ゴロを打たせる技術に長けた投手が目立つ投手陣。ミラーは驚異のK-BB%
大熱戦のWBCもいよいよクライマックスへ。ロサンゼルスでの決勝ラウンドが始まった。日本代表は現地時間21日18時(日本時間22日10時)よりアメリカ代表との準決勝に挑む。同代表との対戦は2009年以来。8年前の試合では日本代表が9対4で勝利を収めたが、今回は果たしてどうなるだろうか。
先発が予定されているタナー・ロアーク(ナショナルズ)は、昨年のストレートの平均球速がMLBの先発投手平均とほぼ同じ時速92マイル(148キロ)程度、剛速球で圧倒するタイプではない。K%は20.1%と対戦した打者の5人に1人から三振を奪っているが、こちらも先発投手の平均値とほぼ同じ。MLBにおける平均的な先発投手といった感じだ。武器を挙げるなら、全投球数の45%を占めたシンカーを駆使してゴロを打たせる投球で、実際に昨年のゴロ%は48.7%と高く、規定投球回到達者73人中20位だった。
ちなみにブルペンで待機しているサム・ダイソン(レンジャーズ)、ルーク・グレガーソン(アストロズ)の両右腕はそれをさらに上回るゴロを打たせるスペシャリスト。昨年のゴロ%はダイソンが65.2%(投球回数40イニング以上のリリーフ投手178人中4位) 、グレガーソンが60.0%(同15位)だった。
ブルペンで忘れてはならないのが現役最強リリーバーとの呼び声も高いアンドリュー・ミラー(インディアンス)。昨年は74.1イニングで123奪三振を奪いながら与四球はわずか9個。44.7%というK%は40イニング以上投げた投手の中では最高、3.2%というBB%は5番目に低い数字を残した。44.7-3.2=「41.5%」というK%とBB%の差(K-BB%)は、記録が残っている1916年以降では歴代2番目に高い数字である。昨季のポストシーズン、大車輪の活躍でセンセーションを巻き起こしたのはまだ記憶に新しい。
ホスマー、クロフォード、スタントンらが好調
打撃陣で好調なのは21打数8安打のエリック・ホスマー(一塁手)(ロイヤルズ)と18打数8安打のブランドン・クロフォード(遊撃手)(ジャイアンツ)の2人。ホスマーは、4年連続でオールスターに選出されているポール・ゴールドシュミット(一塁手)(ダイヤモンドバックス)を差し置いて打線の中心に座っている。クロフォードもここまで出塁率.500、8安打中半分の4本が長打と要注意だ。世界最強のパワーヒッター、ジャンカルロ・スタントン(外野手)(マーリンズ)も振れている。2次ラウンドのドミニカ共和国戦では、打球速度117.3マイル(約189キロ)という凄まじい一打を放った。
キャッチャーのバスター・ポージーとジョナサン・ルクロイは、2人ともバットはもちろん、きわどいコースの投球をストライクに見せるフレーミングの技術にも定評がある。日本打線は油断していると見逃し三振の山を築くことになるかもしれない。
ただこれだけのメンツをそろえているとはいえ、アメリカが国力の限りを尽くしてベストメンバーを組んでいるとは言えない。マイク・トラウトとクレイトン・カーショウという投打のベストプレイヤーが欠けているのはもちろん、そのほかにもクリス・ブライアント(カブス)、ジョシュ・ドナルドソン(ブルージェイズ)、マディソン・バンガーナー(ジャイアンツ)、ノア・シンダーガード(メッツ)と欠席組にはそうそうたる名前が並ぶ。ブルペンに至っては、上で紹介したミラーとマーク・マランソン(昨季ナショナルズ)以外は全員が中の上といったところだ。
一方で、アメリカにおいてもファンの注目度は年々増してきているようだ。2次ラウンドの第3戦、準決勝進出をかけたドミニカ共和国戦はソールドアウト。2次ラウンド終了時点での累計観客動員数は97万6,828人と同時点では過去最高を記録している。
ただ日本と違い、国民の半数以上が国を背負って戦う選手たちの一挙手一投足を追っているーーというほどではないようだ。というのも、毎年この時期はカレッジバスケットボールのトーナメントが行われ、熱狂的な盛り上がりを見せるからだ。日本でいう夏の甲子園のようなものを考えてもらえば想像しやすいだろう。実際に、野球オタクが98%を占めている私のTwitterのタイムライン上でも、バスケットボールとWBCの話題が半々といったところだ。野球の祖国において、WBCがサッカーのワールドカップと同じような認知度を得て熱狂を巻き起こすのはまだまだ先のことになりそうだ。