• 1.02 Column


今季のNPBにはMLBでの実績がある大物選手が次々に来日した。しかし、注目すべき外国人選手はそれだけでない。韓国プロ野球(以下KBO)で実績を残した投打の選手が来日をしたことでも注目を集めている。昨年打点王のタイトルを獲得したジェリー・サンズ(キウム→阪神)とエンジェル・サンチェス(SK→読売)である。

KBOは打高投低時代が終了。その環境で好成績を残したサンズ


KBOは打高投低リーグとして知られており、KBOで超人的なスタッツを残したとしても必ずしもNPBでの好成績につながるとは限らない。読者の方々の記憶に新しいのは一昨年に阪神でプレーしたウィリン・ロサリオだろう。過去にKBOから直接NPBに入団した野手のKBO最終年の成績を表1にまとめてみた。

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俊足巧打タイプの内野手であったウィルソン・バルデス(SK→ヤクルト)を除き、全員がスラッガーである。やはり、韓国球界の圧倒的な打撃スタッツに魅せられて契約するというパターンが多いのだろう。

今回は10球団制になった2015年以降にKBOでプレーし、NPB球団と契約したヤマイコ・ナバーロ、ウィリン・ロサリオ、ジェリー・サンズのデータに注目してみたい。表1を見ると、3選手とも圧倒的なスタッツに見えるが、KBOは2014-2018年まで空前の打撃優位の時代が続いた。2015年のリーグ打率.279以外は、毎年.280台後半から2016年の.290を記録。ナバーロとロサリオはまさにこの真っ只中でプレーした選手であった。

しかし、昨年は公式使用球が変更となったためかリーグ打率は.267まで急落。その環境で打率.305とリーグ打点王を獲得したサンズはナバーロ、ロサリオよりも高い評価をしても良いのかもしれない。

ただリーグ平均に比べどれだけ傑出した打率を残していたかを示すRelative Batting Average (RBA)で比較してみると、ロサリオ1.181、サンズ1.142、ナバーロ1.029となっており、平均からの相対で見てもロサリオの方が傑出した打率だったことがわかる。しかし、リーグ打率.260-.270の環境で打率が.300を超えて来日したのはタイロン・ウッズ(1998・RBA 1.169、2000・1.167)以来。RBAもタイロン・ウッズのそれに匹敵するほどであり、その点からサンズは期待を抱かせる。


ナバーロ、ロサリオ、サンズの球種別の傾向


次に、Pitch Valueという球種別の打撃スタッツを見る。この指標は打者視点で見ると、ある球種に対してボールカウントを増やす、安打や四球などで出塁することでプラス、ストライクカウントを増やされる、アウトになることでマイナスとなっていく。例えばスライダーに対し、空振りばかりを繰り返していくと、スライダーのマイナスが大きくなるといった具合だ。

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MLB、NPBの両方を経験したナバーロとロサリオのPitch Valueを見てみると、速球、カットボール、カーブ、チェンジアップについては、MLB時代に苦手だった球種をNPBでは比較的得意としていたり、その逆の傾向もあったりで統一感に欠けていた(※1)。サンプル数が少ないこともあるが、ロサリオの場合、2年連続20本塁打以上を含む3年連続2桁本塁打を記録したMLB時代と、散々だったNPBの成績を直接比較することが適切ではないかもしれない。だがスライダーとフォークについては、MLBとNPBで傾向が変わっていない。それだけこの2種類の変化球はMLBとNPBの投手陣が投げるクオリティが大きく変わらないということだろうか。

ちなみに引用はできないが、サンズはMLB時代に苦手としていたフォークとスライダーをKBO時代に非常によく打っていたというデータもある。KBOでの傾向をそのままNPBでも生かすことができれば、「先輩」2人のように期待はずれに終わってしまうことはなさそうである。

不安な点をあげるとすれば、外国人選手枠を勝ちとれるかということだろう。外国人選手枠を争うジェフリー・マルテ、ジャスティン・ボーアとともにサンズもまた一塁を守る選手である。ただサンズは昨年KBOで114試合は右翼でプレーしている。昨年一塁でリーグワーストタイの7失策を喫したマルテもキャンプで三塁での練習を始めているという。3人が共存できる可能性は探れそうだ。

ただマルテはMLB時代の三塁での通算守備率が.959、サンズもKBOではライトで4失策を喫し守備率.981。レンジファクターも2.00とかなり心もとない。守備に目をつぶってでも打撃で打ち勝てるような貢献ができるだろうか。


読売入団のサンチェスを過去のKBO経由外国人投手と比較


一方、読売ジャイアンツに入団したエンジェル・サンチェスについても述べてみたい。 KBOで活躍した翌年に直接NPBに入団した選手はこちらも過去に合計10人存在する。

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古典的なスタッツでみると、錚々たる数字だ(表3)。KBOでの圧倒的な実績をひっさげてNPBにやってきたことがわかる。次に彼らの数字がどれほど傑出していたか、同じイニングを投げた平均的な投手に比べどれだけ失点が少なかったかを示すRSAAという指標を用いて比較してみたい。これにて並び替えてみると、以下の表4のとおりになる。

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NPBで2年連続最多勝利のタイトルを獲得したセス・グライシンガーと、ドーピングでNPBを去ることになったダニエル・リオス以外はおおむねKBOでの傑出度がNPBでの活躍に反映されたといえる。

RSAAはリーグの失点率に対しての個人の傑出の度合いだったが、K-BB%という指標でも評価したいと思う。K-BB%は奪三振割合と与四球割合は投手の能力によって決定される割合が高く、投手の自力の高さを測る目安にもなる。

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このスタッツを見ると、旧来のスタッツでは圧倒的だったリオスは自力で抑える能力には長けていなかったようだ(表5)。環境が変わったことの影響を受け、失速した可能性が考えられる。グライシンガーは逆のパターンで、旧来のスタッツではそれほど圧倒的ではなかったが、K-BB%には優れておりNPBでは大活躍した。新入団のサンチェスはどちらのスタッツでも圧倒的ではないものの、おおむね優秀な成績を残しており期待が持てる。

球種についても、ストレートの平均球速は151km/hを超えるともされている。昨年のNPB規定投球回到達投手でこれを超えたのは千賀滉大(ソフトバンク)のみ。一時はKBOのスピードガンは5km/h増しと言われていた時期もあったが、仮に-5km/hだとしても相当なスピードである。この速球に加え、スライダー、カーブ、スプリッターの3種類を満遍なく駆使し、どれも打ち込まれた球種はない。

昨年はKBOが統一球を採用した影響もあり、投手が好成績を残した。サンチェスも例外になく、1年間で被本塁打をわずか2本しか許さないなど大活躍した。先発として期待されるが、KBO初年度のポストシーズンではリリーフ適正の高さも見せたこともあり、リリーフでの起用も十分にありえるだろう。リオスのように期待はずれになってしまうか、バンデンハークやグライシンガーのようにチームのエースとして活躍できるのか。シーズン中の投球に注目したい。


(※1)MLBのPitch ValueはFangraphsを参照している。

水島 仁
医師。首都圏の民間病院の救急病棟に勤務する傍らセイバーメトリクスを活用した分析に取り組む。 メジャーリーグのほか、マイナーリーグや海外のリーグにも精通。アメリカ野球学会(SABR)会員。
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