3月28日、ついに2025年のプロ野球が開幕する。開幕に先立って1.02ではDELTAアナリストに順位予想を依頼した。予想を行う手法は各自自由に選んでもらい、簡単なコメントをもらい掲載している。アナリストによっては機械的に成績を予測するプロジェクションという手法を採用しているが、その機械的な予測の中でも意見が割れている。これは予測の要素に何をどれだけ織り込むかの差である点に注意してほしい。今回はセ・リーグ編。パ・リーグ編はこちらから。

大型補強を進めたDeNAと読売の2強体制を予想(予想者:岡田友輔)

    1位 DeNA
    2位 読売
    3位 阪神
    4位 中日
    5位 ヤクルト
    6位 広島

成績予測をベースに故障者の状況を加味して出場割合を調整して順位予想を行った。

昨オフに大型補強を進めたDeNAと読売の戦力が拮抗。優勝争いを繰り広げると予想する。僅差で1位がDeNA、2位が読売とした。この2球団を野手の成績が改善するとみられる阪神が追う構図だ。

中日、ヤクルト、広島は上位からやや引き離されると考える。ただ、この3球団の戦力差はわずか。順位が入れ替わってもおかしくない。

近年低迷が続く中日は若手野手が台頭。Aクラスに入れるほどではないが、彼らの活躍により上積みがあると考え4位とした。

5位予想のヤクルトは主力の故障離脱が相次いでおり、控え選手の出場が増加しそうだ。穴を埋めきれず、下位に沈む可能性が高い。また、6位予想の広島は現在チームの過渡期に入っている。攻守両面でチームのコアとなる選手の台頭が待たれる状況だ。

DeNAが優勝予想もオースティン、筒香次第では入れ替わりも(予想者:道作)

    1位 DeNA
    2位 阪神
    3位 読売
    4位 広島
    5位 中日
    6位 ヤクルト

優勝予想のDeNAは攻撃力が優れている。ただ、気になるのはタイラー・オースティンの故障リスクと筒香嘉智の状態だ。特に今回の1位予想はオースティンが110試合以上出場できると仮定した上でのもの。もし長期離脱することになれば状況は変わってくるだろう。

2位は阪神とした。日本一を成し遂げた2023年は主力野手が軒並み好調だったが、その反動か昨季は多くが成績を落としてしまった。とはいえ昨季のチーム得点はリーグ1位のDeNA(522点)と37点差の3位(485点)。昨季優勝の読売(462点)を上回っている。予想される得失点差を見る限り、十分に優勝争いできる力を持っていると考える。

3位の読売はFAにより流出した菅野智之の穴を埋めきれていない。昨季よりも勝ち星は減少するとみる。注目は昨季打撃不振に陥った坂本勇人。年齢による衰えや故障離脱をどれだけ抑えられるかが、優勝争いに加われるかどうかのカギになるだろう。

4位予想の広島は4年続けて得失点差が±15点未満。優れているとまでは言えないまでもリーグ平均レベルの戦力は維持してきた。昨季はロースコアゲームが多く、1試合あたりの平均得点・失点がともに3点以下。得点力不足を失点の少なさで補っていたようだ。通常であれば、得点を増やすのも失点を減らすのも望ましい方向性だ。ただ、現在のNPBはかなり投手優位。失点を減らすことで他球団に差をつけられる余地は小さい。上位浮上のためには得点力向上が必須とみる。

中日は5位とした。攻撃力不足からここ数年は下位を予想することが多くなっている。過去12年間の平均順位も5.0位で、長期低迷が続いている。ただ、主砲の細川成也を中心に野手は着実に改善。投手優位なリーグ環境ゆえ、攻撃力の差がつきにくい今季は上位進出のチャンスだろう。

最下位予想はヤクルトとなった。昨季は山田哲人村上宗隆といった主力野手が振るわなかったが、それでもチーム得点は506得点でDeNAに次ぐリーグ2位。むしろ問題は投手力だ。

近年はリーグ平均よりも劣ることが多いヤクルト投手陣。昨季は特に振るわなかった上、今季もそれほど上がり目は見当たらない。個々の投手を見ると、直近5年間で規定投球回に到達したのは小川泰弘ただ1人。その小川も今季35歳を迎え、年齢的には大きく成績を落としてもおかしくない状況だ。

読売はオフの補強を有効活用できるか。DeNAはバウアーら新戦力次第で優勝も(予想者:市川博久)

    1位 読売
    2位 阪神
    3位 DeNA
    4位 中日
    5位 ヤクルト
    6位 広島

パ・リーグよりも混戦が予想される。

優勝は読売とした。ただ、今回は機械的な成績予測のデータを用いて順位予想を行った。そのためポジションの重複が考慮されていない。たとえば 甲斐拓也岸田行倫大城卓三のうち捕手として試合に出場できるのは1人。もし甲斐が捕手として出場すれば、ほか2人は別のポジションに回るか控えとなる。ただ、今回の予想ではこの点を考慮できていないため、FA補強の効果が過大に見積もられている。彼らの起用次第では順位を落とす危険性もある。

阪神は2位。優秀な先発投手を多数有しており、強みになるだろう。野手陣はやや高齢化が進んでいるが、故障さえなければまだまだ能力を維持できると考える。

DeNAは野手が強力だ。3位予想としたが、トレバー・バウアーら投手陣の新戦力による上積み次第では優勝も現実的になるだろう。

昨季まで3年連続で最下位だった中日は4位となった。得点が入りにくいバンテリンドームの特性上目立たないが、若手野手が順調に成長。小笠原慎之介らが移籍し投手陣の弱体化が予想されるものの、来季以降に期待を持たせるシーズンになりそうだ。

ヤクルトは投手陣が課題。野手陣は優秀だが村上、山田が故障離脱しており戦力ダウンは必至。ある程度の離脱は予想に織り込んでいるが、これが長期に及べばさらなる苦戦も予想される。

広島は開幕前に坂倉将吾が離脱。九里亜蓮の移籍による戦力低下も響き、最下位予想となった。ただ、セ・リーグはパ・リーグと比べれば上位との差は小さい。大きなプラスを作れる優秀な野手が現れれば上位進出も見込める。


予測得失点からピタゴラス勝率を算出(予想者:佐藤文彦)

各選手について、WAR(Wins Above Replacement)の構成要素となるOffence、Defense、先発と救援のRARの予測値を算出。各選手の予測値をチームで合計し、そこからチームの得点と失点の予測値を推定した。この推定値からピタゴラス勝率を計算し、この値から予想順位を求めている。

3位までは昨季と同じで、中日と広島が入れ替わる予想となった。得点と失点が2024年より高めなのは、過去複数年のデータを参照したためと考えられる。

阪神は予測得点が1位になったものの失点も多く、予想順位は2位となった。また、最下位予想の広島は得点不足が響いた。

故障なければヤクルトは読売に迫る戦力(予想者:宮下博志)

DELTAの成績予測システム“D-CAST”の予測WARをチーム別に集計し、出場機会などを調整。求められた合計WARをもとに順位予想を行った。

  • 成績予測の特徴
  • 過去3年間(2022-24年)の成績から予測
  • 各シーズンの成績は直近シーズンほど予測に反映されやすい
  • 例年比で極端によい(悪い)成績の選手は例年に近い予測となる
  • 出場機会が少ない選手はリーグ平均に近い予測となる
  • 20代前半の若手選手は上方、30代のベテラン選手は下方修正されやすい

1位 読売

リーグ1位の野手WAR19.7で他球団に差をつけた読売を1位予想とした。

野手は岡本和真吉川尚輝門脇誠ら主力が優秀。特に捕手は大城、甲斐、岸田といったレギュラークラスの選手が複数人おり、大崩れはしにくい。坂本は昨年の不調に加え年齢の影響でWARが2.0を下回る予測。とはいえ依然としてレギュラークラスといえる程度のWARは維持している。

投手は、菅野がMLBに移籍したことでWARがリーグ平均程度まで低下。ただ、新加入の田中将大ライデル・マルティネスが合計でWAR1.0前後を記録するとみられ、ある程度は菅野移籍の穴を埋められる見込みだ。

2位 ヤクルト

ヤクルトは読売に匹敵する戦力を持つとみる。野手が優秀で、特に村上は12球団トップのWAR5.7を記録する予測。また、塩見泰隆は330と少ない打席数ながらWAR2.7を記録するとみられている。一方、山田は規定打席に到達せず、数年前よりもかなり成績を落とすことになる予測だ。

一方で投手は先発ローテーションが薄い。100イニング以上消化する予測となっているのは吉村貢司郎、小川の2人だけ。ただし、イニングこそ少ないものの一定以上のWARを期待できる投手は豊富で、極端な戦力不足というわけではない。

村上、塩見といった優秀な野手が故障による出場機会減少のリスクを抱えているため、彼らのコンディション次第で大きく順位が変動しやすいチーム構造である。

3位 DeNA

3位のDeNAは投手がリーグ1位、野手はリーグ平均程度のWARを記録する予測だ。

投手陣は予測WAR12.1と、他球団にWAR1以上の差をつけている。特に強力なのは先発陣。 東克樹を筆頭に、アンドレ・ジャクソンアンソニー・ケイ 、バウアーらがWAR1.5前後をマークする予測である。

昨季リーグトップの野手WARは平均前後の予測となった。ただ、これはオースティン、山本祐大ら2023年以前の出場試合数が少なかった選手の出番が少なめに見積もられているため。もし彼らが昨季と同程度出場機会を確保できれば野手WARは1位の読売に匹敵する。

チーム全体として、出場機会が少ないためにWARが伸びていない選手が多い。もし彼らが能力に見合った出場機会を確保できれば、潜在的な戦力はリーグ最高峰に近いとみられる。

4位 阪神

阪神は投手、野手ともにDeNAとほぼ同等だが、僅差で4位予測となった。

村上頌樹才木浩人はセ・リーグ投手トップ5、大竹耕太郎伊藤将司西勇輝がトップ20のWARを記録すると予測されている。非常に層の厚い先発ローテーションだ。

野手は 近本光司がリーグ2位のWARを記録すると予測されている。ほかには森下翔太佐藤輝明大山悠輔中野拓夢がリーグトップ20に入るとみられており、レギュラー野手陣はリーグ屈指。ただ、それ以外が振るわず野手全体の予測は伸びなかった。主力は非常に優秀なだけに、それ以外のポジションを埋める若手有望株のブレイクが優勝に絡む上で重要になりそうだ。

5位 中日

中日は野手の戦力整備が進む一方、投手WARはリーグワースト。ややいびつな戦力構造になっている。

投手は 髙橋宏斗がリーグ最上位のWARを残すと予測されているが、ほかに1.0WARを超える投手はゼロ。先発投手層が非常に薄い。上位を目指すためには新戦力や若手投手の台頭が必須の状況である。

一方、野手は岡林勇希と細川のWAR予測がリーグトップ10に入るレベル。また、350打席前後でWAR1.0以上を記録すると予測されている若手野手も多い。チーム全体としてはリーグ平均前後の野手WARが予測されているが、若手野手の躍動次第では上位に迫るポテンシャルを持っている。

6位 広島

広島は投手・野手ともにリーグ下位と厳しい予測になった。

特に野手は打撃面の課題が大きい。まずまず優秀な成績を残しそうなのはセンターラインの坂倉、矢野雅哉ぐらい。ほかのポジションは質、選手層の両面で他球団に差をつけられている。

投手予測も先発・救援ともに伸び悩んだ。特に先発投手は九里の移籍による穴を埋められていない。Aクラス以上を狙うためには投手・野手ともに新戦力の台頭が必須だろう。

総評

2025年はオープン戦時点で各球団の予測WAR上位選手にコンディション不良報道が続出。彼らの離脱期間はわからないためレギュラーシーズンへのインパクトは未知数だ。ただ、離脱が長引いたりプレーに大きな影響が出たりすれば、チーム戦力図は大きく変動する。順位が大きく入れ替わる大荒れのシーズンとなる可能性は低くない。例年以上にコンディション管理やベンチワーク、トレード補強などの重要性は高い。試合中のプレーに加え、チームの組織的な総合力も肝要なシーズンとなりそうだ。

自作の成績予測システムの改良版による予測(予想者:二階堂智志)

過去に作成した成績予測システムを改良したものを応用して順位予想を行った。このシステムを用いて個人の成績を予測し、それらを合算することでチーム全体のWARを算出。その値をもとに順位予想を行った。

パ・リーグ編はこちらから。
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