野球解説者の予想をベースに順位予想を組み立てる ‐2018年版‐

佐藤 文彦(Student)

2018.04.03




開幕前にDELTAアナリストによる2018年プロ野球の順位予想(セ・リーグ編パ・リーグ編)を発表したが、アナリストの1人、Student氏は昨年につづき、プロ野球解説者の過去の順位予想と的中結果の関係から自らの順位予想を組み立てるという特殊な方法をとった。ただ今年は多くの解説者の予想が公開される前に締め切りを迎えてしまった。Student氏はどのような手順で順位を予想したのだろうか。

今季の順位予想はほかのアナリストと異なる予想に


2018年ののプロ野球開幕にあたり、今年は以下のように順位を予想しました。


セ・リーグ
1位 阪神タイガース
2位 横浜DeNAベイスターズ
3位 広島東洋カープ
4位 東京ヤクルトスワローズ
5位 読売ジャイアンツ
6位 中日ドラゴンズ

パ・リーグ
1位 北海道日本ハムファイターズ
2位 福岡ソフトバンクホークス
3位 千葉ロッテマリーンズ
4位 埼玉西武ライオンズ
5位 東北楽天ゴールデンイーグルス
6位 オリックス・バファローズ

自分でも「なんだこれは……」と思うような予想ですが、思い切った計算をした結果がこうなりました。今回はこの結果に至った過程を解説したいと思います。


締め切りまでに発表されていた予想が岡田彰布氏のものしかない


まず、昨年の順位予想では、野球解説者の順位予想と、過去の的中結果との関係を分析し、その情報を元に順位予想を組み立てました。今年も同じ方法をとろうと思っていたのですが、情報源としている『週刊ベースボール』の順位予想が締め切りまでに出てきそうにありませんでした。

どうしたものか考えたところ、岡田彰布氏がすでに予想を発表しており(『週刊ベースボール 1月8-15日合併号』, そりゃそうよ第154回)、また岡田氏は過去3年分の順位予想を公開していたため、今回はこれをもとに予想を組み立てることにしました。


岡田彰布氏の過去の予想とその結果


まずは2015年から2017年までの岡田氏の順位予想とその結果をまとめました。これを表1に示します。



表では3年分の予想を並べており、赤字のチームが実際に的中したことを示します。 予想が的中したのはセ・リーグで0チーム、パ・リーグが4チームということになります。過去に予想が的中したという実績をもとに、2018年の予想に微調整を加えようと考えていたのですが、セ・リーグの的中チームが0ということでできなくなりました。それ以外の方法で、過去の予想を評価する必要があります。


予想順位からのズレを数値化する


考えた結果、予想した順位が当たったか、当たらなかったかの2択ではなく、予想した順位と実際の順位のズレを求めてみようと考えました。例として、岡田氏の2017年のセ・リーグの予想と実際の順位のズレを求めたものを以下の表2に示します。



予想と実際の順位の差を求め、その値を2乗しました。このズレの2乗値を3年分、順位とチーム別に合計したものが以下の表3、表4になります。




この表3に示した値が小さいほど、岡田氏の順位予想と実際の順位とのズレが小さい、つまり予想の精度としては高いことを示します。セ・リーグでは3位、パ・リーグでは1位に予想したチームのズレが最も小さいということになります。視点をチーム別に変えると(表4)、セ・リーグでは阪神、パ・リーグではソフトバンクのズレが最も小さいということになります。ソフトバンクは過去3年上位をキープしているので予想する分には楽かもしれませんが、阪神の順位を大きく外していないのは、さすがOBといったところでしょうか。

この結果を元に、岡田氏の2018年の順位予想を得点化してみました。データを以下の表5に示します。



セ・リーグの1位に予想したDeNAの374という値は、表3に示した1位のズレの2乗値34と、表4に示したDeNAのズレの2乗値11を乗算したものです。他のチームも同様に計算しています。岡田氏の過去の予想のズレの大きさから考えると、この値の小さいほど予想としては信用できるものと考えられます。

ここからが本題です。このように予想を得点化しましたが、これを修正して自分の予想を組み立てる必要があります。修正というのは、岡田氏の予想よりも精度が高くなるように順位を並び替えたいということなのですが、今回はこの順位とチームの組み合わせによる得点について、6チームの合計が最小となる組み合わせを探しました。

これが冒頭の予想順位となります。同値の組み合わせもあったのですが、ソーティングして冒頭で紹介した以下の順位としています。


セ・リーグ
1位 阪神タイガース
2位 横浜DeNAベイスターズ
3位 広島東洋カープ
4位 東京ヤクルトスワローズ
5位 読売ジャイアンツ
6位 中日ドラゴンズ

パ・リーグ
1位 北海道日本ハムファイターズ
2位 福岡ソフトバンクホークス
3位 千葉ロッテマリーンズ
4位 埼玉西武ライオンズ
5位 東北楽天ゴールデンイーグルス
6位 オリックス・バファローズ

まとめ


突拍子の無い順位予想となった理由はこのような計算があったためです。おそらく、ズレの得点を6球団で最小にという条件が原因だと思います。この予想が当たる見込みは小さいと予想した自分でも思っています。もちろんベースとさせていただいた岡田彰布氏の予想には何の責任もなく、この予想の責任と原因は分析者とその計算過程にあります。

昨季に引き続き今季の予想も、的中させたいというよりは数字をこねくり回す過程で、順位予想に限らず何かに生かせるテクニックはないものかと模索しています。


『週刊ベースボール』発売後、ほかの解説者の予想にも当てはめてみる


以上の順位予想を届けてしばらくして、『週刊ベースボール2018年4月2日号』に2018年の順位予想が掲載されました。折角なので、岡田氏と同様の手続きで過去の順位予想とのズレを得点化したものを以下の表6に示します。



セ・リーグはもう1人、佐伯貴弘氏も参加されていたのですが、過去の予想がないためにここでは割愛しています。値を平均値としているのは、解説者によって参加している順位予想の回数が異なるためです。岡田氏の値もここでは合計値ではなく平均値にしています。

このデータの解説者のズレの得点の合計値を用いて、6チームの得点が最小となる順位を求めてみたところ、以下のような順位となりました。


セ・リーグ
1位 横浜DeNAベイスターズ
2位 広島東洋カープ
3位 読売ジャイアンツ
4位 阪神タイガース
5位 中日ドラゴンズ
6位 東京ヤクルトスワローズ

パ・リーグ
1位 北海道日本ハムファイターズ
2位 福岡ソフトバンクホークス
3位 埼玉西武ライオンズ
4位 オリックス・バファローズ
5位 東北楽天ゴールデンイーグルス
6位 千葉ロッテマリーンズ

最初の予想よりはもっともらしくなった気もします。これはデータのもととなる解説者の数が増えたためでしょうか?しかし、もっともらしく見える答えが、実現するとも限りません。答えはシーズン終了後にわかります。 出てきた結果は変なものかもしれませんが、今後何かにつながれば幸いです。


出典

岡田彰布氏の2016年と2017年の予想は以下を典拠としています。
・2016年:Number Web プロ野球PRESS
・2017年:週刊ポスト2017年4月14日号

その他の岡田氏及び解説者の予想は『週刊ベースボール2018年4月2日号』を出典としています。


Student @Student_murmur
個人サイトにて分析・執筆活動を行うほか、DELTAが配信するメールマガジンで記事を執筆。 BABIP関連、また打球情報を用いた分析などを展開。2017年3月に[プロ野球でわかる!]はじめての統計学 を出版。



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