• 1.02 Column



FA選手の最適球団はどこであったかを探るシリーズ。、前回の大和編に続き、今回は西武からFA宣言し読売への入団を決めた野上亮磨だ。野上は今回国内球団への移籍を目指す選手の中で唯一の先発投手であった。読売は野上の最適球団だったのだろうか。

リポート


野上は今季、K%(奪三振割合)、BB%(与四球割合)を昨季から大きく改善させキャリアハイのWAR 4.9を記録した。これは12球団の投手で6位という好成績だった。ただ投球内容がよくなっているのは確かだが、幸運に恵まれた部分もある。今季野上が打たれたフライ打球に占める本塁打の割合(HR/FB)は、リーグ平均の9.3%に対し5.2%だった。統計的な研究によると、この数字はどんな投手でも長期的には一定の割合に収束するとされている。つまり野上は幸運にも打たれたフライ打球が本塁打になる確率が低かったと解釈できるのだ。この5.2%はパ・リーグの規定投球イニング到達投手では山岡泰輔(オリックス)に次ぐ2位の数字で、野上がかなり幸運に恵まれていたことがわかる。


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しかし昨季のストレート平均球速139.7km/hを今季は141.8km/hにまで上げるなど成長を見せたことは間違いない。今季の成績を継続できるかはわからないが、奪三振や与四球のペースを今季レベルに保つことができれば、2、3番手の先発としては十分な活躍を期待できそうだ。


最適球団は読売だったのか


野上がどの球団に適していたか各論に入っていく。検討するのは各球団のニーズ、ペイロールを確認した以前の記事(セ・リーグ編パ・リーグ編)で先発にニーズがあるとした西武、日本ハム、ロッテ、広島、中日、ヤクルト、そして獲得した読売だ。


西武

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昨オフの岸孝之に続き2年連続で主力先発が退団することになった。今季は菊池雄星の貢献が素晴らしかったものの、チームの先発による貢献は平均レベルにとどまった。野上が退団となり5番手以降には計算しづらい投手の名前が挙がる。できれば残留にこぎつけたかった。しかし今オフの西武には野上の残留交渉に加え、FA権取得が近づく浅村栄斗と複数年契約で流出の芽を摘みたい思惑もあった。しかしオフの重要課題は2つとも達成できず、西武のペイロールの厳しさを感じさせる結果となった。


日本ハム

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チームは今季の開幕前から比べると、先発では大谷翔平、ルイス・メンドーサ、救援では増井浩俊、クリス・マーティン、谷元圭介と主力クラスの退団が相次ぎ、投手陣は先発、救援ともに12球団で最も厳しい状況といえるかもしれない。野上が加入した場合補強効果は大きかったが、球団は目標を数年後におく長期的な戦略をとっていると思われ、現時点での補強は現実的ではなかっただろう。


ロッテ

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涌井秀章がMLB移籍を目指しFA宣言をし、去就が不透明になっている。涌井が抜けたとすると、先発陣は今季以上の弱点になるかもしれず、野上の補強は効果的になりえた。涌井の去就が決まるのはまだ先になるため、それまで球団は涌井残留用に資金を残しておかなければならないが、それを別にしても野上の獲得に動く選択はあったはずだ。だが球団としてはチームが最下位の現状、勝負を賭けるタイミングを待つという判断はあったのかもしれない。


広島

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今季はクリス・ジョンソンが故障したにもかかわらず、先発5人が100イニングをクリアした。7番手以降先発で実績がある投手が少ない状況を見てニーズを先発としたが、ジョンソンが順調に働くようであれば大きな問題はなさそうだ。野上獲得もここに挙がる他球団に比べると効果は薄いだろう。

ただ広島は救援陣もやや層が薄く、投手の数を確保したい状況となっている。野上を獲得すれば九里亜蓮や中村祐太を救援にまわすことができ運用は楽になっただろう。効果は高くないもののチームの状況を考えると、より優勝を確実なものとする手堅い補強になりえたかもしれない。


中日

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今季は先発の質ではリーグで1人負けのような状況だった。さらにオフには2人で220 1/3イニングを投げたラウル・バルデスとジョーダン・ノルベルトの両外国人が退団。今後外国人先発の補強があるとは思われるが、それを含めても先発は大きな弱点となっている。コンスタントに100イニング以上を投げてきた野上の獲得は非常に効果的だったはずだ。

チームは野上よりも同じく弱点となっている捕手の補強を優先し、3年2億5000万とされる契約で大野奨太を獲得した。しかし大野も近年は打撃成績が振るわず、他球団の捕手に差をつけられる存在ではない。より確実な戦力の上積みを狙うならば野上や二塁を守ることができる大和の獲得に乗り出しても良かったのではないだろうか。


ヤクルト

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デービッド・ブキャナン、原樹理らの活躍で昨季から比べると先発の質は改善された。リーグ平均レベルには届かないが、日本ハムや中日などに比べると補強の緊急性は低いだろう。それでも投手の頭数は少なく、野上の補強は効果的になった可能性が高い。

しかし最下位に沈んでいるにもかかわらずチームのペイロールは膨れ上がっており、FAの補強には動けない状態だ。野上の獲得は効果的であるが現実的ではなかっただろう。


読売

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読売の先発はセ・リーグで最もイニングをこなし、最も貢献度が高かった。しかし、これらの貢献は投手陣全体のレベルが高いわけではなく、菅野智之、マイルズ・マイコラス、田口麗斗、畠世周、救援ではスコット・マシソン、アルキメデス・カミネロなど一部の能力の高い投手に支えられていた。この状況でマイコラスが退団となると、代替投手とのレベル差が大きいためかなりの戦力ダウンとなる。読売は先発陣が優れているため野上の獲得は大きな上積みにならないと考えるのは早計で、代わりに投げる投手を考えると十分効果的な補強といえるのではないだろうか。今季ほとんど稼働できなかった山口俊がDeNAで先発をやっていた時代の投球を取り戻すことができれば野上とあわせてマイコラスの穴を埋めることもできるかもしれない。読売は今季のFA市場に出た選手の中では良い選択をしたのではないだろうか。


最適球団は…


検討の結果、補強が効果的でなおかつ獲得が可能であった球団として、ロッテ、中日、読売の3球団が残った。西武はペイロールの問題でほかの球団よりも資金の捻出が難しかった状況があるため、候補から除いた。

最適球団を選ぶとすれば、最も先発の不安が大きく、資金の捻出も可能であった中日になるだろうか。ナゴヤドームはフライボールピッチャーの野上にとって最適の環境であるため、好成績を維持できた可能性もありそうだ。ここでは中日を最適球団としたが、読売も十分効果的な補強といえるだろう。



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