救援投手の登板間隔は投球にどれほどの影響をもたらすのか

市川 博久

2021.10.22


筆者は以前、登板間隔や前回登板時の投球数がどれほど成績に影響を与えるかについて、先発投手を対象に分析を行った。ただ同じ投手でも先発と救援では事情が異なるはずだ。例えば連投は、先発にはほとんど見られない救援特有の起用である。今回は救援投手について、登板間隔と成績の関係を見ていく。

NPBにおける救援投手の連投


救援投手は先発投手と異なり、その起用法が多様である。このため、前回以前の登板による負担が、成績に与える影響を評価することは、先発投手以上に難しい。まずは比較的分かりやすい連投の有無と成績との関係を見ていく(表1)。

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2017年から2020年までの間で、救援登板は合計19708回あった(初めての登板と前回登板が先発登板だった場合を除く)。その約75%は前回の救援登板から1日以上の登板間隔が空いていたが、約20%は2連投、3連投以上となることも約4%あった。救援投手全体から見れば、3連投以上となることは稀だが、2連投までならば、そうそう珍しいものではないようだ。

では連投した場合には投手の成績にどのような変化があるだろうか(表2)。

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まず平均被wOBAの列を見てほしい。これを見ると連投でない場合の被wOBAが.317、2連投以上が.315と、2連投以上のほうが平均被wOBAを低く抑えている。つまり打者をより抑えている。一見すると連投を行ったほうが好投できると読めてしまうデータだ。

しかしこの読解は誤りである。登板した投手の平均被wOBAを比較すると、連投でないときが.319、2連投以上が.308と2連投以上のほうが低い。つまりそもそも2連投以上のほうがレベルの高い投手が登板しているのだ。優秀な投手ほど連投で登板することが多いため、2連投以上のほうが優れた結果になったといえる。

実際、表2の行に注目すると、連投の影響ははっきり見える。連投でない場合は登板投手の平均被wOBA.319に対して実際は.317と、投手本来の成績からより抑えることに成功している。それに対して2連投以上では登板投手の平均被wOBA.308に対し、実際は平均被wOBA.315と投手本来の成績よりも悪化している。

次に3連投以上とそうでない場合とでの比較を見てみる(表3)。

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こちらも登板した投手の平均被wOBAを見ると、3連投以上した投手は.301と2連投以上の場合にも増して優秀な数値となっている。3連投以上の登板をするのは、その多くがクローザーなどのいわゆる勝ちパターンで起用される投手なのだろう。

3連投以上とそれ未満とで区分しても、やはり3連投以上した場合の方が、投手本来の成績よりも成績が悪化する傾向が見られる。

以前の分析においては、先発投手が登板間隔を広げたり狭めたりすることによって、短期間では明らかな影響は出なかった。しかし、救援投手の連投有無は比較的短期間でも投手の成績に影響を与えるようだ。

続いて、ストレートの平均球速の変化についても比べてみる(表4、5)。

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表2、3では連投によって被wOBAに明確な差が生まれていた。しかしそれと比べると、ストレート平均球速については変化がほとんど見られない。いずれも連投をしたときの方がわずかに普段よりもストレートの平均球速が下がっている。とはいえ、この程度の変化が被wOBAに大きな影響を与えるとは考えがたく、成績の悪化は他の要因による可能性が高いと考えられる。

以上の結果からすると、救援投手が連投をした場合、その成績は悪化する傾向が見られるが、その要因については明らかでない。また、成績が悪化するといえど、優秀な救援投手が平均的な救援投手のレベルにまで成績が悪化する、というほどの大きな変化は見られない。先発投手と異なり、短期的に見ても成績の悪化が確認できことからすると、登板過多の影響が中長期的にも先発投手よりも発生しやすい可能性はある。しかしレバレッジの高い重要な場面であれば、連投となっても優秀な救援投手を起用していくという選択が間違っているとはいえない。短期的に見れば、何が何でも連投を避けるべきとまではいえない。



連続する3登板の間隔と救援投手の成績


次に連続する3登板の間隔と救援投手の成績との関係についても見ていく。連投をしなかったとしても、過去数日間の登板機会が多い場合には、パフォーマンスを回復するのに十分でないということも考えられる。そこで、短期間に起用が多くなった場合の成績の変化についても調べてみた。

まずは連続する3登板の間隔別に登板を分類して、その成績の変化を見てみる(表6)。分類は「前々回登板から3日以内の登板」、「前々回から4日または5日の登板」、「前々回から6日または7日の登板」、「前々回から8日または9日の登板」と「それ以外の登板」の5種類に分けた。

例えば、前々回の登板から3日以内となるのは、次のような場合だ。前々回の登板の翌日は登板がなく、その翌日に登板をしさらに連投となった場合、あるいは前々回の登板の翌日も連投をし、1日の休みを経て登板した場合、及び3連投がこれに当たる。

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2連投以上を必ず含むことになる「前々回から3日以内の登板」は15%ほどとそこまで頻繁ではない。しかし「前々回から4日または5日の登板」となるのは全体の30%ほど。初登板と前回の登板が先発登板であった場合を除く、救援登板の半数近くは、前々回の登板から5日以内にされていることがわかる。

では、こうした起用が成績にどのような影響を与えるだろうか(表7)。

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「前々回から3日以内の登板」の場合や「4日または5日」の場合には、被wOBAがその投手本来の被wOBAから.010ほど悪化している。前々回の登板からの日数が5日であれば、少なくとも6日間で3回の登板をしていることになる。このペースを維持すると年間で90登板以上する計算になる(6試合のうち3登板ではなく、移動日を含む6日間で3登板であるため)が、70試合以上登板する投手ですら12球団でもほとんどいない。これほどまで過密な登板をこなすと短期的にも成績が悪化するようだ。

そして、「前々回から7日または8日」であれば、その投手の平均被wOBAとほとんど変わらない数値となり、それ以上の余裕がある登板間隔なら、より打たれにくくなる傾向がある。

こうした結果からすると、連投でないとしても、過密なスケジュールでの登板は成績を悪化させる要因になっているように思える。

しかし、登板が過密となれば、その登板が連投になっている場合も多くなるはずだ。実際に、登板が密になるほど連投の割合も増加している(表8)。

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前々回の登板からの間隔が3日以内の場合は、その約半分が2連投となっており、登板間隔に余裕ができるほど連投でない場合が増えていっている。このため、上記の被wOBAの違いは連投の割合に影響を受けている可能性がある。そこで、連続する3登板の間隔別成績を連投でなかった場合と2連投の場合とで分けて比べてみる(表9)。

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連投でない場合と比べても、登板間隔が密なほど成績が悪化する傾向は変わらない。この結果からすると、過密な登板スケジュールは連投でなかったとしても短期的に投手成績を悪化させているといえるだろう。また、多くの場合で、連続する3登板の間隔が同じであれば、2連投の方が連投でない場合よりも成績がより悪化しやすいともいえる。

したがって、連投の有無と連続する3登板の間隔はいずれも投手の成績に影響を与えている。



連続する4登板の間隔と救援投手の成績


最後に連続する4登板の間隔と救援投手の成績との関係についても見ていく(表10)。

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まずはどれほど発生しているかだ。3回前の登板から5日以内(6日間で4登板以上)は、初登板と前回が先発登板だった場合を除くと10%ほどとなっている。それほど多くはないが、そこまで珍しいものではないようだ。3回前の登板からの間隔が6日または7日となるのが21.6%となっており、それ以降は登板間隔が空くほど割合が下がっていく。

では、これらの連続する4登板の間隔別に被wOBAの差を見ていく(表11)。

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連続する3登板の間隔ごとに被wOBAを比べたときと同様に、登板間隔が詰まっていくほど被wOBAが悪化しやすく、打たれやすくなっている。 連投の有無で分けた結果についても見てみる(表12)。

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これも連続する3登板の間隔の場合と同じく、連投の有無を考慮しても、登板間隔が密になるほど成績は悪化しやすい結果となった。


まとめ


以上の結果からすると、連投しても連投をしなくても登板間隔が密になると救援投手のパフォーマンスが悪化しやすいといえる。

先発投手の場合と異なり、短期的に見てもパフォーマンスの悪化が目に見えて分かる結果となった。現状のNPBでの起用法を前提とすれば、先発投手よりも救援投手の酷使により敏感になった方がよいといえる。今回の結果は、短期的なパフォーマンスの変化について検証したものであり、中長期的にはより重大なパフォーマンスの悪化をもたらしている可能性もある。

救援投手は先発投手と比べて、起用法が多様であり、その酷使の度合いを定量化することが難しい。先発投手については、pitcher abuse pointsのような酷使の度合いを定量化するような指標も提唱されているが(ただし、中4日登板を基本とするMLBでの起用法を前提に考えられた指標であり、NPBでそのまま活用できる保障はない)、救援投手については同じようなものはない。今回の検証は、登板間隔以外の要素、登板時の投球数や投球イニング数は一切考慮していない(ワンポイントだろうが、1イニングだろうが、3イニングだろうが全て1回の登板として扱っている)。それでも、これだけの差が生まれていることからすれば、試合での投球数に関わりなく、登板すること自体がそれなりの負担となっていると考えられる。

今回の検証を行う前は、投球間隔という1つの要素で酷使の影響を図ることが可能か不安もあったが、幸いにして比較的単純な方法でも酷使による救援投手のパフォーマンスの低下を確認することができた。今後はこの成果を踏まえて、さらに検証を進めていきたい。



市川 博久/弁護士 @89yodan
DELTAデータアナリストを務める弁護士。学生時代、知人が書いていた野球の戦術に関する学術論文を読み、分析に興味を持つ。 その後『マネー・ボール』やDELTAアナリストらが執筆したリポートを参考に自らも様々な考察を開始。『デルタ・ベースボール・リポート3』などリポートシリーズにも寄稿。動画配信サービスDAZNの「野球ラボ」への出演やパシフィックリーグマーケティング株式会社主催の「パ・リーグ×パーソル ベースボール データハッカソン」などへのゲスト出演歴も。球界の法制度に対しても数多くのコラムで意見を発信している。

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