁が新監督になることで基本合意。どのような形でチームを再建していくでしょうか。


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チームで唯一全試合出場を果たした鈴木大地は、打線全体が極度のスランプに陥っていた4月に孤軍奮闘の活躍。最終的には、例年並みの成績に落ち着きましたが、11本塁打は自己最高をマーク。また、18死球はリーグトップの数字で、正に身体を張ってチームを引っ張り続けました。前半戦は不振だった中村奨吾も、交流戦が終わる直前に一軍へと戻り、終わってみれば自己最高の成績を残しました。チームでは数少ないパワーとスピード、守備力を兼ね備えた野手です。

投手陣では、WBCの影響で調整不足に陥ったとされる石川歩の不調は誤算でしたが、4年目の二木康太が初の規定投球回をクリア。後半から先発ローテーションに加わった酒居知史も、5勝1敗の成績に加え完投も2度記録するなど即戦力新人としての期待に応えました。さらに、シーズン途中からクローザーに転向した内竜也が、プロ入り以来初めて一軍フル帯同を経験。登板数、セーブ数と自己記録を大幅に更新しました。

ファームの育成に関しては1年を通じて成果が見られた箇所は多くありません。高卒投手と野手で出場機会を増やしたのは2年目の成田翔くらい。10月には早くも10人の選手が戦力外通告を受けました。井口新監督により、今後は新しい選手がチームの中心になるか、それとも既存の選手たちが信頼を高めるか。競争原理の注入こそが、チーム再建の大きな鍵となるでしょう。



高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。

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