3月25日、ついに2022年のプロ野球が開幕する。開幕に先立って1.02ではDELTAアナリストに順位予想を依頼した。予想を行う手法は各自自由に選んでもらい、簡単なコメントをもらい掲載している。アナリストによっては機械的に成績を予測するプロジェクションという手法を採用しているが、その機械的な予測の中でも意見が割れている。これは予測の要素に何をどれだけ織り込むかの差である点に注意してほしい。今回はパ・リーグ編。セ・リーグ編はこちらから。


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機械的な予測での優勝予想は楽天(予想者:岡田友輔)


1位 楽天
2位 ソフトバンク
3位 オリックス
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 西武

例年同様に過去データから機械的に今季の成績を予測するプロジェクションという手法を採用。各選手の成績を予測し、そのデータをもとにチーム順位を予想した。今季は、予測が難しい新規加入選手の貢献は見込まず順位予想を行っている。


昨季のパ・リーグは異常な投手優位環境。修正されるか(予想者:道作)


1位 楽天
2位 ソフトバンク
3位 オリックス
4位 ロッテ
5位 西武
6位 日本ハム

ここ数年、筆者はパ・リーグにおいてソフトバンクの優勝を予想し続けていたが、今季は楽天を首位予想とした。実は昨季も予想時点では僅差だった。セパ共に予想として鉄板の1位ではない。かなり競った内容で、優勝チームの勝率は5割台半ばと見る。首位予想の楽天も少し前までのソフトバンクのように圧倒的ではなく、優勝の可能性が6チーム中では一番高いに過ぎない。

パ・リーグではオリックスの攻撃面でのボラティリティ(変動率)が高くなっており、予想得点の幅が大きい。このため、予想順位からの上下幅が最も大きい。つまり上にも下にも弾けやすいということだ。

リーグ全体の焦点は投手優位の環境が修正されるかどうかだ。2021年のパ・リーグは実は極めて投手優位の環境にあった。これ以上投手優位となるようなら、2011-12年のような特殊な環境となる。各球団の戦力が接近しているだけに環境が結果に与える影響は大きいシーズンと考える。

また米国球界(MLBまたは3A)から中心打者を取れる可能性があると気楽に考えられる時代ではなくなってしまっている。そのことは外国籍選手の成績にも表れており、各年度のwRAAにおいてトップ3に入った外国籍選手[1]は、セ・リーグは2015年以後1人もおらず、パ・リーグは2013年以後1人(2019年のジャバリ・ブラッシュ)のみとなっている。

彼我のサラリーの差がこれらの事情となって如実に表れている。優秀な選手は年俸が高すぎて獲得できていない。デフレの進行はここまで影響を深めているのだ。今後、中軸を担う選手も国内のドラフトなどで獲得、育成しなくてはならない可能性は高いが、各球団の戦略変更は順調に進んでいるのだろうか。

[1]筆者算出。規定打席到達打者を対象としている


成績予測システムから順位を予想(予想者:蛭川皓平 @bbconcrete


1位 楽天
2位 オリックス
3位 ソフトバンク
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 西武




予測得点・失点からピタゴラス勝率を算出(予想者:佐藤文彦 @Student_murmur


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各チームの得点と失点の予測を行い、そこからピタゴラス勝率を算出。その値を元に順位予想を行いました。

得点は、所属する野手個人のOffence値[2]を年代(24歳以下、25-29歳、30-34歳、35歳以上)ごとに合計し、この世代ごとに2022年の値を予測しました。年代を分けた理由は、シーズン間の成績の安定性と平均回帰傾向に年齢の影響を考慮するためです。これを合計したOffence値から得点を予測したものが表中の予測得点になります。

失点は、野手のDefense値[2]、投手個人の先発RAR[3]と救援RAR値の値を得点と同じように年代ごとに合計し、その値から2022年の値を予測しました。その予測値を用いて失点を予測したものが表中の予測失点となります。

セ・リーグ同様、パ・リーグも勝率.500に全体的に寄った予測となりました。パ・リーグは楽天とソフトバンクの得点が高く予測されています。4位以下に予想された日本ハム、ロッテ、西武に差はほとんどありません。

[2]Offence値、Defense値は 野手WARの構成要素。それぞれ平均的な選手に比べてどれだけ得点を増やしたか、失点を減らしたかを表す。
[3]RARリプレイスメント・レベルの投手に比べ、その投手がどれだけ失点を防ぐはたらきを見せたか。勝利の単位で表現されているWARが得点・失点の単位で表現されているもの。

楽天とソフトバンクの2強争いを予想(予想者:市川博久 @89yodan))


1位 楽天
2位 ソフトバンク
3位 ロッテ
4位 オリックス
5位 西武
6位 日本ハム

過去3年の成績を元に、2022年シーズン開始時点での選手の成績を予測。その結果に故障情報を加味して予測を行った。新人選手、NPBに在籍経験のない外国人選手はリプレイスメント・レベルで評価を行っている。このため、こうした選手の出場が多くなるチームについては、この予想よりも成績が上振れする可能性が高い。

楽天は、浅村栄斗茂木栄五郎島内宏明辰己涼介ら優秀な野手を大きく抱えており、多くのポジションで他球団より優れた成績を残すことが見込まれる。さらに昨オフに西川遥輝を獲得。リーグでもトップの野手陣といえる。投手も則本昂大田中将大岸孝之ら優秀な先発投手を多数抱えており、ソフトバンクに次ぐ優秀さである。

ソフトバンクは、リーグ屈指の野手・柳田悠岐を筆頭に甲斐拓也栗原陵矢といった優秀な野手を有しており、楽天に次いで高い野手の貢献が見込まれる。投手では先発・救援ともに優秀な投手が揃っている。チーム方針からか、先発投手の投球イニング数が伸びない傾向にあり、1人1人の数値を見ると千賀滉大を除いてそれほど大きな貢献とはなっていない。ただチーム全体ではかなりの量となり、リーグトップの投手力となっている。

ロッテは野手で弱点となっているポジションが多く、捕手、内野手で他の球団に差をつけられてしまっている。投手陣は優秀な投手を多数抱えており、リーグ平均をやや上回る戦力となった。

オリックスは昨季優勝ながら、同様の成績が残せるか不安が残る。昨季のチーム規定打席到達者のうち、これが初めてでなかったのは吉田正尚福田周平のみ。過去3年間の成績を参照するという予想の方法から、2020年以前の実績が乏しい選手が多いオリックスは低めの見積もりとなった。しかし、昨季同様の成績が残せれば、今季もAクラスは見込まれる。投手はリーグ平均をやや上回る戦力となっている。山本由伸が安定して好成績を残すなど、優秀な先発投手は多いが、救援投手がやや不安な成績に終わっている。

西武は森友哉源田壮亮外崎修汰らの貢献で強みとなるポジションが多く、野手陣はリーグでも平均を上回っている。ただ、投手は長年にわたって大きな弱点となっており、その状況は今季もあまり変わっていない。優秀な先発投手が不足していることがその大きな要因だ。

日本ハムは近藤健介を除くと継続して高い貢献を残している選手がおらず、かなり多くのポジションが弱点となっている。昨季の成績こそ振るわなかったものの、その前年までは優秀な成績を残していた選手を放出したことが、その一因となっており、今季は再建モードにすら思える。投手は野手と比較すると優秀な先発投手が多いことから大きな弱点となってはいないが、リーグ平均をやや下回る予想となった。

総合すると、楽天とソフトバンクが戦力的には抜けており、この2チームの優勝争いとなる可能性が高い。3位から5位までは戦力差が小さく、どのチームがAクラスになってもおかしくない。




ソフトバンクは柳田の高齢化による影響も(予想者:宮下博志 @saber_metmh


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各選手について、過去3年の実績および年齢曲線を考慮して2022年のWAR(Wins Above Replacement)を推定し、各球団の合計WARを基準に順位を予想した。今回の手法では、ブレイクした若手や復調したベテランは低めに算出される傾向がある。

投手力の高さが目立つ楽天が1位予想となった。2位以下は投手力に差が出ていないが、野手の差で順位が付いた格好だ。


1位:楽天

楽天は投手力、野手力ともにトップ予測となっている。特に田中将、則本、早川隆久を中心とした先発ローテーションは非常に強力で、崩れなければ大きな優位となる。野手も2.0WAR以上と予測された選手が6人おり、全体的に地力の高いチームといえる。


2位:ロッテ

ロッテはバランスの良い戦力で2位予測となった。突出した選手はいないものの、一定以上を期待できる選手が多い。ただし、今回の予測で佐々木朗希のWARは低めに出ている点に注意が必要だ。佐々木朗が昨季後半の圧倒的な投球をシーズン開幕から発揮できれば、チームを優勝させるだけの可能性を秘めている。


3位:ソフトバンク

昨季4位に終わったソフトバンクだが、2022年は3位と予測された。2021年は状況別の成績が大きく偏り、戦力通りの勝率を残せなかったが、2022年は偏りが解消される見込みだ。ただし、チーム戦力は若干の低下傾向を見せている。影響しているのは今季34歳を迎える柳田の年齢だ。2022年もリーグ上位のWARが予測されるが、年齢曲線から例年ほどの圧倒的な数字ではない。優勝を狙うためには、柳田以外にリーグを代表する選手が台頭する必要がある。


4位:オリックス

2021年優勝のオリックスは4位予測となった。山本は2022年もスーパーエースの働きが期待できる一方、宮城大弥杉本裕太郎宗佑磨など昨季ブレイクした選手は若干数字を落とす見込みとなっている。これは過去3年の成績を基に予測しており、ブレイク前の成績が考慮されているためだ。裏を返せば、彼らの活躍次第で十分に優勝を争える戦力に変貌するチームである。


5位:西武

昨季最下位の西武は5位予測となった。昨季低迷した野手戦力はリーグ中位まで上昇する見込みだが、5球団に水をあけられている投手力不足が下位予測の要因だ。特に先発投手が大穴となっているため、優れた先発投手の台頭はチーム戦力の底上げ効果が大きい。Aクラスを狙うためには、先発投手のブレイクが必要条件となりそうだ。


6位:日本ハム

日本ハムは野手力で大差を付けられ、最下位予測となってしまった。レギュラー水準のWAR(2.0前後)を予測された選手が非常に少ない。それゆえに過去3年の実績がない若手野手の台頭が頼りになる。投手力は安定しており、野手の上積みがそのまま順位に影響すると考えられる。




シミュレーションゲームでペナントの行方を予測(予想者:山崎和音 @Kazuto_Yamazaki


1位 西武
2位 ソフトバンク
3位 楽天
4位 オリックス
5位 ロッテ
6位 日本ハム

シミュレーションゲーム「Out of the Park Baseball 22」で各チームのロースターを2022年開幕時点になるべく近くし、シーズンをシミュレートした。2021年にドラフトされた新人の大半はデータベースに存在しないため、近似した能力の選手で置き換えている。以下はその結果である。

西武は主力投手故障の影響もあり、100イニングを投げたのが2名のみと投手陣は苦戦を強いられた。しかし、野手陣が軒並み奮起しそれをカバー。シーズンを通じた得失点差では+55で、レギュラーシーズンを1位で終えた。

オリックスも主力投手が長期離脱。その影響でCS進出は逃したが、3位とはわずか3ゲーム差と状況を考えれば健闘したといっていいだろう。山岡泰輔がシーズンを通してローテーションを守り、野手では安達了一がチームトップの5.8 WARを記録した。


プロジェクション・システム"NPB版PECOTA"による予測(予想者:二階堂智志 @PennantSpirits


1位 オリックス
2位 楽天
3位 ソフトバンク
4位 ロッテ
5位 日本ハム
6位 西武

今回の成績予測に際して、自前の簡易なプロジェクション・システムであるNPB版PECOTAを応用する。これを使って昨季までNPBに所属していた選手の成績を予測し、それらを合算してチームごとのWARを算出。その値をもとに順位予想を行った。なお、守備に関しては守備位置の違いやサンプルの問題で精巧な予測モデルを作成するのが難しいため、簡単な年齢曲線を作成し適用している。

またこの手法で扱いが難しいのが新規入団選手の扱いである。既存のプロジェクションでは予測が難しく、不確定な要素が多い。そのため今回は暫定的に該当選手のWARを0として計算した。この部分は改善の余地がある。


西武はスリリングなシーズン。日本ハムは外国人選手次第(予想者:大南淳 @ominami_j


1位 楽天
2位 ソフトバンク
3位 オリックス
4位 西武
5位 ロッテ
6位 日本ハム

優勝予想は楽天とした。昨季は長打力を依存する外国人選手の不在に悩まされ、得点力が伸び悩んだ。今季は新たに外国人選手を獲得したほか、西川も加入。昨季のようにリプレイスメント・レベル以下の打者が指名打者に入ることは少なくなるはずだ。ソフトバンクは弱点であり高齢化も進んでいる内野に、大物外国人選手の フレディ・ガルビスが加入。前評判通りの活躍を見せるようなら、優勝はぐっと近づく。オリックスは昨季が出来すぎのシーズンだったと考える。ただその昨季も外国人選手の貢献は乏しかった。この部分で上積みが大きくなれば連覇もありうる。

Bクラスは西武、ロッテ、日本ハムの順にしている。今季は西武ファンにとってスリリングなシーズンとなりそうだ。弱点の先発に隅田知一郎が代表する新戦力がハマるか、山川穂高、外崎といった主力が復調するか、総入れ替えした新外国人選手の出来はどれほどか、と不確定要素が多い。先発と外野はリーグ内における最大の弱点だが、弱点に好選手が現れたときのインパクトの大きさは昨季のオリックスが証明している。すべてがうまくいけば優勝もありえる。ロッテは佐々木朗のイニング増加が大きな上積み要素となりそうだ。ただ昨季後半から捕手の攻撃力が不足しており、その路線を継続するなら致命的なハンデを負う恐れもある。日本ハムは基本的には再建シーズンという認識が適切だろう。ただ新外国人選手がいずれも素晴らしい成果を出すようなら、事情は変わってくる。

セ・リーグ編はこちらから。


過去の順位予想


・2021年  
・2020年  
・2019年  
・2018年  
・2017年  


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・チェンジアップの緩急を定量化する(宮下 博志)
・二盗阻止制球防御点の提案(大南 淳)
・フレーミングスキルの比較〜甲斐拓也・木下拓哉・大城卓三の2020 年と2021 年のデータから〜(佐藤 文彦)
・戦術的判断と基準率(蛭川 皓平)
・生存競争における少数派 〜左投手から考える〜(道作)
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