17日に後半戦がスタートし、31日にはトレード、支配下登録の期限が終了。日本ハムが谷元圭介を放出し、本格的な再建モードに入るなど、大きな動きを見せた球団もあった。前回は こちらから。(データはすべて7月30日時点)

セ・パ両リーグの順位おさらい


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オールスターブレイクを挟み、プロ野球の後半戦が7月17日からスタート。セ・リーグは、首位・広島の勢いが止まらず、2日にも優勝マジック点灯の可能性があります。2位のポジションは、阪神とDeNAが激しく競っている状況で、25日からの直接対決3連戦ではDeNAが2勝し、一時は単独2位に浮上。一方、阪神も3戦目に今季初先発の岩田稔の好投、打線も中谷将大の3ランが飛び出すなどして10-3で大勝。現在は、阪神がDeNAに1.5ゲーム差をつけています。

読売は25日からの広島3連戦に1勝2敗と負け越し、このカードでは4勝13敗と大変分が悪くなっています。特に、主催ゲームは開幕から8連敗と大の苦手としていましたが、京セラドームで行われた27日の試合に4-3で勝ち、ようやく初勝利。30日時点で借金を4にまで減らしています。オールスターを挟んで連敗が続いていたヤクルトは、22日の阪神戦で連敗を止め、26日の中日戦では10点差を跳ね返す大逆転勝利。連敗中の苦しみが一気に吹き飛んだような勝ち方でした。ヤクルトの勢いに飲まれてしまった中日は、29日の阪神戦まで7連敗を記録。今季はどの球団も連敗が長く続いてしまう傾向があるようです。


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パ・リーグは、1位の楽天と2位のソフトバンクが25日から直接対決。初戦を雨天中止で流し、迎えた26日の試合は楽天が本塁打攻勢を見せて4-1で勝利。離されたくないソフトバンクも、27日の試合で東浜巨の好投もあり5-1で雪辱。31日にも試合があったソフトバンクは、勝率では2位ながら貯金数「31」は楽天を抜きリーグトップ。リーグ内で再びねじれ現象が生じています。

後半戦開幕となったソフトバンク戦で3連敗を喫した西武は、その後日本ハム、オリックス、ロッテを相手に9連勝。今週からの楽天、ソフトバンクとの対戦で上位2球団との差を一気に縮めたいところですが、いずれのカードも今季は負け越し中。特に、ソフトバンクに対しては5勝10敗と苦手にしていますが、優勝争いに加わるにはここをクリアしなければなりません。オリックスは後半戦開始から8連敗。28日からの楽天戦で連勝しましたが、30日のカード最終戦は9回に逆転され3連勝とはなりませんでした。今季はかなり波のある戦いをしています。

日本ハムとロッテは、他球団に貯金を提供する立場になってしまいましたが、来季に向けた若手の起用などやるべきことはたくさん残されています。幸いにも、両チームとも選手(特に投手)をいたずらに消耗させることなく戦っていますので、シーズンが終了するまでに来季につながる何かは見つけられるのではないでしょうか。チーム低迷に不満を感じているファンの人も、デプスチャートを参照すれば現状の問題点、課題と克服方法が見えてくるはずです。


一・二軍デプスチャート



画像にマウスをのせる(スマートフォンの場合タップする)と一・二軍が切り替わります。

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2013年以来のリーグ優勝を目指す楽天は、26日に読売との金銭トレードでルイス・クルーズを獲得。茂木栄五郎とカルロス・ペゲーロが故障中のため、電光石火のトレード劇はファンにとっては勇気づけられるもので、チームへの期待を再度高めました。クルーズの加入は、茂木不在の間で遊撃のポジションに就くこと、ペゲーロが戻ってくるまでの外国人選手枠の活用と二つのメリットが生まれ、交渉を短期間でまとめたことも評価される点でしょう。31日には育成枠の八百板卓丸、宋家豪らの支配下選手昇格も決まり、球団としては万全の体制を敷いたようです。その一方で、守護神役を務める松井裕樹が左肩を痛めてしまい、復帰までに約4週間を要するダメージも負っています。8月は梨田昌孝監督の采配並びに起用法が大きなポイントとなりそうです。


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ソフトバンクも、日本球界復帰1年目の川﨑宗則が両足のアキレス腱痛、内川聖一が左手親指の剝離骨折、高谷裕亮も脳振とうにより一軍登録を抹消と故障者が絶えません。特に、全治6週間と診断されている内川の代役を見つけるのは容易ではなく、ファームで待機していたカイル・ジェンセンも7月は実戦の舞台には立っていません。31日のトレード及び支配下登録期限日になっても大きな動きはなく、チームは真砂勇介、曽根海斗ら若手の昇格で対応。甲斐拓也の台頭などもあったため、球団としては若手が内川の穴を埋めてくれることに期待しているのかもしれません。投手陣では、千賀滉大と武田翔太が期間内でそれぞれ2勝を挙げ、ようやく本来の形に戻りつつあります。


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西武のデプスは大きな動きはなく、現有戦力を維持できるかが上位2球団を追いかける条件になります。多和田真三郎が戻ってきたことで安定感を増した先発陣は、右肩の違和感にて戦列を離れている高橋光成が投球練習を再開したとの情報もあり明るい話題が出てきました。


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CS進出への望みを捨てたくないオリックスですが、後半戦の入りでのつまずきは何とも抗いがたい事実。22日に一軍登録を外れた平野佳寿の代役として、福良淳一監督はルーキーの黒木優太を指名。その黒木が務めていたセットアッパーにはゴンザレス・ヘルメンが入り、ブルペンを立て直そうとしています。また、オールスター直前に一軍復帰を果たした吉田正尚は、7月に打率.271、OPS.928、3本塁打と好成績を残しています。8月以降はさらに大きな期待がかかるでしょう。


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日本ハムはヤクルトとのトレードを成立させ、杉浦稔大を獲得。今季一軍での登板はわずかに5試合、4月26日の登板を最後に実戦マウンドに上っていませんが、コンディションさえ取り戻せば先発ローテーションの柱になれる素材です。さらに、31日のトレード期限日ギリギリになってから谷元圭介を中日に放出。この1ヶ月の間に3人の投手を放出しています。残りシーズンでの運用が難しくなるようにも思えますが、球団には乗り切れる見込みが立っているのでしょう。再建への具体的な起用策は、白村明弘と上原健太を一軍の先発要員へ。野手でも、ファームで6月は.300、7月も.429と高打率をマークしていた太田賢吾を昇格させ、レギュラー争いに参加させているところです。


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ロッテも来季以降の準備を進めたいところですが、編成上日本ハムのようにスムーズな世代交代というわけにはいきません。今週にも平沢大河を再昇格させるという情報も入っていますが、7月はファームでも打率.254、OPS.624と、数字上では決め手を欠く印象も拭い去れません。また、5日に一軍登録を抹消されたルーキー佐々木千隼は、ファームでミニキャンプを張っている間に背中への張りを訴え投球練習を一時中止。今月にも再開の見通しは立っているようですが、今はドラフト1位の評価が重荷になっている感もあります。若手有望株だからといって常に一軍の椅子を用意するのではなく、チーム内での競争をクリアさせた上で起用する方が望ましいのは確か。伊東勤監督も、選手たちのモチベーションを上げようと必死に取り組んでいます。


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広島は、一軍と二軍でそれぞれ異なる動きをしています。リーグ2連覇に向けまっしぐらの一軍に対し、二軍では育成により力を入れる起用が始まっています。27日に行われたウエスタン阪神戦では、ドラフト2位ルーキーの高橋昂也がプロ公式戦で初先発したのを始め、同じく新人のアドゥワ誠と長井良太も登板。3投手ともおよそ2ヶ月ぶりの実戦となりましたが、大きな故障もなく体力づくりに努めていたのは、彼らの登板歴がほぼ同じタイミングで訪れていることからも確認できます。21日には、アレハンドロ・メヒアを支配下選手として登録。ドミニカ共和国にあるカープアカデミーから入団した同期、サビエル・バティスタのような活躍が期待されます。


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阪神は、後半戦開始早々に西岡剛と新外国人のジェイソン・ロジャースを一軍に昇格させ、2位確保と広島に一歩でも近づくことが目標。ロジャースは出場11試合で早くも3本塁打を放ち、打率も.342と4番に恥じない成績を残しています。一方では、26日のDeNA戦で左翼を守る大山悠輔と中堅の中谷将大が打球を譲り合ったプレーが敗戦にも繋がり、守備面の不安はなかなか取り除くことができません。これについては、金本知憲監督も起用しないことには成長しないと腹を括っているようです。22日には、新外国人のロマン・メンデスが来日初の一軍昇格。腰の張りを訴えていたマルコス・マテオの代役として、1週間余りの短い期間でしたが、来日初ホールドを記録するなど投手陣をかなり助けました。


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DeNAはブルペン陣の稼働がやや激しい状況になっており、クローザーの山﨑康晃は後半戦10試合中8試合に登板。30日の読売戦も1点リードの9回にマウンドへ上りましたが、相川亮二に逆転タイムリーを浴びてしまいチームは3連敗。27日の阪神戦でも、砂田毅樹が1アウトしか取れずに6失点と苦しい状況です。野手についても同じことが言えますが、開幕から同じメンバーでシーズンを乗り切るには、健康を維持することはもちろんですがベースとなる能力が必要です。8月以降は、それが試されることにもなるでしょう。


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クルーズを楽天に放出した読売は、育成選手の増田大輝、青山誠、田中貴也の3人を支配下登録に移行。球団としては再建モードに入りましたが、一軍はCS進出の望みが残っているため、彼らを即一軍で起用するようなゆとりはありません。ファーム、育成選手たちのモチベーションを上げるために昇格させたという意図もあるのかもしれませんが、一刻も早く再建を進めたいのなら日本ハムのように一軍への出場機会を設けるべきで、そうでなければ支配下登録した意味が見えてきません。伝統球団として、一軍を育成の場とするには抵抗感があるのかもしれませんが、長嶋茂雄監督時代の1980年には若手を率先して起用し、翌年の日本一に繋げています。


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中日は日本ハムから谷元を獲得。チームとしては願ってもない補強で、重要課題とされていたブルペンの空席が1つ埋まりました。これにより、31日は福谷浩司が一軍登録を抹消されましたが、現在のチーム状況は二軍のブルペンもかなり層が薄く、故障している投手を無理に借り出す心配もありました。谷元加入をまとめると、「勝利パターンの構築」「一軍ブルペン各投手の負担軽減」「二軍ブルペン各投手の負担軽減」にまで広がりますが、これ以上故障者が出ないとも限りません。もちろん、谷元本人にも負担が重くならない起用をすることが重要でしょう。


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ヤクルトも24日に日本ハムとの交換で屋宜照悟を獲得。移籍後、ファームでの登板を経て今日にも一軍登録される予定です。日本ハム時代には一軍での登板機会に恵まれませんでしたが、140km/h台後半の速球と故障の少ない点は大きな魅力。チームのブルペン運用も、連投を避けるパターンを取っている点で古巣と共通する点があり、屋宜本人も違和感なく新しいチームに溶け込めそうです。谷元が移籍した中日と同様、屋宜が残りシーズンで20イニングも投げればブルペンの負担は相当軽くなり、故障への対策も立てやすくなります。秋に予定されるドラフトでは投手を多数指名することも予想されますが、他球団も同じ考えを持つなら争奪戦になることもありえます。今から十分な対策を取ることもまた重要なテーマでしょう。


2週間の個人成績ランキング


OffenceはwRAA(weighted Runs Above Average)+走塁評価、DefenseはUZR(Ultimate Zone Rating)+守備位置補正

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期間中のセ・リーグWAR(weighted Runs Above Average)トップに立った桑原将志(DeNA)は、7月に打率.389、6本塁打、14打点という素晴らしい成績を残し、月間MVPの有力候補にも上っています。これに対抗するのは7月11本塁打、21打点のウラディミール・バレンティン(ヤクルト)ですが、打率は.276とやや低く、選考の傾向から見ても桑原が優勢。Defenceでの高ポイントを見れば、さらに有利な条件が並びます。本塁打レーストップのアレックス・ゲレーロ(中日)は早くも28本塁打、チームメイトの福田永将も7月は打率.291、5本塁打、18打点と調子を上げて来ました。


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パ・リーグ野手では秋山翔吾(西武)、中村晃(ソフトバンク)、加藤翔平(ロッテ)らが後半戦好スタートを切りました。長打力が光ったのはジャフェット・アマダー(楽天)で、7月8本塁打のうち7本はオールスター後だけで叩き出したもの。22日のオリックス戦では、来日初の1試合3本塁打を記録。さらに、翌日の同カードでは2-2で迎えた9回にサヨナラ本塁打と勝負強さも発揮。一発の破壊力をまざまざと見せつけました。


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セ・リーグ投手部門は、チームの後半戦開幕投手も務めた今永昇太(DeNA)が期間内2勝。登板した2試合でいずれも無失点に抑え、ロースコアの展開にもかかわらず勝利投手に。後半戦では投手陣のキーマンとなりそうです。菅野智之(読売)は7月わずか1失点で防御率が再び1点台(1.99)に突入。唯一与えた失点は、29日のDeNAで自らのワイルドピッチによるものでした。今季は個人タイトルを総なめしそうな勢いです。


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パ・リーグでは、則本昂大(楽天)に続いて菊池雄星(西武)、東浜巨(ソフトバンク)が2ケタ10勝に到達。故障者が多く出た投手陣の中で、唯一人開幕からローテーションを守って来た東浜は、オールスターブレイクの間に健康診断や温泉療養などに努め、フィジカルケアを一切怠らずに後半戦へと準備してきました。そうした姿勢が個人成績にも表れており、勝ち星だけでなく今季のWAR3.5はリーグ4位、xFIP(expected fielding independent pitching)tRA(true run average)の指標でも同じく4位と健闘。チームではもちろんトップの数字です。5年前のドラフトでは大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)と並ぶ評価を得てソフトバンク入りした投手の素質が、ようやく開花しようとしています。



高多 薪吾 @hausmlb
個人サイトにて独自で考案したスタッツなどを紹介するほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 投手の運用に関する考察を積極的に行っている。ファンタジーベースボールフリーク。
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